著者
片岡 樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.623-639, 2021

<p>本稿は、愛媛県菊間町(今治市)の牛鬼の事例から、神と妖怪との区分を再検討することを試みる。菊間の牛鬼は、地域の祭礼に氏子が出す練り物であり、伝説によればそれは妖怪に起源をもつものとされている。牛鬼は祭祀対象ではなく、あくまで神輿行列を先導する露払い役として位置づけられているが、実際の祭礼の場では、神輿を先導する場面が非常に限られているため、牛鬼の意義は単なる露払い機能だけでは説明が困難である。祭礼の場における牛鬼の取り扱いを見ることで明らかになるのは、牛鬼が公式には祭祀対象とはされていないにもかかわらず、実際には神に類似した属性が期待され、神輿と同様の行動をとる局面がしばしば認められることである。また、祭礼に牛鬼を出す理由としては、神輿の露払い機能以上に、牛鬼を出さないことによってもたらされうる災厄へのおそれが重視されている。つまり牛鬼はマイナスをゼロにすることが期待されているのであり、その意味では神に似た属性を事実上もっているといえる。これまでの妖怪論においては、祀られるプラス価の提供者を神、祀られざるマイナス価の提供者を妖怪とする区分が提唱されてきたが、ここからは、事実上プラス価を提供していながら、公には祀られていない存在が脱落することになる。牛鬼の事例が明らかにするのは、こうした「神様未満」ともいうべき、神と妖怪の中間形態への分析語彙を豊かにしていくことの重要性である。</p>
著者
西本 裕輝 Nishimoto Hiroki
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.19, pp.67-82, 2007-03

全国的に少人数学級化の動きが加速している。それは学級規模が小さければ小さいほど教育効果は高まるとする仮説に基づいていると言える。しかしながら、こうした仮説を支持する研究データはほとんどない。そうしたことから本研究では校長・教員を対象とした全国調査の結果から、学級規模と教育効果の関係について検討を行った。分析から、学級規模が小さくなるほど教育効果は高まるという結果が得られた。これは校長調査の結果も教員調査の結果も同様である。このことから、少なくとも校長や教員の意識の上では、少人数教育の効果はあると結論づけることができる。ただし、この結果からただちに「少人数学級化によって教育効果は高まる」「学級規模が小さいほど教育効果は高まる」と結論づけるわけにはいかない。今後行う児童生徒調査の結果も踏まえて、慎重に結論を出す必要がある。
著者
高橋 尚子
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1436, pp.102-104, 2008-04-07

3月9日の名古屋国際女子マラソンで27位という結果に終わり、日本代表として北京五輪に出る夢はかないませんでした。それまで後悔なく過ごしてきたし、練習もやれるだけやった。こういう結果に終わったのは、やっぱりほかの選手の方が力があったということでしょう。これが私の今の実力だと思っています。
著者
小泉 恭子
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
no.78, pp.61-80, 2011-01-31

The purpose of this paper is to examine the mediated musical culture through the keywords of "emotiveness", "ritualizaion" and "symbolization" as the characteristics of media extracted from the symposium 2 on July 4^<th>, 2010. This paper is based on my fieldwork through observations and interviews with middle-aged and elderly male guests of folksong pubs [foku sakaba] and gig venues in Kyushu, Kansai, Aichi and Tokyo areas since 2007. I focus on elder amateur guitarists because baby boomers [dankai sedai] reached to 60 years old, at the retirement age from regular companies in Japan, in 2007 and they started coming back to their interests of their younger days, which singing folksongs to their own guitar accompaniment [hikigatari]. This paper on the folksong community presents the changing role of music bound to the specific generation in the process of generalization. It is revealed that the folksong community in larger city (Fukuoka City) tends to be pastime. In contrast, in the folksong community in smaller cities (Saga and Imari City), folksong are used as a trigger to vitalize the local communities as music is the bond between the parents' and children's generations. In the previous fieldwork on Japanese high school pupils, I found the tripartite layer of categories in popular music-personal music, common music and standard. Therefore, in this paper, how middle-aged male amateur guitarists pass their generation's music to the next generation as well as how they sympathize with each other through folksongs is investigated. It is found that the crossroad of the woof (contemporaneity) and warp (succession) of Japanese folksong creates a new category of popular music such as 'empathy music' or 'entrustment music'. Through this new category, the parents' generation entrusts their passion of youth to children's generation.
著者
飯島 敏文
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-10, 2014-09

