著者
米代 武司
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.297-304, 2022 (Released:2022-12-22)
参考文献数
37

褐色脂肪組織 (BAT) は寒冷刺激に応じて活性化して熱産生を行い, 体温と体脂肪量の調節に寄与する。ヒトのBATは加齢とともに機能低下して肥満の一因になるが, 慢性的な寒冷刺激により再活性化が可能で, その結果, 体脂肪が減少する。寒冷刺激の効果は, 温度感受性TRPチャネルの刺激活性を有する食品成分を経口摂取することで模倣できる。TRP刺激活性を有するカプシノイドや茶カテキンなどを単回摂取するとBAT熱産生が活性化し, 慢性摂取することによりBATの再活性化・増量が可能である。また, BATの熱産生活性を制御する因子として, 基質選択性の重要性が明らかになってきた。BATの主なエネルギー基質は脂肪酸と糖であることが古くから知られるが, これに加えて分岐鎖アミノ酸の選択的な代謝分解が不可欠である。これらの知見は, 臨床応用可能な栄養学的介入によるBAT活性化法の確立, ひいては新たな生活習慣病予防法の考案に役立つ。
著者
立石 康介 渡邉 英博
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.150-159, 2022-12-07 (Released:2022-12-21)
参考文献数
63

昆虫は,特に発達した嗅覚神経系を備えており,匂い情報を利用して種内でコミュニケーションを取り,天敵から身を守るだけでなく,匂い情報から環境状況をも適切に判断することができる。近年,昆虫の嗅覚受容関連遺伝子について解析が急速に進む中,非モデル生物でも嗅覚受容関連遺伝子の報告が盛んに行われている。このような遺伝子の機能解析には嗅感覚細胞からの電気生理学的記録が欠かせない。しかしながら,昆虫嗅覚神経系からの電気生理学実験を展開する研究室が世界的にも少なくなってきている。 本稿では,昆虫が備え持つ嗅感覚細胞から匂い物質に対する応答を直接的に記録でき,匂い情報の符号化様式を解析できる「単一感覚子記録法」について,筆者が発展させてきた実験方法を紹介する。
著者
大森 翔子
出版者
公益財団法人 NIRA総合研究開発機構
雑誌
NIRAワーキングペーパー (ISSN:27582183)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-29, 2021-11-12 (Released:2022-10-19)

21世紀に入り、社会調査においてはインターネット調査が普及し、一般的な調査法の一つとなった。しかし、インターネット調査には「バイアス」があり、目標母集団との乖離が問題となる。こうした実態を明らかにするため、本プロジェクトでは、同一の質問項目によって構成される、無作為抽出に基づく面接調査と性別・年齢層で回収目標数を割り付けたインターネット調査を同時に実施し、国勢調査との共通項目と合わせて比較した。分析の結果、インターネット調査の回答者には一定の省力回答者が含まれ、国勢調査と比べて大都市居住者が多く、学歴も高いという特徴のほか、面接調査回答者と比べて外向性・協調性が低く、神経症的傾向が高いというパーソナリティの特性が分かった。一方、面接調査にも、国勢調査よりも「持ち家率」が高いといったバイアスがあり、無作為抽出に基づく調査結果を「正解」とするインターネット調査の補正には注意が必要なことが示唆される。
著者
谷口 将紀 大森 翔子
出版者
公益財団法人 NIRA総合研究開発機構
雑誌
NIRAワーキングペーパー (ISSN:27582183)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-17, 2022-06-07 (Released:2022-10-21)

