著者
大嶋 彰 新関 伸也 神林 恒道 梅澤 啓一 松岡 宏明 泉谷 淑夫 赤木 里香子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

全国小・中学校の図画工作及び美術科における鑑賞学習の実態調査を行い、その結果を集計して『図画工作科・美術科における鑑賞学習指導についての調査報告書』を作成した。それによって、現在の学校における美術教育の問題点、指導者の鑑賞学習に対する意識、鑑賞学習の内容・方法・評価、教員養成における大学教育カリキュラムの現状と問題点が明らかになった。また、アンケートの「自由記述」では、教師の授業に対する様々な悩みや本音を読み取ることができ、理論と実践のすき間を埋める基本的な資料となった。以上の報告書をもとにして、研究分担者が各自の課題に基づき研究を進め、各学会において発表や投稿論文としてまとめることができた。その様々な研究は、図画工作や美術における鑑賞学習のカリキュラム作成をする上で必要とされる学校教育の側面はもとより、生涯学習や幼児教育、書道教育などの広い視点から進められた。また、日本の鑑賞教育だけではなく東アジアにおける鑑賞教育の実情把握と研究交流の視点から、韓国の研究者を招き「鑑賞」を中心に据えたシンポジウムを開催した。そこでは、日本の鑑賞教育の歴史的経緯や学校教育の実態などを報告しながら、両国に共通する課題や相違点を明らかにすることができた。一方、鑑賞学習のカリキュラムモデル開発のために、小・中学校を中心に鑑賞学習の事例収集及び分析を行い、それに基づきカリキュラムモデルの構造化を試みた。そのモデル化は、鑑賞学習の実践事例数をさらに増やした上で分析を行い、妥当性を検証する必要がある。今後の研究課題として、鑑賞学習を通して育てるべき能力や「総合的な学習」や「特色ある学校づくり」と結びついた具体的な学校教育における「鑑賞学習のカリキュラムモデル」の開発が必要である。
著者
山木 朝彦
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

鑑賞教育の充実のためには、学校における鑑賞の学習と美術館における鑑賞の学習の内容と方法が整合性をもつように、計画されなくてはならない。このため、美術館と学校教育の連携が求められている。この連携の方法と連携によって開発される教材について、次の各項目で研究を展開し、成果を公表した。1、積極的に学校との連携を推し進めてきた美術館が、現在、どのような具体的な方法によって学校連携を展開しているのか、美術館四館(世田谷美術館・宇都宮美術館・東京都写真美術館・川崎市岡本太郎美術館)を訪問し、各館の学芸員に対面によるインタビュー形式の調査を行い、それぞれの館で展開している学校連携の方法について調査し、平成17年3月に冊子としてまとめた。また、学校との連携に関して先駆的な役割を担った「横浜美術館子どものアトリエ」の基本コンセプトについて聞き取り調査を行い、そこからワークショップなどのあり方について検討し、研究成果を美術科教育学会(平成19年3月)で発表した。2、ワークシートやティーチャーズガイドの開発と、啓発的な展示の試みを模索しているテイト・ギャラリーの教育機能について考察し、平成17年3月に学会誌論文として発表した。3、「鑑賞教育推進プロジェクト」という研究会の一員として、この美術館から発行された四種類のワークシートの開発にかかわった経験を活かし、ワークシートの開発のプロセスと、教材としての有効性をつぶさに記録し分析した。その成果を平成18年3月発行の研究成果報告書にまとめた。4、ワークシートと併用することによって教育的効果をあげるパワーポイント教材を作成し、実際の授業で活用し、その効果について成果報告書のなかで考察した。5、美術館だけではなく博物館・歴史資料館などを利用して、さまざまな造形的な作品を鑑賞する方法の一例として、日本の世界遺産の鑑賞の仕方について検討し、教材にかかわる図書の鑑賞にかかわる箇所を執筆した。
著者
山口 健二 赤木 里香子
出版者
岡山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

