著者
磯部 美良 佐藤 正二 佐藤 容子 岡安 孝弘
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.105-115, 2006-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
4

本研究の目的は、児童の社会的スキルと問題行動を測定するための教師評定尺度を作成することであった。公立小学校65学級の担任教師に対して、担任する学級の全児童(小学校1〜6年生、計1,991名)の行動評定を依頼した。その結果、社会的スキル領域では5因子25項目(働きかけ・学業・自己コントロール・仲間強化・規律性)、問題行動領域では2因子12項目(外面化行動問題・内面化行動問題)が見いだされた。また、良好な内的整合性と構成概念妥当性が確認された。最後に、社会的スキルの性差や学年差、社会的スキル訓練の効果査定の測度としての有用性が論じられた。
著者
横山 広樹 石垣 智也 尾川 達也 知花 朝恒 後藤 悠太 柳迫 哲也
出版者
一般社団法人 日本地域理学療法学会
雑誌
地域理学療法学 (ISSN:27580318)
巻号頁・発行日
pp.JJCCPT22012, (Released:2023-07-14)
参考文献数
23

【目的】訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)と通所リハビリテーション(以下,通所リハ)の併用が,主介護者の介護負担感にどのように影響するのか事例考察すること.【方法】退院後に介護負担感が高かった主介護者と事例に対して,訪問リハと通所リハによる介入を行った.訪問リハでは主介護者に介護指導を中心に実施し,通所リハでは事例に運動療法と動作練習を実施した.【結果】介入2ヶ月後,事例の動作能力の改善と共に主介護者の介護負担感は軽減したが,介護肯定感の低下を認めた.介入4ヶ月後には夜間の排泄に伴う介護負担感が生じたため,ショートステイなどリハ以外の対応を検討した.【結論】通所リハでは動作能力の向上を目的とした介入を行い,訪問リハでは主介護者に通所リハで獲得した動作能力を生かす介護指導を行うことで,介護負担感の軽減につながる可能性がある.また,リハで対応できる介護負担感か否かを評価し,難しい場合には柔軟にサービス内容を見直すことが重要と考えられた.
著者
中野 勝章 渡辺 魁 中沢 実
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.1164-1172, 2023-07-15

近年,カメラ動画像から画像認識技術を用いて道路交通量調査を行う研究が活発になっている.交差点におけるカメラ画像を用いた交通量調査では,単路環境に比べてカメラでとらえるべき範囲が広いため,従来の固定型カメラ(CCTVカメラ)ではなく,可搬性を有する携帯型のカメラを用いることで交差点内の複数位置に設置することができる.複数位置から最適なカメラ設置位置を決めることで計測精度の向上が見込める.しかしながら,実際問題として交差点内に設置した携帯型カメラに対して,現地で最適なカメラ設置位置を評価する基準がなく,人手による経験的または直感的なカメラ配置となっている.そこで,本研究では,短時間のカメラ動画像から交差点における車両の流入口の位置関係に基づき,計測精度に影響を与える指標を算出し,それを利用することで最適なカメラ設置基準の判定を行う手法を提案する.さらに,提案指標とOpenDataCamのカウンターライン機能を用いた計測精度との比較を実地検証を行い,提案した指標の妥当性を評価した.
著者
植田 康次 青木 明 岡本 誉士典 神野 透人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第44回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-145, 2017 (Released:2018-03-29)

必須微量元素であるとともに毒性元素でもあるセレン(Se)の細胞毒性の一旦は活性酸素種(ROS)によるもので、こうした酸化ストレスに対し細胞は生体防御因子グルタチオン(GSH)の増産で応じる。一方、GSHによるSeの代謝過程で生成するセレンジグルタチオン(GSSeSG)には細胞障害性が知られており、GSHの代謝動態がSe毒性に及ぼす影響は単純ではない。われわれは、過剰なSeに対する生体防御反応として誘導されるGSH代謝動態の亢進がSeの細胞障害性を増強してしまう可能性を検証した。 亜セレン酸(H2SeO3)がMCF-7細胞の生育を阻害しない濃度(5 µM)において、GSSeSGはROSに起因する8-オキソデオキシグアノシンを増加させ、アポトーシスを誘導した。同濃度域ではH2SeO3はほとんど細胞内に取り込まれないにもかかわらず、GSSeSGはSeを蓄積させることがICP-MSを用いた元素分析により明らかになった。GSSeSGの取り込み経路としてシスチン輸送体であるxCTの関与を想定しxCT阻害剤スルファサラジンを前処理したところ、GSSeSGによる細胞内Se増加量が50%程度減少した。xCTに対するsiRNAを用いた発現抑制によってもGSSeSGによるSe取り込みは40%程度にまで低下した。GSHからシスチンへの分解反応を開始するγ-グルタミン酸転移酵素(γGT)の特異的阻害剤によりSe取り込みが減少した。 Seの毒性から生体を防御するために発動されたGSHの代謝動態亢進が、GSH合成の律速段階であるシステインの取り込み増加にともない、よりいっそうのSeを細胞内に蓄積させるという望ましくないフィードバックループを形成してしまう可能性が示された。GSHはSe以外にも様々な金属と相互作用することが知られており、今回明らかになった機序が各種金属の毒性増強にも加担していることが示唆される。
著者
田中紀峰著
出版者
サイゾー (発売)
巻号頁・発行日
2015
著者
若林 敬二
出版者
国立がんセンター
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1985

