著者
三浦 真弘 内野 哲哉 髙橋 明弘
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.694-703, 2015-08-25

はじめに 脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)は,頭蓋-脊柱管内においてくも膜と軟膜の間すなわちくも膜下腔と,上衣層に囲まれた脳室および脊髄中心管を満たす無色透明な液体である.正常では脳脊髄液の細胞数は5個/mm3以下である.CSFの全量は成人で常時100〜150mlに保たれている.CSFの1日の産生量が400〜600ml(0.35ml/min)であることを考えると,1日に3〜4回生理的吸収路を介してCSFは入れ替わる計算になる39). CSFの存在意義については,古くから諸説が論じられている.その中で,脳脊髄は外面も内面(脳室)もCSFに完全に浸る状況から,生じた浮力により自重を効果的に減少させる役割(神経根・硬膜の緊張緩和)36),また頭蓋脊椎への機械的刺激に対するクッション材的役割が重要とされる.一方,最近ではCSFに含まれる物質の分子レベルの働きについても研究が進んでおり,CSFに流入した脳実質の細胞外液ならびに上衣細胞・脈絡上衣などに由来する種々のサイトカインや物質が,呼吸や動脈性拍動15),そして上衣細胞の繊毛運動などで生じるCSF流を利用して反発性軸索ガイダンス因子,増殖因子などの物質の運搬・交換そして拡散,さらには免疫反応防御システム,脈管新生など脳の栄養・代謝に深く関わることが明らかにされている21,22).すなわち,CSFはその組成を調節することで脳の健康維持にも欠かせない存在となっている17). 通常CSFは,産生,循環,吸収が相互に連関して機能することで一定量が保たれている.成人のCSF総量を約140mlとすると,その内訳は脳室に30ml,脳くも膜下腔に80ml,脊髄くも膜下腔に30mlと推測される35).ちなみに,中枢神経系(central nervous system:CNS)の間質液(interstitial fluid:ISF)は280ml存在する.したがって,CNSに関わる水の動態を考える場合,ISFについても詳細に検討する必要がある.特に,CNSは唯一リンパ系が存在しない組織であることから,ISFにおける水の収支バランスに密接に働く脳動脈周囲の血管周囲腔(perivascular space:PVS)を介する特別な排導機序は,リンパ系に相当するシステムを代償する.これは,脳白質血管周囲のアストログリア終足に高発現する膜輸送タンパク質水チャンネル(aquaporin channel:AQP)33)を基軸にした実質から可溶性タンパク質・代謝産物などを血管にスムーズに排除するシステムで,睡眠中に稼働するglymphatic system14)またはglymphatic clearance pathway16)と呼ばれる.同システムに関する基礎研究2,14,16)は,脳アミロイド血管症やアルツハイマー病などの発症機序との関連解明を受けて,臨床研究として現在大きな期待が寄せられている.なお,PVSは細動脈でVirchow-Robin腔と交通する. 一方,CSFの収支バランスを考える場合,従来からその吸収首座とされる脳硬膜くも膜顆粒の本態解明は緊喫の課題である44).また,CSFのリンパ系吸収路については,頭蓋底領域とは別に脊髄硬膜外レベルでの作動確認20,24)もCSF循環にとって検証すべき課題とされている.著者らは,CH40微粒子活性炭,indigocarmine,およびindocyanine green(ICG)を新しいCSFトレーサーとしてヒト組織を含む注入実験に用いることで,CSF経リンパ吸収路の構造的特徴とその吸収動態について検討をこれまで試みてきた24,28).特に,脊髄領域でのCSF吸収とリンパ管系との関係については,硬膜-神経根周囲の髄膜に局在する篩状斑を介する脈管外通液路(extravascular fluid pathway)19,29,30)ならびに硬膜外リンパ系(epidural lymphatic system:EDLS)4,25)との連関機能の重要性,さらに両者の組織学的特徴を明らかにしたことで,CSFがいかにして髄膜バリア(図1)を生理的逸脱して硬膜外リンパ管に吸収されるか,という長年の疑問に対して髄膜脈管外液路30)の存在証明で1つの答えを示した.他方,近年YamadaはCSF動態をMRIで画像化するTime-SLIP法を応用したCSF dynamics imaging45)を開発し,特に古典的なCSF循環概念,すなわちCSFが産生部位から吸収部分に向かって川のように流れる第3循環説が事実と異なることを実証した臨床的意義は大きい43,45). CNSの細胞外液や脳室系のCSFの生理的量的バランスを保つために必要なシステムのいずれかの構造・機能が破綻すると,CSFでは過剰な貯留状態を呈して水頭症,逆にそれが減少ないしは異常な漏出状態を呈すれば低髄圧症候群(脳脊髄液減少症)・脳脊髄液漏出症,一方ISFでは,血管周囲腔での通過障害として脳浮腫やアルツハイマー病,遺伝性脳小血管病(cerebral small vessel disease〔SVD〕)34)などの病態がそれぞれ引き起こされると考えられている14,16,42). 最近,これらの病態解明に取り組む関連学会においてCSF循環の再考が叫ばれる中,第14回日本正常圧水頭症学会(2013)の特別講演での佐藤修東海大学名誉教授の提言は注目された.佐藤は最新の研究成果7,32,33,43)に触れ,上矢状洞付近でのCSF吸収は定説とは異なり主経路でなく,むしろ頭蓋底部,鼻腔からのリンパ系吸収,また脊髄レベルからの吸収路のほうが重要であると結論づけ,大きな反響を呼んだ. 本稿では,正常状態でのCSF循環(産生,吸収)について最新の知見を踏まえて概説するが,特に脊髄膜に局在する前リンパ管通液路(prelymphatic channel:PLC)19,26,30)を介するCSF経リンパ吸収路について紹介する.また,自家所見から脳脊髄液減少症および特発性正常圧水頭症の発症機序についても最後に考察したい.
著者
藤原 勝夫 池上 晴夫 岡田 守彦 小山 吉明
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.385-399, 1982 (Released:2008-02-26)
参考文献数
27
被引用文献数
21 19

