著者
本田 周二
出版者
東洋大学
巻号頁・発行日
2014

元資料の権利情報 : CC BY-NC-ND
著者
石川 昌司
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.289-290, 2018-12-06 (Released:2019-01-08)
参考文献数
7
被引用文献数
2

高校物理では,音波などの縦波を,縦波←→横波変換に基づく変位波で扱うことが多いが,そのことにより音の干渉などの問題では深刻な不都合を生じることがある。この問題の解決策として「縦ベクトル(仮称)」なる図法を工夫してみた。
著者
木谷 俊介
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.650-655, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
30
著者
遠藤 大輔 及川 哲郎 花輪 壽彦 小田口 浩
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.108-114, 2020 (Released:2020-12-07)
参考文献数
50

北里大学東洋医学総合研究所において初診時に四逆散(四逆散料または四逆散エキス)を処方された患者86名のうち,有効であったと判断した41症例について後方視的に診療録の調査を行った。古典では胸脇苦満と腹直筋攣急の腹診所見や四肢の冷えの存在が重要視されている。我々の検討においても,胸脇苦満は90%以上,腹直筋攣急は60%以上の患者に認め,四逆散処方の根拠として重要視されていることが確認できた。一方で冷えの存在については,過半数の患者が自覚的な冷えを訴えているものの,他覚的所見として担当医が冷えの存在を診療録に記載しているのは約20%に過ぎなかった。従来,処方名にある四肢の冷えが重要と考えられてきたが,今回の検討では診察上冷えの所見を認めなくとも本方は応用されていることが明らかとなった。
著者
河合 潤子
出版者
椙山女学園大学
雑誌
椙山女学園大学研究論集 : 人文科学篇・社会科学篇・自然科学篇 = Journal of Sugiyama Jogakuen University. Humanities, Social sciences, Natural sciences (ISSN:24369632)
巻号頁・発行日
no.54, pp.63-74, 2023-03-01

1日3食を食べる習慣は,鎌倉時代から始まり,江戸時代後期には定着したと言われる。しかし,1回の食事が整っているわけではなく餅2個や饅頭,粥などの軽食ですませているため,現代の3食とはかなりかけ離れている。小腹がすいたら食べるという軽食感覚であったと考えられる1)。江戸では,参勤交代による単身赴任の武士が外で飲食をする機会も増え,味噌をはじめ様々な調味料や文化が開発,発展していったとされている。 そこで,本研究では,一般的に家庭で作られていた伝統的な調味料である味噌の中でも,塩分含量が少なく甘味の強い「江戸甘味噌」に注目した。江戸甘味噌の特徴,調製方法,さらに当時作られていた料理を当時の書物から時代背景を加味して取り入れた。しかし,いろいろな方法が記されていたため,現代の家庭でも可能な方法で調整した。調整した江戸甘味噌はくせの無い香りや旨味があり,特に独特の甘みには腸内環境にも好影響をもたらすイソマルトースが含まれていた。今後,健康への取り組み,食文化の継承保持からも江戸甘味噌普及に向けた取り組みは重要と考える。
著者
今村 洋一
出版者
椙山女学園大学
雑誌
椙山女学園大学研究論集 : 人文科学篇・社会科学篇・自然科学篇 = Journal of Sugiyama Jogakuen University. Humanities, Social sciences, Natural sciences (ISSN:24369632)
巻号頁・発行日
no.54, pp.95-103, 2023-03-31

本稿は愛知県,岐阜県を対象とした拙稿[1][2]に続き,三重県を対象として,明治~昭和初期の統計から近代花街の一端を明らかにしようというものである。なお花街とは,料理屋(料亭),待合茶屋,芸妓置屋が集積する遊興空間を指す。芸妓置屋に身を置く芸妓が,取次をおこなう検番の差配により,料亭や待合茶屋に出向き,芸を披露し宴を盛り上げたわけだが,こういった宴をお座敷と呼んだ。 かつては,全国津々浦々600か所程度はあったとされる花街だが,現在は30~40程度にまで減じている。本稿の対象である三重県内に限ってみれば,花街は現在,桑名しか残っておらず,三重県内にかつてあった花街について窺い知ることは容易でない。そこで本研究では,国会図書館に所蔵されている明治~昭和初期の『三重県統計書』(三重県発行)に掲載されている花街関連統計データを整理し,近代における三重県内の花街の盛衰を明らかにすることを目的としている。
著者
真部 孝明 大友 譲二
出版者
japan association of food preservation scientists
雑誌
食品と低温 (ISSN:02851385)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.113-117, 1984-11-20 (Released:2011-08-17)
参考文献数
5
被引用文献数
1

