著者
金森 絵里
出版者
日本情報経営学会
雑誌
日本情報経営学会誌 (ISSN:18822614)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1-2, pp.48-64, 2020 (Released:2020-09-23)
参考文献数
32

The aim of this paper is to describe how Japanese accounting rules for nuclear power have beenchanged after Fukushima accident in reference to the framework of valuation studies which stresses the importance of investigating process and practices. The paper employs the concept of “plasticity” of accounting which means the accounting nature to be easily moulded or to undergo a permanent change in shape. The paper will reveal that the accounting has been changed in 2013, 2015, and 2018 for decommissioning and in 2016 for reprocessing of spent fuels in terms of their definitions of costs, classification of assets and procedures to calculate liabilities and losses. It will be argued that the accounting for nuclear power is not a single, universal technique but could be different in different time and space.
著者
松本 吉央 小笠原 司 Zelinsky Alexander
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解
巻号頁・発行日
vol.99, no.450, pp.9-14, 1999-11-20
参考文献数
11
被引用文献数
9

高度なヒューマンインターフェースを構築するには,システムが人間を観察し,その意図や注意を認識することが必要となる.人間の目や顔の動きは,意図や注意と関係が深いため,この動きを計測することができれば,高度なインターフェースの構築へつながる.本稿ではこのような目的で開発した,人間の顔と目の動きを検出するシステムについて述べる.本システムでは,通常のカメラ(2台)と画像処理ボードを利用しており,(1)完全に非装着型である,(2)完全に受動型である,(3)リアルタイムで計測が行える,(4)顔の位置・姿勢と視線の方向が同時に計測できる,という特徴がある.
著者
ギャスケル アイヴァン
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科
雑誌
死生学研究 (ISSN:18826024)
巻号頁・発行日
no.12, pp.212(65)-229(48), 2009-10-31

公開・国際シンポジウム 死生と造形文化Ⅱ「礼拝像と奇跡 -東西比較の試み」
著者
佐野 静代
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.162, pp.141-163, 2011-01

エリとは,湖沼河川の浅い水域に設けられる定置性の陥穽漁法であり,全長1㎞にも及ぶ大型かつ精巧なエリは,琵琶湖にしかみられないものとされてきた。本研究では,近世・近代史料の分析から琵琶湖のエリの発達史に関する従来の説を再検討し,エリが琵琶湖でのみ高度な発達を遂げた要因について,地形・生態学的条件から分析した。原初のエリは,ヨシ帯の中に立てられる単純な仕組みのものであったが,中世には湖中へ張り出す湖エリタイプがすでに存在していたと推測される。また近世の絵図や文書の分析の結果,17世紀までの湖エリはツボ部分のみを連結した屈曲型の構造であったのに対して,18世紀後半には今日に近い「岸から一直線に伸びる道簀」+「大型の傘」を備えた形態へと転換がはかられていることがわかった。琵琶湖のエリは,江戸後期に大きく姿を変えていることが明らかである。さらにエリの「傘」内部の漁捕装置の発達については,「迷入装置(ナグチ)の複雑化」と「捕魚部(ツボ)の増設」という二つの方向性があり,その発展段階としてはそれぞれ5段階,4段階があること,そして天保期には「カエシ」のエリという大型エリの技術段階に到達していたことがわかった。この天保期における「カエシ」の技術の成立には,琵琶湖の水位低下という人為的な環境変化が関わっていた可能性が推測された。エリが琵琶湖のうち特に「南湖」において発達した要因としては,湖底の地形条件に加えて,漁獲対象となる琵琶湖水系の固有種の生態学的条件があげられる。なかでもニゴロブナの南湖への産卵回遊が,野洲郡木浜村の「エリの親郷」としての位置づけに深く関わっていることが明らかになった。一部非公開情報あり
著者
讃岐 美智義
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.79-85, 2019-04-19