社会調査の手法は、人々の生活様式、社会情勢の変化に合わせて多様化してきた。特にインターネット上で回答を行うインターネット調査の登場は、その利便さによって社会調査のスタンダードな方法を変えつつある。本稿では、社会調査における投票率(投票したかどうか)を取り上げ、インターネット調査において投票率を測定するときにどのようなバイアスが考えられるのかを考察した後に、2021年衆院選時に実施したインターネット調査データを用いて、サンプリングバイアス、省力回答者バイアス、社会的望ましさバイアスの補正を試みた。分析の結果、インターネット調査で計測した投票率は、社会的属性によるバイアスよりも社会的望ましさバイアスによって大きく歪められていることが分かった。3種類のバイアスを補正した場合でも測定誤差の4割が埋めきれておらず、非回答バイアスを含む未計測のバイアスの存在が示唆される。
著者
川本 茉莉
出版者
公益財団法人 NIRA総合研究開発機構
雑誌
NIRAワーキングペーパー (ISSN:27582183)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-19, 2022-01-17 (Released:2022-10-19)

日本が直面する課題について解決策を探るためには、政策に関心を持つさまざまな人々の意見を集約し、それを踏まえた政策ビジョンを構築することが必要だ。本稿では、その第1段階である、後期高齢者医療制度に関する調査について報告する。今回の調査では、後期高齢者を対象とした医療費の窓口負担割合の引き上げに対する賛否に注目し、どのような人がどのような理由で賛成、もしくは反対するのかを探った。また、この議題に関する専門家の論考を読み、熟議や熟慮によって人々の考えがどのように変化するかを検証した。調査の結果、引き上げ賛成・反対派ともに、個人の負担能力に応じた負担をする「応能負担」が多く支持されていることが判明した。それに加えて、賛成派が現制度の問題点や現役世代の負担を懸念している一方で、反対派は低所得者の負担を心配していることが分かった。また熟慮による意見の変化では、もともと自分なりの意見を持っている人は、専門家の論考を読んでも、考えが変わりづらいが、そうでない人は、専門家の論考を読むことで、自分の考えを持つようになることが検証された。
著者
Yuka Suzuki Kaori Honjo
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.174-179, 2022-04-05 (Released:2022-04-05)
参考文献数
27
被引用文献数
2

Background: The number of people providing informal caregiving, including dual care, which is the combination of child and nursing care, is increasing. Due to the burden of multiple responsibility, dual care could negatively affect the health of informal caregivers. Previous research has not studied the effects of combining different types of informal caregiving. Therefore, we examined, among Japanese women, 1) the association between types of informal caregiving and self-rated health (SRH), and 2) difference in this association according to caregivers’ socio-economic conditions.Methods: We analyzed the nationally representative 2013 Comprehensive Survey of Living Conditions data of 104,171 women aged 20–59 years. The odds ratios (ORs) for poor SRH by type of informal caregiving (no care, childcare, nursing care, and dual care) were estimated using logistic regression. We also conducted sub-group analyses by socio-economic conditions (equivalent monthly household expenditure and educational attainment).Results: Compared to the no care group, the adjusted ORs for poor SRH of the childcare, nursing-care, and dual care groups were 0.92 (95% confidence interval [CI], 0.88–0.97), 1.33 (95% CI, 1.21–1.47), and 1.42 (95% CI, 1.23–1.64), respectively. There was no extra risk arisen from combining childcare and nursing care. The sub-group analyses indicated that neither household expenditure nor educational attainment affected the association between caregiving type and poor SRH.Conclusion: Our study found that informal nursing care and dual care impose a health burden on female caregivers, regardless of their socio-economic conditions. This highlights the importance of addressing the effects of informal caregiving on the health of women.
著者
バトラー後藤 裕子 Butler Goto Yuko バトラーゴトウ ユウコ
出版者
母語・継承語・バイリンガル教育研究会(MHB研究会)
雑誌
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究
巻号頁・発行日
vol.6, pp.42-58, 2010-03-31

本研究は、国立国語研究所が開発中の小学校・中学校の教科書コーパスを用いて、日本語学習児童生徒、および日本語を母語とする児童生徒が、教科学習を行うにあたり必要だと考えられる学習語のリストの作成を試みたものである。リストの作成は、基本的にCoxhead(2000)によって行われた英語における新学習語リスト(NAWL)の選出手順に従ったが、頻度だけでなく、日本語教育実践者による重要度の判断も加味し、最終的に1230語が選出された。ただ、このリストは現段階では試案としての位置づけである。今後、教育現場で使用してもらうことにより、妥当性や有効性の検討を行い、教科による特殊な意味や使い方などの情報を付加する必要があるのかなども吟味することで、質・量ともに、修正を重ねていく必要がある。
著者
池田 全之
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.227-246, 2004-09-18 (Released:2017-08-10)

