著者
稲月 正
出版者
西日本社会学会
雑誌
西日本社会学会年報 (ISSN:1348155X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.5-22, 2018 (Released:2019-05-21)
参考文献数
1
被引用文献数
2

熊本地震での車中避難者への調査データをもとに「どのような人が、なぜ車中避難を選択したのか」「車中避難者はどのような困難に直面していたか」について分析した。その結果、以下のことが示された。 ① 調査対象となった車中避難者の約3割は60歳以上であり、約2割は単身者であった。また、3割以上が震災前の世帯メンバーと別れた形で車中避難生活を送っていた。 ② 車中避難を選択した理由は「余震への不安」「自宅の損傷」「避難所の問題」に大別された。ただし「避難所の問題」は、さらに「人が多く落ち着かない」と「社会的弱者の排除」に分けられた。 ③ KH Coder を用いた計量テキスト分析からは、車中避難の選択理由として「混雑の回避」「社会的弱者の排除」「余震への恐怖」「自宅からの近さ」の4つが析出された。 ④ 車中避難生活での困りごととして「心身の健康」「トイレなどの衛生環境」「将来への不安」「相談体制の不備」があげられた。なお、トイレについては女性の方が明らかに困っていた。また、自宅の損壊が激しい人ほど将来に不安を抱いており、必要な情報が届いていないと感じていた。 最後に、これらの結果をもとに車中避難者支援の方向性を6項目にまとめた。
著者
河田 雄輝 須藤 恵理子 横山 絵里子
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1961, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】高度肥満者は治療が困難で,重篤な合併症や心理・精神的問題を有することが多く,治療法の選択に注意を要する。本邦ではBody Mass Index(BMI)30以上の肥満は欧米諸国に比べ少なく,BMI59以上ではリンパ浮腫を呈しやすい。今回高度肥満を契機に両下肢リンパ浮腫を生じ,両大腿内側にソフトバレーボール大の巨大な腫脹を来した症例を経験した。重篤なリンパ浮腫に対する圧迫療法は困難を極めたが,圧迫方法を工夫し,多職種と連携しながら取り組んだことにより,減量とリンパ循環障害の改善を認めたので報告する。【症例紹介】症例は36歳の男性,高度肥満症,脂肪性続発性両下肢リンパ浮腫,2型糖尿病,睡眠時無呼吸症候群,変形性股関節症,変形性膝関節症と診断された。現病歴は中学時60kg,高卒時140kg,20歳代190kgであり,2009年に減量目的でS病院に入院し234kgから200kgまで減量した。その後,運動不足や過食によりリバウンドかつリンパ浮腫の増悪が生じ,活動量の低下を来たしたため2013年当センターに入院した。入院時,身長169.7cm,体重234.7kg,BMI81.5であり,リンパ管が圧迫され両下肢リンパ浮腫International Society of LymphologyGrade(ISL)病期分類III期を呈し,右下肢に象皮症を生じ,両殿部~大腿内側にソフトバレーボール大の腫脹(大腿を含む腫脹最大周径150cm以上),リンパ漏や乳頭腫も認めた。屋内歩行はT字杖で自立していたが,息切れや心拍数の上昇により耐久性15mだった。【経過】肥満症の治療として,Nutrition Support Team(NST)介入による食事療法(1100kcal),看護と連携し毎日の体重変化を記載したグラフ化体重日記による行動療法,理学療法(PT)および作業療法(OT)による運動療法を入院翌日より開始した。並行してリンパ循環障害に対するスキンケアやリンパドレナージ,両下腿に対する圧迫療法,圧迫下での運動療法を組み合わせた複合的理学療法を施行した。また病識低下,意欲低下を認め,心理面に配慮しながら,肥満やリンパ浮腫の教育指導も行った。その結果,入院1ヶ月後には210kgまで減量したが,その後の減少は停滞した。入院3ヶ月後,リンパ漏や乳頭腫は軽減したが,両大腿部にリンパ液が貯留し,腫脹の硬結が悪化した。両大腿腫脹部の圧迫療法により貯留しているリンパ液を中枢へ還流する必要があると判断された。当初はロール状スポンジと弾性包帯にて圧迫を施行したが,重力や姿勢の変化,歩行動作で圧迫が外れやすく難渋した。OTと連携し,大腿部の形状に合わせて伸縮性のあるネオプレーンを用いたベルクロ付き圧迫帯を作製し,大腿全体を覆い固定した。看護師,OTと情報交換しつつ,日中を中心に時間を調整して圧迫療法を試みた。この結果,徐々に大腿部のリンパ液が中枢へ循環され,入院5ヶ月後の退院時には体重172kg,BMI58.8へ改善し,リンパ浮腫はISL病期分類II期,大腿を含む腫脹最大周径は圧迫開始時144cmから99cmまで縮小した。腫脹の縮小によって,徐々に運動量は増加し,T字杖歩行は耐久性100m以上に向上した。【考察】リンパ浮腫に対する圧迫療法は,高いエビデンスレベルにあるものの,不適切な圧迫は逆に浮腫を悪化させる可能性がある。本症例の腫脹に対する圧迫療法は,入院後3ヶ月間不良な皮膚状態であり困難を極めたが,その後の2ヶ月間は体格に合わせた圧迫帯を用いて適応できた。本症例ではリンパ浮腫の重症度に応じた介入が,リンパ循環障害の改善と体重の減量,歩行耐久性の向上をもたらしたと推察される。肥満やリンパ浮腫に対する教育指導はリンパ浮腫の改善のみならず,ADLやQOLの改善にも有効であった。【理学療法学研究としての意義】合併症や精神的問題を有する高度肥満症には,リンパ浮腫の重症度に応じた対応,患者個人に合わせた工夫を多職種と綿密に連携することが有効であると考えられた。また,心理状態に配慮しながら肥満や合併症への患者教育を行うことも効果的である。
著者
畑中 祐子 杉田 聡
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.49-58, 2003-08-25 (Released:2016-11-16)

