著者
村下 訓
出版者
関西外国語大学
雑誌
研究論集 (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.165-183, 2010-03

本稿では、因果論的な説明の論理や行為論的な記述の論理に基づくマーケティング事象の観察・記述において、何が見落とされることになるかを問うことができる地点から、マーケティング・プロセス、すなわち時間を生み出しつつマーケティングの現実を自己組織的に生成し続ける過程を観察・記述するための手がかりを原理論的に探究する。 突破口を開く論点は、議論されるべき前提を議論に先立って前提してしまう理論負荷の問題である。理論負荷されて多様に立ち現れる構造に対して、その構造を生み出す生成の過程はいかにして記述可能となるか。先行するニクラス・ルーマンの社会学的洞察を参照しつつ、この問いに答える記述論理の方法論的可能性を提示する。なお、本稿で探究される観察視点と記述論理の適用が開くマーケティング事象の描像については、稿を改めて議論されることになる。
著者
板倉 智敏 山極 三郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.11-PLATE II, 1971-02-25

著者らは, 鶏骨の Dysplasia とみなすべき症例に, 再び遭遇した. それは, 本研究の第I報におけると同様に, 一養鶏農家に集団的に発生したものであるが, 骨組織所見に注目すべき差異が存在したので報告する. 検索材料は3例よりなる. それらはすべて32日令, 肉用種(White Cornish×White Rock), 殺処分例である. 全症例について, 第I報におけると同様に, ほぼ全身骨の縦断および横断組織片が組織学的に検索された. 今回の例は, 2週令から4週令にわたって発生した. 臨床症状の特徴としては, O字脚 (Genu varum) が共通的であった. 飼料は市販のものが使用されたが, そのほかに, ストレス緩解の目的で抗生物質およびビタミン製剤が与えられた. 発生数は, 同日令群1,200羽中192羽(16%)に達した. 検索した3症例に共通した組織変化として, 骨体性骨組織の完熟遅延と局所性異常増殖が指摘された. このような変化を示す部位として, 管状骨の後面骨, 特にその骨幹中位および骨端よりの骨化点に相当すると思われる部位が, 多く選ばれていた. 他方,骨端性骨組織の異常増殖像には遭遇しなかった. このことは, 第I報において記載した所見とは異なったものとして注目された. 以上の組織変化を基礎として, 本例の症状の特徴であるO字脚の成因を考えてみた. また, 原因発生について, 集団的に発生したこと, 飼料のほかに抗生物質およぴビタミン製剤などが与えられたことは, 看過し得ない事実として, 若干の考察が行なわれた.
著者
菅野 博史
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.223-248, 1992-01

0. はじめに1. 意味という現象2. ダブル・コンティンジェンシー3. 出来事としてのコミュニケーション4. コミュニケーションのオートポイエシス・システム5. 行為の接続と構造6. 基礎概念の検討The basic concept of sociology has been regarded as "action". This kind of thought, has long theoretical accumulations after Max Weber and holds a central position in social theory. Against this tradition, however, Niklas Luhmann suggests that the concept of meaning should be basic. According to him, meaning is more suitable to describe the contingent possibility of the "world". And he introduces phenomenological insights into his framework of system theory, building it up into the theory of autopoietic systems of communications. In this paper, the author tries to summerize his discussions on meaning and communication in the first place, and examines his most important conception like self-reference (Selbstreferenz) and self-observation (Selbstbeobachtung) in the next. In conclusion, the author (1) critisizes the ambiguity of his concept "self-reference" and (2) points out theoretically fruitful possibilities of observing self-observational systems which always deparadoxize its own paradoxes.
著者
西川 清
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.60-68, 1988
被引用文献数
6 6