研修医が気管挿管の練習のために気管挿管シミュレータを使う際,頭部を思いっきり後屈させたあげく喉頭鏡のハンドルを後ろに倒して口の中をのぞこうとする。この行為こそが,気管挿管の上達の大きな妨げになると考える。現状のシミュレータと患者では,頸椎の可動域,開口,舌の状態が明らかに異なっているのである。 麻酔導入時の初期研修医“あるある”なのだが,頭位も悪く開口もできていないのに,看護師から喉頭鏡を受け取ろうとする。いけないのは初期研修医だけではない。介助についている看護師も喉頭鏡を受け取ってと言わんばかりに,研修医の目前に点灯した喉頭鏡をちらつかせる。喉頭鏡を渡すことが気管挿管の介助だと思っている。受け取る方も悪ければ,渡す方も悪いのだ。 あげくに研修医は,受け取った喉頭鏡を左手に持ったまま右手で患者の口を開け…(おもむろに)喉頭鏡を入れようとするが,どうやってもうまく入らない。喉頭鏡を入れるスペースが口腔内にないため,無理矢理,喉頭鏡のブレードで強く舌を押し込みつつ喉頭鏡を進める。なんとなく入ったと思ったら(本当は口腔外にブレードの大部分が出ていて,入っていないのだが),喉頭鏡のブレードを後方に倒してみる。しかーし,喉頭が見えるどころか舌しか見えない。バキッ。前歯にあたる(指導医は冷や汗)。歯が折れなかったとしてもこの時点で,唇,舌,口腔内をひどく傷つけ出血していることは日常茶飯事である。初回はこんなモノだ。この状態を見た指導医は喉頭鏡を取り上げて,自ら手本を見せる(取り上げられるのは仕方がないが,お互いに気まずい空気が流れるのが問題である)。2回目の研修医は,ちょっと賢くなって開口してから喉頭鏡を受け取る(これは大きな一歩である)。しかし,頭部を異常に後屈しているのは変わらない。これを見た指導医は,頭位をすこーし戻してスニッフィング位にするのだが,研修医は患者の額に自分の手を押しあてて後屈を強めてしまう(あぁ〜っ,頸椎が…と指導医は冷や汗)。昨日シミュレータで練習してきたらしい。シミュレータでは頭部後屈を強めれば,喉頭がよく見えたという。そのまま気管挿管を続けさせてみるが,やはり口腔内を傷つけてしまい,喉頭鏡を指導医に取り上げられる。このような珍研修が繰り返され,気管挿管の上達は牛歩のごとしである。これでは,気管挿管がまともにできないまま,麻酔科研修が終わってしまう(本当は気管挿管ではなく,マスク換気や気道の開通全般について理解し,実践してもらいたいのに…)。 このような研修医ばかりではないが,何回やっても気管挿管ができない研修医がいるのは確かである。そのまま年を重ねると,気管挿管ができない○○科専門医となる。実際,十分に経験を積んだ内科系の医師に,気管挿管はどうしたらできるようになるかと,真面目な相談を受けたことがある。初期臨床研修制度が始まる十数年以上前から気管挿管を指導していた筆者は,麻酔科に研修にやってきた医師に,1〜2か月の研修期間内にどのように気道確保を教えようかと考え,教育法を試行錯誤していた。そして,初期臨床研修制度が始まった2004年前後には,ついに研修医向けの気道確保伝授法を確立した。これが,気道確保マスター法SANUKI Methodである。現在は,これを指導医ではなく後期研修医もマスターすべき指導法と位置づけ,屋根瓦方式で世の中に広めようと布教中であるため,ここに紹介したい。
著者
木西 實 高雄 真人 李 佳奈
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.151-154, 2004-03-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
3

声門後部または披裂部粘膜の発赤に注目し、胃食道逆流症によると考えられる慢性咳症例20例に対し、ランソプラゾール30mg/day×8 weeksを投与した。咳嗽が消失したのは9例、咳嗽が軽快したのが7例で、4例は不変であった。胸やけを自覚していた15例では8例で咳噺が消失し、6例で咳嗽が軽快し、有効率は93%であった。一方、胸やけを自覚しなかった5例では咳嗽が消失および軽快したのはそれぞれ1例で、有効率は40%にすぎなかった。胸やけを自覚し、声門後部または披裂部粘膜の発赤を認めた慢性咳噺症例に対し、プロトンポンプインヒビターであるランソプラゾール30mg/day×8 weeksの治療は有用であった。
著者
三井 亜希子 鶴岡 秀一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.1, pp.103-109, 2018-01-10 (Released:2019-01-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

これまで,薬剤性腎障害(drug-induced kidney injury:DKI)の定義とその予防や治療に関して明確なものはなく,発症頻度の詳細や病態の体系的理解に結び付く報告も少なかった.2016年,我が国で初めて「薬剤性腎障害診療ガイドライン2016」(日本医療研究開発機構 腎疾患実用化研究事業,2016年)が刊行され,具体的な概念の提唱と障害機序をもとに分類・診断する試みがなされた.薬剤性腎障害は,急激に腎機能が悪化する急性腎障害(acute kidney injury:AKI)だけでなく,慢性的に緩徐に腎機能が悪化する慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)やネフローゼを呈する場合もあり,症状・経過は多彩である.発症機序は,予測可能なものと予測不可能な特異体質によるものに大別され,特に前者では投与前にリスクファクターの評価と対策を講じることで発症を抑制できる可能性がある.また,DKIを疑った場合には,原因薬剤を可能な限り早期に同定・中止することが基本となる.今後は,データ集積,得られたエビデンスの検証,国際比較により薬剤性腎障害診療の確立が進むと考えられる.
著者
西崎 実穂 野中 哲士 佐々木 正人
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.64-78, 2011 (Released:2020-07-08)
被引用文献数
1

