著者
鈴木 順 局 博一 菅野 茂
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.779-787, 1991-10-15
被引用文献数
1

代表的な抗不整脈薬, procainamide (PA)(class Ia), lidocaine (LC)(class Ib), propranolol (PN)(class II)およびverapamil (VP)(class IV)を成熟ラットに投与したときの心電図変化の特徴についての検討を行った. 同時に心筋細胞膜電位についても1-5 Hzの刺激頻度で測定を行った. いずれの薬物においても高用量においては洞房ブロックあるいは房室ブロックが見られ, またverapamilを除く3種の薬物ではQRS持続時間の延長とQRS波形状の変化が観察された. これらの薬物の心電図への影響を人やイヌに対するものと比較すると, ラットでの特徴は(1)LCとPNでQT間隔の延長が明瞭に認められ, それは用量依存性であったこと, (2)VP0.6mg/kg以下の投与量でRR間隔の短縮がみられたことであった. LCとPNとも胸部単極誘導心電図では右心室側のQT間隔を延長したこと, および心筋細胞膜電位の実験ではO相の脱分極速度(Vmax)が減少しながら, 活動電位持続時間にこれらの薬物がほとんど影響を及ばさなかったことから, これら2つの薬物のQT間隔延長には右心室側の局所的な電気的興奮時間の遅延が関与しているものと考えられた. 一方, VPによるRR間隔の短縮はPNの前処置により消失したことから, ラットにおけるこの反応は主にVPの末梢血管拡張作用による交感神経反射が関与しているものと考えられた.
著者
Minematsu Tsuyoshi Ohtani Hisakazu Sato Hitoshi IGA Tatsuji
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
Biological & pharmaceutical bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.22, no.12, pp.1341-1346, 1999-12-15
被引用文献数
1 7

Recently, several reports of clinical cases of QT prolongation and torsades de pointes, associated with the use of tacrolimus (FK506), have come to light. We have previously demonstrated FK506-induced QT prolongation in guinea pigs [Minematsu T., et al., Life Sci., 65,PL197-PL202 (1999)]. We now examined the relationship between QTc prolongation and the pharmacokinetics of FK506 in guinea pigs, in order to evaluate the arrhythmogenicity of FK506 when compared with that of quinidine sulfate (QND). Thus, dose-response relationships for FK506 (0.01 or 0.1 mg/h/kg) or QND (30 mg/h/kg) were investigated during and after intravenous infusion and also following intravenous bolus administration of FK506 (0.2mg/kg). The dose-response relationship between plasma drug concentration and QTc prolongation for FK506 and QND were subsequently analyzed using an effect compartment model. The pharmacodynamic parameters thus obtained were as follows : k_<E0> 2.72×10^<-4> (min^<-1>), E_<max> 27.1 (ms), EC_<50> 0.376 (ng/ml) for FK506; and k_<E0> 0.148 (min^<-1>), K 8.41 (ms・ml/μg) for QND. The anti-clockwise hysteresis observed for FK506-induced QT prolongation was successfully analyzed by the present pharmacokinetic/pharmacodynamic model, which may provide a rational basis for developing a clinical dosing regimen to avoid possible QT prolongation induced by FK506.
著者
三浦 雄二
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.83-101, 1999-02-25

