著者
谷川 喜美江 タニガワ キミエ Kimie Tanigawa
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.77-92, 2011-03-20

我が国では、経済成長のために金融資産活用の期待が高まっている。また、かつては、異なる会計基準を適用する国での上場には、財務諸表作成コストが問題とされていたが、国際的に統一された財務報告基準(IFRS)の適用が拡大し、我が国でも強制適用が検討されている。これは、企業における財務諸表作成コストの問題を緩和するものであると同時に、投資家にとっては財務諸表の国際比較を容易にするものであり、国際的な投資活動が一層進むことが予想されよう。そこで、諸外国の金融所得課税を概観すると、特に税制の崩壊を経験した北欧諸国では、勤労性所得よりも資産性所得への課税を簡素化し、かつ軽減することで税制の崩壊を修復し、公平性を担保する努力がなされてきた。しかしながら、歴史的経緯からは、所得税に所得再分配機能が求められており、このためには包括的所得概念を採用し、かつ、勤労性所得は資産性所得よりも軽課することが求められるのである。したがって、我が国の所得税には、総合課税、かつ、勤労性所得軽課、資産性所得重課が求められるところであるが、すべての所得の間における損益通算を認めること及び資産性所得を重課することは、租税回避から生ずる税制の崩壊を招くことが懸念される。一方、勤労性所得と資産性所得とそれぞれの区分に基づく課税は、個人の合計所得による真の担税力を考慮した課税が行われ難い。そこで、我が国における金融所得課税を考慮する際には、課税ベースを広く捉え、損益通算の範囲に関しては、租税回避から生ずる税制崩壊を抑制するため、勤労性所得と資産性所得でそれぞれ区分の上、認めるべきである。そして、損益通算後の両所得を合算し、合算後の所得に基づく累進税率を適用した課税を行うことで、簡素かつ所得再分配機能を十分に備えた所得税制を構築しなければならないのである。
著者
小川 博司 石田 佐恵子 長谷 正人 川崎 賢一 河原 和枝 遠藤 知巳 岡田 朋之
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

近年、現代メディアを取り巻く文化は、世界的な広がりを見せ、急速に変化している。だが、日本においては、その文化の具体的なありようや展開、日常生活に及ぼす影響などは十分に明らかになってはいない。本研究は、「クイズ形式の文化とその歴史的な変化から見る現代生活の諸相」に焦点を当て、メディア社会における文化のありようを明らかにしようとしたものである。本研究の目的は大きく分けて3つある。第1に、歴史社会学的観点からクイズ形式の文化が社会の中にどのように出現し、広がっていったかを明らかにすることである。第2に、歴史的な観点から描き出されたクイズ番組の変遷、クイズ文化の浸透に並行して、人々の日常生活における知識や情報のあり方の変化を明らかにすることである。第3に、アメリカ文化の強い影響を受けて導入されたクイズ形式の文化が、当初の輸入物の文化のありようを越えて、日本文化の一部として定着する際に、どのような形で加工され、「日本文化」化されたのか、明らかにすることである。具体的な作業としては、ラジオ時代のクイズ番組、テレビ時代のクイズ番組のデータを収集しデータベース化するとともに、クイズ番組関係者からのヒヤリングを行った。それらと並行して、アメリカ合衆国における「クイズショー・スキャンダル」についての検討、日本のクイズ文化について専門家からのヒヤリングなど、クイズ文化の歴史をどのように見るかの検討を積み重ねた。ここから、「高度情報社会」と呼ばれる現代の日常生活における知識や情報のおかれた意味について明らかにする、さまざまな知見が得られた。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1027, pp.66-69, 2000-02-07

魔法の絨毯のようにレールから浮いて走るリニアモーターカーが、ようやく営業運転に向けて動き出した。 といっても、時速500kmを目指して山梨県で実験を続けているリニアモーターカーのことではない。超電導磁石を使って浮上する山梨の実験線とは違い、営業運転間近なのは通常の電磁石の力で浮く「常電導磁気浮上式リニアモーターカー(HSST)」と呼ばれるタイプだ。
著者
谷川 喜美江
出版者
千葉商科大学国府台学会
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.73-85, 2019-03
著者
谷川 喜美江
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.57-74, 2014-09
著者
瀧村 剛 樋口 進
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.308-314, 2016 (Released:2018-07-12)
参考文献数
12

平成25年に成立したアルコール健康障害対策基本法に基づき,現在,アルコール健康障害対策推進基本計画の策定が進められており,平成28年6月までには公表される予定である。お酒は百薬の長と言われているが,一方では,アルコール依存症,飲酒運転等,多くの問題も抱えている。基本計画では,「不適切な飲酒の誘因防止」に関する施策も講じられると聞いている。酒類の製造,販売に携わる者にとってアルコールのマイナス面への対応も大切なことであり,法律の背景と概要について解説していただいた。
著者
植田 康成
出版者
広島大学大学院文学研究科
雑誌
広島大学大学院文学研究科論集 (ISSN:13477013)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.37-55, 2008-12

