- 著者
-
松枝 隆彦
- 出版者
- 公益社団法人 日本分析化学会
- 雑誌
- 分析化学 (ISSN:05251931)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.2, pp.110-115, 1980-02-05 (Released:2010-02-16)
- 参考文献数
- 23
- 被引用文献数
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4
2
活性炭が水中の微量水銀をよく吸着する性質を利用して,水銀(II)及びメチル水銀(II)をパッチ法により活性炭(ダルコG-60, 225メッシュ以下)に捕集濃縮させ,ゼーマン効果を用いたフレームレス原子吸光装置(日立ゼーマン水銀分析計501形)により定量した.試料水500mlに1N塩酸5ml及び活性炭50mgを添加し,70分間振り混ぜた後,メンブランフィルター上に活性炭をろ別する.これを60℃で30分間乾燥し,その一定量を試料ボートに採り吸光度を測定した.活性炭に吸着された水銀について0~50ngの範囲で直線の検量線が得られた.又,繰り返し精度は,標準偏差パーセントで8.3%(10ngHg/10mg活性炭)であった.検出下限(S/N=2)は0.5ngであった.最適条件における水中のppbレベルの水銀(II)及びメチル水銀(II)の回収率はそれぞれ97%及び96%以上であった.還元気化法で著しい妨害を示す硫化物イオンの影響は認められなかったが,チオ硫酸イオン,金イオンが共存すると負の誤差を生じた.本法により,水銀(II)及びメチル水銀(II)をそれぞれ0.25ppb含む混合試料について分析した結果,還元気化無炎原子吸光法によるものとよい一致を示した.