患者は入院をすると、普段とは違う入院環境の中で生活する。入院環境には様々な制約が伴うが、実際に患者が生活に対してどのように感じているかについてはあまり注目されてこなかった。そこで本研究では、患者がどのような意識をもちながら入院生活を送り、入院環境がどのような影響を患者にもたらすのかを明らかにすることを目的とした。入院患者24名に、入院前、入院初期、後期に渡り追跡調査を実施し、回答には、「嫌だ」、「仕方がない」、「全く気にならない」の3つの選択肢を用い、患者の諦めや我慢というような理由を聞き出した。患者は入院すると日常生活とは違う入院環境、共同生活に適応するため、「(病院だから)当たり前、仕方がない」という意識を持つことで、準拠枠を変化させていた。患者の入院生活に対する諦めという意識の変化を知ることは、入院生活を快適にかつ、療養に専念できるように環境を整えられる援助につながると考えられる。
著者
木下 幹朗 柚木 恵太 得字 圭彦 川原 美香 大庭 潔 弘中 和憲 大西 正男
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.270-275, 2008-06-15 (Released:2008-07-31)
参考文献数
34
被引用文献数
4 2

ナガイモのガンに対する機能性を探索する目的で,1,2-ジメチルヒドラジン投与マウスにおける大腸腺腫(ACF)発症に与える食餌性ナガイモ粉末の効果を検証した.ナガイモ粉末をAIN-93G標準飼料のコーンスターチ部分に100%または50%置き換えて投与したところ,大腸腺腫の発症が有意に抑制された.また,加熱および非加熱の生ナガイモ粉末ともに同様の効果が認められた.DNAマイクロアレイを用いて大腸での遺伝子の異同を調べたところ,ナガイモ投与群ではアポトーシスを誘導する遺伝子群の増加が認められた.
著者
細野 敦之
出版者
福島県立医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

プロポフォールの長期投与によりその麻酔・鎮静作用に対して耐性が生じると示唆されているが、その機序は明らかではない。カンナビノイド受容体はプロポフォールの麻酔・鎮静作用に対する耐性形成にもCB1受容体の変化が関与している可能性がある。本研究は、ラットを用いてプロポフォールの長時間投与によりCB1受容体のmRNA転写物量、タンパク発現量、ならびに受容体の細胞内局在が変化するか否かをそれぞれreal-time PCR法、ウェスタンブロット法、免疫染色法を用いて明らかにすることが目的である。これらによって、プロポフォールの麻酔・鎮静作用に対する耐性形成の機序を明らかにする。
著者
白井 展也 樋口 智之 鈴木 平光
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.88-94, 2015-02-15 (Released:2015-03-31)
参考文献数
26

