著者
橋爪 夏樹
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.870-873, 1995
参考文献数
2

これは私がお茶の水女子大学から東京大学の久保研究室へ内地留学していた1955年頃の話です.久保さんも意気軒昂でした.
著者
川久保 篤志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.74, 2005

1.はじめに 近年、わが国で農産物の輸出拡大をめざす議論が高まっている。これは、近年のアジア諸国の経済発展に伴う購買力の上昇やFTA交渉の進展による関税率の低下などに期待したものであり、現に2000年以降のわが国の農林水産物輸出額は対アジア諸国を中心に20%以上の伸びを示している。 そこで本発表では、このような議論が高まるなかで本当に輸出の拡大は有望なのかを、果実の中で最大の輸出量をもち歴史も古いミカンを事例にその現状と拡大への課題について検討する。2.わが国におけるミカン輸出の近年の動向 わが国のミカン輸出は1980年代にピークに達して以来減少続きで、1990年代後半以降も回復の兆しはみられていない。輸出先についても、カナダ・アメリカの北米2ケ国で輸出量全体の約95%を占めている状況は従来と変わっておらず、東・東南アジア諸国への輸出もそれほど伸びてはいない。また、価格についても1990年の162円/kgから2003年の98円/kgへと大きく低下している。したがって、ミカン輸出の減少はカナダ・アメリカでの販売動向の結果であるといえるが、なぜこのように北米向け輸出が1990年代に減少してしまったのか。 その要因の1つは円高の進行による採算の悪化である。1980年代前半には1$=200円台であった為替レートは、1990年代前半には100円台前半へと大きく円高が進んでしまった。もう1つは、相手国の事情で、カナダについては、円高の進行とも関連して価格競争力を強めた中国産のミカンがカナダでのシェアを伸ばしたことが大きい。一方、アメリカについては、植物検疫上の問題が大きい。アメリカは、ミカンの潰瘍病やヤノネカイガラムシ等の病害虫の侵入に対して強い警戒を示しており、輸出希望国は生産園地の指定とアメリカ人検査官の立ち入り調査など数々の検査手続きを受ける必要があるのである。 このような状況下で、わが国の輸出ミカン産地ではどのような生産流通が行われているのか。以下では、静岡県の現状について検討する。3.静岡県における輸出向けミカンの生産・流通の現状1)旧清水市におけるミカン輸出への取組み 旧清水市は、静岡県で最大の輸出ミカン産地であるが、近年はその生産を大きく減じている。その要因としては、清水市でのミカン栽培自体が衰退傾向を強めていることと、ミカンの栽培品種構成が晩生(12月収穫)の青島種に大きくシフトし、通常11月に行われる輸出時に間に合うミカンそのものが減少してきたことが挙げられる。 現在、JA清水市では青島種以外のミカンのすべてを輸出に振り向ける方針にしているが、輸出向けミカンの採算は目標を大きく下回っている。しかし、そのような中でも労働力基盤が弱く青島種への系統更新を進めることに消極的な農家層にとっては、早生ミカンの輸出は国内相場の低迷する11月に出荷できることや、加工向けに出荷するよりもはるかに利益をもたらすことから、一定のメリットがあると認識されている。2)三ケ日町におけるミカン輸出への取組み 三ヶ日町は静岡県最大のミカン産地で、かつ近年輸出向けミカンの生産が増加している。これは、青島種の大玉果(3Lサイズ以上)の輸出に取組み始めたからである。青島種は静岡産ミカンの主力品種であり、国内販売でも有利に取引きされるため本来なら輸出向けに販売されるものではないが、大玉果は国内販売でも低価格なため、等級によっては輸出向けに回した方が利益が出るという判断がなされるようになってきたからである。 しかし、三ヶ日町で輸出に向けられているミカンは決してグレードの高いものではない。生産者は、国内向け販売から得られる収入との比較の中で輸出向けミカンを選別しているのであり、実態としては国内向け果実の最低ランクと加工向け果実との中間レベルの果実を樹上で選別して収穫しており、極めて特殊である。また、選果箱詰めに関しても農協が行うのではなく旧清水市内の集出荷業者に委託しており、農協の関与は国内向け販売とは比べものにならないくらい小さい。3)藤枝市におけるミカン輸出への取組み 藤枝市は現在ミカンの対米輸出を行っているわが国唯一の産地である。輸出指定園となっているのは、海岸から約10kmも離れた山間部の29haで、気候的に冷涼なため糖度重視の現在の国内市場へ販売するためのミカン作りには適していない。また、園地は急傾斜にあり農作業面でも条件不利地域である。輸出に向けられているのは、輸出指定園内で生産されたミカンの約50%で、品種的には青島種以外の品種の全量と青島種の3Lサイズ以上である。しかし、対米輸出は対カナダ輸出よりも高値で取引されていることから、三ヶ日町のように3Lサイズの中からさらに低級品を選別するといったことは行っていない。
著者
首藤 明日香 首藤 謙一 麻生 由莉江 田仲 美咲 福岡 拓郎 松井 正格 牧草 一人
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.190-204, 2021-12-28 (Released:2022-01-14)
参考文献数
16