重心計上にて種々の立位姿勢を保持させ,立位姿勢の安定性の加齢に伴う変化について調べるとともに,下肢筋力(底屈力,背屈力,母指屈曲力)を測定し,立位姿勢の安定性と下肢筋力との関係について検討した。その結果,安楽立位および前傾姿勢の安定性は60歳代以上において低下するのに対し,後傾姿勢の安定性は30歳代で低下しはじめることが明らかとなった。それぞれの姿勢に関与する筋力の加齢に伴う変化の様相は安定性の変化と類似していた。また筋力と安定性との相関からみて,前傾•後傾のような比較的大きな筋力を必要とする姿勢では,安定性の規定要因として筋力の重要性が増大すると考えられた。
著者
難波 紘二
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.75-80, 2003-09-18 (Released:2017-04-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本論文タイトルの疑問に答えるために、科学におけるクローンとは何かを簡単に検討した。クローンとは受精卵以後に一個の体細胞に由来して形成された、組織された細胞集塊をいい、このため遺伝的構造が同ーとなる。クローンには多種多様な存在が知られている。「人間の尊厳」という言葉の歴史を検討し、それが時代を超えて普遍の意味をもつというのは事実でないことを明らかにした。しばしばこの言葉は議論において根拠を提示することなく、異論を封じ込めるのに用いられている。ヒトのクローン技術は現時点においても生殖医学において許容できる範囲の安全率をもっていると考えられる。従って、この技術を利用する以外に自分の子供を絶対にもつことができない個人が出現した場合に、この技術の人間への応用が、他の個人や社会に危害を与えることが明らかに証明されるのでない限り、それを禁止するのは自由に対する行き過ぎた抑圧と見なされるべきである。
著者
西山 要一 植田 直見 桐野 文良 野尻 忠 早川 泰弘 今津 節生 東野 治之 関根 俊一 望月 規史 成瀬 正和
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