<豊かさ>は資本主義的高度産業社会の構造的仕組みが産み出したもので,それ自体社会のものである。社会の<豊かさ>はその華やかさによって人々の目を奪うが,その背後では社会そのものがこの構造的仕組みに方向付けられながら,強大な全体的構造を作り上げていることを意味する。<豊かさ>を維持するためにはこの構造的仕組みが強化されなければならず,そのためには諸個人が犠牲にされることも省みられない。それは<豊かさ>が漲っていたときもそうであったし,今日のように<豊かさ>に翳りが見え始めている場合もそぅである。<豊かさ>はその背後で人間と社会の関わりが大きく構造の側に傾いたままであることを気づかせない。資本主義的高度産業社会はこれからも<豊かさ>の擁護をめぐって展開していかざるを得ず,それは構造的問題性を強化こそすれ緩和させることはないであろう。我々は資本主義的高度産業社会の構造的在り方を問題視していかなければならない。人々は強大化していく社会構造の中で,生活そのものをその中に組み込まれていく。彼らにとっての社会ともいうべき社会生活そのものが<豊かさ>に包まれているからで,それによって彼らの目は彼らの存在が形式的のみならず実質的にも構造に対して卑小化している現実に届きにくくなっている。<豊かさ>の故に人々は,あたかもその存在を社会によって丸飲みにされてしまったかのようである。それは包摂とでも表現すべき状況であり,現代日本の資本主義的高度産業社会としての構造的問題性を集約的に表現している。人々の間には構造に対する依存の体質が拡がり,その限界が現れてきているにもかかわらず,個人的には依存の姿勢を一層強めようとする気配を見せている。今日,資本主義的高度産業社会における人々,とりわけ日本の労働者の間に,社会の構造的在り方に積極的に働きかけ,構造的問題性の緩和に努力しようとする姿勢は全く見られない。見られるのは自分だけは<豊かさ>の享受から振り落とされまいとする極めて利己的な態度でしかない。<豊かさ>は人間と社会の関わりにとって批判的に究明されねばならない問題なのである。
著者
加藤 信巳
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.443-444, 2001-07-31
著者
菅原 十一
出版者
国立科学博物館
雑誌
自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.411-423, 2001-12

東京では, 著しい都市化に伴い年々気温が上昇し, 湿度が低下している。自然教育園は,都心部に残された自然緑地である。このため都市の高温化などによる自然生態系への影響が懸念されている。本報告は, 自然教育園で気象観測が開始されてから過去30年間(1971年〜2000年)の気温及び湿度, 降水量の平均値について, 東京の気候表との比較をとおし検討した。東京都内の平年気温は15.9℃, 平年最高気温は19.7℃, 平年最低気温は12.5℃を示す。この内, 年代別では, 特に, 最低気温の年平均値が'70年代12.1℃, '80年代12.4℃, '90年代13.1℃を示し, 都市化の影響によリ気温は年々上昇する傾向がみられた。園内の平年気温は15.3℃, 平年最高気温は19.2℃, 平年最低気温は12.5℃を示し, 東京都内と比較し平年気温が0.6℃差, 平年最高気温が0.5℃差, 平年最低気温が1.1℃差と低くなっていた。さらに, 年代別の年平均気温では'70年代15.1℃, '80年代15.3℃, '90年代15.4℃, 年最高気温は'70年代19.1℃, '80年代19.2℃, '90年代19.4℃, 年最低気温は'70年代11.3℃, '80年代11.5℃, '90年代11.4℃を示し, 園内では東京都内と比較し年々の気温上昇が小さくなっていた。平年湿度については, 東京都内が63%に対し, 園内は69%と東京都内より6%の高湿度がたもたれていた。また, 年代別にみた年平均湿度の経年変化では, 東京都内が62%〜63%, 園内が68%〜69%の範囲を示し, 過去30年間では都市の低湿度化の傾向が小さく, 横ばい状態となっていた。この他, 降水量については, もともと年による変動差が大きいため現状報告に止めた。平年の年間雨量は, 東京都内が1,465.6mm, 園内が1,305.0mmを示した。この内,園内の雨量は樹林の影響により阻止され東京都内の89%に止まり減少していた。また, 梅雨期(6月, 7月)と秋霧期(9月, 10月)には雨量が増加し, 年間雨量の50%弱を占め, 反対に冬季(12月, 1〜2月)は雨量が減少し年間雨量の10%を示していた。この結果, 園内では, 高木層及び亜高木層,低木層などからなる樹林の効果により, 気温及び湿度変化がやわらげられ, また, 隣接する都市の高温・低湿度化による影響が小さく抑えられていることが確かめられた。そして, 園内では'60年代(昭和40年前後)の東京都内に相当する気温及び湿度環境がたもたれていると推測された。
著者
杉本 安寛 平田 昌彦 上野 昌彦
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.8-14, 0000
被引用文献数
5