三年間の研究の最終年度である本年度は、美術館ワークショップの調査として、大原美術館の夏休み子ども向けイベントである、チルドレンズ・アート・ミュージアムの来館者を調査した。これは三年間の継続課題であり、総括作業を経たのちに、成果はおって報告する予定である。本調査により、美術館ワークショップ経営を実証的見地から改善支援をするという本課題の目的にとって、基礎的データが得られることが期待される。さらに本年度は、岡山大学の附属図書館と共同開催した子ども向けワークショップの総括事業に重点的に取り組んできた。同図書館では、池田家文庫と呼ばれる江戸時代の古書籍・絵図を多数収蔵している(研究代表者はその普及活動を企画する委員会に参加してきた)。連携協力者である、赤木里香子准教授(岡山大学)とともに、ワークショップ・プログラムの内容、広報体制、ワークショップ支援員としての大学生の教育などについて精査した結果をふまえて、国際美術教育学会(InSEA)と、岡山大学ユネスコチェア事業として開催されたシンポジウム(「文化財の複製を活用した教育普及を考える」)で問題提起し、討議をおこなった。先駆的な取りくみを見せる美術館のケース・スタディも三年間で蓄積が進んだ。昨年度までの訪問館に加え、名古屋市美術館、三重県立美術館、滋賀県立近代美術館、長崎県美術館などで教育普及活動実践から、今後のアウトリーチ活動のあり方について指針をえた。さらに本研究を通じて共同研究を深めてきた岡山県立美術館での動きとして、来年度より学校と美術館の連携関係構築のあり方を検討する委員会が立ち上がった。研究代表はその設立準備に関わるとともに、新たに立ち上がる委員会の委員に任じられることとなり、これまでの研究を踏まえた参画が可能となった。本研究の社会還元的な面での成果といえよう。
著者
井上 洋一 加島 勝 小林 牧 鈴木 みどり 白井 克也 神辺 知加 鷲塚 麻季 藤田 千織 鬼頭 智美 遠藤 楽子 田沢 裕賀 高梨 真行
出版者
独立行政法人国立文化財機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

アンケート調査に基づき抽出した国内外の主な博物館・美術館等における教育・普及事業の現地調査を通し、博物館教育・普及事業の現状と課題を明確化させた。また、国内外の博物館関係者らとの連携により、国の違いによる伝統と文化の多様性の意義を確認するとともに、そこから日本の伝統文化に関する先駆的教育・普及理論のあるべき姿を提示した。さらに、新たな古美術鑑賞法や実践的な博物館教育・普及プログラムを制作・実施した。
著者
小野 文子
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

地域美術館と教育現場との連携によっで行う鑑賞教育プログラムの開発を目指しで,今年度は以下のような研究を行なった。(1)長野県内の小・中学校を象として行なった,鑑賞教育に関するアンケート調査の結果の分析,及びアンケート回答者への結果報告。(2)長野県に所在する美術館・博物館を対象として行なった教育普及活動に関するアンケート調査の結果の分析。(3)学校教育の現場において,より充実した鑑賞学習を実現するために,信州大学教育学部附属長野中学校において,写生会の事前授業として鑑賞の時間を設け,第1学年(240名)全員に風景画を鑑賞する授業を行った。この授業では,風景画の歴史と鑑賞のポイントについで講義した後,長野県信濃美術館の協力を得て,東山魁夷の作品を美術室に持参してもらい,作品鑑賞を行なった。この写生会のための事前授業は附属学校の美術を担当する教諭との共同研究の一環のでもあり,来年度には,教育実習生のための鑑賞教育の教材開発へと発展させる方向で研究を進めることを合意した。(4)大学の講義である「美術史・美術理論研究」において,学習指導要領で定められている鑑賞学習について吟味すると共に,教育現場においてより有効,かつユニークな鑑賞教育を行うことを目指した教材開発を試みた。また,学生が考案した教材を用いて,須坂市内の小学校の協力を得て実習を行なった。尚,鑑賞対象として,信州大学教育学部で所蔵している彫刻作品を用いた。
著者
稲庭 彩和子
出版者
神奈川県立近代美術館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