携帯型蛍光X線分析装置、据付型蛍光X線分析装置、X線回折装置、X線透過撮影装置など多種の分析器機・調査機器を活用して真鍮製考古資料・美術工芸品の成分分析等を行った。三重・大宝院所蔵大般若経八巻(紺紙金字経)の詳細な科学分析、および平安~江戸時代の紺紙金字経・同断簡の分析などによって、経典写経における真鍮泥使用の広がりを把握し、その宗教的・技術的・経済的な意味を歴史上に位置付けることを試みた。また古代~中世の京都・平安京跡、岩手・平泉遺跡、近世の奈良・奈良町遺跡、和歌山城跡などの出土銅合金・真鍮資料・鋳造資料を悉皆的に科学分析し、各遺跡・各時代における真鍮製品の実態を把握した。美術工芸資料調査では、長谷寺・九鈷鈴(中国・元時代)、當麻寺・螺鈿玳瑁螺鈿唐草合子(朝鮮・高麗時代)の将来品の分析を行い真鍮が使われていることを確認した。この種の日本製真鍮製品が見当たらないことから、真鍮の利用に日本と両国の間では様相を異にすると考えられる。近世には日本絵画の彩色に真鍮泥が使われる諸例を明らかにしつつあり、江戸時代以降の広範な真鍮利用の実態が判明しつつある。史料学調査では、日本・韓国の真鍮関連の古記録の探索の中で、新たに朝鮮の「三国史記」に真鍮関連の記載を見いだし、その真鍮史上の位置付けを試みている。さらに、韓国の真鍮資料を同国の分析科学者の協力を得て科学分析データおよび記録データの収集を行った。紀元前より真鍮製品(ローマコインなど)が存在するヨーロッパの諸例のデータも研究協力者の助力を得て収集し、日本の真鍮製品との共通性と差異、西アジアに発するとされる真鍮の起源とその伝来の道(ブラスロード)と歴史の一端を垣間見ることができた。これらの研究成果は、昨年度報告と同様に2019年度研究成果(冊子)にまとめ、日本文化財科学会大会(2020年7月)などで公表の予定である。
著者
田中 美知子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.438-440, 1996-06-25

分娩後の乳汁分泌は徐々に増加し,産後7〜8日目では500ml/日前後の乳汁分泌がある(図1)。しかし,この時期以後,母乳分泌が過剰となり,母乳育児に困難をきたす場合がある。その原因として考えられることには,高エネルギー食,催乳剤の乱用,大量の輸液,過激な乳房マッサージによる乳房への刺激,等がある。特にⅡb型・Ⅲ型(橋口精範氏による分類より)等の乳房では,これらの影響を特に受けやすい。 その他,特殊例ではあるが,筆者が指導援助をした高プロラクチン血症の褥婦さんで乳汁分泌過多の人がいた。
著者
北杜夫著
出版者
新潮社
巻号頁・発行日
1976
著者
白勢 洋平 下林 典正 高谷 真樹 石橋 隆 豊 遙秋
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2018年年会
巻号頁・発行日
pp.50, 2018 (Released:2020-01-16)

京都大学総合博物館では,京都帝国大学の教授であった比企忠が蒐集した国内では最大級の貴重な鉱物・鉱石標本を所蔵している。その標本整理の過程で「比企標本」は,「和田標本」,「若林標本」,「高標本」といった20世紀初頭の日本の「三大鉱物標本」に勝るとも劣らない標本であることがわかった。比企は1894年に帝国大学を卒業ののち,1898年に京都帝国大学理工科大学の助教授に任じられ,開設されたばかりの採鉱冶金学教室で教鞭をとった。その後,採鉱学第三講座(鉱床学)の初代教授となり,1926年に定年退職するまでの間に,1万点以上の鉱物・鉱石標本が陳列する鉱物標本室を作り上げた。比企は亡くなる直前に鉱物標本の行く末を案じ,後進に「標本の志るべ」なる手引書を遺した。「標本の志るべ」の中には蒐集した鉱物標本ひとつひとつの解説と共に,教育熱心さが窺える文言が記されている。比企標本は,国宝級とも形容される,質・量ともに優れた選りすぐりの標本であるが,同時に我が国の鉱物学の黎明期に多くの研究者や学生を育ててきた貴重な標本でもある。
著者
大河原 晋 大牟礼 勝 森谷 太郎
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.64, no.722, pp.65-73, 1956

