著者
久保 暁子 山本 清龍 中村 和彦 下村 彰男
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集
巻号頁・発行日
vol.33, pp.181-186, 2019

<p>本研究では,ストレス軽減のためデジタル機器から一定期間離れる取り組みであるデジタルデトックスの基盤的な研究を企図して,①回答者の属性とデジタル機器の使用状況,デジタル機器の依存性を把握し,それらの関係性を明らかにすること,②平日・休日の過ごし方,デジタルデトックスへの意向を把握し,デジタルデトックスの可能性を考察すること,の2点を目的とした。その結果,約半数の学生がデジタル機器を4時間以上使用し,一部の学生は機器の使用によって学生生活に問題を抱えていた。学生の意向をふまえれば,日常の機器使用制限や自然豊かな場所への外出はデジタルデトックスに有効と考えられた。</p>
著者
森 理恵
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.543-554, 2019 (Released:2019-08-24)
参考文献数
42

本論文は, 日露戦争からアジア太平洋戦争期 (1904~1945) までの「慰問袋」募集・送付活動について, 数量の推移や仕組みの発達を明らかにすることを目的とし, 慰問袋の募集と送付に関する新聞記事, 新聞広告, 業界紙, 団体機関誌, 軍事後援団体の報告書等を収集し, 分析した. 慰問袋の数量の推移については, 日露戦争や日中戦争だけでなく, 東北九州災害や青島攻略, 関東大震災でも多数の慰問袋を送る活動がおこなわれており, 単線的に増加したわけではないことを明らかにした. 慰問袋の変遷は, 日露戦争時を発生期, 東北九州災害・第一次世界大戦から関東大震災までを発達・完成期, 「満洲事変」から日中戦争・太平洋戦争前期までを拡大・定着期, 太平洋戦争後期を衰退期とみなすことができた. 東北九州災害から関東大震災までの時期 (1914-1923) が, 慰問袋募集・送付活動の仕組みの成立にとっては重要な時期であることがわかった. 慰問袋募集・送付活動の仕組みは, 慰問袋の送り手は女性男性子ども大人を問わず個人であり, 取扱機関は婦人会・青年団など地域の団体や, 学校, 百貨店, 製薬・製菓などの会社, 新聞社であり, 手続き方法は上記の取扱機関に手製または購入した慰問袋を持ち込む, 店頭で購入と同時に送付を申し込む, 新聞社などに代金を寄付する, のいずれかであることが明らかになった.
著者
Ken SAWAI
出版者
The Society for Reproduction and Development
雑誌
Journal of Reproduction and Development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
pp.2021-031, (Released:2021-04-27)
被引用文献数
3

In mammalian embryos, the first visible differentiation event is the segregation of the inner cell mass (ICM) and trophectoderm (TE) during the transition from the morula to the blastocyst stage. The ICM, which is attached to the inside of the TE, develop into the fetus and extraembryonic tissues, while the TE, which is a single layer surrounding the fluid-filled cavity called the blastocoel, will provide extraembryonic structures such as the placenta. ICM/TE differentiation is regulated by the interaction between various transcriptional factors. However, little information is available on the segregation of the ICM and TE lineages in preimplantation embryos of domestic animals, such as cattle and pigs. This review focuses on the roles of cell differentiation factors that regulate the ICM/TE segregation of preimplantation bovine and porcine embryos. Understanding the mechanism of cell differentiation in early embryos is necessary to improve the in vitro production systems for bovine and porcine embryos.
著者
大平 進
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.45-57, 2021

