著者
彭 永成
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要
巻号頁・発行日
vol.67, pp.29-42, 2021-03-25

本稿は雑誌『ゼクシィ』の九州版の歴史変遷を中心に、結婚情報誌における地方色の表し方と衰退の過程について検討するものである。「九州ゼクシィ」を分析した結果、創刊初期の誌面上では、地方の結婚事情の特色が読み取れた。たが、『ゼクシィ 首都圏』が表紙、目次、記事、付録という順に「九州ゼクシィ」の内容を同化していくうちに、誌上に表した地方色が徐々に消えていき、誌上で見られる結婚理想像も首都圏版とほぼ変わらないものになった。同時期、福岡発の地元誌『MELON』は地域特色に密着する誌面づくりをしていたが、最終的には廃刊に至った。『MELON』の対抗は、『ゼクシィ』による九州地方の結婚イメージの均質化を止めることはできなかった。
著者
岩井 八郎
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要
巻号頁・発行日
vol.67, pp.99-121, 2021-03-25

戦時体制下において, 女性の教育機会は拡大し労働力需要も著しく高まったが, その一方で出産力と家族を維持するための政策も次々と打ち出された.本稿は, 「職業移動と経歴調査(女子調査), 1983」の再分析によって, 戦時体制が女性のライフコースに与えた影響を明らかにしている.分析では, 1913-20年出生, 1921-25年出生, 1926-30年出生の3つの出生コーホートについて, 学歴別に人生パターンを比較している.分析結果として, 1921-25年出生の10代後半から20代前半に戦時体制の影響が強くあらわれていた.とりわけ中等教育卒の中で, 20歳までに事務職が急増し, それが25歳までに急減している点が重要である.高度成長期以降, M字型就業パターンは日本人女性のライフコースの特徴とされてきた.本稿は, 20代半ばまでのパターンの原型が戦時体制下で中等教育を終え就業した若い女性層に登場したと論じている.# ja
著者
奥瀬 喜之
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.16-25, 2020-12-20 (Released:2021-01-14)
参考文献数
18

ビジネスにおけるデジタル化の波は,マーケティング・ミックスの一つとしてのプライシングにも少なからぬ影響を与えている.本稿では,デジタル化時代のプライシングの2つの流れとしてのダイナミック・プライシングとサブスクリプション・モデルについて取り上げ,事例を踏まえて,それらの新しいプライシングが成立するための条件と,残された課題について考察していく.
著者
松下 貢
出版者
横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)
雑誌
横幹連合コンファレンス予稿集 第4回横幹連合コンファレンス
巻号頁・発行日
pp.108, 2011 (Released:2012-03-14)

昨今、自然科学、社会科学を問わず、複雑系が注目されている。複雑系を構成する要素は相互作用しながらこれまでの経緯・状態を踏まえて時間的に発展する。構成要素の歴史性が重要であるこのような系の統計性に注目するとき、対数正規分布がもっとも自然な分布関数であり、系全体の統計性をみわたす際の規準としてふさわしい。実際、身近で典型的な複雑系の統計性の例として、老人病の介護期間、都道府県や市町村人口、バクテリアの細胞サイズや私たちの身長・体重などをとってみると、対数正規性が顕著に現れていることがわかる。これらのことを踏まえて、新しい科学としての社会物理学の可能性を議論してみる。社会物理学が学際的な学として成り立つためには、社会科学的な複雑系の構造、統計及びダイナミクスがそれなりに一貫して議論されるようにならなければならないが、今はまだ準備の段階である。
出版者
函大商学論究委員会
雑誌
函大商学論究 (ISSN:02866145)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, 2005-03

・フランス移民政策の歴史的展開(2):移民受け入れ停止から統合化へ-1947年から1993年まで- 田部井 英夫 1-45・フランス移民政策の歴史的展開(3):社会的統合化から社会的同化へ-1993年から2001年まで- 田部井 英夫 47-96・標準原価計算の基礎 新谷 典彦 97-129
出版者
函大商学論究委員会
雑誌
函大商学論究 (ISSN:02866145)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, 2005-03

・フランス移民政策の歴史的展開(2):移民受け入れ停止から統合化へ-1947年から1993年まで- 田部井 英夫 1-45・フランス移民政策の歴史的展開(3):社会的統合化から社会的同化へ-1993年から2001年まで- 田部井 英夫 47-96・標準原価計算の基礎 新谷 典彦 97-129
著者
笹川 俊
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.179-183, 2015 (Released:2016-04-15)
参考文献数
15
被引用文献数
1

静止立位時の身体は,絶え間なく,小さく揺れ動いている.これは,受動的には不安定な立位バランスを,我々の脳神 経系が能動的に制御している事を意味する.立位バランスの神経制御機構に関しては,古くから数多くの研究がなされているが,その多くは静止立位時の身体を,足関節を唯一の回転中心とする倒立単振子としてモデル化したものである.本稿では,静止立位姿勢の多関節モデルについて,その妥当性や制御上の特色について解説した上で,同モデルを用いた最新の研究を紹介する.
著者
中務 真人 平崎 鋭矢 荻原 直道 濱田 穣
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

