著者
和田 英穂
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.43-57, 2014

本論はBC級戦犯裁判において多数の有罪判決を出した憲兵のケースについて,中国国民政府の戦犯裁判を中心に考察したものである。本論は戦犯裁判の事例研究でもあり,また戦犯裁判の内容から新しい史実を掘り起こす試みでもある。憲兵の様々なケースから,中国人弁護士から警告されるほど杜撰な裁判があった一方で,当時中国における憲兵が中国人にいかに恨まれる存在であったかを憲兵自身が認めるなど,憲兵の実態を垣間見ることができる。
著者
大谷 尚
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
薬学雑誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.6, pp.653-658, 2017
被引用文献数
10

&emsp;The article is an in-depth explanation of qualitative research, an approach increasingly prevalent among today's research communities. After discussing its present spread within the health sciences, the author addresses: 1. Its definition. 2. Its characteristics, as well as its theoretical and procedural background. 3. Its procedures. 4. Differences between qualitative and quantitative approaches. 5. Mixed methods incorporating quantitative research. And in conclusion: 6. The importance of establishing an epistemological perspective in qualitative research.<br>
著者
柏木 惠子 若松 素子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.72-83, 1994-06-30
被引用文献数
32

「親となる」ことによって親にどのような人格的・社会的な行動や態度に変化 (親の発達) が生じたかを, 就学前幼児をもつ父親と母親346組を対象として比較検討を行った。加えて, 子どもや育児に対する感情・態度及ぴ性役割に関する価値観の測定も行い, 母親の職業の有無, 父親の子育て・家事参加度との関連で分析を行った。その結果, 「親となる」ことによる発達は柔軟性, 自己抑制, 視野の広がり, 自己の強さ, 生き甲斐など多岐にわたるが, いずれの面でも父親より母親において著しいこと, 子ども・育児に対して父親が青定的な感情面だけを強く持っているのに対して, 母親では肯定面と同時に否定的な感情もあわせもつアンヴィバレントなものであること, 父親の育児・家事参加度の高さは母親の否定的感情の軽減につながる, 同時に父親自身の子どもへの肯定的感情が強まり, 母親のそれと近いものになること, 父親及び母親の性役割についての価値観は, 父親の育児・家事参加及び母親の有職と相互に一貫した形では対応しており"言行一致"があること, などが見出された。
著者
蓑原 美奈恵 伊藤 宜則 大谷 元彦 佐々木 隆一郎 青木 國雄
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.607-615, 1988
被引用文献数
6 2

一地域住民38歳&sim;84歳の924名のうち,味質脱失者19名を除いた905名を対象とし,滴下法を用いて味覚検査を行った。味質は甘味:精製白糖,塩味:塩化ナトリウム,酸味:酒石酸,苦味:塩酸キニーネの4種に限定し,以下の結果をえた。<br>味覚識別能は4基本味質のいずれも,女性が男性より敏感に識別していた。また,男女とも味覚識別能検査値は,70歳代で最も鈍化し,80歳代ではやや敏感になる傾向など,加齢による変化を認めた。<br>また,総入歯群と義歯なし群や部分入歯群とを比較したが,義歯の状態による味覚識別能に対する影響は認めなかった。<br>喫煙による味覚識別能の影響は,喫煙量(本/日)の増加にともない,男女とも味覚識別能が鈍くなる傾向にあり,味覚識別能における性差は無くなった。塩味,酸味の識別能は喫煙量の増加にともない,男性が女性より敏感に識別し,性差が逆転したが,喫煙量の増加に従い鈍化する傾向は一致した。<br>さらに,味覚識別能に影響を認めた性,年齢を考慮した多変量解析を行った結果,喫煙量の増加にともない味覚識別能は鈍くなる量-反応関係が明らかとなった。その影響の強さは,苦味,酸味,塩味,甘味の順であった。
著者
内田 雅克
出版者
The Gender History Association of Japan
雑誌
ジェンダー史学 (ISSN:18804357)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.75-84, 2012

アジア・太平洋戦争期、『少年倶楽部』はジェンダー・イデオロギー生産装置として機能し、軍人を男のモデルとして「男らしさ」を連呼し、「少年」をウィークネス・フォビアの包囲網に囲み、そして戦場に送り続けた。やがて敗戦とともに、『少年倶楽部』は、その薄い冊子に平和と希望を語り始めた。だが、その厚さと同様、戦前のあの勢いは全く見られなかった。<BR>少年には希望や平和・反戦が語られるなか、戦前に野球を愛した男たちは早くも動き出し、GHQの後押しを受けながら次々と野球の復活を実現した。GHQの軍人、日系アメリカ人、プロ野球や学生野球を導く男たちには、それぞれの野球に対する思いがあった。そして野球復活のプロセスのなかで、精神野球のイデオローグ飛田穂洲を中心に、野球少年の美しさ、純情、さらに国家の再建を彼らに託す声が聞こえ始めた。<BR>やがて少年向けの野球雑誌が誕生し、飛田をはじめ野球に「少年」が学ぶべき「男らしさ」を見出す男たちは、戦い・団結・仇討の精神を、そしてそこに映る至極の少年美を語った。再開した高校野球の球児は、かつて夭折へと導かれた少年兵とその姿を重ねた。少年雑誌が見せたのは、「軍人的男性性」の復活といえよう。戦闘的な「男らしさ」は、一見平和を象徴する野球というスポーツを媒体とし、『野球少年』のような少年雑誌のなかで再びその姿を見せ始めたのだった。<BR>もちろん、少年雑誌が見せた復古的なマスキュリニティがかつてのヘゲモニックな地位に返り咲いた訳ではない。ジェンダーの境界線が揺さぶられ、決定的な男性モデルが喪失した占領下という時代は、複数のマスキュリニティーズの出現を可能にしていた。歴史的文脈において、それらを読み解いてゆくのが本研究のテーマであり、本稿はその第一章である。
著者
山野 博史
出版者
関西大学法学会
雑誌
関西大学法学会誌 (ISSN:09116265)
巻号頁・発行日
no.48, pp.126-129, 2003
著者
平井 佑樹 井上 智雄
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.72-80, 2012-01-15