バヒアグラス(Paspalum notatum)放牧草地におけるホルスタイン育成牛群の排泄行動を物質循環との関係から調査した。調査地は,宮崎県畜産試験場(西諸県郡高原町)内の草地約17.6aで,これに隣接して庇陰樹を囲んだ約60m^2の休息場を設けた。5月下旬より10月下旬まで8回,各回21-24頭の牛群を48時間あるいは72時間昼夜連続放牧し,5回次(7月26-29日),7回次(9月23-25日)および8回次(10月26-28日)について排糞,排尿,および採食行動を観察した。結果は以下の通りであった。1)5回次の気温は7時より18時まで27℃を越え,7回次も10-15時は27℃を越えたが,8回次は最高気温が約23℃であった。2)排糞回数(回/頭/日)は6.5-8.3回の範囲にあり,そのうち草地で排糞された比率は5,7および8回次が,それぞれ,73.9%,70.7%および88.6%であった。排尿回数(回/頭/日)は10.7-18.3回で,5回次が最も高く,次いで7回次が高かった。草地で排尿された比率は5回次と7回次が50%前後と低く,他方,8回次は87.9%と,高かった。3)糞は68-76%が日中に排泄され,尿は約80%が日中に排泄された。4)日中の温度が高い時期には,糞尿の草地への排泄比率が低下し,養分の再循環が妨げられることが示唆された。
著者
藤部 文昭
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.473-476, 2002-06-30
被引用文献数
4

東京都心(大手町)における相対湿度と水蒸気圧の40年間(1961〜2000年)の経年変化を日最高気温の段階別に調べた.その結果,日最高気温が33〜36℃の日には,それより気温の低い日に比べ,午後(15時)の相対湿度の経年変化率に数%/(40年),水蒸気圧には0.5〜1hPa/(40年)の正偏差すなわち相対的な上昇傾向が認められた.この上昇傾向は,冷房による水蒸気排出の影響である可能性が示唆された。
著者
澤田 宏二 荒井 良明 河野 正司 大竹 博之 池田 圭介 中島 正光 平野 秀利
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 = The Journal of Japanese Society of Stomatognathic Function (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.59-66, 1996-06-30
被引用文献数
6

顎関節脱臼の治療には, 口腔外科領域での観血的処理が行われることが多く, 咬合治療が行われることはまれである.しかし, 顎関節脱臼症例に対して, 咬合治療を行うことにより治癒をみた報告はこれまでもある.今回, 我々も顎関節脱臼症例に対して, ガイドの位置を変化させる咬合治療により顎関節脱臼の治癒をみた.症例は起床時の右側顎関節習慣性脱臼を有する18歳男性1名である.平成6年頃より, 起床時に右側顎関節脱臼が生じたが, 自力で整復が可能であったので放置した.しかし, 脱臼の発生頻度が高くなり, 平成7年2月には毎朝右側顎関節脱臼が生じるようになり, 当科に来院した.患者は側方滑走運動時に第2大臼歯のみが歯牙接触していた.スタビリゼーションスプリントを上顎歯列に装着したところ, 翌日から起床時の右側顎関節脱臼は消失した.その後, 作業側ガイドと非作業側ガイドのどちらが脱臼の消失に寄与しているのかを追求し, さらに6自由度顎運動測定装置(東京歯材社製TRIMET)により, 3種類の滑走接触における顎運動の解析を行った.その結果, ガイドを歯列の前方歯に修正することによって, 下顎の滑走運動のみならず, 歯牙接触のない下顎運動経路, さらには顆頭の運動量にも変化を認め, 右側顎関節脱臼は消失した.今回の症例より, 顎関節脱臼症例にアンテリアル・ガイダンスの修正が有効な治療法となりうることが示唆された.
著者
堀 圭児 本川 善幸 多田 和也 小野田 光宣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.1064-1069, 2002-12-01
被引用文献数
2

大気中においてITO及び金属の電極材料上に製膜する導電性高分子の膜厚を変えることによって接合界面の電子状態の変化を大気中光電子分光法及びケルビンプローブ法を用いて調べた.いずれの電極材料を用いた場合においても,大気中光電子分光法によって評価されたイオン化ポテンシャル(IP)の変化は界面から約10nmまでの領域で起きており,それ以降の膜が厚い領域では導電性高分子本来のIPに収束した.また,界面近傍でのIPの変化の度合は,電極材料の仕事関数に依存性を示した.一方,ケルビンプローブ法を利用して評価された基準電極と導電性高分子との間に生じる接触電位差と膜厚の関係は,電極材料によって顕著な違いが見られた.
著者
掘鉄郎 相澤 清晴
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.125, pp.157-162, 2003-12-19
被引用文献数
2

