著者
岡本 奈美
出版者
一般社団法人 日本小児リウマチ学会
雑誌
小児リウマチ (ISSN:24351105)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.50-57, 2022 (Released:2022-02-17)
参考文献数
22

国内で初となる「小児非感染性ぶどう膜炎初期診療の手引き2020年版」が発刊された.その背 景には,希少疾患に対する認知度の低さ,難治性病態にも関わらず治療ストラテジーが未確立と いう状況があった.そのため,最適治療・管理の標準化と,小児科医・眼科医の強固な連携を目 指し,小児リウマチ医・眼科医が協同して策定された. 小児非感染性ぶどう膜炎は自覚症状が乏しく,診断時すでにある程度進行し合併症を有する例 も少なくない.また,全身疾患の一症状として現れることや,全身治療を要する場合もあり,両 者の連携が重要となる.本稿では,海外・国内における疫学調査など文献報告を基に小児非感染 性ぶどう膜炎の実態について紹介し,「なぜ手引きが必要なのか」について概説する.そのうえで, 手引きに記載の事項と,活用方法のエッセンス・注意点を説明する. この手引きが活用されることで,小児にも非感染性ぶどう膜炎患者がいることが広く認知され, 新たな診断ツールや,治療薬の適用拡大が進み,早期診断・予後改善につながることを期待する.
著者
永井 宗徳 灰谷 知純 川島 一朔 熊野 宏昭 越川 房子
出版者
日本マインドフルネス学会
雑誌
マインドフルネス研究 (ISSN:24360651)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.8-13, 2016 (Released:2022-02-22)
参考文献数
18

マインドフルネスとは,「今ここでの経験に,評価や判断を加えることなく意図的に,能動的な注意を向けること」であり,その訓練は,近年,うつや不安の治療に使用されている。訓練の途上では,能動的に注意を制御する練習が行われ「注意機能」が向上するとされ,また,嫌悪的な自身の感情や身体感覚などを回避しようとする「体験の回避」が低減するとされている。本研究ではマインドフルネス呼吸法を使用し,日常的に行える,短時間かつ短期間の簡易な実習でも,注意機能を向上させ,体験の回避を低減させるのかについて検討した。注意機能の計測にはAttention Network Test を用いた。その結果,訓練により体験の回避が低減されることが有意傾向で示された。この結果は,自己の体験をありのままに受け入れることが促進されたことによると考えられる。しかしながら,注意機能に変化は認められなかった。注意機能を向上させるには本実験のような教示・訓練条件では不十分であったと考えられる。
著者
石原 舜三 佐藤 興平 左 容周 金 鍾善
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.143-158, 2006
被引用文献数
1 3

花崗岩風化殻への REE の濃集を見るために,韓国の中部の花崗岩地域 4 箇所(平均降雨量 1,300 mm/ 年)で予察的な調査を実施した.嶺南帯と沃川帯境界部に沿って伸長する三畳紀の片麻状黒雲母花崗岩(帶江岩体)は REE に富み,平均 414 ppm REE+Y,LREE/HREE = 4.8 である.沃川帯の三畳紀咸昌(ハムチャン)花崗岩類は,アルカリとREEに富むグループ(平均 359 ppm REE+Y,L/HREE = 19.0)と,低いグループ(平均 127 ppm REE+Y,L/HREE = 23)に分けられる.他方,嶺南帯南東部の初期ジュラ紀の陜川(ハプチョン)閃長岩は REE+Y(171 ~ 217 ppm)に乏しい.慶尚盆地の杞溪(キゲ)花崗岩は南山アルカリ花崗岩の断層による片割れと言われているが,その含有量は 200 ~ 300 ppm REE+Y であるに過ぎない. 完全風化帯であるB層を中心とする花崗岩風化物は,帶江岩体では花崗岩平均値が 414 ppm REE+Y であるのに対し,風化土壌は 240 ppm REE+Y で希土類元素が減少しており,風化課程における REE の溶脱が考えられる.杞溪岩体でも 342 ppm から 243 ppm REE+Y へ希土類元素は減少している.その他の岩体での増減は不鮮明である.韓国では花崗岩の風化課程で希土類元素の明瞭な濃集は見られない. 忠州鉄鉱床の採掘跡におけるランダム サンプリングによると,この鉱床は平均 0.2% REE+Y 程度の鉱石を保有していたと推定される.
著者
石 林 Lin Shi
出版者
中京大学大学院経営学研究科
雑誌
中京経営紀要 = Journal of the Graduate School of Business Administration (ISSN:13463985)
巻号頁・発行日
no.6, pp.31-42, 2006-02