亜硝酸処理により直接変異原性を示す食品は、胃癌の発生に関与している可能性がある。各種野菜及び漬物を亜硝酸処理すると、サルモネラ菌TA100に対する直接変異原性が生ずる。そこで、日本人が頻繁に摂取している白菜に含まれる、亜硝酸処理により変異原性を示す変異原前駆体の分離精製を行った。その結果、4-メトキシインドール-3-アルデヒド(【I】)及び4-メトキシインドール-3-アセトニトリル(【II】)を変異原前駆体として単離した。(【I】)及び(【II】)の亜硝酸処理により生ずる変異原性は、変異原前駆体1mg当たりTA100に対して、-S9uixで、各々156,900及び31,800復帰コロニーであった。(【I】)及び(【II】)は、白菜300gより、各々700μg及び60μg得られ、白菜全体の変異原性の16%及び0.3%を説明することができた。尚白菜中の変異原前駆体として既に報告されているインドール-3-アセトニトリルも、白菜300gより80μg得られた。白菜塩漬け醸成期間中の、亜硝酸処理により生ずる変異原性の経時変化を調べた。その結果、変異原性は生の白菜に最も強く認められ、10日目の塩漬け及び漬け汁には生の白菜の変異原性の33%及び31%に相当する活性が認められた。よって、亜硝酸処理により生ずる白菜塩漬けの変異原性は、醸成期間中に変異原前駆体が生成するためではなく、生の白菜に存在するインドール化合物等の変異原前駆体によるものと考えられる。インドール化合物は環境中に普遍的に存在しており、そのニトロリ化の反応は速い。した員って、亜硝酸存在下におけるインドール化合物の発癌性、特に胃癌誘発の有無を調べることは重要である。
著者
華表 宏有
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.193-211, 1989-06-01 (Released:2017-04-11)

本研究は, さきに日本カトリック医師会(阿武保郎会長)に設置された「家族計画と性に関する諸問題」専門委員会が, 1988年3月から4月にかけて実施した「性のあり方と生命倫理等に関する意見調査」の回答の中から, 特に受胎調節, NFP(Natural Family Planning)および医師としての人工妊娠中絶とのかかわり方について設問した3問を取り上げて, 詳しく解析したものである. 有効回答229人の結果について, 性, 年令, 受洗年令, 地域, 専攻分野ならびに過去3年間の会費納入の有無の6つの背景要因を取り上げて, 重回帰分析を行った. その結果, 3問とも年令によって意見が異なっているほか, 受胎調節, NFPについては大司教管区別に地域差のあることが把握された. 以上の知見を説明するために, 5つの作業仮説(A-E)を想定し, さらに関連した生命倫理ないし医学倫理上の学際的研究と, 医師としての生涯研修の必要性について考察した.
著者
武野 仲勝
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密機械 (ISSN:03743543)
巻号頁・発行日
vol.27, no.317, pp.394-398, 1961-06-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
1
著者
高橋 舞
出版者
文化資源学会
雑誌
文化資源学 (ISSN:18807232)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.5-23, 2023 (Released:2023-07-14)
参考文献数
28