三石蝋石32%, 同質シャモット40%に, 猿投木節と蛙目粘土をそれぞれ24%および4%ずつ結合剤として加え, 加水, 成形後, これを1400°, 1時間焼成して製作した実験用小型坩堝を用いて, 2種のガラス, すなわちソーダ石灰ガラス (Na<sub>2</sub>O・CaO・3SiO<sub>2</sub>) とソーダ鉛ガラス (Na<sub>2</sub>O・PbO・3SiO<sub>2</sub>) の予めカレットとしたものを, 1200°と1400°に熔融し, この温度に達した直後のもの, 2, 3, 4時間後のものを, 炉内から取出して空冷した際に, 各ガラスがそれぞれの坩堝を侵蝕している状態を鏡検してその機構を考察した.<br>その結果によれば, いずれのガラスでもほぼ同様な侵蝕過程が認められ, 坩堝素地のアルミナ成分の熔解がムライトの熔解にやや先行する結果, 1200°では坩堝素地中の粘土とカオリン質蝋石の各〓焼部分周辺のガラス中に少量のネフェリンを混入したカーネギエイト結晶層が析出しており, 時間の経過と共にこれらの結晶は粘土〓焼部分の周辺から消失し, カオリン質蝋石の〓焼部分周辺に顕著な増加を示す. しかるに, 1400°ではいずれのガラスでも, 最初ダイアスポア仮像周辺のみにカーネギエイトを少量混入したネフェリン結晶の析出が認められ, 時間の経過するにつれて, 結晶は徐々に消失していって, 逆にガラスが坩堝素地内部に浸入し, 外観が白色の極めて薄い侵蝕層を形成するに至る. すなわち, 坩堝素地の表面で若干の成分交換が行われ, それ以後はガラス中への坩堝素地の熔解が, 常に侵蝕層を間にして進んでゆき, 時間が経過するにつれて侵蝕層は少しずつ素地内部に後退してゆく. 全般的に見て, ソーダ石灰ガラスよりもソーダ鉛ガラスの方が侵蝕の度合が強い.
著者
位藤 邦生 藤川 功和
出版者
広島大学大学院文学研究科
雑誌
広島大学大学院文学研究科論集 (ISSN:13477013)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.15-39, 2005-12

'Hohji-gannen Inno On-utaawase' was a poetical event which was held in 1247 by the retired emperor GOSAGA. A total of twentysix poets participated in the event and under ten poetical titles including 'SOHSYUN NO KASUMI-early spring haze' two hundred sixty poems were made. These poems were combined as a couple and were judged a victory or defeat by FUJIWARA TAMEIE. In this article we tried to appreciate twentysix poets, 13 sets, having 'SOHSYUN NO KASUMI' title.
著者
下村 登規夫 小谷 和彦 村上 文代
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.391-396, 2002-06-10

片頭痛患者においてはmagnetic resonance spectroscopy(MRS)による検討で,脳内の好気的代謝に障害が存在する可能性が指摘されるようになっている。また,ミトコンドリア酵素の活性低下も認められ,ミトコンドリア遺伝子異常の報告も加わり,ミトコンドリア機能異常が片頭痛患者に存在する可能性が指摘されるようになってきた。これらのミトコンドリア機能異常のみならず片頭痛患者においては,superoxide dismutaseの低下などのように後天的にもミトコンドリア機能障害をきたす可能性が存在することが指摘されている。また,治療面ではミトコンドリア機能を改善するような治療を行うことにより頭痛発作の軽減が認められている。これらのことは片頭痛が全身的ミトコンドリア機能障害を伴っていることを示唆するものであり,今後の治療薬の開発にも関わるものである。
著者
林 弘正 和田 美智代
出版者
日本法政学会
雑誌
法政論叢 (ISSN:03865266)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.249-254, 2006

