著者
岩崎 美香
出版者
日本トランスパーソナル心理学/精神医学会
雑誌
トランスパーソナル心理学/精神医学 (ISSN:13454501)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.93-113, 2013 (Released:2019-08-07)

臨死体験は、典型的には死に近づいた人や何らかの 強い危機状態にある人に起こる、超越的で神秘的な要 素を帯びた体験である。本論考では、半構造化された インタビュー調査から得られた17例の日本人の臨死体 験事例に関して、臨死体験による死生観の変容の特色 を明確にするために、臨死体験者と、臨死体験を伴わない生命の危機状態から回復したガンの患者との比較 を試みた。ガンからの回復者には、死という終わりを 見据えて生きる態度が見られ、死のこちら側を包括す る時間意識が形成されていたのに対し、臨死体験者は 死の先の領域を意識し、死の向こう側を包含する時間 意識を獲得していることがわかった。結論として、臨死体験は個人の死生観の拡大を促していることが導かれた。
著者
前田 勇樹
出版者
国立大学法人 琉球大学島嶼地域科学研究所
雑誌
島嶼地域科学 (ISSN:2435757X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.41-61, 2021 (Released:2021-07-15)

本稿は,明治後期(1890~1910年代)の沖縄での感染症流行と,それに対する防疫対策や衛生対策について新聞資料および松下禎二(京都帝大教授)による衛生視察記録を中心に分析を行ったものである。明治期の沖縄では感染症流行に対する前近代的な慣習や患者の隠蔽などが根強い一方で,この時期になると基礎的な防疫対策(清潔法と隔離)の浸透が見受けられる。その背景には,日清戦争後から始まる沖縄の同化政策の本格化と新聞による情報の流布が挙げられる。また,近代日本の植民地となった台湾との間での人の移動の活発化は,沖縄の感染症対策に大きく影響を及ぼすものであった。
著者
功刀 浩 太田 深秀 若林 千里 秀瀬 真輔 小澤 隼人 大久保 勉
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.177-181, 2016 (Released:2018-07-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1

近年,緑茶の飲用頻度が高いとうつ病など精神疾患のリスクが低いことが指摘されている。緑茶特有の成分であるテアニン(L-theanine:N-ethyl-L-glutamine)は,グルタミン酸に類似したアミノ酸で,リラックス効果があることが知られていた。筆者らは動物実験により,テアニンはprepulse inhibition[PPI]で評価した感覚運動ゲイティング障害を改善する効果があるほか,持続的投与では強制水泳テストの無動時間を減少させ,海馬での脳由来神経因子の発現を高めるなど抗うつ様効果も認める結果を得た。健常者を対象にテアニン(200mgまたは400mg)を単回投与するとPPIが上昇することを見いだした。慢性統合失調症患者に8週間投与したところ,陽性症状や睡眠を改善する効果がみられた。大うつ病患者に対する8週間のオープン試験では,うつ症状,不安症状,睡眠症状に加えて認知機能の改善が観察された。以上から,テアニンは多彩な向精神作用をもち,統合失調症やうつ病といった精神疾患に対して有用である可能性が示唆された。
著者
關口 奈緒子 池永 雅一 池上 真理子 家出 清継 上田 正射 津田 雄二郎 中島 慎介 谷田 司 松山 仁 山田 晃正
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.830-835, 2020 (Released:2021-12-31)
参考文献数
21

症例は68歳,男性.自慰目的で肛門から瓜を挿入し,排出困難となり当院を受診した.腹部単純CTで16×7cm大の瓜を直腸RS付近に認め,腸管穿孔所見は認めなかった.摘出の際に腸管損傷の可能性を考え,全身麻酔下での摘出を試みた.全身麻酔下,砕石位で手術を開始した.肛門括約筋の弛緩は得られたが肛門内に異物は確認できず,下腹部圧排で瓜の頂部をわずかに確認できた.ミュゾー鉗子で把持を試みるも困難であり,子宮筋腫用のミオームボーラーを瓜に挿入し,下腹部の圧排と牽引で摘出を試みた.しかし,瓜は脆弱でミオームボーラー挿入部が砕けるため,別角度からもう1本挿入することで力を分散し脆弱性を補うことで腹部圧迫を併用し摘出に成功した.直腸異物は多種多様の異物が報告されており,摘出方法の工夫が必要である.今回直腸異物(瓜)に対して,異物の大きさと摘出器具の特徴を術前に綿密に確認することで安全に摘出しえた症例を経験した.