変化が激しい経営環境に取り巻かれる現代企業にとって、知識はすでにヒト・モノ・カネに次いで第四の経営資源となっている。企業のコア・コンピタンスを常に向上し、持続的な競争優位を確保するため、知識資源を大切に扱わなければならない。その背景の中で「ナレッジマネジメント」と呼ばれる研究領域が1990年代に発足し、現在は数多くの分野に展開されている。知識資源の創造、共有、活用により組織の経営成果を向上することがナレッジマネジメントの目的であるが、従来のナレッジマネジメント研究では、抽象的な理論や研究モデルをいかに仕事現場に噛み砕いて企業の実務に関連付けるかという課題が深刻に存在している。本稿では、上述の課題に注目し、従来のナレッジマネジメント理論研究のレビューを行い、ナレッジマネジメントの全体像を捉える上で、実践的フレームワークの提案を試みる。
著者
石峯 康浩
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.183-198, 2016-03-31 (Released:2017-03-20)

This paper presents some basic concepts on possible cooperative framework for contributing to disaster mitigation during volcanic eruptions with the intention of enhancing discussion among members of the Volcanological Society of Japan. At first, this paper describes some examples of problems that have been argued during recent volcanic eruptions because of improper risk communication of volcanologists, and then, outlines the present state of a coordination system for effective disaster assistance by multiple stakeholders with a focus on recent efforts in public health and medical communities. Preliminary ideas on “Expert Assistance Team during Volcanic Crises” are also presented for further discussions.

1 0 0 0 OA 日本工業録

出版者
工業雑誌社
巻号頁・発行日
1913
著者
下川原(佐藤) 英理 関野 遥香 李 有てい 黒田 知士 山口 亨
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.527-532, 2022-02-15 (Released:2022-02-15)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本論文ではロボットが人に行動を促したりタスクを依頼する場面において,ジェスチャー表現が行動受諾にどの程度影響を与えるのか,アンケートと生体センサ(心拍センサと脳波センサ)の結果を分析し報告する.ロボットが人と日常生活を共にする上で,ロボットが人に行動を促したり協働でタスクを遂行しなければならない場面は今後ますます増えると考えられる.行動の促しやタスクの依頼を受け入れてもらうためには,発話内容だけでなく非言語情報も含めたマルチモーダルインタラクションが重要である.そこで本論文では非言語情報の1つであるジェスチャーに着目しその影響を調査した.ロボットが人に行動を促す時の表現を,発話内容の感情に合わせたジェスチャーと発話内容の感情と逆のジェスチャー,ジェスチャー無しの三条件で比較したところ,ジェスチャー無しよりもジェスチャー有りの方が行動を受け入れ実際に行動する可能性が高く,また行動を促された時にストレスを感じにくいということが示された.
著者
Scott Danny W. Edginton Heather D. Miller Jr. William H. Clark Mitzi D.
出版者
Japanese Society of Veterinary Dermatology
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.7-9, 2015
被引用文献数
2

第2世代の抗ヒスタミン薬であるロラタジンが,猫アレルギー性皮膚炎の管理に有効であるという逸話的情報が教科書やインターネット上で報告されている。そこでロラタジンをアレルギー性皮膚炎に罹患した27頭の猫に,5 mg/catで1日1回経口投与した。その結果,わずか1頭(4%)の猫においてそう痒を良好に管理することが可能であった。有害事象は認められなかった。<br>
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1496, pp.28-31, 2009-06-22

6月8日は、江畑夫妻の34回目の結婚記念日だった。その前日、夫の由朗さん(59歳)は妻の公子さん(55歳)にトヨタ自動車の新型ハイブリッド車「プリウス」を贈った。 しかし、公子さんは当初、この買い物に乗り気ではなかった。先代プリウスを所有しており、「プリちゃん」の愛称をつけて大切に扱っていたからだ。走った距離は購入後の5年間で9万4300km。
著者
松本 亜希子 中川 光弘 小林 卓也 石塚 吉浩
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.255-279, 2021-12-31 (Released:2022-02-22)
参考文献数
37

The Tokachidake volcano group, central Hokkaido, is one of the most active volcanoes in Japan; three magmatic eruptions occurred from the crater area on the northwestern flank of Tokachidake in the 20th century. The Sandan-yama, Kamihorokamettokuyama, and Sampōzan edifices are on the southern flank of the volcano, and the first two bound the west-facing Nukkakushi crater. Although fumarolic activity and hydrothermal alteration are ongoing at Nukkakushi crater, its eruptive history remains unknown. Therefore, we performed a geological investigation of the Nukkakushi crater area. Based on topographical features, we inferred the following eruptive history. Sampōzan and Kamihorokamettokuyama formed during ca. 70-60 ka, after which the northern flank of Sampōzan collapsed and a new edifice (Nukkakushi volcano) was built within the collapse scarp. Finally, the collapse of the western flank of Nukkakushi formed Nukkakushi crater—perhaps during the Holocene, according to previous work. We identified eight Holocene eruptive products generated from the Nukkakushi crater area, the most recent of which was generated from a crater on the western flank of Sandan-yama sometime since the early 18th century. We also recognized three debris avalanche/landslide deposits that were generated within the last 750 years. Comparing the eruptive products of the northwestern crater area of Tokachidake with those of the Nukkakushi crater area revealed that magmatic eruptions from the two craters alternated until 1.8 ka. Their distinct magmatic compositions suggest the simultaneous existence of two isolated magma systems beneath Tokachidake and Nukkakushi, at least until that time. Since 1.8 ka, magmatic eruptions at the northwestern crater area of Tokachidake and phreatic eruptions at the Nukkakushi crater area have occurred in parallel. Moreover, around Nukkakushi crater, small-scale collapses/landslides have occurred. Previous studies recognized hydrothermal changes at Nukkakushi crater area, originating from the northwestern crater area of Tokachidake around the last two magmatic eruptions; it is therefore presumed that the Nukkakushi crater area was hydrothermally altered, even during periods of little eruptive activity. Such continuous and pervasive hydrothermal alteration explains the frequent collapses of edifices. The parallel yet contrasting eruptive activities in these adjacent areas are important for forecasting future eruptive activities and mitigating volcanic hazards.
著者
伊藤 博士 中野 佑樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

