- 著者
-
中村 剛
- 出版者
- 一般社団法人 日本社会福祉学会
- 雑誌
- 社会福祉学 (ISSN:09110232)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.1, pp.1-12, 2018-05-31 (Released:2018-06-28)
- 参考文献数
- 38
- 被引用文献数
-
9
尊厳と人権は社会福祉の原理であり理念である.しかし,その意味は不明確である.そのため,本稿では尊厳と人権の意味を明らかにした.これらの言葉は,西欧で生まれた概念であり考え方である.よって,まず,それぞれの言葉の概念史や語源を確認した.その上で,尊厳については,聖の次元に思考を拓くことで,その意味の解明を試みた.一方,人権については,「human」の側面と「right」の側面とに分けることで,その意味の解明を試みた.考察の結果として明らかにした意味は次のとおりである.尊厳とは,“聖なるもの”の経験の中で実感する「かけがえのなさ」,「他者の存在の大切さ」,「他者への責任=倫理」といった,世俗の価値とは質的に違う価値のことである.そして,人権とは,「人間らしく生き暮らしたい」という叫び・要求が,正義そして道徳や自然法のような規範を通して,一定の正当性をもった叫び・要求として認知されたものである.