8 0 0 0 OA 味噌・醤油

著者
二瓶 孝夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.542-549, 1978-07-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
16
被引用文献数
1
著者
水嶋 崇一郎 平田 和明
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.121, no.1, pp.19-29, 2013 (Released:2013-06-21)
参考文献数
69

本研究では,性別判定における大腿骨骨幹部の有用性について論じるため,大腿骨骨幹中央部断面形状の性的二型性について調査した。資料は愛知県保美貝塚遺跡出土の縄文人31体(男性14体,女性17体,約3000~2300 BP),明治・大正期の関東地方人42体(男女各21体,年齢範囲20~50歳)の個体骨格を用いた。内部断面計測ではマイクロCT装置を導入した。画像処理にはImageJとCT-Rugleを使用した。解析に際しては断面特性値ごとにWilksのλと男女的中率を算出した。その結果,2集団に共通して,大腿骨骨幹中央部では骨質断面積が最良の性判別指標であることがわかった(縄文人:λ = 0.230,的中率96.8%,現代日本人:λ = 0.469,的中率85.7%)。また縄文人では骨体中央矢状径,外周,外形断面積,最大断面2次モーメント,断面2次極モーメントにおいても90%超の高い確度で男女が正判定された(λ:0.311~0.362,的中率:93.5~96.8%)。一方,現代日本人では骨質断面積以外の項目を個別に適用しても信頼性の高い判別はなされなかった(λ:0.514~0.876,的中率:61.9~81.0%)。本研究では,性別不明のヒト骨格において,大腿骨骨幹中央部の骨質断面積が非常に有力な判別指標となることが示唆された。
著者
中澤 高志 神谷 浩夫
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.560-585, 2005-08-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
71
被引用文献数
6 2

本稿は,金沢市と横浜市の高校を卒業した女性のライフコースについて,高校卒業時および最終学歴修了時の進路決定のプロセスとそれ以降の就業にみられる差異を把握し,そうした差異をもたらすメカニズムを明らかにする.金沢対象者は,学校側の積極的な介入の下で進学先を決定していた.そのことは,自分が学んだ分野と就職したい分野の葛藤に悩む学生を生んだ反面,教員や看護士の職に就く者を増やし,結婚後の就業率を高める一因となっていた.さらに金沢対象者では,結婚・出産後も女性が働きやすい環境にも比較的恵まれている.横浜対象者が通った高校では,進路について教師からの働きかけはほとんどなかった.そのため生徒は就職時の有利不利はあまり考慮せずに,進学先を決定していた.就職についても,民間企業を中心にイメージを重視した就職活動を行った.こうした進路決定は,現実との齟齬による離職を生んだ.これに加え,横浜対象者は家事や育児と両立しながら就業を継続することが難しい環境にある.このように,個人のライフコースは,地域が付与する固有の可能性と制約の中で,過去に規定されつつ,形成されてゆくのである.
著者
Yu Sato Kenji Okano Hiroyuki Kimura Kohsuke Honda
出版者
Japanese Society of Microbial Ecology / Japanese Society of Soil Microbiology / Taiwan Society of Microbial Ecology / Japanese Society of Plant Microbe Interactions / Japanese Society for Extremophiles
雑誌
Microbes and Environments (ISSN:13426311)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.ME20074, 2020 (Released:2020-07-29)
参考文献数
27
被引用文献数
10 23

Growth temperature is one of the most representative biological parameters for characterizing living organisms. Prokaryotes have been isolated from various temperature environments and show wide diversity in their growth temperatures. We herein constructed a database of growth TEMPeratures of Usual and RAre prokaryotes (TEMPURA, http://togodb.org/db/tempura), which contains the minimum, optimum, and maximum growth temperatures of 8,639 prokaryotic strains. Growth temperature information is linked with taxonomy IDs, phylogenies, and genomic information. TEMPURA provides useful information to researchers working on biotechnological applications of extremophiles and their biomolecules as well as those performing fundamental studies on the physiological diversity of prokaryotes.
著者
木村 真梨
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.699-701, 2017 (Released:2017-07-01)
参考文献数
22

近年鍼灸の臨床効果が世界各国で科学的に解明されようとしている。うつに対する鍼灸治療の効果としては筋緊張の緩和、免疫の活性化、前頭葉の活動や自律神経の調整、オキシトシンの分泌を促し、セロトニンの分泌を増加させる等、不安やストレス軽減にも寄与することが明らかになってきた。本稿では、最近の鍼灸の基礎・臨床研究の現状を紹介するとともにうつに有効なツボや東洋医学の理論について概説する。
著者
大貫 挙学
出版者
Japanese Council on Family Relations
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.39-56, 2013-07-10 (Released:2017-02-14)
参考文献数
50