これまであらゆる治療法を駆使しても, コントロールの困難であった成人を含む重症・難治群が, 電動ネブライザーを使用したDSCG+salbutamol 吸入の regular use (DSCG 2ml+salbutamol 0.25~1mg 1日2回) により最長8ヵ月, ほぼ全例に著明な臨床症状および日常生活の改善をみた. regular use 施行前3ヵ月と施行後3ヵ月の臨床症状を比較すると, 発作点数は難治群で71.7から17.4に, 重症群で22.8から10.2に減少した. 救急外来受診回数は, 7名の外来難治群で27.3回 (3~44回) から1.1回 (0~3回) に, 12名の重症群では12.3回 (0~38回) から3.1回 (0~13回) に減少した. また難治群の副腎皮質ホルモン使用量は Prednisolone 換算で460.7mg (150~945mg) から74.2mg (0~415mg) へと減量できた. 学校・仕事の欠席日数は, 難治群で14.1日から0.6日に, 重症群で11.1日から2.0日に減少した. 著明な臨床症状の改善をみた症例, 家族とも, 心理的にも大幅な改善を示した.<br>DSCG+β<sub>2</sub> agonist の regular use は, 気管支拡張持続作用と気道炎症の抑制作用により発作を予防するだけでなく, これまで困難であった難治群の0レベルを実現し, 気道過敏性に影響を与え, 寛解に導き得る治療法となる可能性を示唆した.
著者
佐藤 和夫 西川 訓利 鈴木 徳祥 小川 明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.892-900, 1996-11-25
被引用文献数
75

人体近傍に置かれた携帯無線機用アンテナの特性をFDTD法を適用して解析し,アンテナが人体から受ける影響を明らかにする.解析モデルは人体頭部と携帯無線機を握る手からなる人体モデル,および金属きょう体に取り付けられたアンテナから構成される.本解析モデルを用いて計算した結果は実験値とよく一致し,人体モデルの影響を含めて携帯無線機用アンテナの特性を精度良く解析できることを示した.この解析モデルを用いて,携帯電話,およびPHSの周波数帯において,携帯無線機に取り付けられたλ/4モノポールアンテナおよび平板逆Fアンテナの特性を計算した.その結果,放射効率は人体モデルの影響を大きく受け,45%以下にまで劣化することがわかった.更に,人体モデル頭部の形状や携帯無線機を握る手の位置が放射効率に与える影響を明らかにし,アンテナの種類によって人体から受ける影響が大きく異なることを示した.
著者
広瀬 修 柴田 勲 工藤 博史 鮫ヶ井 靖雄 吉澤 重克 小野 雅章 西村 雅明 廣池 忠夫 影山 潔 阪野 哲也
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.991-995, 1995-12-15
被引用文献数
10

1993年, 雌豚の繁殖障害を主微とする症例および子豚の呼吸器症状を主徴とする症例から採取した豚の肺材料からPRRSウイルス2株を分離した. これらの分離株を用いて5日齢および13日齢プライマリーSPF豚での実験感染を実施した. 接種した豚では感染後2日目ごろから元気消失, 食欲不振, 発熱, 下痢, 犬座姿勢および眼瞼浮腫などが認められた. 憎体率は非接種対照豚と比べ明らかに低下した. 異なるウイルス株を接種した豚群間で, 臨床症状の違いは認められなかった. 感染後28日目に剖検した豚では主に間質性肺炎, 非化膿性心筋炎およびカタール性リンパ節炎などが認められた. ウイルスは感染後7日目および28日目の主要臓器から回収され, さらに, 感染後7日目から試験終了時の28日目までの血清から回収された. 間接蛍光抗体を測定した結果, 抗体は感染後14日目から検出され, 28日目では1,280倍を示した.
著者
長田 早苗 殿塚 婦美子 荒木 英爾
出版者
女子栄養大学
雑誌
女子栄養大学紀要 (ISSN:02860511)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.41-48, 2004-12-01