美術館活動を素材とした汎用的教材を開発、制作した。制作の過程では、学校の先生とともに検討を重ね、その意見を反映させた授業案を制作した。授業案は印刷物として研修で配布をすることを予定しているが、インターネット上でも公開をしている。
著者
加藤 浩 三輪 眞木子 近藤 智嗣
出版者
独立行政法人メディア教育開発センター
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、博物館学習における効果的な学習支援の学習支援モデルを構築し、その効果を検証することを目的とした。本研究では、提案する学習支援モデルとして、自立的な解釈の前提となる、展示のテーマ、見るポイント、作品間の関連性をあらかじめ学習させることによって、展示室での自立的な展示解釈を支援するCognitive Orientation of Museum(COM)モデルを構築した。その効果検証のため、千葉県立美術館の常設展「浅井忠とバルビゾン派」をテーマにし、COMモデルの教授過程にのっとったCOM教材を開発し、実際の美術館において美術鑑賞初心者を対象に効果検証実験を実施した。その結果、COM教材を利用すると、教材利用後は展示鑑賞の見るポイントが絞れ、さらに鑑賞体験を重視する傾向が生まれることが明らかになった。また教材利用後、鑑賞体験を行うと、展示室滞在時間が延び、独自の解釈が増え、鑑賞後は満足感が高まり、再来館への動機付けが高まることが分かった。COMモデルにのっとったCOM教材が事前学習に効果的なことが明らかになったので、次に館内支援と連動させる館内外における連携的学習支援システムを開発した。館内外における連携的学習支援システムは国文学研究資料館の特別展「源氏物語-千年の輝き-」をテーマにし、ウェブベースのCOM事前学習教材とPDAベースの館内ナビゲーション教材を開発した。その後、実際の資料館において国文学資料に詳しくない初心者を対象に効果検証実験を行った。COM教材と連動させる館内ナビゲーション教材は、事前のCOM教材で学習した内容の中で、利用者の興味に従いテーマを選択すると、解説する展示、紹介順、解説内容が変化する仕組みになっている。実験で本システムを利用してもらった結果、館内ナビゲーション教材は展示鑑賞中の行動に沿って開発しなければならないという課題が見つかった。
著者
ヤマンラール水野 美奈子 杉村 棟 関 喜房 小柴はるみ
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、イスラーム世界の白羊朝(1378-1508のヤアクーブ・ベク(1478-1490の宮廷で編纂された2冊の詩画帳(ムラッカア(トプカプ宮殿美術館所蔵、登録番号H.2153, 2160の書・絵画合計2152点の作品の綿密な分析・分類・研究によって、15世紀の白羊朝を中心とした書画芸術の動向を解明した。本研究によって従来ティームール朝美術の影に隠れていた白羊朝美術の独自性が鮮明になり、白羊朝が東西交流の重要な拠点の一つであることを確認した。
著者
前野 深
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

火山性密度流の海への突流入に伴い発生する津波の規模や,密度流の動きを支配する物理パラメータを明らかにするために,二層流モデルにもとつく水理実験と数値実験を行った.その結果,津波の発生効率には密度流の流量が大きく寄与すること,密度流の動きには主に底面摩擦抵抗が大きく効くことがわかった.また,モデルを1883年クラカタウ火山噴火に適用し,火砕流の海への突流入がこの噴火の津波発生機構として有力であるという結論を得て,モデルと手法の有用性を示した.
著者
皿井 舞
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究のもっとも大きな成果は、これまでほとんど知られていなかった京都・神光院薬師如来立像をはじめとする平安時代前期の彫像を実査し、とりわけ本像が9世紀初頭の天長年間(824-834)頃に百姓がつくったものであることを明らかにしたことである。こうした市井の造像のありようを史料から裏付けることによって、官営工房作の像ばかりに注目されがちであった平安時代前期彫刻の多様性を考える手がかりが得られた。
著者
佐々木 晶 永原 裕子 杉田 精司 山中 千博
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

月岩石・隕石の実験室での反射スペクトルと月・小惑星の天体観測スペクトルには大きな違いがある。観測スペクトルは、全体的に暗く、波長が短いほど反射率が低い「赤化」の傾向があり、輝石やカンラン石に特有の1ミクロンの吸収帯が相対的に弱い。この月・小惑星表面の反射スペクトルの変化は、シリケイト中に含まれる酸化鉄が、ダスト衝突により還元されてナノメートルスケールの金属鉄微粒子となる「宇宙風化作用(Space Weathering)」と呼ばれる過程で天体表面が変成されたためと考えられている。研究申請者のこれまでの研究では、世界で初めてパルスレーザーを用いたシミュレーション実験でこの微小鉄粒子の生成を確認した。これまではサンプルをペレット状に固めるときに均等に圧力がかかるという理由で円形のサンプルホルダーを使用していた。昨年度は微小量サンプルの照射のために、皿状のサンプルホルダーを製作して使用した。本年度は、それを改良して微小量の隕石サンプルを照射できるようにした。また、導入した試料粉砕システムにより、隕石中に含まれる金属鉄も250ミクロン以下に粉砕できるようにした。この結果、これまでの隕石粉末試料照射と比較すると鉄の影響を正確に見積もることができるようになった。「はやぶさ」ターゲット天体のイトカワの反射スペクトルを再現するため、LL・Lタイプの普通コンドライトを中心として様々な隕石試料の照射実験を行った。粉末試料だけではなく、隕石固体表面へのパルスレーザー照射を行い、反射スペクトルの変化が起きることを確認した。岩石表面の色変化の確認は世界で初めてである。
著者
柚崎 通介 松田 恵子 飯島 崇利
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