本研究の最終目的は「『郷土教育の現代化』をめざした郷土教育モデルの構築」であり,郷土教育モデルの構築にとって必要な諸ファクターを見いだし,研究テーマをそれらファクターによって焦点化して記述し,それらファクターがいかに機能するかを解明することは研究の一段階である。これまでは主として学校教育における「授業」のレベルで郷土教育を考察してきたが,それ以前の子どもの人間形成空間として「自己」や「家庭」の考察を省くことはできない。本稿においては「家庭」が郷土教育にとってどのような意義を持つのか,また家庭教育が果たす役割は何かを明らかにすることとする。筆者は身近な地域に存在しあるいは生起するあらゆる事物や事象が学習材となり得るという仮説を持っており,さらに日常生活におけるあらゆる経験が教育的意義を持つと考えている。成長期の子どもにとって学習と無縁の経験はないのである。この経験の特定の側面を評価し,サポートするタイミングを見計らうことは家庭や学校における指導者の役割である。本稿では日常生活における2つの局面において,経験の教育的意義を考察した。一つは奈良市界隈の寺社への子どもの興味関心から生じた寺巡りが表現を伴った活動として認知された事例である。この対象は奈良市近郊の児童にとっては地域学習に位置づけられるものであり,小学校中学年の地域史の学習に位置づけられ,小学校高学年以上の子どもたちにとっては日本史学習あるいは日本古代史もしくは考古学の対象となり得るものだからである。学習者の発達段階に応じて必要な相貌を見せてくれる学習材というものは実に貴重である。その対象を学ぶ児童の活動や表現物を分析することによって,身近な地域の歴史を学ぶ際に獲得可能な諸知識と諸能力,諸態度を明らかにすることとしたい。二つ目は子どもが日常生活の中で直面した切実な問題に対応すべく調べ,考え,考察する事例である。教科学習ではなかなか機会を得にくい「いのち」に関わる経験を取り上げた。筆者が研究仮説として考えていることは,学習主体にとって身近な地域から学習材を見いだし身近な地域で学習活動を実現することが,個性的な学びを保証するのみでなく地域的な特殊の学習が個別具体の学習にとどまらず諸領域の学習において普遍的な有効性をもつものであるという見解である。身近な地域にある事象や事物を対象とした学習は直接的かつ具体的であり,現代の子どもが日常的に得ている間接的な経験とは質が異なると筆者は考える。ペーパー上に記述可能な「知識」なるものは間接的な経験のみによって獲得されうるものであろう。その中には多数の事項のみではなく広く知られているような「定型的な論理」すら含まれる。記憶の対象として「論理」が意識されるようになると学習主体にとって価値ある学びは実現されなくなる。社会的な通説を反復記述するだけの人材を育てるだけでは教育の社会的意義も希薄にならざるを得ないであろう。本来は,学習者にとって身近な空間における活動が深化してのち,空間的・時間的に拡大され,対象を観察しあるいは対象を考察し,さらには観察内容・考察内容を言語表現する活動のプロセスの中に多様な教育的契機が存在していると考えている。一般的・普遍的な内容の学習はその発展の過程において実現するものであろう。本稿では,特殊の事例に関わる学習活動において見いだされた教育的諸契機が,より普遍的な教育モデルとして提案可能かどうかを提案するための検証評価をおこなっている。A construction by using only a ruler without scale and a compass is very interesting. There have been a lot of construction problems from ancient Greece era. In 1796, C. F. Gauss discovered how to construct a regular heptadecagon. His idea had joined to the Galois theory. Now, almost books introduce the construction of a regular heptadecagon by using the Galois theory. In this paper, we study how to construct a regular heptadecagon without using the word "Galois theory".
著者
岩間 文雄
出版者
関西福祉大学社会福祉学部研究会
雑誌
関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.11-18, 2015-03

ソーシャルワークは,人と環境の交互作用に働きかけ,生活上の問題を抱えるクライエントの状況をよりよく改善する手助けを目的とした専門職の援助実践である.その具体的展開にあたって,効果的・合理的に援助を展開する上で,ソーシャルワークの援助展開に関する理論的枠組みは,実践者にとって欠かすことができない.例えば,登山者が目的地にたどり着くという目的を達成するために方位が記された地図が欠かせないように,プロセスについての理論的枠組みは,ソーシャルワーカーとクライエントの協働によるソーシャルワークをどんな手順で展開し,各段階においてどのような内容の働きかけを行う必要があるのか検討するための思考の基盤を提供してくれるものである.しかし,ソーシャルワーク実践に関する文献のレビューを通じて分かることは,ソーシャルワークの展開過程の枠組みについての解説は,大枠において本質的な特徴は共通しているものの,細部や段階の区分については研究者ごとに多くの相違点があるという現状である.そうした文献によって異なるソーシャルワーク展開過程の枠組みについて検討し,整理を試みる.本論では,ソーシャルワークの展開過程の理論的枠組に着目し,文献研究を通じてその性質と構成要素について検討することを目的とする.以下,Ⅱ.では,ソーシャルワークの展開過程を検討するうえで前提となる,ジェネラリスト・ソーシャルワークの成立背景と概念について整理する.Ⅲ.ではソーシャルワークの展開過程の特徴と構成要素について文献ごとの解説を比較し,それぞれで共通する点と異なる点を明確にしていく.Ⅳ.では,ソーシャルワークの展開過程の理論的枠組みにおけるバリエーションについて分析を深める上での課題について述べる.
著者
大谷 京子
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.129, pp.1-13, 2013-09-30