教育思想史研究において、我々は過去のテキストを読解している。だが、この読解において過去のテキストの含意を、我々は無自覚に自身の意味づけ作用の中に回収してはいないか。教育思想史研究でなされてきた他者性を巡る議論を踏まえれば、こうした疑問が脳裏に去来する。現代思想の動向から考えれば、テキストが孕む理解不可能性(他者性)を極限まで尊重する解釈術としては、デリダの業績が真っ先に思い浮かぶ。だが、デリダも指摘するように、こうした解釈術の先駆けとして、ベンヤミンの批評手法がある。当初翻訳論として提起された、テキストの真理そのもの不在と諸翻訳の協働によるその再現という解釈術構想は、『ドイツ悲劇の根源』の序論で、現象の概念的弁別と理念におけるその救済の思想に拡張され、『パサージュ論』において、対立項の緊張の極みでの真理の閃き構想(静止状態の弁証法)に帰着した。本稿は、文芸批評の方法論から始まり社会批判の方法に深化したベンヤミンの解釈術の構造を、その鍵語であるアレゴリーに着目して解明し、破壊即救済というそれの特異なテキスト理解論を明らかにした。
著者
星野 歩子
出版者
Japan Society of Neurovegetative Research
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.350-353, 2022 (Released:2022-12-21)
参考文献数
6

エクソソームとは全ての細胞が産生する30-150 nmの微小胞で,元々は細胞のゴミ処理機構として認識されていた.しかし,近年になり放出されたエクソソームが他の細胞へ取り込まれることがわかり,新たな細胞間コミュニケーションツールとして着目されている.エクソソームにはタンパク質や核酸,脂質等が含まれており,末梢血中のエクソソームから得られるそれらの情報は体内状態を反映し,多くの疾患バイオマーカーとして期待されている.今回私は,エクソソーム含有タンパク質に特に着目し,末梢血中エクソソームのタンパク質組成が診断マーカーとなる可能性,そしてがん細胞が産生するエクソソームががんの臓器特異的転移に関わる機構について紹介する.
著者
上園 保仁 宮野 加奈子
出版者
Japan Society of Neurovegetative Research
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.358-365, 2022 (Released:2022-12-21)
参考文献数
25

近年,がん患者のための支持療法の重要性が叫ばれ,漢方薬が支持療法に資する重要な薬剤として位置づけられるようになってきた.また,漢方薬の効果,作用機序が科学的エビデンスをもって語られるようになり,処方の根拠として漢方医学の「証」に加え科学的エビデンスもその根拠となってきた.本稿では,代表的な漢方薬として半夏瀉心湯,六君子湯,大建中湯を取り上げ,基礎,臨床研究から得られた科学的エビデンスを紹介する.併せて今後の漢方薬研究の展望も紹介する.
著者
亀井 康富
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.267-274, 2022 (Released:2022-12-22)
参考文献数
20

