著者
谷崎 隆士
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.155-160, 2006-03-01

SCMは,サプライチェーン上の,素材供給元,製造メーカー,製品供給先を対象に生産進捗情報・在庫情報等を共有することで,ビジネス・プロセスを効率化する手法であリ,近年,精力的に取り組まれている.鉄鋼業では,主として顧客とのSCMの取り組みがなされており,実効をあげている.本稿では,鉄鋼業でのSCMの課題と対応策について,取り組み事例を用いて紹介する.
著者
林 光緒
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

居眠り運転による交通事故、夜勤中の産業事故や医療事故など、疲労と睡眠不足による居眠り事故は枚挙に暇がない。これらの事故は生命にかかわる問題だけに早急な対処法を講じる必要がある。筆者らは、これまで日中の覚醒水準の向上を図る方法として短時間仮眠法を提唱してきた。本研究は短時間仮眠法の実用化に向けて短時間仮眠法の洗練化をはかったものである。特に最適な仮眠環境の構築と、最適な仮眠取得のタイミングを明らかにすることを目的として実施された。仮眠後には、却って眠気が強くなったり作業成績が低下したりする睡眠慣性の影響が残る。睡眠慣性は徐波睡眠から覚醒すると強くなるため、短時間仮眠後の睡眠慣性を低減させるには、徐波睡眠に達しないよう仮眠内容をコントロールすることが必須となる。そこで、短時間仮眠の睡眠内容を検討したところ、若年成人の場合は20〜30分間の仮眠でもそのうちの43%の仮眠に徐波睡眠が出現し、15〜20分間の仮眠でも23%の仮眠に徐波睡眠が出現していた。しかし、15分以内の仮眠であれば徐波睡眠は出現しなかったことから、短時間仮眠の長さは、15分以下にすることが望ましいことが明らかになった。また、徐波睡眠を含まない短時間仮眠は睡眠段階1と睡眠段階2だけで構成されているが、睡眠段階1だけでは効果がなく、少なくとも睡眠段階2が3分出現することが必須であることも明らかとなった。このときの仮眠の長さは9分間であったことから、適切な仮眠の長さは19〜15分であるということが明らかとなった。さらに居眠り運転事故の予防のために車輌で仮眠をとる場合は、シート角度(座面と背面との角度)を150度に倒すこと、仮眠時間を15分間とすることがより効果が高いことを明らかにした。入眠までに約5分かかることを考慮すると、車輌シートで仮眠をとる際は、20分間の仮眠時間を確保することが必要であることを明らかにした。
著者
山田 義顕
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

平成9年度は、装甲艦<A>問題が浮上する時期に、<ローマン事件>を契機として、すでに軍部対政府・議会という対立関係から、軍部・政府対議会という対立関係に政軍関係が変化していたことを指摘した。平成10度は、まず装甲艦<A>の成立過程を、軍事的、外政的側面から検討した。この点ではまず、海軍指導部が、ヴェルサイユ条約によって厳しい制約を受けながらも、北海でフランス艦隊に対抗できる新型艦の開発に成功した過程をたどった。その過程で、「砲撃では巡洋艦に、速力では大型戦艦に優越する」「小型巡洋戦艦」(いわゆるボケット戦艦)として、装甲艦<A>の決定をみたことを明らかにした。またこの装甲艦<A>は、ドイツ海軍が単に沿岸防衛に専守する任務をもつものではなく、制海権を目標とした戦前のドイツ大洋艦隊の道を再び歩む方向を決定づけたことを指摘した。つまり装甲艦<A>は、ドイツ海軍のイデオロギー的連続性を示すものであったのである。ついで、ヘルマン・ミュラー大連合内閣の時期に、1928/29年予算に計上された装甲艦<A>の第一回分割払いの問題を、「政党と海軍」、「政治と海軍」を中心に取り上げた。ここでは、装甲艦<A>の軍事的、外政的、財政的な面から建造に反対する諸政党に対し、国防大臣ヴィルヘルム・グレーナーが、どのようにこの艦の必要性を説いたかを検討した。両年度の研究実績の詳細については、『研究成果報告書』の第1章と第2章でまとめた。
著者
黒橋 禎夫
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2000