本症例は,歯周治療に伴う異常所見を見逃さなかったことで,医科への受診や血液検査では看過されていた重篤な甲状腺機能低下症を伴う橋本病(慢性甲状腺炎)の発見・治癒に至り患者の健康に寄与することができた1症例である。あまり周知されていない橋本病と歯周疾患との関連,特に出血傾向について考察し報告したい。広汎型重度慢性歯周炎患者に対し全顎的な基本治療の過程において,歯肉溝からの易出血を認めた。かかりつけ医・二次医療機関の血液内科・口腔外科専門医など3医療機関への対診を繰り返すも,出血性疾患の存在は否定され続けた。上顎前歯部歯周組織再生療法(エナメルマトリックスデリバティブ・EMD応用)の翌日,歯肉溝からの異常出血ならびに血餅形成を認めた。根気強く対診を繰り返した結果,ようやく4番目の医療機関において自己免疫疾患である橋本病(慢性甲状腺炎)と診断された。初診より1年以上が経過していた。重篤な甲状腺機能低下症を伴い,生命の危険がある状態であった。甲状腺ホルモン補充療法後,全身浮腫の改善により運動や食事制限をすることなく体重は90 kgから30 kg減少した。甲状腺機能低下症改善後の歯周組織再生療法(EMD応用)では術後出血は認めなられなかった。歯周組織所見は改善しSPT移行後6年が経過するが良好な歯周組織を維持している。本症例は,日常的に観血的治療を行う歯周治療の特殊性が,異常所見の早期発見に繋がり,ひいては患者の全身的健康に大きく寄与する可能性を示唆している。
著者
鈴木 義和 ガムシンラパサティエン スパチャイ 浅越 圭介 吉川 暹
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
日本セラミックス協会 年会・秋季シンポジウム 講演予稿集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.616, 2006

われわれは、これまで、酸化チタンをはじめとする1次元ナノ材料を用いて、色素増感太陽電池等のエネルギー変換デバイスの高効率化を検討してきた。従来検討してきた酸化チタンナノワイヤーでは、結晶性の良いものでは比表面積が小さく、単にナノワイヤーを焼成した場合では高効率化に至っていなかった。今回、酸化チタンナノワイヤーの水熱合成過程を制御することにより、部分的にナノワイヤー化された酸化チタンを用いて色素増感太陽電池を作製することにより、比較的高い光電変換効率を得ることができた。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ヘルスケア : 医療・介護の経営情報 (ISSN:18815707)
巻号頁・発行日
no.318, pp.68-73, 2016-04

図1と図2は通所介護と通所リハビリの提供回数のうち、サービス提供時間別の割合を示したもの。例えば通所介護の「小規模型」(前年度の月延べ利用者数が300人以下)では、「7時間以上9時間未満」(7-9時間)が48.1%、「3時間以上5時間未満」(3-5時間)が23.5%だ…
著者
高松 道生
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.750-758, 2014