骨格筋はヒトの体重の約40%を占める人体で最大の組織であり, タンパク質の形でエネルギー貯蔵を行っている。骨格筋は環境の変化に順応する可塑性があり, 適切な運動トレーニングと十分な栄養によって肥大し, 寝たきりや加齢などによって萎縮する。筋萎縮が生じると, エネルギー消費減少 (肥満) や, 糖取り込み能の低下・血糖値上昇 (糖尿病), そして生活の質の低下へと向かう。FOXO1は筋萎縮を誘導する主要な転写調節因子であり, 作用機序の理解が進んでいる。一方, 運動の作用は, 骨格筋だけにとどまらず, さまざまな臓器に影響する。運動時におけるPGC1α (核内受容体の転写共役因子・転写調節因子) によるミトコンドリアの増加や赤筋化など, 筋機能改善に関する代謝変化の分子機序が明らかになりつつある。本稿では, 筆者らの研究データも含めて, 骨格筋機能における遺伝子発現制御について整理する。
著者
Kohei Ogawa Naho Morisaki Aurelie Piedvache Chie Nagata Haruhiko Sago Kevin Y. Urayama Kazuhiko Arima Takayuki Nishimura Kiyomi Sakata Kozo Tanno Kazumasa Yamagishi Hiroyasu Iso Nobufumi Yasuda Tadahiro Kato Isao Saito Atsushi Goto Taichi Shimazu Taiki Yamaji Motoki Iwasaki Manami Inoue Norie Sawada Shoichiro Tsugane
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.168-173, 2022-04-05 (Released:2022-04-05)
参考文献数
33
被引用文献数
6

Background: Although prevalence of low birth weight has increased in the last 3 decades in Japan, no studies in Japanese women have investigated whether birth weight is associated with the risk of pregnancy complications, such as pregnancy-induced hypertension (PIH) and gestational diabetes mellitus (GDM).Methods: We used data from the Japan Public Health Center-based Prospective Study for the Next Generation (JPHC-NEXT), a population-based cohort study in Japan that launched in 2011. In the main analysis, we included 46,365 women who had been pregnant at least once, for whom information on birth weight and events during their pregnancy was obtained using a self-administered questionnaire. Women were divided into five categories according to their birth weight, and the relationship between birth weight and risk of PIH and GDM was examined using multilevel logistic regression analyses with place of residence as a random effect.Results: Compared to women born with birth weight of 3,000–3,999 grams, the risk of PIH was significantly higher among women born <1,500 grams (adjusted odd ratio [aOR] 1.60; 95% confidence interval [CI], 1.17–2.21), 1,500–2,499 grams (aOR 1.16; 95% CI, 1.03–1.30), and 2,500–2,999 grams (aOR 1.13; 95% CI, 1.04–1.22). The risk of GDM was significantly higher among women born 1,500–2,499 grams (aOR 1.20; 95% CI, 1.02–1.42), albeit non-significant association among women in other birthweight categories.Conclusions: We observed an increased risk of PIH among women born with lower birth weight albeit non-significant increased risk of GDM among Japanese women.
著者
坂梨 左織 田島 康子 青木 芳恵 宗正 みゆき 吉川 千鶴子 原田 広枝
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1_61-1_70, 2016-04-20 (Released:2016-12-02)
参考文献数
28

目的:学士課程における血圧測定に関する教育プログラム開発に向けて,看護基礎教育における教育上の課題を明らかにすることを目的とした。方法:新人看護師4名を対象としてグループインタビューによってデータ収集を行い,質的帰納的に分析した。結果:課題として,〈血圧に関する生体機能の理解〉〈バイタルサイン測定の目的の理解〉〈血圧測定方法の基本的原理の理解〉〈血圧測定に関する科学的判断に基づく援助〉〈血圧測定を受ける患者の心情に配慮したかかわり方〉〈血圧測定時に患者に触れることの意味の理解〉〈電子血圧計の原理と特性の理解〉の7つが明らかになった。結論:血圧測定に関する知識・技術を1~2年次だけでなく,3~4年次の臨地実習前および卒業前に再度学習し評価する新たな教育方法の必要性やリフレクションの有用性が示され,教育プログラム開発に貢献できる可能性が示唆された。
著者
石河 正寛 加藤 秀樹 有賀 敏典 金森 有子 金 炅敏 崔 文竹 松橋 啓介
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.1-10, 2022-10-01 (Released:2022-10-01)
参考文献数
17