シュガータイプのスイートコーン “ハニー・バンタム・早生200” の性状と貯蔵に伴う品質変化を調べたところ, 次のような結果を得た。(1) 穂の各部位ごとの粒の性状を調べたところ, 頂部, 中央部および基部の3部位で, デンプン含量に差はなかったが, 水分は頂部に向う程多く, AISも頂部が多かった。1粒重は基部が最も大きく, ついで中央部であったが両部部位の差は余りなく, 頂部は両者の約1/2で小さかった。全糖は中央部が多かった。(2) 20個体を用いて, 水分, 全糖およびデンプン含量を測定し, これら3者間の相関を検定したところ, お互の間に有意の相関が認められなかった。(3) 午前6時, 12時および午後6時の3回に分けて収穫し, 全糖デンプン, AIS, 水分や硬度などを分析したところ, 収穫時間による差はほとんどなかった。(4) 貯蔵温度が低いと貯蔵中におけるデンプンの増加や全糖の減少は少なかったが, 室温 (25-30℃) でも1日後1%, 2日で1.5%程度の全糖の減少しかなく, 本品種は収穫後品質が劣化しにくい品種であることが分った。
著者
渡邉 玲子
出版者
国立音楽大学大学院
雑誌
音楽研究 : 大学院研究年報 = Ongaku Kenkyu : Journal of Graduate School, Kunitachi College of Music (ISSN:02894807)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.255-268, 2023-03-31

本研究は、セノオ楽譜に含まれるフルート・レパートリーを考察したものである。これまで近現代の洋楽受容におけるフルートに関する先行研究は主として(1)演奏者、(2)日本人作曲家による作品、(3)教則本の出版、(4)楽器の輸入状況および製造会社の4つの方面から行われてきた。こうした角度から日本のフルート史について解明されつつあるものの、演奏者を育てる媒体としての楽譜に主眼を置いた研究は見当たらない。そこで、本稿では近現代の洋楽受容の中で最も人口に膾炙した楽譜として知られているセノオ楽譜を研究対象とすることで、国内の楽譜出版における最初期のフルート・レパートリーの考察を行った。研究対象のセノオ楽譜は、大正5(1916)年から昭和13(1938)年にかけて妹尾幸陽(1891-1961)が発行人を務める東京のセノオ音楽出版社から出版されたピース楽譜である。主として歌とピアノ、ヴァイオリンとピアノの作品が収録されており、その総数は800点を超える。セノオ楽譜に焦点をあてた先行研究は充実しているものの、フルートの関わる作品が存在している事実はこれまで解明されてこなかった。そこで、本稿では以下の方法で調査を行った。まず、セノオ楽譜において出版点数の多い上位2つの「セノオ楽譜〔声楽譜〕」と「セノオバイオリン楽譜」シリーズに焦点を絞り、本学図書館と東京藝術大学附属図書館、東京藝術大学音楽総合研究センターの3つの機関において計319点の楽譜を確認したところ、フルートが含まれる楽曲が7点見つかった。これらは内容から「フルート・オブリガート作品」と「フルート代用作品」の2つに分類することができた。前者に該当するグノーの《夜の調べ》は、セノオ楽譜において最も重版数が多く、演奏記録からも当時人気の高い作品であったことが窺える。《ミネトンカの湖畔》の重版数は3版に留まるものの、日本人歌手による録音も確認できている。どちらの楽曲もオブリガート・パートは技術的に難しくないが、表現の面で難しい部分が見受けられた。続いて後者に該当するのは、ショパンの《ポロネーズ『軍隊』》、《幻想即興樂中の歌調》、《ベルセーズ》の3曲と、チャイコフスキーの《怪談曲》、《流浪樂師の歌》の2曲である。ショパンの作品は《ノクターン》を中心にフルートとピアノの編成によって演奏頻度が高く、対してチャイコフスキーの作品はフルート・アンサンブルのレパートリーとして大変好まれている。どちらもフルーティストにとって馴染み深い作曲家だが、セノオ楽譜に収められた作品はいずれも現在演奏機会に恵まれたものとはいえない。そして楽曲の内容は、音域や奏法の面からフルートの現実的な奏法に寄り添っていないものも含まれており、技術的には易しいものから高難度も作品まで含まれていたことが分かった。これらの調査から、セノオ楽譜は多様な難易度のレパートリーを提供することでプロとアマチュアのどちらかに偏るのではなく、幅広い立場の人々が演奏できることを目指していた楽譜シリーズだと言えるだろう。また、最も重版数の多い楽譜にフルートがオブリガートとして関わっていたという事実から、「フルート・オブリガート作品」は日本人がフルートのイメージを形成する上で大切な役割を担っていたと推察できる。
著者
崔 銀姫 友永 雄吾
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、1950年代から2000年代までの凡そ半世紀にわたって日本で放送されたテレビのドキュメンタリー番組における「アイヌ」というエスニシティの言説と表象の考察を通して、日本の現代社会における他者性の構築と変容を考察したものである。特に、本研究は、過去約60年間のドキュメンタリーにおけるアイヌの表象と他者性に関わる変容を,言説的実践や意味の生成,権力的作用といった表象のシステムに注目しつつ、学際的な(メディア研究や歴史学,人類学,民族学等)視座を踏まえたカルチュラルスタディーズの研究方法を用いて、番組を分析・考察するものである.
著者
坂井 祐円
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間学部篇 = Research journal of Jin-Ai University, Faculty of Human Studies (ISSN:21853355)
巻号頁・発行日
no.21, pp.35-46, 2023-02-20