1980年代になると、ニュー・ミュージコロジーによって音楽学の研究テーマは多様化され、これまで作曲家や作品の影に隠れていた「演奏」も研究対象となる。それと平行して、1990年代頃から作曲家による楽譜そのものを「作品」と考える「作品観」が変化したことから、録音分析による演奏研究が発展した。特に2004年に設立された、録音の音楽学的研究を促進するための研究センターThe AHRC Research Centre for the History and Analysis of Recorded Music(CHARM)において、コンピュータ・ソフトウェアを用いた録音分析が活発に行われてきた。これまでの録音分析の成果から、演奏様式が20世紀前半に大きく変化することが認識されるようになった。1920年代までの初期の録音に残されている、急激な速度変化を特徴とする演奏様式こそは、18世紀末からのピアノ演奏理論書において受け継がれてきた「修辞学的演奏観」に基づいた「修辞学的演奏様式」である。一方で、1920年代以降の演奏様式の変遷については、見解が分かれている。また、これまでの録音分析は、作品の特定の構造に依存して行われることが多く、客観的な分析手法が開発されてきたとは言い難い。そこで本論文では、速度偏差と録音間速度相関に着目した、より客観的でかつ汎用性の高い分析手法を提案する。そして、その新たな手法をJ. S. バッハの《半音階的幻想曲とフーガ》BWV903と《平均律クラヴィーア曲集》第1巻第1番BWV846の前奏曲およびフーガの3作品の、1912年から2019年までの54種類の録音資料から計79種類の録音データに対して適用し、1920年代以降の演奏様式の変遷を検証した。その結果、1920年代以前は1930年代以降と比較すると、速度偏差が有意に大きく、「修辞学的演奏様式」であることが確認できた一方で、「修辞学的演奏様式」と類似した演奏形式は、1930年代から2010年代までほとんど常に見られ、選択可能なアプローチとして存在していたことが明らかになった。
著者
Tatsuya Iida Hajime Shinoda Rikiya Watanabe
出版者
The Biophysical Society of Japan
雑誌
Biophysics and Physicobiology (ISSN:21894779)
巻号頁・発行日
pp.e200031, (Released:2023-07-12)
被引用文献数
2

With the recent global outbreak of COVID-19, there is an urgent need to establish a versatile diagnostic method for viral infections. Gene amplification test or antigen test are widely used to diagnose viral infections; however, these methods generally have technical drawbacks either in terms of sensitivity, accuracy, or throughput. To address this issue, we recently developed an amplification-free digital RNA detection method (SATORI), which can identify and detect viral genes at the single-molecule level in approximately 9 min, satisfying almost all detection performance requirements for the diagnosis of viral infections. In addition, we also developed practical platforms for SATORI, such as an automated platform (opn-SATORI) and a low-cost compact fluorescence imaging system (COWFISH), with the aim of application in clinical settings. Our latest technologies can be inherently applied to diagnose a variety of RNA viral infections, such as COVID-19 and Influenza A/B, and therefore, we expect that SATORI will be established as a versatile platform for point-of-care testing of a wide range of infectious diseases, thus contributing to the prevention of future epidemics. This article is an extended version of the Japanese article published in the SEIBUTSU BUTSURI Vol. 63, p. 115-118 (2023).
著者
武田 誠 鬼頭 勇斗 小嶋 俊輝 野々部 竜也 久野 智弘 松尾 直規
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_1441-I_1446, 2015 (Released:2016-01-29)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

Recently, the serious inundation damage due to a local heavy rain has increased. This study treated the inundation damage due to heavy rain in Kasugai city. The characteristic of the inundation situation and the effect of raising of the building for the countermeasures of water disaster were shown clearly. After that, a simple inundation analysis without the sewer system model was carried out, and it was shown that the actual inundated area and the area with high inundation water depth of analysis results are in agreement. Moreover, the inundation analysis method in consideration of the origin was developed by using the T-SAS by Sayama et.al. The rain water behavior was analyzed by this analysis method. Therefore, the information of rain water flow for inundation control was obtained.
著者
大野 真美子 杉田 智子 石川 智恵子 住吉 俊亮 堀北 哲也
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.181-185, 2021-03-20 (Released:2021-04-20)
参考文献数
16

本研究では,生存子牛の肋骨骨折の発生状況及び分娩状況との関係を調査した.神奈川県内酪農家13戸の子牛101頭(自然分娩68頭,介助分娩33頭)を対象とし,胸部触診による肋骨骨折の評価及び分娩状況の聞き取り調査を実施した.また,肋骨骨折を認めた7頭の胸部CT検査を行った.肋骨骨折の発生率は全体で6.9%であった.肋骨骨折の発生率は介助分娩が自然分娩より高かった.また,肋骨骨折した子牛は出生後に異常を示す割合が高かった.CT検査により8.9±4.4本/頭の骨折を確認し,左右ともに第4~7肋骨の骨折が多い傾向にあった.本研究より,肋骨骨折は介助分娩時の不適切な牽引などが原因と考えられた.また,分娩を介助する畜主への適切な介助方法に関する情報提供が必要である.