「言語論的転回」以降のフェミニズム理論において、性別カテゴリーやセクシュアル・アイデンティティは、言説による構築物とみなされるようになっている。J. バトラーによれば、主体は、言語行為によってパフォーマティヴに構築されるものである。 しかし、こうした理論的傾向に対しては、「文化的」次元のみが過度に強調され、「物質的」不平等の問題が軽視されているとの批判がある。一方、性差別の物質的側面を重視してきたのが、マルクス主義フェミニズムであった。とはいえ、マルクス主義フェミニズムにおいては、性的主体化の言説的機制が適切に理論化されていない。     そこで本稿では、主体の言説的構築を前提とする立場から、マルクス主義フェミニズム理論の再検討を行いたい。とくに、社会の内部/外部の非決定性が、物質/文化の相互還元不可能性を示していることを主張する。
著者
大藪 龍介 Oyabu Ryusuke
雑誌
松山大学論集 = Matsuyama University review (ISSN:09163298)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.23-50, 2010-03-01
著者
古城 徹
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.74-82, 2022-02-05 (Released:2022-02-05)
参考文献数
56

「強い力」の基礎理論である量子色力学(QCD)は,カラー電荷を持つ素粒子,クォークとグルーオンの動力学である.クォークとグルーオンは,カラー電荷を中性にする組み合わせでハドロン(複合粒子)に閉じ込められる(カラーの閉じ込め).低エネルギーではカラー中性のハドロンが有効自由度であるが,高温・高密度ではカラー自由度が顕在化する.高温ではハドロンのガスからクォーク・グルーオン・プラズマへの相転移が起こる.この相転移は,重イオン衝突による加熱圧縮実験と格子QCDに基づく第一原理計算やモデル解析により詳細に研究されている.一方,低温で原子核を圧縮すると,まず多数のハドロンからなるハドロン物質,次いでクォーク物質になると考えられているが,その多体問題の記述は確立されていない.実験として,重イオン衝突による圧縮が考えられるが,高エネルギー実験では低温が実現せず,低エネルギー実験では高密度に達しない.ところが宇宙に目を転ずれば,中性子星という超高密度天体が存在する.中性子星は高密度におけるQCD物性を観測できる天然の実験室系である.たくさんの中性子星を観測していくと,それらが一つの質量・半径関係式を構成する.これは中性子星内部の状態方程式と一対一対応なので,原理的には観測から高密度QCDの状態方程式を直接決めることができる.これまで質量と半径の同時観測は難しい問題だったが,ここ十年程度でその状況も変わりつつある.特に2倍の太陽質量を持つ重い中性子星の発見,中性子星合体現象の観測,といった歴史的発見があった.前者は,高密度物質が過去に考えられていたよりもずっと硬い――そうでなければ自己重力で潰れてブラックホールになる――ことを示唆する.後者は,重力波,電磁波,ニュートリノによる複数の観測量から天体現象を多角的に解析するマルチメッセンジャー天文学の幕を開き,今後計画されている観測により飛躍的な進展が予想される.以上の観測の進展と,理論計算が有効な領域の情報とを組み合わせることで,QCD物性に対する理解もまた深化する.低密度の原子核物理を考慮に入れたうえで高密度領域を考えたとき,2倍の太陽質量を持つ中性子星の中心部では,その密度が核子が重なり合うほどに大きいことが示唆される.ここではクォークに基づく記述が必要であろう.しかしこのクォーク物質は非常に硬いという点で,以前に用いられていた記述の範疇に収まらない.特に今までよく用いられてきた,ハドロン物質とクォーク物質を1次相転移によって隔てる記述は,1次相転移による物質の軟化が柔らかいクォーク物質を導く,という点でやや具合が悪い.ここにハドロン物質,クォーク物質とは何か,という基本的な問いに立ち返る必要が出てくる.この文脈で,「クォーク・ハドロン連続性」や「quarkyonic相」といった,ハドロン物質とクォーク物質を相転移なく連続的につなげる新しい型の記述が現象論に活用されつつあり,一定の成功を収めている.より詳細な検証は,物質科学としてのQCDにとって基礎的課題であり,また今後の中性子星の観測を予言・解釈する際に重要となる.

8 0 0 0 考古學雜誌

著者
考古學會 [編輯]
出版者
聚精堂
巻号頁・発行日
1910

8 0 0 0 OA 株式年鑑

著者
大阪屋商店調査部 編
出版者
大同書院
巻号頁・発行日
vol.昭和15年度, 1940