<p>近年,実務家のみならず,研究者の間でもギグ・エコノミーが注目されている。ギグ・エコノミーとは,デジタル・プラットフォームを介して,クライアント企業とワーカーの間で,単発の労働と金銭的報酬の交換がなされる社会経済的活動である。ギグ・エコノミーは,果たして企業の製品開発活動にどのような影響をもたらすのだろうか。著者の知る限りにおいて,当該分野の文献レビューは存在しない。そこで本研究は,ギグ・エコノミーと製品開発に焦点を当て,先行文献のレビューをおこなった。その結果,重要な5つのテーマが特定された。人的資源マネジメントの対象としてのギグ・ワーカー,ギグ・ワーカーのモチベーション管理,ギグ・エコノミーとアイデア創出,ギグ・エコノミーにおけるプラットフォームの役割と管理,ギグ・エコノミーにおけるコワーキング・スペースの役割と管理である。最後に,当該分野の研究が抱える課題と今後の可能性について議論した。</p>
著者
吉松 藤子 下村 道子 福永 淑子 伊藤 汎
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.22-27, 1992-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
12

“Geppei” is a traditional Chinese food. A way of preparing “Geppei” is as follows: First of all, the mixture of sugar, water and vinegar is boiled until the sugar content becomes 67%. This sugar solution is used after aging for several weeks. Then, the sugar solution, lard, wheat flour, and “kan-sui”, which is a Chinese special alkaline solution, are kneaded to a dough. Bean paste wrapped in the dough is baked into “Geppei”. A characteristic of the crust of “Geppei” is that it retains its soft texture during several weeks storage. In this study, the effects of the vinegar in the sugar solution on the physical properties of the crust were studied.The crust made of the sugar solution with the vinegar was softer than the crust without vinegar. Invert sugar was produced markedly in the sugar solution with the vinegar during boiling or aging. The crusts were made using the sugar solution which contains sucrose, glucose and fructose in various ratio, and the breaking strength was measured by a Rheoner. The more the glucose and fructose was included, the smaller the breaking strength and the softer the crust was. This is thought to be due to high hygroscopic property of invert sugar. In addition, the effect of “kan-sui” was to make the crust a desirable brown color.
著者
手塚 豊
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.60-63, 1953-01

資料
著者
高木 利久
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.d12-d24, 2021-04-15

生命科学は,ヒトゲノムの解読以来,ビッグデータを基盤としたデータ駆動型の研究に変貌を遂げつつある.このような背景のもと,約15年前に我が国におけるこの分野のデータの共有・統合を目指す統合データベースプロジェクトが開始され,それを推進するためのデータベースセンタも整備された.本稿では,この15年にどういうことがあったのか,そこから得られた教訓は何か,僭越ながらそれらを「10の教え」としてまとめたので紹介する.
著者
磯崎 哲夫
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.11-23, 2001-03-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
46
被引用文献数
4

"What is the professional knowledge and competence of science teachers?" This is an important theme for those concerned with, and interested in science teaching. This theme is historically recognized as universal in both western and non-western countries. In this paper the author has attempted to identify the professional knowledge and competence of science teachers before World War II from historical and comparative perspectives. First, the author describes two models of secondary teachers: the professional and the academic/liberal. The former was the predominant model for the education of secondary teachers at higher normal schools and the latter was the predominant model used in the imperial universities. The author has analyzed the curricula and records of informal meetings, which aimed to promote the professional development of secondary teachers in higher normal schools and in the imperial universities. Secondly, the author has compared the history of secondary science teacher education in Japan and England in terms of the development of professional knowledge and competence. The author concludes by categorizing the knowledge and competence required by secondary science teachers in Japan and England before World War II into :(i) Content knowledge; (ii) Curriculum knowledge and knowledge of educational goals and values, and (iii) Professional characteristics.
著者
市川 啓之 櫻木 悟 藤原 敬士 西原 大裕 辻 真弘 横濱 ふみ 谷本 匡史 大塚 寛昭 山本 和彦 川本 健治 田中屋 真智子 片山 祐介
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.60-65, 2018-01-15 (Released:2019-03-28)
参考文献数
11