プログラミング教育では,プログラム言語の文法やプログラム書法を理解する能力とアルゴリズムを組み立てる能力が要求される.プログラム言語の文法や簡単な例題を理解することができても,実際にプログラムを作成するときにはいくつかのつまずきが発生する.プログラミングを行う方法の1つとして,2人1組になって行うペアプログラミングがある.ペアプログラミングによるプログラミングは協調作業であるが,これはプログラミング学習の方法としても用いられている.本研究では,プログラミング学習時のペアプログラミングの成功事例と失敗事例を比較分析した.分析では作業中の会話に着目し,失敗事例の方が発話が長いこと,説明の繰返しが多いこと,一方的な発話が多いことが分かった.この知見は,ペアプログラミングにおいて協調作業がうまく進んでいるかどうかを判断する手がかりを提供し,協調作業の状態推定に有効であると考えられる.In the programming education, the ability to understand grammar of a program language and writing of a program and the ability to assemble the algorithm are required. When a learner actually makes a program, some problems are caused even if a grammar and an easy example of the program can be understood. Pair-programming is one of the programming techniques in which two programmers work together at one work station. Pair-programming is a collaborative work and is used in programming learning. In this research, success cases and failure cases in pair-programming were compared. From the comparison, it was found that the speech length was long, the number of repeating explanation was high and the number of continuous speech was high in failure cases. The insights provide some clues to identify if collaborative work in pair-programming smoothly progresses and to guess the status of collaborative work.
著者
菅野 博之 大塚 英志 泉 政文 山本 忠宏 本多 マークアントニー 大内 克哉 Hiroyuki KANNO Eiji OHTSUKA Masafumi IZUMI Tadahiro YAMAMOTO Mark Anthony HONDA Katsuya OUCHI
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2012
巻号頁・発行日
2012-11-30

WEB上にまんが表現が移行するということは、「単行本」や「雑誌」がWEBの環境下で新たな適応を求められることを意味する。現在のまんが表現は「コマ」を映画の1カットに見立て「モンタージュ」的に接続する一方、2頁単位の「見開き」に「構成」として配置するものであるが、そのような方法はWEB上では一度解体する。本研究では「横スクロール」形式によってiPadなどのタブレット上に帯状に描かれたまんがを表示する技法において、紙のまんがに替わる新しい文法形式を検証するため、中世の絵巻物「信貴山縁起」の手法の解析を行った。その結果、画面を上下二分割する中心軸上で読者の視線を上下させる技法を確認し、それがiPad対応の横スクロールまんがにも用いることができることを確認した。その他「異時間図法」など、絵巻の技法は応用可能であることが確認できた。「絵巻」と「横スクロール形式のWEBコミック」の方法上の互換性は高く、そこに「紙のまんが」や「アニメーションの技法」をどのようにあらためて導入するかが次の重要な課題である。Transitioning the presentation of MANGA on the web means that a new adaptation under the web environment is desired for the presentational syntax of MANGA, which has been defined through print media such as 'books' and 'magazines'. The current presentation of MANGA is something that is a continuation of 'frames' selected as 1 scene of a video and joined in a 'montage'-like manner, arranged as a 'composition' in two-page unit 'spreads', however this type of method is momentarily demolished on the web. In this study, we performed an analysis of the techniques of the medieval picture scroll "The Legend of Mount Shigi(Shigisan-engi)", in order to verify the new syntactical form taking the place of 'paper MANGA', through the technique of displaying comics drawn as a strip for tablets such as the iPad via a 'horizontal scroll' format. Those results confirmed a technique of causing the reader's line of sight to go up and down via a core dividing the image into two upper and lower parts, and confirmed that it can also be utilized for horizontal scroll MANGA for the iPad. We were able to confirm that others picture scroll techniques such as 'drawing of different times.
著者
萩原 英敏 Hidetoshi HAGIWARA
雑誌
淑徳短期大学研究紀要 = Bulletin of Junior College of Shukutoku (ISSN:02886758)
巻号頁・発行日
no.53, pp.39-52, 2014-02-25

乳幼児期の親子関係の問題が、青年前後の時期の人格に-ここでは臨床的症状の中で、不登校と神経性食欲不振症を取り上げる-どう影響するのか、先行研究、統計資料、筆者を含めた臨床ケースなどから分析したところ、3歳未満児保育の問題点が、以下の様に浮かび上がってきた。1.3歳未満児の正当性でよく引用されている、菅原の縦断的研究は、青年期前後の対象者の少なさ、又調査対象を途中でドロップアウトした対象者をコントロール群に用いていないなど、その研究結果の信憑性に問題が残る。2.3歳未満児保育対象者の増加と、不登校発症児の増加は、有意に高い相関を示し、3歳未満児保育が不登校の原因の1つと考えられる。3.不登校や神経性食欲不振症の臨床ケースから、その根本原因を追及すると、乳幼児期の親子関係の問題が浮上してくる。これは3歳未満児保育の存在そのものに、疑問を投げかけるものである。