自然言語の文章では,人間にとって理解可能な範囲で頻繁に省略や代名詞化がおこる.この問題は,文章を単語集合として扱っている現在の情報検索でさほど表面化しないが,今後,情報検索を高度化していくためには,省略・代名詞に対する照応詞の同定が必須の要素技術となる.省略・代名詞解析には,用言(動詞,形容詞,名詞+判定詞)ごとに,どのような名詞が主語,目的語(格要素)になるかという情報をまとめた格フレーム辞書が必要となる.しかし,数千から数万の用言について,専門分野における特殊な用法までカバーする大規模で実用的な格フレーム辞書はこれまでのところ存在しなかった.格フレーム自動構築における最大の問題は,用言の意味の多義性である.たとえば「(友達に)なる」と「(病気に)なる」,「(塩,調味料などを)加える」と「(砲撃を)加える」では,同じ動詞でも格フレームのパターンがまったく異なる.この多義性を解消しなければ,格フレームは自動的には構築できない.ここでのポイントは,用言の意味を決定づける重要な名詞は用言の直前にあり,かつそれは文章中で省略されることは比較的少ない,という点である.そこで,用言単独ではなく,用言とその直前の名詞のペア,すなわち「友達になる」や「病気になる」を格フレームの単位とし,そのまわりに他にどのような格要素が存在するかを大量のテキストから学習するという手法を考案した.新聞記事を対象とし,約370万文から格フレームを学習したところ,9,900用言について平均6.0個の格フレームが学習された.さらに,この格フレーム辞書を用いて文章中の省略要素を同定する実験を行ったところ,70%程度の正解率が得られた.この手法は言語独立,分野独立であり,必要となるのはある分野の大量のテキストだけである.今後,ゲノム文献を対象としてこの手法の有効性を確認し,これを検索の高度化につなげていく予定である.
著者
小風 秀雅
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

不平等条約を19世紀近代世界システムのサブシステムとして、異文化の共牛を図るとともに列強の優位を維持するシステムを内包していることを明らかにし、近代世界システムのなかに構造的に位置づけるとともに、そのシステムの形成から崩壊までのプロセスを、日本を中心に東アジアの視野のなかで明らかにし、東アジアにおける近代化の国際的前提を解明した。
著者
王 雲海
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

この研究を通じて死刑多用という現代の中国の死刑政策・死刑制度を歴史的かつ刑事政策的に深く見ることができた。つまり、中国社会が国家権力を原点とする「権力社会」であって、そこでの死刑政策・死刑制度は、封建時代から民国時代を経て今日に至るまでは、基本的に権力を中心にその統治状況により政治的に決定されており、純粋な法律制度として完全に刑事政策的に対処されることにはまだ至っていない。この「死刑の政治性」こそ中国での死刑政策・死刑制度のありかた、そして、死刑多用の現実を根本から左右しているのである。
著者
中山 晶一朗
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

周知の通り交通混雑・交通渋滞は都市部における大きな社会問題となっている.交通混雑は単に所要時間が増加するのみならず,その信頼性が著しく低下することも問題である.所要時間がはっきりとは分からないことは,時間通りに到着することが出来ず遅刻に至ることになり,また,遅刻を回避するためには出発時刻を早めなければならず,様々な時間的,経済的,精神的損失を生み出すことになる.これまで交通工学では,時間信頼性を考慮しない交通量配分モデル(交通ネットワーク均衡モデル)が既に提案され,実用化に至っている.既往のモデルでも交通システムでの旅行時間を算出することは可能である.しかし,それらでは旅行時間の確率分布を取り扱うことは出来ず,単に一つの値としての旅行時間を算出するのみである.したがって,それらの既往のモデルでは先に述べた時間信頼性を考慮することはできない.昨年度では,時間信頼性を考慮した均衡モデルの基本的均衡概念について明らかにし,道路利用者の経路選択が不確実なため(確率的であるため)に道路ネットワークの状態が確率変動する場合の確率的均衡モデルを構築した.しかし,旅行時間や交通量の変動の原因は経路選択の不確実性のもならず,交通需要が確率的に変動することも重要である.本年度は,昨年度のモデルを拡張し,交通需要が不確実に変動するとともに経路選択が確率的に行われる場合のモデルを構築した.また,モデルを金沢都市圏道路ネットワークに適用するためのデータ整備も行った.
著者
石井 智子
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.63-72, 1994-03-10