本研究は,高度な経験を有する描画者による,一枚のデッサンの制作過程を分析することを目的とした。対象の特徴を捉え,形状や質感,陰影を描くという客観描写としてのデッサンは,通常数時間を要する。本研究では,制作開始から終了までの約 2 時間半,描画者によるデッサンの描画行為の構成とその転換に着目し,制作過程に現れる身体技法を検討した。結果,描画行為を構成する複数の描画動作パターンの存在と時間経過に伴う特徴を確認した。特に,観察を前提とした客観描写に重点を置くデッサンにおいて,「見る」行為の役割を,姿勢に現れる描画動作の一種である「画面に近づく/離れる」動作から報告した。デッサンにおいて「見る」という視覚の役割は,姿勢の変化に現れると同時にデッサンの制作過程を支えていることが示された。
著者
楢崎 有季子 堀尾 強
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.339-343, 2006-12-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
19
被引用文献数
2

The threshold level of the five basic taste attributes was examined in elderly subjects for comparison with the levels in young subjects. The relationship among the taste threshold, sex, drinking, smoking, and artificial teeth was also examined, and the features of the food preference and taste were compared between the elderly and young subjects.The threshold level of all five taste solutions for the elderly subjects was higher than for the young. No relationship among the taste threshold, sex, and artificial teeth was apparent. Any influence of drinking and smoking on the taste was not clear, because the amounts of alcohol and tobacco consumed by most of the elderly subjects were small. The elderly had less preference for a sweet taste than the young. No correlation between the taste preference and taste threshold was apparent.These results suggest that the sensitivity for all the basic taste attributes of the elderly was inferior to that of the young, and that the taste preference also differed between the elderly and young subjects.
著者
江添 正剛 三武 裕玄 長谷川 晶一
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.529-532, 2015-09-18

イラストを描く際,デッサン人形を参考にイラストを描く手法があるが,デッサン人形のとる姿勢 が人間にとって無理のないものになっているかはユーザーの知識に依存する.そこで,物理モデルを持っ たバーチャルデッサン人形を作成,姿勢を維持したときに全身にかかる負荷が少なくなるような関節角を 最適化計算により算出し,ユーザーがより自然な姿勢のイラストを描くための手がかりとして提案する.
著者
渡邉 智美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

【目的】<br> 高等学校「家庭」の科目、家庭基礎の食事と健康では、「健康で安全な食生活を営むために必要な基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、生涯を見通した食生活を営むことができるようにする」ことが求められている。家庭基礎の食事と健康で学んだことを生活のなかで実践できるようにするためには、生徒の実態に応じた題材を取り上げ、調理実習を通して指導することが必要である。<br> 本研究では、調理経験の少ないと思われる生徒でも調理ができ、課題のねらいが理解できるように教材の改善を試みた。<br>【方法】<br>(1)平成24年度に、県立高等学校1年生70名を対象として、夏バテを防ぐための1食分の献立作成と調理・レポートという夏休みの課題を与えた。さらに教員が作成した教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」を生徒へ配布した。このとき配布した教材について、作り方の理解度に関するアンケートを実施した。アンケート結果をもとに、教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」を改善した。<br>(2)平成25年度に、同校1年生66名を対象として、改善した教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」を使用した夏休みの課題を与えた。課題後に調理方法、課題のねらい(野菜を多く摂ることができる調理方法を知る)に対する理解度や調理の意欲についてアンケートを実施した。<br>【結果】<br> 平成24年度の夏休みの課題で、生徒が作成した献立の約60%は、野菜の使用量が食品群別摂取量のめやすの1/3を充たしていなかった。そこで、野菜を多く摂ることができる調理方法を学習させるために、教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」を生徒へ配布した。レシピは根菜のお味噌汁とスープカレーである。根菜のお味噌汁には人参と大根などを使用。スープカレーにはキャベツ、玉ねぎ、プチトマトとウィンナーを使用した。この教材についてのアンケートで、材料の切り方が分かったという回答は82.5%、分からなかったという回答は17.5%であった(回答者63名)。材料の切り方が分からなかったという回答をした生徒が指摘した4種の切り方について、教材に図を加えた。また加熱時間を具体的に示し、さらにカラー刷りにした。<br> 平成25年度の夏休みの課題で、生徒は改善した教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」2つから1つを選択し、調理を行った。この教材についてのアンケートで、材料の切り方が分からなかったという回答は1.5%であった。前年度の教材を改善したことによって、切り方が理解しやすくなったと考えられる。またレシピの選択では、根菜のお味噌汁が30.3%(20名)、スープカレーが69.7%(46名)であった。レシピを選択した理由(複数回答あり)は「美味しそうだから」が32名と最も多く、次いで「簡単そうだから」が14名であった。このように生徒が美味しそうと思うような料理を題材とすることにより、生徒に調理の意欲を持たせることができる可能性があると考えられる。また、選択しなかったレシピも調理しようと思った生徒は54.5%であった。加熱調理をすることにより、野菜を多く摂取できることを理解した生徒は45.5%にとどまったため、今後さらに教材を改善する必要があると思われる。<br>