成熟した個体の脳におけるシナプスの生成・消滅を支える分子機構については未だに不明な点が多い。その原因の一つは、成熟脳におけるシナプス形成や消滅は、数が少なく、かつ時間的に揃っていないことである。私たちはこれまでにδ2グルタミン酸受容体とCbln1分子が、発達時のみでなく成熟脳においてもシナプスの機能的可塑性と新規形成を制御することを見いだし、δ2受容体とCbln1シグナル経路を特異的に活性化ないし不活化する分子ツールの確立に成功した。これらの独自の分子ツールを活用することにより小脳と海馬をモデルとして、成熟脳におけるシナプスの機能的・形態的可塑性の分子機構を明らかにするとともに、これらの過程を外的に制御することを目指している。最近、δ2受容体のN末端部分をδ2受容体欠損動物の小脳に強制的に発現させると、わずか24時間以内に新たなシナプスが形成され、成熟後においても運動失調症状が劇的に改善することを見いだした(J Neurosci,2009)。また、組換えCbln1を小脳に注入すると、プルキンエ細胞樹状突起上の棘突起に特異的に結合すること(Eur J Neurosci,2009)、小脳における運動学習の成立過程を制御できること(投稿準備中)、も分かってきた。面白いことに、いったん成立した運動記憶については、平行線維-プルキンエ細胞シナプスが存在しなくとも、正常に想起でき、かっ消去できた。このように、記憶の各相における可塑性シナプスの移動機構の解明の糸口もつかみつつある。
著者
加藤 忠史 垣内 千尋 林 朗子 笠原 和起 窪田 美恵 福家 聡 岩本 和也 高田 篤 石渡 みずほ 宮内 妙子 亀谷 瑞枝 磯野 蕗子 小森 敦子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

XBP1を持たない神経細胞では、BDNFによるGABA神経細胞マーカーの発現増加が減弱していた。また、XBP1の標的遺伝子であるWFS1のノックアウトマウスは、情動関連行動の異常を示し、変異Polg1トランスジェニック(Tg)マウスと掛けあわせると、Tgマウスの表現型を悪化させた。Polg1マウス脳内で、局所的に変異mtDNAが蓄積している部位を同定した。
著者
時野 隆至 古畑 智久
出版者
札幌医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

癌遺伝子の増幅や癌抑制遺伝子の欠失を伴う染色体変化はがん細胞の特徴である.本研究では短いゲノム断片を解析しゲノム上のDNAコピー数以上を示す領域を検出する方法としてデジタルゲノムスキャニング(DGS: Digital Genome Scanning)法を開発し,胃癌細胞株におけるゲノムコピー数異常の検出を試みた.胃癌細胞株ゲノムDNAを制限酵素処理した断片を回収し,連結したクローニングしたDNA断片の塩基配列を決定した.取得した塩基配列をヒトゲノム上にマップし,ゲノム上での断片の分布密度をもとにコピー数異常を示す領域を推定した.DGSで予測されたゲノム増幅領域に存在する癌遺伝子の候補については,次に,Southern blot, FISH, real-time RT-PCR, Western blot法などの分子生物学的手法で検証を行った.このDGS解析により,胃癌細胞株の第12番染色体短腕約0.5Mbのゲノム増幅が同定され,同領域に存在する癌遺伝子K-rasのゲノム増幅を確認した.K-ras領域のゲノム増幅は胃癌細胞株18種中4種で,また臨床胃悪性腫瘍50例中4例で検出された.また,K-rasの遺伝子増幅を示した胃癌細胞株ではMAP kinase(ERK1/2)の恒常的活性化が観察された.以上より,DGS法はがんを代表とするゲノムコピー数異常を呈する疾患の原因遺伝子探索において有効な手法となりうることを実証した.
著者
塩濱 愛子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