Mと共に歩んだ4年間,それはMとの関わりの道であり,自分自身の再発見の道でもあったと言える。Mは高校入学当初から目立つ存在の生徒であった。この生徒に,これから4年間関わろうとは思ってもいなかった。関わりの中で,Mが母と一番正面から向かい合いたいということがみえてきた。Mは担任教師との葛藤のなかで,遅刻・欠席かかさみ,荒んでゆくのを眼の当たりにした。その中で,Mをできるだけありのままに受け入れることができるようになっていったことや,毎日メモでコミニュケーションを行ったことが,Mとの間に信頼の絆をつくる基盤になったと思われる。筆者との関わりを通じて,自分を受け入れる存在に気付いたことで,Mは自立への道を歩みだしたように思われた。
著者
春日 敦子 青柳 康夫
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.309-318, 2005-08
被引用文献数
1

干し椎茸の水戻し汁の, 料理への利用の是非を検討する為, 3通りの水戻し方法を試みた。水戻し方法「P」は, 230分水戻しを行った。水戻し方法「Q」は始めに30分間水戻しを行い, その水戻し汁は捨て, 等量の新たな水を加え, 更に200分水戻しを行った。水戻し方法「R」は水戻し時間以外は「Q」と同様の方法であり, 一度目の水戻し時間は90分, 2度目の水戻し時間は140分であった。3通りの水戻し方法にて, 無機質, 遊離アミノ酸, 5'-ヌクレオチド, 有機酸含量の分析, 及び官能検査を行った。これらの結果を基に, 干し椎茸の水戻しは, 水戻し90分後水戻し汁を一旦捨て, 新しい水を加え, 干し椎茸中心部の堅い部分が柔らかくなるまで更に水戻しを継続する, という新しい方法を提案したい。
著者
高田 賢一
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、20世紀アメリカ児童文学における子ども像と自然環境意識の変容の歴史を解明することである。そこから得られた結論の第1は、自然環境の破壊と公害の先進国であるアメリカは、児童文学の分野において人間と自然環境の調和を真剣に考える先進国でもあるということである。結論の第2は、子どもが社会改革の可能性を秘めた存在であるという点である。第3の結論は、20世紀アメリカ児童文学、特に動物物語における子ども像と環境意識の歴史的変遷を『オズの魔法使い』を始めとする主要な作品に即して解明することにより、アメリカの児童文学が未来の社会を担う子どもたちに対して、新たな自然観、さらに自然環境への対応方法を提示してきたことが明らかとなった。すなわち、自然は人間が支配することのできない他者であるとの認識を持つことの必要性である。第4の結論は、児童文学に焦点を絞ることにより、自然・環境意識の変遷、レイチェル・カーソンのいう「驚きの感覚」を持つ子どもと自然環境との関連の歴史的特質、そして児童文学作家たちの環境意識の変容を明らかにしたことである。つまり本研究は、子どもと自然環境の角度から考察したアメリカ研究なのである。今後の課題は、子どもと自然環境の関わりを重視する新たなアメリカ児童文学史の構想であり、児童文学と環境教育との結びつきを視野に入れた研究へと幅を広げる必要性ではないだろうか。今後、このような考えに基づき、さらに多くの作家・作品を対象とすれば、その研究は国内外の最先端の研究と位置づけることが可能になると思われる。
著者
柳町 智治 岡田 みさを
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

人々のインタラクションは、日常の具体的な実践の文脈に埋め込まれている。そして、そうした文脈には発話や発話者だけでなく、聞き手、非言語、人工物といった様々なリソースが存在し、それらが人々のインタラクションにおける一つ一つの発話順番の積み重なりに深く関わっている。本研究では、こうした視点から多くの自然会話の事例を分析していくことを通して、日本語の使用と学習の問題を再考し議論していった。研究の目的としては、(a)日本語を母語あるいは第二言語とする者のワークプレースおける自然会話を、微視的かつボトムアップに記録し記述し、(b)こうした相互行為実践の具体的場面の事例的研究を蓄積し、最終的に日本語教育における学習や教授に関する提言を行うことであった。具体的成果として、さまざまなワークプレース(大学の実験室やアルバイト先の飲食店やボクシングジム)におけるデータの分析から、(1)彼らが会話への参加の微妙な調整を通して「参加」を組織化している様子、(2)聞き手、非言語、人工物といった様々なリソースを通してインタラクションがマルチモダルに組織化されている様子、(3)参加者による「職業的/専門的な見方」、つまり、「ある社会グループに特有の興味関心に応じる、社会的に組織されたものの見方や理解の仕方」が形成され志向され、また理解される様子、さらに、(4)人々は純粋な個体としてそこにいるのではなく、むしろ、周囲の人、モノ、テクノロジーとの布置連関のあり方を通して我々の前に立ち現れており、彼らはそうしたリソースやネットワークへのアクセスのあり方そのものであること、を明らかにした。
著者
米倉 迪夫 奥平 俊六 高見沢 明雄 木村 三郎 早川 聞多 林 進
出版者
東京国立文化財研究所
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1987