近年,コンピュータが我々の日常生活において常に身近な存在となる,ウェアラブル・ユビキタスなコンピューティング環境が整いつつある.本稿ではこのような環境を想定し,小型なカメラにより個人の体験を記録し続けることで,あたかもユーザーの日記・自伝のようなもの(ライフログビデオ)を簡単に作成するようなシステムの構築を試みている.このシステムでは,小型カメラとマイクロフォンから取得したビデオだけではなく,それと同期をとりながら,ユーザーのコンテキストを推定するために様々なセンサー群からのデータを常時取得することができる.加えて,それらセンサー群のデータとデータベース等とを組み合わせて利用することでユーザーのコンテキストを推定し,それに基づいて取得したビデオを効率的に検索することが可能となっている.One of the characteristics of Wearable/Ubiquitous Computing is that computres are embeded in our life. In such computing environments, digitization of personal experiences will be made possible by continuously recording using a wearable video camera. It can lead to "automatic life-log application". In this paper, we attempt to develop "context-based video retrieval system for the life-log applications". This wearable system is capable of continuously capturing data not only from a wearable camera and a microphone, but also from various kinds of sensors to extract the user's context. In addition, the system provides functions which make efficient video browsing and retrieval possible by using data from these sensors and some databases.
著者
鈴木 道哉 岡 建雄 岡田 圭史 矢野 謙禎
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.60, no.476, pp.37-43, 1995
被引用文献数
16 3

Basic sector classification Input / Output table were applied to analyze the construction, operation and renewal of office buildings to obtain the life cycle energy consumption and carbon dioxide emission. Total energy consumption is approximately 9 GJ per square meter of floor area by construction, 1.2 GJ per square meter per annum for operation and 0.037 GJ per square meter per annum for renewal. Total carbon dioxide emission is approximately 980 kg per square meter of floor area by construction, 90 kg per square meter per annum for operation and 3 kg per square meter per annum for renewal.
著者
テーシャギットカチョン タードサク 重村 力
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.70, no.591, pp.103-109, 2005