緑茶抽出物と魚油の6ヶ月間の同時摂取が,高齢者の認知機能と血漿脂質に与える影響について実験した.緑茶抽出物と魚油の同時摂取は,摂取前に比べて,6か月後の知能評価スケールを有意に改善した.また,緑茶抽出物と魚油摂取群の6か月後の知能評価スケールの増加は,プラセボ群に比較して,有意に高かった.これらの事から,緑茶抽出物と魚油の同時摂取は,高齢者の認知機能を改善している可能性が示唆された.血漿中のDHAおよびEPAの割合は,両群とも摂取前に比べて6ヶ月目で高くなった.しかし,3ヶ月目において,緑茶抽出物および魚油摂取群のDHAおよびEPAの割合は,プラセボ群に比べて,有意に増加を示した.これらの変化は,途中,試験群による違いが見られるものの,最終的に食材に提供される魚介類の増加が影響したと考えられた.血漿中の中性脂肪含量は,緑茶抽出物および魚油摂取群において,摂取前に比べて,6ヶ月目に有意な低下が示され,高齢者においても,緑茶抽出物および魚油同時摂取は中性脂肪の低下に有効である可能性が示唆された.これらの事から,緑茶抽出物と魚油の同時摂取は認知機能の改善に有効である可能性が示唆され,また,高齢者においても中性脂肪の低下に有効であると考えられた.
著者
小林 瑛美子 中川 栄二 宮武 千晴 竹下 絵里 石山 昭彦 齋藤 貴志 小牧 宏文 須貝 研司 佐々木 征行
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.76-82, 2015-06-30 (Released:2015-08-06)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

症例は10歳女児。新生児期脳出血後遺症による非定型欠神発作を認めていたが抗てんかん薬(クロナゼパム、カルバマゼピン、ラモトリギン)の内服により疲労時に短い発作症状を認めるのみに落ち着いていた。9歳時に乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン第1期1回目及び2回目を接種した。2回目接種後から1カ月経過した頃より非定型欠神発作が群発するようになった。頭部MRIでは右側大脳・脳幹部の萎縮を認めていたが進行はしていなかった。脳波では2.5~3 Hzの全般性棘徐波を睡眠ステージに関係なく連続的に認め、電気的なてんかん重積状態を示した。髄液中の抗グルタミン酸受容体抗体の上昇を認め、てんかん発作の急激な悪化に自己免疫異常が関与していると考え、免疫グロブリン静注投与を行ったところ発作頻度が減少し脳波上の改善も得られた。臨床経過からてんかん発作の急性増悪因子として日本脳炎ワクチン接種が考えられた。
著者
学会運営委員会
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.133-135, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)

日本作業療法学会では,「日本作業療法学会の優秀演題賞表彰に関する規程」に基づいて,第53回日本作業療法学会(福岡)から優秀演題が表彰されることとなった.演題査読システムの演題審査得点の上位演題を対象とした一次審査,当日のスペシャルセッションでの発表を対象とした二次審査で,最優秀演題賞と優秀演題賞が厳正な審査によって選出される.
著者
佐藤 喜和 中下 留美子 坪田 敏男 中島 亜美
出版者
日本クマネットワーク
巻号頁・発行日
pp.4-13, 2014-03

「ツキノワグマおよびヒグマの分布域拡縮の現況把握と軋轢防止および危機個体群回復のための支援事業」報告書 (日本クマネットワーク編)
著者
石原 つぼみ
雑誌
日本文學 (ISSN:03863336)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.159-173, 2012-03-15

1 0 0 0 人力車

著者
斉藤俊彦著
出版者
産業技術センター
巻号頁・発行日
1979
著者
江村栄一 中村政則編
出版者
三省堂
巻号頁・発行日
1974
著者
中嶋 聡美 栗岡 隆臣 古木 省吾 原 由紀 井上 理絵 鈴木 恵子 梅原 幸恵 小野 雄一 佐野 肇
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.253-261, 2022-08-30 (Released:2022-09-17)
参考文献数
16

要旨: 高齢中等度難聴者の QOL を, 包括的健康関連 QOL, 主観的幸福度, 社会活動性を評価する質問紙を用いて調査すること, さらに各尺度の相互関係, 各尺度に影響する要因を検討することを目的として研究を実施した。 対象は北里大学病院耳鼻咽喉科の補聴器外来または難聴外来に, 2019年10月から2020年12月までに受診した65歳以上の中等度難聴者149名であった。 質問紙は「基本的質問」,「SF-36ver2」,「Subjective Well-Being Inventory (SUBI)」,「いきいき社会活動チェック表 (社会活動)」で構成した。SF-36 の平均値と国民標準値の比較では70歳代の Mental Component Summary (MCS) のみ有意な低下を認めた (p<0.025)。MCS と SUBI, 社会活動と MCS, SUBI に正の相関を認めた。MCS の重回帰分析において, 平均純音聴力レベルの悪化に伴い改善を認め (p<0.05), 補聴器装用が悪化に影響する傾向があり (p=0.072), 通院している高齢中等度難聴者の精神的 QOL の特徴として注意を払うべき結果と思われた。 今後の検討でも各評価法を併用して QOL を検討することが有用と考えられた。