1.美術史研究用画像処理パッケージソフトの開発本研究で導入した画像処理システム(NEXUS6810)をパーソナルコンピュータ(NEC9801VM)より制御するソフト。NEXUS6810のもつコマンド群に習熟し、美術史研究に必要なソフトの機能を協議、画像処理の実験を重ね、ソフトの仕用案を作成した。プログラミングは、専門のソフト開発業者に依頼した。コンピュータのハード面に詳しくない美術史研究者が、研究支援の道具として画像処理技術を応用できるよう、主として次の4点に注意を払った。1)操作が手軽であること。2)画像ファイルの管理がすぐれていること。3)グラフィック及び画像処理機能が充実していること。4)研究者が手直しできる高級言語を使用していること。2.画像処理技術を応用した美術史研究の実例尾形光琳筆紅白梅図屏風(MOA美術館蔵)における制作過程と原状のシミュレーション3.画像データベース(dBASEIIIPLUSを使用)の試作文字型データベースに蓄積された文字情報とNEXUS側の画像情報とをリンクさせ、画像ファイルの検索・表示を可能にした。4.公開シンポジウムの開催本研究テーマのもとで二度の公開シンポジウムを開催し、美術史研究における画像処理技術の応用について活発な議論があった。1)第1回(10月25日) 於奈良・大和文華館西日本の美術史研究者を中心に約40名が参加。2)第2回(3月9日) 於東京国立文化財研究所。東日本の美術史研究者を中心に約60名が参加。
著者
川合 研兒 鄭 星珠
出版者
高知大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

これまでの一連の研究で、Aeromonas hydrophila A-3500株を液体培地で培養したのち塩類溶液で飢餓させた菌は、コイなどに対する病原性が培養菌よりも高いことを明らかにしてきた。本研究では、まずこれらの菌の病原性の違いをフナでも確認したのち、病原性に関与すると考えられる菌の生物学的性状を両菌で調べた。その結果、フナの皮膚に対する付着性、体表粘液・血清の殺菌性に対する抵抗性、および頭腎マクロファージの貪食に対する抵抗性がいずれも飢餓菌のほうが高く、このような生物活性の高さが飢餓菌の高い病原性を裏付けるものと推定した。培養菌、飢餓菌および感染魚から回収した菌から外膜タンパク(OMP)を抽出し、SDS-PAGEで比較したところ、36および43kDaのOMPが共通に認められた。そこで、これらの抽出したOMPをそれぞれキンギョに注射して免疫したのち感染試験を行ったところ、いずれの免疫魚も非免疫魚より高い生存率を示し、共通のOMPには感染防御抗原性があると推定された。つぎに、各地で異なった魚種から分離されたA.hydrophila7株およびA.hydrophilaと近縁種のAeromonas veronii biotyoe sobria T30株、Aeromonas jandaei B2株およびAeromonas sp.T8株を用い、抗A-3500株血清を用いたSDS-PAGE/ウェスタンブロットおよび菌体凝集反応を行って、抗原の比較を行った。その結果、凝集反応ではA.hydrophila株間および近縁種との間で、凝集価が大きく異なり血清型が異なることが示された。しかし、ウェスタンブロットではA.hydrophilaの菌株間ではほとんど差異がないが、近縁種との間ではパターンに大きな差異が認められた。これらのことから、本菌の飢餓菌と培養菌との間に認められる36および43kDaのOMPは、病原性にはあまり関与しないが、本種における共通の感染防御抗原である可能性が強いと考えられる。