自動車検査証の個別統計を用いて乗用車の全国市区町村別 CO2 排出量を推計した。また、同統計に含まれていない軽乗用車について考慮する簡便法として、自動車燃料消費量統計から作成した乗用車と軽乗用車の台あたり走行距離に関する一次関数式を仮定した推計を試みた。本研究を通じて、道路交通センサス OD 調査データを用いる地域別乗用車 CO2 排出量推計手法よりも、空間解像度および時間解像度の高い推計値を得ることが可能になったと考えられる。今後、道路交通センサス OD 調査データを用いた推計との比較や、軽自動車検査情報を用いる推計手法の検討を行いたい。
著者
有賀 敏典 松橋 啓介 米澤 健一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.847-852, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
11
被引用文献数
7 7

地域内人口分布は、住民の享受できるサービス、住民の生活行動、住民の受ける環境影響と密接な関係がある。将来望ましい地域内人口分布に誘導するためには、過去の地域内人口分布がどのように変化してきたのか、また、自然・社会増減がどのように寄与してきたのか分析することが不可欠である。本研究では、1980年から2005年の全国の国勢調査・基準地域メッシュデータを用いて、人口規模の小さいメッシュに関しても安定的な自然・社会増減数が得られるように工夫し、センサス間生残率法により各メッシュの自然・社会増減数の推定を行った。また、推定された自然・社会増減数を用いて、市域内での人口分布の偏在・均一化がどのように推移してきたか人口分布ジニ係数を用いて分析し、自然・社会増減が都市の偏在・均一化にどのように寄与してきたのかを分析した。その結果、市域の人口減少が起こる場合に、人口の少ないメッシュからより多くの人口が減少し、市域の人口分布を偏在化させていることが分かった。その要因は自然減少の寄与がメインであるものの、社会減少も人口を偏在化させる方向に働いていることを定量的に明らかにした。
著者
Keiji Muramatsu Hanaka Imamura Kei Tokutsu Kenji Fujimoto Kiyohide Fushimi Shinya Matsuda
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.163-167, 2022-04-05 (Released:2022-04-05)
参考文献数
25
被引用文献数
4 9

Background: Food allergies are common among children, and food-induced anaphylaxis (FIA) is a serious disease with a risk of death; however, there is yet to be a large-scale epidemiological study on causative foods in Japan. The purpose of this study was to identify foods that cause FIA in Japan.Methods: We identified 9,079 patients from the Japanese Diagnosis Procedure Combination Database who were admitted for treatment for FIA from April 1, 2014 through March 31, 2017. We extracted data on patient sex, age, use of epinephrine injections on the first day, prescription for epinephrine self-injection on the day of discharge, length of stay, readmission, and causative foods.Results: The most common causative food was eggs, followed by wheat, milk, peanuts, and buckwheat. The most common causative food in each age group was eggs among 0–3-year-olds, milk among 4–6-year-olds, peanuts among 7–19-year-olds, and wheat among those aged 20 years and older. Epinephrine was used at admission among about 40%, 50%, and over 60% of cases in which the causative food was eggs; wheat, milk and peanuts; and buckwheat, respectively. The proportion of cases with a prescription for epinephrine self-injection at discharge was highest among those in which the causative food was wheat, followed by peanuts, buckwheat, milk, and eggs.Conclusions: FIA due to peanuts has become as common in Japan as it is in the West. These results suggest the importance of taking measures to prevent peanut allergies because children cannot make adequate decisions regarding food.
著者
薊 理津子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.85-95, 2010-01-31 (Released:2010-02-28)
参考文献数
26
被引用文献数
6 2

本研究は,調査参加者に他者から注意・叱責を受けた過去の経験を想起させ,その他者(叱責者)の特徴によって,屈辱感,羞恥感,罪悪感の各々の感情の喚起に影響があるかどうかについて検討を行った。その結果,嫌いな人間に叱責された場合に屈辱感が喚起された。また,機嫌を損ねたくない人間に叱責を受けた場合に羞恥感が喚起された。さらに,好かれたい人間に叱責された場合に罪悪感が喚起された。また,構造方程式モデリングの結果,叱責者の違いが直接関係修復反応に影響を与えるのではなく,それらの間に罪悪感と屈辱感の感情が媒介することが見いだされた。つまり,罪悪感が関係修復反応を促進し,対照的に,屈辱感が関係修復反応を抑制した。