前年度、本研究の結果として典型的な欠失領域の両端であるLCR22-2とLCR22-4周辺及び欠失領域から、多型が見込まれる20塩基対程度のマイクロサテライト領域を36箇所抽出し、これらのPCR産物を蛍光標識・多型同定する高速ジェノタイピング解析法を確立した。その結果、多型が認められる24箇所のマーカーを選別した。本年度は、患者由来の培養細胞を用いて本解析法の妥当性を確認した。22q11.2微小欠失が確認されているDGS患者より樹立された細胞株(GMO7939B、GMO5876、GM13325、GM10382A、GMO3479、GMO7215)からゲノムDNAを抽出し、この設計されたプライマー群を用いて微小欠失領域に対するジェノタイピング解析を行った。また、実際に欠失領域を検出する際に問題となるのは、ゲノムDNAの精製法である。現在はFISH法による診断法のため血液採取が必要となるが、本方法では少量のゲノムDNAのみで解析可能である。そこで口腔粘膜からのゲノムDNA採取法を検討し、歯間ブラシで軽く10回こする程度で、本解析に必要とする十分量のDNAを採取できることを確認した。
著者
垣花 京子
出版者
筑波学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

数学教育の中でIT活用が始まり20年以上になる.最近は誰でもどこでも,同じような環境でITの活用ができ,研究者の間では,数学教育で利用することで動機付けになり,その学習効果が示されている.しかし,あまり多くの人々に利用されていない.一方,関数に対して苦手意識が強い人も多く,関数と聞いただけで敬遠し,関数を利用して現象を表現したり,判断したりする機会に直面したとき,考えようともしない.この原因として,中学,高校では,1次関数,2次関数とばらばらに教えられ,面白さがなく,式操作中心になりがちで,難しいという印象だけが残っていることが考えられる(Steen, 1990, p.4).本研究では,このような原因を克服するために,人々が比較的使い慣れている表計算ソフトとソフト本体がなくても動的に図形の操作ができる環境を使い,いろいろな関数を動的に見たり,数値を操作したりしながら,グラフや図,式,数値を道具として使いこなし,関数に関する探求,問題解決ができるようにし,"関数センス"を育てるための統合的なアプローチを構築した.今までの学校教育とは,違った方向で,ITの活用により拡張できるところは拡張するよう試みた.成果物としてCD-Rに焼いた電子テキストとWebサイト(http://www.tsukuba-g.ac.jp/t/kakihana/kansu/)がある.これらは,それぞれの場面で,表計算ソフトExcelと無料でPlug inするだけで動的環境を実現できる図形学習ソフトCabri GeometryとCabri 3Dを使って関数の探求ができる.本研究で扱った教材は,ケーススタディやワークショップでの実施を繰り返しながら,改良を加えた.できるだけいろいろな形の関数に接することができるような場面を作り,数値を操作し,視覚的に変化を観察しながら関数の特性をつかみ,問題解決できる.
著者
菊谷 昌浩
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

自由行動血圧測定での、拡張期血圧と収縮期血圧の回帰係数が、その個体の動脈硬化を反映するとされAASIと呼ばれる。以下の3点を明らかにした。(1)血圧データ数が35個以上であれば、脳心血管死亡の予後予測能には影響を与えないこと。(2)家庭血圧によって導出されたAASIは脳梗塞発症を予測すること。(3)家庭血圧によって導出されたAASIは頸動脈中膜内膜複合体厚と弱い関連があること。
著者
西田 保
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、体育における学習意欲を多面的・総合的に診断するシステムの開発であった。具体的には、(1)「体育における学習意欲」「学習意欲の支持要因」「学習行動の選好」を測定する尺度の信頼性および妥当性を、4府県下(愛知県、滋賀県、大阪府、熊本県)の公立小学校5年生および6年生の男女計1,562名を対象に検討すること、(2)体育における学習意欲の類型化をクラスター分析によって特定すること、(3)体育授業以外への興味・関心(他教科の興味、諸活動の興味と体育の楽しさ)も含めて診断システムとすること、(4)各尺度の評価基準、診断プロフィールを作成することを通して、体育における学習意欲診断システムを完成させることであった。種々検討の結果、本診断システムは、体育における学習意欲(短縮版AMPET)、学習意欲の類型(パターン)、学習意欲の支持要因、学習行動の選好、他教科や諸活動の興味、現在行われている体育授業の楽しさを測定できることが明らかとなった。また、各尺度は5段階評価によって診断プロフィールの形で示すことが可能となり、本診断システムを実際に利用した5人の体育担当教師に対して感想を求めたところ、いずれも肯定的な内容であった。以上のことから総合的に判断して、「体育における学習意欲診断システム」は、教育の実践場面において十分有効利用できるものであることが認められた。本診断システムによって提供された情報をどのようにして実際の指導に結びつけていくのかという具体的な学習指導への橋渡しが今後の課題である。