著者
福田 怜生
出版者
日本商業学会
雑誌
JSMDレビュー (ISSN:24327174)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.19-30, 2022 (Released:2022-09-03)
参考文献数
61

本研究では,ソーシャルネットワークサービスの普及により重要性が増しているバイラル・マーケティングを背景として,物語広告が推奨意図に及ぼす影響に対する感情的BCと計算的BCの調整効果を検討した。60秒の動画広告を材料とした実験の結果,感情的BCは物語広告が推奨意図に及ぼす影響を強化する一方で,計算的BCはその影響を弱化することが示された。またこのような調整効果が生じるメカニズムをより具体的に検討するため,物語に入り込んだ状態である「移入」を媒介変数とした調整媒介分析の結果,物語広告が移入に及ぼす影響,移入が推奨意図に及ぼす影響に対しても各BCは同様の調整効果を有する傾向があった。ただし,移入が推奨意図に及ぼす影響に対する感情的BCの調整効果のみ認められなかった。これらの結果から,オンライン上で物語広告を露出すべき初期ターゲットについて議論された。
著者
高橋 英彦
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

統合失調症患者の脳内における単語の表象ネットワークの乱れを脳内における単語の表象ネットワークにグラフ理論による解析を適応し、定量的に解析することを目的とする。対象は統合失調症患者で、臨床・心理データに加え、脳MRIを取得する。被験者に自然動画刺激を提示し、全脳活動をfMRIによって記録する。動画に含まる単語のラベル時系列と脳活動から、重み係数を求める。この過程で、単語をベクトルに変換する自然言語処理技術Word2Vecを用いる。脳内単語ベクトルの任意の2語の組み合わせの類似度を表した行列を得るこの行列から、隣接行列を作成し、グラフ理論による脳内の単語表象のネットワーク解析を行う。
著者
吉田 友彦 齋藤 雪彦 高梨 正彦
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.68, no.573, pp.117-124, 2003-11-30 (Released:2017-02-09)
参考文献数
6
被引用文献数
8 6

This paper aims to clarify characteristics of land ownership of "un-urbanized" housing land developments in Tsukuba City, Ibaraki, which was permitted by Old Housing Land Development Law of 1964. The Old Law was abolished in 1968. Some areas of these developments show very low built-up ratio because of insufficient infrastructures in terms of sewage, drinking water and public facilities. There are three types of land ownerships in un-urbanized areas. Firstly, ownerships without any transfer except for inheretances and donations amount to 65 percent. Secondly, speculative purchases and selling amount to 18 percent. Third, housing land with residents amount to 18 percent.
著者
浅井 隆
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.440-449, 2011 (Released:2011-06-28)
参考文献数
24

過去には気管チューブによる気道粘膜壊死や気管狭窄などの重篤な合併症が起こることが比較的多くあった.現在においても,麻酔導入後の換気困難の最大の原因は繰り返した気管挿管処置であるとされている.また,気道確保が容易な症例においても喉頭損傷などは無視できない頻度で起こっている.これらのことから,気管挿管が困難か困難でないかにかかわらず,侵襲の小さなカフと先端を持つチューブで,挿管成功率の高いものを使用すべき,だと言える.スパイラルチューブ,パーカーチューブ,挿管用ラリンジアルマスク用チューブなどがこれらの条件を満たすと思われるため,これらのチューブを積極的に使用すべきだと思われる.
著者
篠原 盛慶
出版者
日本音楽表現学会
雑誌
音楽表現学 (ISSN:13489038)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-12, 2013-11-30 (Released:2020-05-25)
参考文献数
15

1889 年、物理学者の田中正平 (1862-1945) は、唸りの少ない協和性を追求し、エンハルモニウムの名で知られる 1 台の画期的なリードオルガンを製作した。この楽器は、「純正調オルガン」であると広く認識されている。しかし、田中とともに、当時の日本の音律研究を牽引した音響学者の田辺尚雄 (1883-1984) は、主著『音楽音響学』(1951) のなかで、 エンハルモニウムに 53 平均律が用いられたことを示唆している。田辺は、同書でその根拠を示していないため、本当にそうであったかどうかについては、詳細な検証が必要となる。本論では、その検証と考察を行った。 その結果、田中の音律理論を集約した格子図に、彼の理論の基礎に53平均律が据えられていた可能性が確認された。また、田中の純正 7 度の代用音程の捉え方に、エンハルモニウムに 53 平均律が適用された可能性が認められた。さらに、エンハルモニウムの最大の独自性である移調装置に、同楽器に純正律が施されていない証拠を見つけることができた。以上から、田中正平のいわゆる「純正調オルガン」、すなわちエンハルモニウムは、実は 53 平均律を適用した楽器であったと結論づける ことができる。
著者
石橋 優美 藤村 宣之
出版者
日本家政学会児童学部会
雑誌
児童学研究 (ISSN:24344508)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.51-61, 2020 (Released:2022-02-24)

This present study examined how interventions based on students’ prior knowledge facilitates their conceptual understanding. Individual experiments were conducted on seventh graders (N=39 in Experiment 1; N=38 in Experiment 2), and they solved some problems about oxidation reaction in 3 sessions: pre-test, intervention (2 conditions: experimental or control), and post-test. In Experiment 1, students’ in experimental condition reasoned condition of a thing through time using pictures. On the other hand, students’ in control condition were showed a thing in pictures. The results indicated that (a) three levels were identified, (b) the experimental condition facilitated the understanding, and (c) understanding deepening in the intervention were related to that in the post-test. The purpose of Experiment 2 was to investigate the intervention of Experiment 1, and a real thing was used in place of pictures. The results showed that (a) the experimental condition facilitated the understanding, (b) understanding deepening in the intervention was related to that in the post-test, and (c) Experiment 2 had the more effect on the understanding than Experiment 1.
著者
齋藤 駿介
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.87, no.802, pp.2678-2689, 2022-12-01 (Released:2022-12-01)