1.はじめに チャウプラヤー・デルタにあるその他の地域と同様に、バンコクは独特な開拓手法によってつくられてきた。この開拓手法を通して、居住するのに困難であったデルタの低湿地地帯は、陸と水との調和がとれた環境共生的で豊かな生活空間へと、数百年の歳月をかけて、ゆっくりと変遷してきた。特に水文化から陸・水両立文化への転換期であるラマー4世からラマー5世の治世の間に、開拓の英知が多くみられる。ところが、ラマー5世以後、近代化と共にもたらされたモータリゼーションや近代都市計画などといった、既存風土を無視した思想に基づいた開発の影響によって、現在、その陸と水との調和状態が崩れかけている。このような開発では、陸と水との調和は無視されてきたため、市街地では、水害や都市居住環境問題など深刻な問題が絶えず頻発している。これを解決するために、既存風土に対応しながら熟考されてきた環境共生型居住空間の形成過程を再考する必要がある。バンコク旧市街地における土地形成過程をそのひとつの事例としてとりあげ、それを明らかにすることによって、現代都市計画にとって適切な題材になると考えている。バンコクの背景:アユタヤ時代の前衛都市からタイの首都に発展してきたバンコクの旧市街地はアユタヤの旧市街地と同規模でありながら、都市の基盤整備は完成に至らなかった。1922年の地図分析から、バンコクの第一期の旧市街地以外、すなわち第二と第三期の旧市街地の基盤は低湿地や果樹園地帯の輪郭などが著しく現れていることがわかる。特に、外濠と共にできあがった第三期の旧市街地には1908年まで果樹園が多く存在していた。この転換期に形成された旧市街地を研究対象とした。目的と方法:1922年に王立測量局によって作成された1/5000の地図と1908年に土地局によって作成された1/1000の地籍図を基に、水系地図と、寺院と貴族が所有していた土地を中心とした土地利用地図を作成する。次に、これらの地図を再合成し、3段階の水路網を摘出し、水路と主な土地利用の関係から、各要素が強調された地図を再作成する。最後に水路網と土地の形状などの相互関係を探ることによって旧市街地の土地形成過程を明らかにする。2.バンコク旧市街地の実態 その背景:第二期のバンコク市内において宮殿と寺院の敷地以外、その他平民の住まいの配置が禁じられていた。しかし、第三期の城壁に囲まれない市街地ができた頃には、その戒律が解禁されている。ただ、貴族と寺院の敷地の構成はそのまま受け継がれていた。貴族や僧侶の居住区域と、その使用人の居住区域の2つで構成されていた。また、公安などの理由で、それらの敷地は濠沿いに構えられていた。一方、庶民はその市内の外周に位置する郊外区域で農業を行っていた。広域教士地利用と水系の実態:土地利用は大きく二つに分類できる。一つは貴族と寺院が所有していた土地である。それは、地盤が固められた部分と果樹園のままの部分と分けられる。もう一つは、庶民も含む一般市民が所有していた果樹園である。各土地利用に応じて、水路が形成されていた。それらを大きく四つに分類できる。(1)幹線水路である河川、運河と濠、(2)幹線水路を連結する支線水路、(3)寺院の濠、(4)果樹濠である。狭域的土地と水系の形状と実態:研究対象地の上部地帯において、チャウプラヤー河沿いの土地はそれを軸として形づくられた。また、その低地地帯の土地形状も第二濠よりも、その川からひかれた支線水路を軸にして形づくられた。それに対し、下部地帯では、第二濠を軸として土地が形づくられた。また、短絡運河からその第二濠に並行してひかれた支線水路を軸に土地が形づくられた。貴族が所有していた土地は広く何枚もの果樹園から成り立ていた。それに対し、寺院の土地形状も広いが果樹園と関係なく形づくられた。その貴族と寺院が所有していた土地の周りには細かく分けられた土地が多くみられる。これらの土地形状に深く関わっているのは幹線水路に囲まれている低地地帯の果樹園を支えていた灌漑用水路である。水の供給と排水の機能をもつ灌漑用水路は大きく二つに分類できる。幹線水路からひかれた灌漑用水路とその支線水路からひかれた灌漑用水路である。その灌漑用水路がその他の水路と連結され支線水路へと変化したケースもみられる3.まとめバンコク旧市街地における広域的土地形成過程:市街化区域の土地形成過程において、先に居住区域が形成されたのは、比較的安定した地盤である幹線水路沿いの堤防だとみられる。そして、その堤防の裏手に沿って果樹園が並行に形成されたと考えられる。しかし、新たな幹線水路の着工がない限り、果樹園による土地開拓がより奥へと拡張することは不可能であろう。何故なら、その水の供給と排水が容易に行われないためである。バンコク旧市街地の場合、第三濠の着工によってそれが可能になったと考えられる。狭域的水系と土地形成過程:幹線水路に囲まれた低地地帯をも含むこの旧市街地の土地形成過程は果樹園の開拓によって進行されてきたと考えられる。これを実行するには二つの過程が必要とされる。一つは、水路の連結過程で、もう一つは果樹園の形成過程である。前者の水路の連結過程においては、幹線水路から支線の掘削から始まり、それらを骨格にまた更に水路がひかれる。それらをもう一方の新たな幹線水路からできた骨格水路と連結させるのである。後者の果樹園の形成過程は、二つのステップからなる。完成した一枚の果樹園ができるまでのステップとその後の展開のステップである。第一ステップは、灌漑用水路の発展と共に増加した果樹プロットの拡張で、初段階の土地形成過程に関わったステップである。第二ステップは、その完成した果樹園の土地を分離もしくは融合するステップである。これらのステップはいわゆる、分散している一般市民が所有していた土地、そして貴族や寺院が所有していた大きい土地の形成過程に関係するステップである。また、(1)外濠と短絡運河による大ブロックの設定、(2)第二・第三水路で成り立った水路網による小ブロックの構成、(3)最小ブロックである果樹園単位の構成、といった伝統的かつ漸進的手法の導入によって、利用不可能な後輩湿地から、灌漑・排水網、果樹園、居住地への変容過程が明らかにされた。このプロセスを通し、持続的な都市の創生過程においてデルタに適応できる都市計画へと発展していくことも考えられる。
著者
久保田 尚浩 三村 博美 島村 和夫
出版者
岡山大学
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.17-21, 1988-02
被引用文献数
2