ソーシャルワークにおけるアセスメント概念を, 先行研究を通して整理した. アセスメントは, ソーシャルワーカー主導でクライエントの問題を把握する情報収集と分析のプロセスとされていた. しかし徐々に, 問題に焦点を絞るのではなく, クライエントの置かれている状況を, クライエントと共に理解していくことを指すように変化してきている. また, アセスメントプロセスについてモデルを提示した. すなわち, ソーシャルワークプロセスの中に, 情報収集 → アセスメントという段階があるのではなく, ソーシャルワークの全プロセスを通じて, アセスメント/リアセスメントという循環がクライエントとの協働でなされているというものである.以上を踏まえて, 研修プログラム開発を目指したアセスメントプロセスの操作定義を, 「クライエントとワーカー, そして周囲の状況を, ワーカーとクライエント双方が理解するためになされる, 情報収集と分析のプロセスであり, ワーカーは専門的価値に基づき知識を導出し, クライエントは固有の経験知に基づき, 協働して目の前の現実を解釈し共有するプロセスである」 とした.ニーズ主導アセスメントプロセスを, 交換モデルで展開するための, ソーシャルワーカーのスキル向上を目指すプログラム開発のために, さらにアセスメントスキルを明らかにすることが今後の課題である.
著者
西井 智美
出版者
服飾文化学会
雑誌
服飾文化学会誌 (ISSN:1346681X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.31-40, 2010
著者
越水 麻子 荒木 佐智子 鷲谷 いづみ 日置 佳之 田中 隆 長田 光世
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.189-200, 1998-01-20
参考文献数
19
被引用文献数
17

国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)内の谷戸の放棄水田跡地において土壌シードバンクを調査した.谷戸谷底面の植生を代表するヨシ群落,チゴザサ群落,およびハンノキ群落から土壌(各0.1m^3,総計0.3m^3)を採取し,水分を一定に保つことのできる実験槽にまきだし,出現する実生の種,量および発芽季節を調べた.出現した実生を定期的に同定して抜き取る出現実生調査法と,実生をそのまま生育させて成立する植生を調査する成立植生調査法とを併行して実施し,5月中旬から12月下旬までの間に,前者では25種,合計6824個体,後者では26種,合計2210個体の種子植物を確認した.出現種の大部分は低湿地に特有の種であり,特に多くの実生が得られたのは,ホタルイ,アゼガヤツリ(あるいはカワラスガナ),チゴザサ,タネツケバナであった.また成立植生調査法で確認された個体数は,出現実生調査法の半数に過ぎないものの,ほぼ全ての種を確認することができた.調査地の土壌シードバンクは,植生復元のための種子材料として有効であること,また,土壌水分を一定に保てば,土壌をまきだしてから数ヵ月後に成立した植生を調べるだけで土壌シードバンクの種組成を把握できることが明らかになった.
著者
向後 雄二
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.115, pp.25-32,a1, 1985

本論文では, 材料非線形性を考慮したBiot圧密方程式を有限要素法を用いて解く場合の解法手順として, Newton-Raphson法および修正Newton-Raphson法に基づく解法手順を示した。また, 上記解法手順を用いて, Wealdclayの理想的な三軸圧縮試験のシミュレーションを行い, 剪断速度の違いによる剪断性の変化を予測し, 圧密を考慮した解析の有効性を示した。
著者
高畑 紳一 萬谷 智之 馬屋原 容子 倉本 恭成 山口 博之 森岡 壮充
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.525-529, 1996-08-01

今回、我々は mazindol 投与後に交流分析的アプローチが奏効した過食症の1例を経験したので報告する。症例は20歳、女性で、18歳時にダイエットを開始し、過食、下剤乱用、抑うつ気分を主訴に当科に来院した。神経性過食症(DSM-III-R)と診断され、当科入院となった。向精神薬による薬物療法、交流分析、行動療法を施行したが、治療に抵抗し、症状が増悪した。しかし、食欲抑制効果のある mazindol のみが過食行動を抑制した。両親とボーイフレンドの協力を得て交流分析を学習し、抑うつ気分などの症状は徐々に改善した。交流分析的見地から本例の発症機序や病態に関して考察し、mazindol の食欲抑制効果が過食症の治療において貢献しうることが示唆された。
著者
明石 欽司
出版者
慶應義塾大学
雑誌
法學研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.49-80, 1998-07-28

論説序論第一章 ウェストファリア条約と「勢力均衡」第二章 一七世紀後半の諸条約におけるウェストファリア条約の影響と「勢力均衡」 第一節 ブレダ条約・アーヘン条約 第二節 ナイメーヘン条約 第三節 ライスヴァイク条約第三章 ユトレヒト条約におけるウェストファリア条約の影響と「勢力均衡」 第一節 ウェストファリア条約との関連性 第二節 ユトレヒト条約における「勢力均衡」 第三節 欧州国際社会観の転換第四章 ユトレヒト条約後の諸条約における「勢力均衡」結論
著者
大原 眞弓
出版者
京都女子大学史学会
雑誌
史窓 (ISSN:03868931)
巻号頁・発行日
no.78, pp.93-110, 2021-03-06