常的な二足性はヒトのみに見られる行動様式であり他に二足性の霊長類はいない。そのため、二足適応の進化に関する比較資料が不足している。これを補うため、飛び抜けた二足運動能力を示す猿まわしの調教ニホンザルについて、形態学、生理学、運動学的調査を行った。二足、及び四足歩行のエネルギー代謝は10才と4才の二頭のニホンザルを対象に行った。体重・時間あたりの二酸化炭素発生量をエネルギー消費の換算値として計測した。歩行速度は1.5から4.5km毎時の範囲で0.5km刻みで計測した。二足でも四足でも、エネルギー消費量はほぼ歩行速度に比例して単調増加した。二足歩行のエネルギー消費は四足歩行時に比べ、10才の個体では、約30%の増加、4才の個体では20-25%高い値を示した。歩行速度にかかわらず、この比は小さい変化しか示さなかった。これまでチンパンジー、オマキザルでの実験に基づいて、二足と四足の歩行エネルギー消費は変わらないとされてきたが、この結果は、それに再考を求めるものである。通常、エネルギー消費の目安として酸素消費が用いられるが、平均的な呼吸商を用いて四足歩行時の酸素消費量を推定するとこれまで報告されている数字に近い値が得られ、われわれの研究方法の妥当性が証明された。歩行ビデオ解析では、調教を受けたニホンザルは通常の実験用サルに比べ、長いストライドと少ない歩行周期を示すことが明らかにされた。このことは関節の最大伸展角が大きなことと関連しており、とりわけ膝関節においてはヒト歩行におけるダブル・ニー・アクションに似た現象が観察された。そのため、通常のサルでは両脚支持期にしか起こらない体幹の上方移動が単脚支持期において認められた。また、頭部、体幹の動揺は通常のニホンザルに比べ有意に小さい。これらの結果は、調教ニホンザルの二足歩行の効率が優れていることを示唆する。
著者
奈良教育大学附属図書館
出版者
奈良教育大学附属図書館
雑誌
春日文遊 : 奈良教育大学附属図書館報
巻号頁・発行日
no.198, 1997-09

「春日文遊」について/でんでん太鼓にひょうの笛/学校吹奏楽雑感/サイエンス・フィクション「3001年脳死文明」/附属図書館関係諸会議/推薦図書選定・購入図書一覧/お知らせ/平成8年度分図書館統計/図書館関係人事異動
著者
荘 発盛
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
no.27, pp.95-103, 2018-12

蔡英文の政権樹立直後、「新南向政策」が打ち出され、東南アジアまたはアセアンとの経済連携及び貿易関係の強化を推進している。その結果として、対中国貿易の依存度は低下することは容易に想像される。しかし、これは直ちに「脱対中国貿易依存」とみるべきかどうか。蔡英文政権では、中国の「一帯一路」などとは代替的なものではなくて、むしろ「補完的な役割」を果たすことになると主張している。一方、20数年前の李登輝時代において「南向政策」が推進されていたが、当時の台湾を取り巻く国際環境はすでに大きく変わり、その点も注目しつつ、「新南向政策」の成功の道について考察するのが本論文の目的である。
著者
清水 結
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.F-25-F-25, 2019

<p> 筆者は,これまでスポーツ医科学施設,国内トップスポーツチーム,日本代表,海外リハビリ施設と,様々な領域や立場でスポーツと関わってきた。</p><p> 理学療法士免許取得後に主に関わってきたのは,女子バスケットボールのトップリーグのチームであった。体育系大学においてトレーナー活動を経験してきたことと,医療施設での治療に携わった経験が,現場での活動においては大きな糧となった。同時に医療現場にも身を置くことで,医療現場とスポーツ現場をつなぐ道筋,反対に間にあるギャップにも目を向けることができた。また,トップリーグおよびジュニア世代における外傷予防のための外傷調査および予防介入を行い,チームを超えるリーグ・協会組織の一員としての活動も経験してきた。</p><p> その後,日本バスケットボール協会専任トレーナーとして,女子日本代表チームに帯同する機会を得ることができた。代表チームにおいては,他チームから集まる選手を管理する点で,一チームに所属して選手に対応する場合とは大きく異なる経験となった。また,リーグに所属するトレーナーや代表に関わるトレーナーの人材不足および育成の重要性を痛感した。</p><p> その後,韓国のリハビリ施設の開設を任され,施設運営やスタッフ育成を手掛けた。トップ選手の対応に従事しながらも,言語や環境,習慣や思考など,様々な面で日本との違いに戸惑いながら,また日本のスポーツ理学療法士の存在や役割について見直すきっかけとなった。</p><p> 今回はこれまでの私自身の経験をもとに,様々な活動場所における役割とスポーツ理学療法士として心がけていることをご紹介できればと思う。また,今後多くの女性理学療法士がスポーツ現場で必要とされる中,スポーツへ参加しやすい環境づくり,人材育成について議論したい。</p>