筆者は「オーストリア哲学のための研究所と資料センター」(オーストリア・グラーツ市)に保管されているカール・ビューラー遺稿整理を、日本学術振興会(2001年)、オーストリア研究学術省(2002年)、ドイツ連邦共和国フンボルト財団(2003年)の支援を得て、各年それぞれ2ヶ月間3年にわたって行った。その内容と部分的成果について述べたものである。遺稿整理の内容とその成果に基づいて、カール・ビューラーが、言語理論に関してアメリカ亡命(1938)以後、どのような思考を展開したかを彼の遺稿によって追認することが研究上の目的の一つであった。最終的には、現時点においても有意味と判断される内容の原稿をまとめて、遺稿集を出版することが目標である。言語理論に関して言うならば、まず『言語理論』(1934)における公理(C)の具体的な展開として言語芸術作品、言語の詩的機能について考察を展開している。次に、イメージ破壊を唱えるオルテガに対する批判を展開する中で、メタファーの認識的機能について、現在の認知意味論につながる考察を展開している。第3番目の主題として、当時めざましい展開を遂げていた一般意味論の潮流を見据え、ビューラーは『言語理論』(1934)を起点に、実用意味論の名のもと、医学、気象、法廷という3つの分野を取りあげ、意味論が日常生活においてどのように有用であるかを論じている。ビューラーは1950年代に生物学、とりわけ生物の体内時計、方向定位に関する論文を発表しているが、言語理論を中心とする言語一般に関するビューラーの学問的関心も決して衰えることはなかった、というのが、彼の遺稿を文献学的に整理して得た結論である。ビューラーの全業績に関する俯瞰と考察を含め、現時点においても有意味と判断される遺稿部分を含む報告の出版は、将来の課題として残されている。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1631, pp.120-123, 2012-03-05

当時、ニートと呼ばれる若年無業者問題が頻繁にマスコミに取り上げられ、社会問題化していた。その支援を担う特定非営利活動法人(NPO法人)の理事長として注目されつつあったのが、工藤啓だった。取材を申し入れ、初めて東京都立川市の事務所を訪ねた時のことだ。 「理事長の工藤さんはいらっしゃいますか?」。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.9, no.9, pp.90-93, 2010-05-18

中小企業向けに営業支援のコンサルティングを手がけるソフトブレーン・サービスの社長、工藤龍矢さんは、「合理」を徹底的に追求する。「日本売れる仕組みづくり一般財団法人」なる組織の代表理事でもある。同財団の理念は、真に営業力のある人材の育成と、企業の売れる仕組み作りを支援し、日本企業の経営課題の解決を目指すこと。 工藤さんはこう語る。
著者
山鹿 誠次
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.231-237, 1950-07-31 (Released:2008-12-24)
参考文献数
7
被引用文献数
1
出版者
日経BP
雑誌
日経ビジネス = Nikkei business (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.2053, pp.50-54, 2020-08-17

7月31日、日本ハムは2021年3月期の連結事業利益(国際会計基準)の予想を上方修正した。340億円の従来予想に30億円を上積み。新型コロナウイルスのため業務用食品が苦戦する中、主力ソーセージ、シャウエッセンがけん引した。
著者
星野 敬太郎 光永 伸一郎 小林 辰至
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.83-90, 2013-01-15
参考文献数
9

<p>発芽時における,貯蔵デンプン分解の仕組みを学習・理解するための実験教材の開発を試みた.さまざまな植物の発芽種子を対象に分析を加えた結果,ソバを用いた実験教材を作成することができた.本教材においては,デンプン分解に伴うグルコース濃度の変動とその要因となるアミラーゼ活性について,尿糖試験紙法とデンプン試験紙法を用いて容易に確認することができる.すなわち,両者の関係について自ら仮説を立てた後,実験を通してそのことを検証できるわけであり,探究活動を取り入れた教材としての活用に期待がかかる.また,本教材は,発芽の生理についてグルコースを中心としたエネルギー代謝(糖代謝)の側面からとらえたものである.よって,本教材により,形態的変化の観察が中心である発芽の学習を,生化学的要素を含むより高度な内容へと発展できるものと考える.</p>
著者
中村 雅俊 池添 冬芽 梅垣 雄心 西下 智 小林 拓也 藤田 康介 田中 浩基 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