During WWII, creation of the Comprehensive Sen’en Regional Development Plan spurred the implementation of the Sen’en Great Merger. However, Sendai and Shiogama were at odds over the development of Shiogama Port. As a result, the fourth expansion of Sendai City was undertaken. This was accomplished by incorporating only five neighboring villages, while the municipal system of Shiogama City was implemented, only partially implementing the original plan for the merger. Thus, although the Sen’en Plan and the Sen’en Great Merger partially contributed to the formation of an expansive urban region, they lacked feasibility, and the originally grandiose plan was largely incomplete.
著者
中尾 彰太 成田 麻衣子 比良 英司 勝原 和博 松岡 哲也
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.521-527, 2015-06-30 (Released:2015-06-30)
参考文献数
7

大阪府泉州二次医療圏においては,改正消防法の施行に先立ち,平成21年4月より実施基準に準じた救急医療体制を構築し運用を開始したが,その後も搬送先選定困難例は増加した。この対応策として,地域メディカルコントロール協議会の検証会議において,搬送先選定困難例を個別検証し,問題点を分析した。その結果,救急医療体制自体の問題点に加え,消防の病院前活動や医療機関の受入れ対応に関する問題点が指摘され,その多くが実施基準の抵触に集約されることが明らかになった。問題点の内容は,救急医療体制の改善に資する情報として利用することを目的に,文書で関係機関に周知した。このような情報共有体制の整備により,当医療圏における搬送先選定困難例は,平成22年度の195例から,平成25年度には38例まで減少した。搬送先選定困難例の個別検証と情報共有は,問題点を明確にし,受入れ状況の改善を目指すうえで有用である。
著者
三谷 和男
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.673-685, 2007-07-20 (Released:2008-09-12)
被引用文献数
2 2

漢方医学の四診は「望・聞・問・切」であり, 舌診は「望診」の中核をなす。「望」という文字は人の跂立遠視の象形であり, 「古ク霊気ヲ望ンデソノ妖祥ヲミル」が本来の義とされる (白川静・字統より)。つまり「分析」的な見方ではなく, あくまで「全体を大づかみにする」という発想で行わねばならない。患者が診察室に入った瞬間から診療は始まり, その上で「大づかみ」ができるかがカギとなる。聴診器を創作したランネック (1781-1826) が「医学はすべて観察からはじまる」と述べているが, 「望診」のもつ意味は更に深い。舌診は, 神・色・形・態に分けて観察するが, この「神」は「神気」であり, 患者の全身状態を総合的にまとめ, 疾病の予後, 軽重を推察する上で意義がある。黄帝内経・霊枢に「神ヲ得ルモノハ昌ヘ, 神ヲ失フ者ハ亡ブ」とあるように, 神気を把握することは最も重要である。このように, 舌は, 病状の進展, 病態の陰陽・虚実, 気血水のバランスを反映すると考えられるが, 一方では重篤な疾病があるにもかかわらず所見にはそれほどの変化がなかったり, 健常人でも先天的な変化をみることができる。つまり, 局所の所見のみにとらわれず, 舌質や舌苔の変化を, 全身的な病態の部分現象や随伴症状として総合的にみることが前提である。
著者
豊田 有 丸橋 珠樹 Malaivijitnond Suchinda 香田 啓貴
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第35回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.32, 2019-07-01 (Released:2020-03-21)

音声には様々な機能があるが,その一つに発声個体の性的な魅力などの性質を他個体に「正直に」伝達する信号としての機能がある。特に発声個体の体の大きさは,音声の共鳴特性に反映されやすいため,繁殖競合条件下において同性競合者への威圧あるいは潜在的な繁殖相手への宣伝のために音声が用いられることがある。霊長類においても音声が性選択を受けて特殊化・複雑化したと推察される例はホエザルやテングザル,テナガザルなど種々の報告がある。こうした音声の中で,特に交尾の前後の文脈で生じる「交尾音声(CopulationCall)」として記載される音声は,社会構造のなかで機能する性戦略の一つとして重要である。本発表では,ベニガオザルのオスが射精時に発する交尾音声を分析した結果から,この音声の機能や進化的背景を他種との比較を通じで議論する。タイ王国に生息する野生のベニガオザル5群を対象とした18か月の調査によって得られた383例の交尾の映像データを分析に用いた。交尾オスの個体名と社会的順位および交尾音声の有無を分析した結果,交尾オスの順位が高いほど交尾音声の発声頻度は高く,低順位オスでは低かった。一方で,交尾音声が確認された映像から交尾音声446バウトを抽出し,音響分析をおこなった結果,交尾音声の区切り数,発声継続時間,共鳴周波数の分析から得られた体重推定値はいずれも順位に依存した効果は認められなかった。とりわけ,体サイズを反映する共鳴周波数と順位との関連性が認められないことから,音声情報を介したメスからの選択が難しいことが推察された。これらの結果から,ベニガオザルのオスにおける交尾音声は,高順位オスしか発声しない「順位依存的な」音声であり,繁殖相手であるメスに対する宣伝より,発すること自体が周辺の競合オスに対する権力誇示音声であると示唆される。