The 103rd general meeting and symposium of The Japanese Association of Law and Political Science were held at Keiai University on November 26^<th> and 27^<th> of the year 2005. The uniform theme was "Family's transfiguration and violence". Five panelists presented their study at this session. First, Mr. Tomiyuki Ogawa of Aichi Gakuin University presented on the theme of "Family's transfiguration and violence". Second, Mr. Yoshinibu Araki of Musasino University presented on the theme of "Child Abuse and Neglect in Urban Areas". Third, Mr.Saegusa Tamotsu of Chukyo University presented on the theme of "Child Abuse and Punishment by Criminal Law-Focusing on the amended Child Abuse". Fourth, Ms. Machi Kamio of Shobi University presented on the theme of "The Legal System against Spousal Violence-Japan and France-". The last panelist Ms. Etsuko Furuhashi of Hanazono University presented on the theme of "Situation of Older People Abuse and Problem in Legal Action". After these important reports, each reporter responded to some questions and opinions from several members of the floor. This symposium ended successfully at 17:30. We are thankful to Prof.Yoshihiro Yamauchi, all other people at Keiai University and Heisei International University who helped this symposium.
著者
小野 隆彦 片山 広之 鈴木 英男
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.91-95, 1988-02-01 (Released:2017-06-02)

本論文では、雑音に埋もれた周期信号の周期とパワースペクトルを検出する新しい方法として、クロススペクトルを用いた同期加算の方法を提案し、理論及び実験的検討を加えた。具体的には、本方法は雑音に埋もれた周期信号から、一定の時間遅れを持って2回信号をサンプリングし、この間のクロススペクトルを計算し、これを多数回同期加算するものである。また、本方法は、従来のトリガパルスを用いたパワースペクトル法と異なり、トリガパルスが不要である点にも一つの特徴を有している。理論的考察から、上述の方法で得たクロススペクトルは、周期信号のパワースペクトルに時間差と周波数の積に比例する位相の回転を与えたものと等しいことを導いた。次に、白色雑音に埋もれた2種の正弦波及び白色雑音に埋もれた短い周期のM系列信号から作成した周期雑音信号を対象として、実験的検証を行った。その結果、本方法は、雑音に埋もれた周期信号の周期及びパワースペクトルの精度よい検出に有効であることが分かった。
著者
横田 清 高舘 城雄 野中 政伸
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.239-245, 1989-10-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
6
被引用文献数
2

エゾノギシギシが優占雑草となっているリンゴ園においてグリホサート液剤, グルホシネート液剤, ビアラホス水溶剤およびDBN・DCMU粒剤の秋処理の実験を行った。処理翌春の雑草の生育状況, 土壌中のN量の変化および雑草に吸収されるN量を調査し, さらにリンゴ園における除草剤の使用体系について考察した。1. 11月中旬の処理で翌春の雑草量を抑え, 除草剤処理あるいは刈り取りの時期を6月上旬まで延ばすことができ, とくにリンゴ園で最も問題となっているエゾノギシギシを効果的に防除しうることが認められた。2. 秋処理の効果は散布時期に大きく影響され, 雑草が冬枯れに入る前の散布で効果が大きかった。とくにグルホシネートとビアラホスではこの傾向が顕著であった。3. 春先のリンゴ園土壌中のNO3-Nは雑草の多少によって影響され, 草量の少ない区ほど高いレベルが維持された。4. 施肥時期に雑草の発生が多かった対照区では施肥したNのほとんどが直ちに雑草に吸収され, リンゴの根群域にはほとんど到達しないことが推定された。5. 雑草のN含有率は乾物当たり3.1~3.8%の範囲であり, 6月上旬まで草を繁茂させると施肥量に相当する10a当たり約15kgのNが雑草に吸収されることがわかった。6. 秋処理によって春先の草量を減らすことが施肥の効率を高め, 土壌中のNO3-Nを高いレベルに維持できることが認められた。7. 以上の諸結果からリンゴ園での除草剤の秋処理は, 労力が集中する春先に草生管理を軽減できると同時に施肥の効率化の面からみても意義が大きく, 年間の雑草管理体系に組み入れることの有利性が認められた。
著者
中川 憲之 井原 和彦 島田 信治 別府 達也 竹下 都多夫 佐藤 陽昨 保利 俊雄 石橋 正二郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.555-556, 2013-09-25 (Released:2013-11-26)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

大転子骨折単独は稀とされている.初診時の単純X線で大転子のみの骨折であった20例を対象とし評価した.20例のうちMRIを16例に施行し,2例は大転子骨折のみ.14例が大腿骨転子部骨折を認めた.大転子骨折単独の報告はいくつかあるが,MRIを行っていないものが多く,実際は不顕性の大腿骨転子部骨折であった可能性もあるのではないか?