背景:急性冠症候群(ACS)の急性期には,糖代謝異常を認めることが多い.本研究ではACSの急性期に糖負荷試験を行い,糖代謝異常の経時的変化とその機序について検討した. 方法:対象は,ACSで当院に入院した患者のうち,糖尿病既往がなく,心不全などの合併症のない26名.急性期と亜急性期に75 gOGTTを施行し,インスリン分泌能および抵抗性の経時的変化を調査した. 結果:急性期には糖尿病型の割合が46%と多く存在したが,亜急性期には15%に低下した.急性期から亜急性期にかけて,Insulinogenic indexは有意に上昇した(0.50±0.46 vs 0.91±0.78,p=0.003).一方,HOMA-IRには変化がみられなかった. 結論:ACS患者では糖代謝異常が多く存在し,その原因として,インスリン抵抗性よりもインスリン分泌能の低下が大きく関与していると考えられた.
著者
畠山 義彦
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-14, 2017-11-01 (Released:2020-01-12)
参考文献数
5
被引用文献数
2

巣箱内に赤外線カメラを設置した巣箱観察システムを用いて、ヤマガラの営巣時における行動を観察した。営巣期間は巣作り開始の3月10日から巣立ちの5月11日まで53日間であった。巣材を巣箱に運び入れる前に親鳥♀が巣箱内の壁や床を嘴でつついたり、床の上で羽を広げ泳ぐように羽ばたいたりする行動がみられた。産卵時には毎朝早朝1個ずつ産卵するが、親鳥が巣箱に入る時間は空が白み始める時間であった。親鳥♀は産卵期には、1日1個の卵を体内で作らなければならず、そのための効率的な産卵時刻として早朝を選択したと考えられる。育雛時の雨天の日は、雛の成長が鈍りその影響が翌日まで及ぶことが確認された。これは雛の成長の条件として日中の採食が影響していると考えられる。雛の総排泄腔より排泄され、風船のように膨らんだ排泄物を親鳥が食べるか外へ運び出す様子が確認された。成鳥の排泄物は液体状に近いものであるが、雛の排泄物は親鳥が処理しやすいよう膜状の物質に被われており、排泄物が散乱しないような構造になっていると考えられる。
著者
細矢 剛 保坂 健太郎
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.6, 2008

「菌類」は俗に言う「日陰者」であり,一般には,悪いイメージでとらえられる.科博における大学・一般を対象としたアンケート調査(n=29)でも,菌類からイメージされる形容詞には「汚い・怖い・暗い・くさい・しぶとい」など,どちらかというとネガティブな単語が並ぶ.しかし,菌類は自然界では環境の調和を図る存在として重要な役割を担うばかりでなく,人間とも様々な利害関係を持っている.このような重要な存在をアピールし,菌類の知名度を向上するため,国立科学博物館では,日本菌学会にも協力を得て,本年10月より,菌類をテーマにした特別展を開催する予定である.本講演では,この展覧会の内容を紹介し,話題提供としたい.本展覧会は以下のような構成である.0)プロローグ:生命の星地球は菌類の星(コミック「もやしもん」のキャラクターなどによる展覧会全体の紹介),1)菌類の誕生と多様化(菌類の化石を展示し,地球と菌類の生命史を紹介する),2)菌類ってどんな生物(二界説・五界説など生物の世界での菌類の立ち位置を紹介し,バクテリア,変形菌など紛らわしい生物についてもとりあげる),3)菌類のすがた(各門の代表的な菌類を紹介する.大型の菌類は樹脂含浸品,液浸標本を展示する.微小菌類は拡大模型・写真),4)光るきのこのふしぎ(ヤコウタケ),5)きのこKids(においをかいでみよう,音をきいてみよう,さわってみよう,顕微鏡をのぞいてみよう,などの体験コーナーで,菌類に実際にふれていただく,子供を主な対象としたコーナー),6)菌類が支える森(寄生・共生・腐生によって様々な形で他の生物と関わる菌類の自然界の中での姿を紹介し,環境の中での菌類の役割を考える),7)菌学者の部屋(日本の菌学の発展に貢献した菌学者の紹介),7)菌類と私たちの生活(アイスマンのきのこ,縄文きのこ,コウジカビから始まる菌の利用,鎌倉彫,食用きのこ,毒きのこ,など),8)菌類研究最前線(カエルツボカビなど),9)菌類と地球の未来.以上の展示を通じ,菌類が人間の活動や自然界で欠かせない,無視できない存在であることをアピールする.