2004年度から開始された新医師初期臨床研修制度において2010年度から地域医療研修が必修となったのを受けて, 管理型臨床研修病院との連携を元に2011年度から地域医療研修枠での研修医受け入れが当院で開始された。研修のコアは「生活現場の体験」と「医療・福祉連携」とし, 地域医療部の院外事業と回復期リハビリテーションを中心にプログラムを組んで研修を行なった。研修医からは生活現場での体験が新鮮であったとの声が聞かれる一方で, リハビリテーションは関わりが限定的で見学に留まってしまうとの意見が出されたため, 2012年度はその反省を元に生活現場でのプログラムを増やす一方でリハビリ研修を工夫し, 研修医から「集中力を維持できる」研修との評価を受けられるようになった。我々のプログラムは医療・福祉連携の重要性を教育し, 「命と臓器」の先にある最終エンドポイントとしての「生活」に目を向ける契機となる事を目的とした研修であったが, その目的を概ね達成できているものと評価している。 「人口の波」を控えて急性期医療機関と亜急性期医療機関, 慢性期医療機関と在宅・施設の連携 (入口連携-出口連携) は重要性を増しており,「社会が必要とする医師」の養成は喫緊の課題である。日本農村医学会が地域医療研修を重要課題の一つとして位置づけ, 学会を挙げてその質の向上と標準化に取り組むと共に, 社会にその重要性を発信してゆく事が必要と考える。
著者
本村 真澄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.339-358, 2011

本稿では,帝政ロシア,ソビエト連邦,ロシア連邦における石油・天然ガスパイプラインの建設の歴史を概観し,その政治的な影響に関しても検討する.石油パイプラインでは東欧向けの「友好」パイプラインのように政治的な支配圏維持を目的としたものもあるが,1970年代のロシアから西欧向けの天然ガスパイプラインは,「緊張緩和」を前提としたもので,ソビエト連邦の崩壊を挟んで40年近く,安定的にガスを供給しており,政治的な「武器」としてではなく,むしろ地域の「安定装置」として機能してきた.今日,ロシアの石油パイプラインは太平洋に達しようとしており,天然ガスパイプラインも極東地域での配備が進んでいる.日本にとってこれはエネルギー安全保障上有利となる動きであり,これへの関与の姿勢が問われている.
著者
境 博成
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.339-351, 2007-05-15
参考文献数
16
被引用文献数
1

フランス北西部, ノルマンジー地方のリンゴの生産地で造られるリンゴ酒シードルと隠れた蒸留酒カルバドスの歴史と現状を紹介。歴史, 製造方法のみならず, リンゴの産地・晶種, AOC規則, 酒税までを含めて言及した内容は醸造技術者はもちろん, カルバドス, シードルの愛好者までを満足させる解説となっている。
著者
境 博成
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.187-196, 2007-03-15
参考文献数
17
被引用文献数
1

現在, 日本の酒類業界では第3のビールと呼ばれる発泡性飲料とチューハイ類の新製品が市場を賑わしている。これらのジャンルの開発は正にメーカーの知恵の勝負で, 多岐に渡る素材が集められ, 使われている。サイダーも日本ではフランス風にシードルと言う名称で商品化されているが, その販売数量は極小さい。<BR>一方, 英国では伝統的なサイダーが, ビールと共に国酒とも言える存在として脈々と飲まれ続けている。近年リンゴの健康に対するメリットが次々と明らかにされていることも考え合わせれば, 英国サイダーの現状について詳述されたこの総説は, 単にサイダーの紹介というだけでなく伝統的な酒類の生き残り戦略に多くの示唆を与えてくれる。
著者
飯塚 遼 矢ケ﨑 太洋 菊地 俊夫
出版者
東京都立大学大学院都市環境科学研究科観光科学域
雑誌
観光科学研究 = The International Journal of Tourism Science (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.14, pp.87-96, 2021-03-15

摘要 本研究はフランス・ノール県ダンケルク郡を事例としてビールツーリズムの展開にともなうロカリティの再編について考察することを目的としている。ダンケルク郡におけるビールツーリズムは農村景観や集落景観などの農村を構成する要素が観光資源となり,それらが観光プロモーションプログラムを通じて結合されることにより存立していた。また,ダンケルク郡におけるビールツーリズムの空間は,同様のプログラムが設定されているベルギー側のウェストフーク郡にまで広がりをみせていた。そこでは,両地域の文化の共通性が観光資源に内包されていた。いわば,ダンケルク郡でフランスという国家的枠組に組み込まれたことで失われつつあったフランデレンのロカリティが,ビールツーリズムを通じて回復されていた。