(1) 牛肉試料中のCLAのメチルエステル化については14%BF_3/MeOH法 (室温・30分間)によるほうが, 4%HCl/MeOH法と比較して脂質1gあたりの脂肪酸量の定量をより適切に行なえることが示された。(2) 真空凍結乾燥実施試料は非実施試料と比較して, 単位脂質量あたりの脂肪酸抽出量が多く, より適切な定量分析を行なえることが明らかとなった。(3) 機器により焼き加熱条件を設定した調理方法による牛肉中の9c, 11t-CLA含量の変化を調べた結果, 牛脂質1gあたりの量に変化は認められなかった。しかし, リノール酸を添加した牛肉試料については, 焼き加熱条件下の試料について9c, 11t-CLAの有意な増加が認められた。
著者
岩本 馨
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.67, no.561, pp.285-290, 2002

In 1716, Yoshimune Tokugawa, who had been the lord of Kishu-han, became Shogun, and moved to the Edo castle. More than two hundred retainers of Kishu-han also immigrated to Edo to be retainers of the Tokugawa shogunate. Yoshimune assigned residences near the Edo castle especially to retainers close to him, while retainers close to his predecessor were obliged to move to outskirts of Edo. However, as seen in the example of Hakuseki Arai, some retainers resisted to these enforced immigrations.
著者
神武 直彦 中安 英彦 川畑 広文 鈴木 裕介 麦谷 高志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.98, no.614, pp.63-69, 1999-02-19
被引用文献数
4

宇宙開発事業団では、H-IIAロケットの飛行安全に使用する目的で高性能・低コストのGPS受信機の開発を進めている。従来飛行安全に用いてきたレーダの代わりに、GPSによって得られる位置・速度情報を用いることにすれば、地上側のレーダ局を整備する必要がなくなりコストダウンを図ることができ、また今後の宇宙輸送需要に柔軟に対処することが可能になると考える。本GPS受信機ぱ2000年2月打ち上げ予定の2トン級初号機でフライト実証試験を行い、2002年6月打ち上げ予定の3トン級初号機HTVミッションにて実運用を開始する予定である。本稿では、H-IIAロケット用としてのGPS受信機の特徴を記述し、システム解析によってその有効性を示す。よた、技術モデル試作段階よでの開発状況を報告する。
著者
和田 良子
出版者
敬愛大学・千葉敬愛短期大学
雑誌
敬愛大学研究論集 (ISSN:09149384)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.115-133, 2004

本稿はRabin (2000)のcalibration theoremの意義を問い、期待効用理論の一般化理論の重要性を主張するものである。Calibration theoremは富に関する限界効用逓減だけでリスク態度を説明することへの痛烈な批判である。Rabinは、10ドルのような小さいstakeで期待値がプラスになるようなクジを拒む者は、1/2の確率で無限大の金額が当たるような10000ドルのクジをも退けるというパラドックスを導いた。期待効用理論への問題提起は古く、Alles (1956)に遡る。Allesによって、期待効用仮説を形成する公理のうち、独立性公理が守られないという実験結果が報告されている。独立性公理は期待効用の線形性を保証する公理であるため、それ以来、期待効用の線形性が持つ問題点を改善しようとした理論が多く発表されており、Machina(1989)によってサーベイされている。修正理論の多くは主観的な確率に基づいてウエイト付けをしたものや、非線形な形にしたものなどである。さらに、期待効用理論に代わる理論を構成するものとして、TverskyやKahanemanらによるprospect theoryにも再度焦点が当たった。Prospect theoryの多くは、特別な局面における意志決定についてのfact finding的なものであり、それらを取り入れる形で新しい理論が形成されてきた。それに対し、Epstein and Zin (1989)では、期待効用理論を一般的な異時点間の効用関数の特殊なケースとして導出している。修正型期待効用関数との最大の違いは、効用関数の形状からリスク態度を導くのではなく、リスク態度が現在と将来に関わる意思決定であることに注目し、リスク態度を、現在と将来の消費弾力性や(現在と将来の消費の平準化への嗜好の程度を表す)時間選好率と同様のパラメーターとして、recursiveな効用関数にあらかじめ組みこんでいるところである。