太陽内部におけるスピンフレーバー振動模型はローレンツ不変性を破り、電子ニュートリノが反電子ニュートリノへ振動すると予想されている。これによる太陽からの反電子ニュートリノ流量に対して、太陽標準モデルによる流量は無視できるが、従来検出器で検出するためには新たな技術が必要である。本研究はSK-Gd実験を用いて反電子ニュートリノの検出効率を従来から10倍以上改善する。4年間のSK-Gdの運用でローレンツ不変性を破る新物理を探索する。本研究を達成するために以下の項目について遂行する: SKデータを用いたBG推定, シミュレーション開発, 太陽磁場の解析, 系統的な不確定性誤差の評価。
著者
安部 清哉
出版者
学習院大学人文科学研究所
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.9, pp.7-33, 2010

This paper will examine features related to the geographical distribution of Japanese adjectives used to express sense of taste, including Amai, Karai, Suppai, Nigai, and others, that are problematic in a historical linguistics context pertaining to the roots of Japanese language. In particular, it has been proven that the etymology of" *sukwa-shi( <suppa-i, <sukka-i)" in the East-Japanese dialect, Chinese "酢", and "*sem" of Proto-Austronesian (PAN) language have the identical root and origin, and that the etymology of" su-shi( < su-i)" in the West-Japanese dialect is Chinese" 酸". It has also been demonstrated that the roots of these adjectives have the same origin in Asian Language. In addition, by examining the etymology of these adjectives, this paper will describe that a cross structure composed of four words is the prototype lexical structure of Japanese basic adjectives. Keywords: geographical distribution, Japanese adjectives, sense of taste, Amai, Karai, Suppai, Nigai, etymology," *Sukwa-shi( <suppa-i, <sukka-i)" as for sour," Su-shi( <su-i)" as for sour," 酢"," 酸", prototype structure, basic adjectives.研究論文
著者
秋永 和之 梅﨑 節子 柴山 薫 野中 良恵 高橋 公一
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.27-36, 2019

<p>大規模災害等で行われている情報伝達は,相手が目の前にいることは少なく「通信機器を用いての情報伝達が多い」「災害の規模が大きいほど情報の混乱が起きる」「本人の思い込み」などの理由から,情報伝達がうまく機能しないことが研究報告等で指摘されている.今回,394 名の看護学生を対象に,通信機器をメインとした時の情報伝達の際,どのような情報を収集し,どのように相手に伝えると情報伝達がうまくいくのかについて,犬と猫の写真を用い,2 群の比較(それぞれの写真を見た群)を行った.送り手の自由記載の結果より,「情報は細かく収集し詳細に伝えるほうがよい」「イメージの共通認識には知識やお互いの確認が必要」「細かく収集した情報でも,お互いに共通認識の用語でなければ伝えるのは困難」という内容が得られた.送り手から聞いた情報が受け手のイメージしたこととあっていたかどうかについては,両群とも受け手は有意な差はなかった.また,送り手に関しては犬の写真を見た送り手よりも,猫の写真を見た送り手の方が伝えることが出来たと感じていた(p=0.005).送り手が収集した情報が相手に伝わるには,送り手,受け手それぞれが共通認識できる知識やイメージ,表現がなければ,伝わりにくいということが考えられた.</p>
著者
茂木 謙之介
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.49-74, 2014-06-30 (Released:2017-07-14)

本稿の目的は、天皇神格化言説の高揚する昭和戦前戦中期における皇族表象の様相とともに、天皇崇敬に関する宮内省のスタンスを明らかにすることにある。先行論では崇敬対象の天皇と崇敬主体の国民という構造が展開され、抽象的な議論になりがちであるが、本稿では具体性を以て表象される皇族に注目する。本稿では旧宮内省文書から考察を試み、統括官庁の方針を確認するとともに、文書に織り込まれた人びとの声を回復し、それらの経年変化を探る。結果、一九二六〜三七年まででは皇族表象を価値目的的に利用しようとする地域社会のスタンスと、それを規制していく宮内省のスタンスが、一九三七〜四一年前後では〈利用〉と共に皇族を崇敬対象とみなす地域社会の声とともに、その傾向を事実上黙認する宮内省の立場が、そして一九四一〜四五年では軍部の要請と相俟って、崇敬される天皇とそれを崇敬する国民という構造へ収斂させていく宮内省の在り様が看取された。