モモ果実の渋味と土壌水分との関係を明らかにするために,コンテナ植えモモ樹の果実肥大,屈折計示度及びフェノール含量に及ぼす乾燥ならびに湛水の影響を調査した. 1)野性モモ台`武井白鳳'について果実発育第Ⅱ期(前期)と第Ⅲ期(後期)に2週間乾燥処理した.果実肥大はいずれの処理時期とも対照区より劣り,特に後期乾燥区で著しく劣った.屈折計示度は後期乾燥区で最も高かった.全フェノール,不溶性フェノール含量ともに対照区よりも両乾燥区で多かった. 2)寿星桃台,ユスラウメ台及びニワウメ台`山陽水蜜'について果実発育第Ⅲ期に約2週間,乾燥及び湛水処理した.果実肥大は各台木いずれの処理区でも対照区より劣った.屈折計示度は,乾燥処理区では対照区に比べて共台とユスラウメ台で高く,ニワウメ台で差がなかった.湛水処理区ではユスラウメ台で差がなく,ニワウメ台で低かった.全フェノール及び不溶性フェノール含量は,共台とニワウメ台では対照区よりも乾燥処理区で多く,ユスラウメ台では乾燥処理区で少なかった.湛水処理区ではユスラウメ台,ニワウメ台ともに対照区よりも多く,特にニワウメ台で多かった。
著者
渋谷 功 山田 豊一 広田 秀憲 伊東 睦泰
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.259-269, 1979-01-31

1.本研究は,牧草群落における競争をある特定期間に限定するのではなく比較的長期にわたり年数回の剪葉を繰り返えしながら経時的にとらえることにより,群落構造変動のしくみとそれに果す競争の役割を解明しようと企画された。そのため,まずprimary canopyでの競争の初発とその自律的発現因子との関係をイタリアンライグラスを用いた5実験により調べ,ここに第1報とした。2.自律的誘発因子として種子の大小を取りあげた。大粒種子は小粒種子にくらべ胚乳のみでなく胚(幼芽,幼根)についても大きく,また離乳期間内の生長もよく,そのため出芽幼植物の生長にも勝った。出芽率は初めの1週間では小粒種子よりも大粒種子で明らかに高かったが,3週間にはその差は消えた。3.以上の結果をふまえて,大粒種子幼植物と小粒種子幼植物,あるいは早播幼植物と晩播幼植物をそれぞれ単播および混播したところ,LAIがおよそ1前後に達した頃より競争効果がみられ,小粒種子植物は大粒種子植物により,また晩播植物は早播植物により増数的形質について生長が抑圧された。早播植物は競争の結果,単播区の生長より勝ったが,大粒種子植物の場合そのような正の競争効果は明らかでなかった。4.本実験結果に既往の諸報告を加味して考えると,新播牧草のPrimary canopyにおいては,種間,種内を問わず,まず種子の大小や出芽の遅速により自律的に競争が生起するのは明らかである。
著者
小杉 健二
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術研究所年報 (ISSN:09186441)
巻号頁・発行日
vol.12, 2001-10-30

南極氷床上で形成される球状の雪の塊(雪まりも)の形成機構に関連し、吹雪中における雪の塊の形成条件を雪氷防災実験棟を用いて調べた。樹枝状の新雪を用いた実験で、風速が吹雪発生臨界をわずかに越えた時に雪の塊が形成された。
著者
小杉 健二 佐藤 篤司
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術研究所年報 (ISSN:09186441)
巻号頁・発行日
vol.12, 2001-10-30

風が斜交する場合の防雪林の効果を検討するため、雪氷防災実験棟の風洞において、道路と林の模型を用いた吹雪実験を行った。防雪林と風のなす角を変化させた実験を行い、防雪林の吹雪防止効果の角度依存性を明らかにした。