われわれはどこから来たのか? この問いかけは「魂」のあり方について示唆している.誕生の記憶についての物語は,この問いへの一つの指標になり得るのではないか.そして,ここには魂の癒しとしてのスピリチュアルケアを見出すことができるのではないか.こうした観点から,本稿では,誕生の記憶として分類される, 出生時記憶, 胎内記憶, 中間生記憶の語りについて,それぞれ事例を挙げながら考察していく. まず一般的な自分の由来を探るという意味で,身体の起源について遡って考えてみる.その上で,果たして身体が〈私〉なのか,〈私〉の本質はいわゆる「魂」なのではないのかという観点に立って,その起源を追求する.手がかりになるのが,幼児期健忘によって覚えているはずがない誕生の記憶である.とりわけ身体を持たない純粋な「魂」のみの記憶である中間生記憶の語りからは,現代の神話とも言える魂の起源を考えることができ,私たちの生きる意味を見出すことにも通じることを明らかにする.
著者
柴崎 修 加瀬 康弘
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.53, no.Supplement2, pp.s79-s84, 2010 (Released:2011-08-15)
参考文献数
1

本邦における外耳道局所への薬液投与方法は, 点耳液の滴下と軟膏剤の塗布に限られている。本研究では, 外耳道への的確で簡便な薬液投与方法として外耳スプレーの可能性を検討した。外耳へスプレーする器具は試作モデルを用いた。点耳液と外耳スプレーそれぞれについて, 円筒状の外耳モデルへの噴霧およびボランティアでの外耳への使用感についてのアンケートを行い, 比較検討した。その結果, 外耳スプレーは点耳液に比較して, 外耳道全周に薬液が噴霧されることが確認された。また, 使用感については, 圧迫感などの回答が得られたが, 利便性のメリットを上回る程の障害ではない点が確認できた。外耳スプレーは外耳への新たな薬液投与方法として, 本邦でも今後十分に臨床応用が検討されるべき手段であると考える。
著者
米地 文夫 大木 俊夫 秋山 政一
出版者
THE TOHOKU GEOGRAPHICAL ASSOCIATION
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.157-170, 1988-08-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
30

1888年7月15日の磐梯山噴火後1世紀の間にこの噴火に関して多くの論文が公にされたが, なお未解決の問題も残っている。著者らはその一つである噴火開始時の状況の解明を試みた。これまで知られていなかった資料の発見や目撃者の証言の検討によって次の結果を得た。1. 時刻: 噴火は1888年7月15日7:45a. m. に起こった。(Sekiya・Kikuchi 1890)。しかし多くの目撃者は8:00~8:10または8:30前後と証言している。検討の結果, 証言間の時刻の不一致は, 主として時法の混乱期にあったことによるものと推定された。1888年は, 1872年までの不定時法, 1873~1887年の定時法・地方時, 1888年以降の定時法・日本標準時という三種の時法・時刻の移行期であり, この地方では各時法・時刻の共存期にあったのである。2. 地点: 煙柱の噴出すなわち水蒸気爆発のあった地点は小磐梯山頂の西麓と銅沼付近とであることが, 噴火時に磐梯山麓の住民が撮影・描写した写真やスケッチから推定された。3. 噴煙高度: 最初に噴出した噴煙柱の高度は, これまで述べられていた1,200m程度という数値よりも更に小さく, スケッチや証言からわずか800mであったと推定される。この事実は, 守屋 (1980) の見解を裏付け, これを発展させた Yonechi (1987) の仮説, すなわち磐梯山の最初の水蒸気爆発自体はあまり大きくなく, 引き続いて起こった複数の, 時間間隙を持つ地すべり性の崩壊が大きかったのであるという考え方を支持している。
著者
金子 尚樹 西澤 英雄 藤本 潤一 七尾 大観 木村 康宏 大和田 玄 森村 太一
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.271-274, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)
参考文献数
8