<b>【はじめに,目的】</b>臨床において,腸腰筋の短縮による股関節伸展制限や股関節屈曲拘縮は問題となることが多く,腸腰筋の伸張性を維持・改善するためにストレッチングがよく行われている。ストレッチングの基本的な方法は筋の作用と反対方向へ伸張することであり,腸腰筋のストレッチングとしては股関節を伸展する方法がよく用いられている。しかし,腸腰筋には股関節屈曲作用に加えて,腸骨筋では股関節外転および内旋,大腰筋では股関節内転および外旋作用があると報告されている。そのため,股関節伸展に加えて股関節の内・外転もしくは内・外旋を加えることで,より腸腰筋は伸張される可能性が考えられる。近年,せん断波エラストグラフィー機能により,組織に伝わるせん断波の速度を測定し,組織の硬度(弾性率)を算出することが可能になり,弾性率は筋の伸張の程度を反映していることが報告されている。そのため,この弾性率は腸腰筋のような深部筋の伸張程度を非侵襲的に評価できる有用な指標とされている。本研究の目的は,股関節伸展に股関節内・外転や内・外旋を加えることで腸腰筋をより伸張できるかどうかを明らかにすることである。<b>【方法】</b>対象は下肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常若年男性10名(平均年齢23.6±2.2歳)の利き脚(ボールを蹴る)側の腸腰筋とした。対象者をベッド上,背臥位にて安静にした安静時と,ストレッチング肢位は反対側の股関節を最大屈曲することで骨盤を後傾位に固定し,検査側の膝関節は大腿直筋の伸張の影響を考慮し,軽度屈曲位とした状態を基準とした。その後,対象者が痛みを訴えることなく最大限耐えうる角度まで他動的に股関節伸展する条件(伸展)と対象者が最大限耐えうる角度まで股関節内転,外転,内旋・外旋した状態から最大限股関節伸展する条件(内転,外転,内旋,外旋)の計5条件とし,安静を加えた6条件の施行は無作為の順番で行った。腸腰筋の弾性率(kPa)の評価は,SuperSonic Imagine社製超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用い,大転子の高さの鼠径部で腸腰筋を同定し,測定を行った。弾性率の測定は各条件2回ずつ行い,その平均値を解析に用いた。弾性率は筋の伸張の程度と高い相関関係を示すことが報告されており,弾性率が高いほど,筋は伸張されていることを意味している。統計学的検定は,各条件における腸腰筋の弾性率をBonferroni補正におけるWilcoxon符号順位検定を用いて比較した。なお,有意水準は5%未満とした。<b>【倫理的配慮,説明と同意】</b>本研究は所属施設の倫理委員会の承認を得て(承認番号E-1162),文書および口頭にて研究の目的・趣旨を説明し,同意を得られた者を対象とした。<b>【結果】</b>腸腰筋の弾性率は安静時24.6±19.4kPa,伸展71.7±45.0kPa,内転60.9±27.2kPa,外転78.3±45.1kPa,内旋115.8±49.9kPa,外旋93.5±45.7kPaとなった。統計処理の結果,安静時に対して伸展,内転,外転,内旋,外旋のすべてのストレッチング条件で有意に高値を示した。また,伸展の弾性率と比較すると,内旋では有意に高値を示したが,内転と外転および外旋では有意差は認められなかった。<b>【考察】</b>本研究の結果,安静時と比較して全てのストレッチング条件で弾性率は有意に増加したことから,本研究で用いたストレッチング肢位はいずれにおいても腸腰筋を伸張することが可能であることが明らかとなった。また,伸展と比較して内旋で有意に増加したことから,一般的によく用いられている腸腰筋のストレッチング法である股関節伸展方向へのみのストレッチングよりも股関節伸展に内旋を加えることで,より腸腰筋を伸張できることが示唆された。その理由として,腸腰筋のなかで大腰筋は股関節外旋作用を持つと報告されており,股関節伸展に内旋を加えることで大腰筋がより伸張された可能性が考えられる。一方,他の肢位で腸腰筋がより伸長出来なかった理由として,腸骨筋は安静時には外転の作用があるが,内転すると内転作用に変化するため,内転することで腸骨筋が緩んだ可能性が考えられる。また,股関節伸展に外転・外旋を加えると腸骨大腿靭帯が伸張されるため,股関節伸展に外転や外旋を加えたストレッチング条件の最終可動域では腸腰筋よりも腸骨大腿靭帯が伸張され,腸腰筋の弾性率の増加にはつながらなかった可能性が考えられる。<b>【理学療法学研究としての意義】</b>臨床において腸腰筋のストレッチングは股関節伸展が用いられることが多いが,股関節伸展に内旋を加えることで,より効果的に腸腰筋を伸張することができることが示唆された。