低カリウム血症では近位尿細管でのアンモニア産生が増加するため,肝性脳症患者では高アンモニア血症の増悪因子となり得る。ただし,肝不全や門脈体循環シャントがないにもかかわらず低カリウム血症により高アンモニア血症をきたした報告例は非常にまれである。本症例は77歳の脂肪肝患者で,常用薬であった芍薬甘草湯の偽性アルドステロン症による低カリウム血症と,意識障害を伴う高アンモニア血症を認めたが,血清カリウム値の上昇に伴い高アンモニア血症と意識障害も改善した。①低カリウム血症による近位尿細管でのアンモニア産生増加や,②アルカローシスによるアンモニアの血中への移行増加,③慢性低カリウム血症による尿素合成能低下や④脂肪肝による尿素合成能低下によって高アンモニア血症をきたしたと考えられた。したがって,肝機能障害の程度にかかわらず,低カリウム血症と意識障害を認めた際は高アンモニア血症を鑑別する必要がある。
著者
板倉 七海 酒匂 一世 原田 利宣 橋本 唯子
雑誌
研究報告コンピュータグラフィックスとビジュアル情報学(CG) (ISSN:21888949)
巻号頁・発行日
vol.2016-CG-165, no.19, pp.1-6, 2016-11-02

本研究では絶滅したニホンオオカミをはじめとした 8 種の動物の頭蓋骨と剥製や写真上の頭部形状に現れる曲線の比較 ・ 分析を行った.次に,その結果に基づいて和歌山大学が所蔵するニホンオオカミの頭蓋骨から正確な頭部形状を推定した.さらに CG で頭部形状を 3D モデル化し,再現するとともにニホンオオカミの全身形状も CG 上で創成して,“歩く”,“走る” といったモーション付けを行い,展示のための検討を行っている.
著者
牧 俊夫 矢野 正行
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1035, pp.585-594, 1981-11-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

硫酸アルミニウムと塩化アルミニウムの水溶液及び消石灰乳液を種々の割合に混合することによって, 主にエットリンジャイト (6CaO・Al2O3・3SO3・32H2O) からなる白色のケーキを作製した. 次にそのケーキを500℃及び600℃で仮焼し, 粉砕して80-200メッシュの粒度をもつ試料を調製した. 2.9CaO・Al2O3l・4SO3または2.5CaO・Al2O3・1.2SO3の酸化物組成をもつ仮焼粉末は, 粒子強度とウランに対する捕集速度がかなり大きかった. すなわち U(VI) イオンの100ppmを主に[UO2(CO3)3]4-の形で含むアルカリ水溶液の50ml中に, それらの粉末の0.100gを2時間浸漬したとき, それらの試料は溶液中に存在するU(VI) イオンの80-100%を捕集した. 捕集したウランは60℃に保った5% NaHCO3溶液中に試料を1時間浸漬する方法で脱着させることができる.捕集前後の上記粉末のX線回折分析及び試料粉末を浸漬したときに起こる純水及び吸着液のpHの変化から, 本試料によるウランの捕集は, 試料の加水分解により生成するCa(OH)2と吸着液中の[UO2(CO3)3]4-イオンが反応して試料表面に二ウラン酸カルシウム (CaU2O7) が生成するために起こること, また脱着はCaU2O7と上記NaHCO3溶液が反応してU(VI) がもとの[UO2(CO3)3]4-イオンに戻るために起こることを明らかにした.
出版者
青木書店
巻号頁・発行日
1977
著者
井上 創太 太田 大樹 田口 徹
出版者
一般社団法人 日本基礎理学療法学会
雑誌
基礎理学療法学 (ISSN:24366382)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.35-42, 2022 (Released:2022-10-17)
参考文献数
36

社会的敗北ストレス(以下,SDS)は痛覚過敏を惹起するが,その病態機構は未解明である。本研究では,SDS 誘発性疼痛の脊髄機構の解明を試みた。SDS 誘発性疼痛モデルは,Sprague-Dawley ラットに対し,体格の大きなLong-Evans ラットを直接および間接的に接触させて作製した。ホルマリンテストを用い,モデルラットの疼痛関連行動を調べた。また,ホルマリンによる痛み刺激後の脊髄ニューロンの興奮性を定量化するため,神経活性化マーカーであるc-Fos 陽性細胞のL3 ~L5 腰髄後角での分布と数を調べた。SDS モデルでは,ホルマリンテストの第Ⅱ相において疼痛関連行動が顕著に亢進し,侵害受容に重要な後角表層におけるc-Fos 陽性細胞数が増加した。これらの結果より,SDS 誘発性疼痛モデルラットでは痛み刺激に対する脊髄後角表層ニューロンの興奮性が増大し,これが疼痛関連行動の亢進にかかわると考えられた。