著者
岸江 信介 西尾 純二 峪口 有香子
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、主に関西と関東における無敬語地域の配慮表現に注目し、無敬語地域が有敬語地域とは異なるウチ社会を基盤とした言語共同体を形成しているという仮説のもとに配慮表現の研究を進めている。関西地域においては、すでに有敬語地域である京都・大阪をはじめ、無敬語地域である熊野・新宮地方などで多人数の調査を実施し、有敬語地域における配慮表現の運用状況のみならず、無敬語地域における配慮表現の実態についても把握することにつとめてきた。現代日本語の待遇表現や配慮表現の使い分けの目安とされてきた目上/目下,ウチ/ソト,心理的・社会的距離の遠近,親疎関係,恩恵の有無といった敬語地域では成り立つが,無敬語地域にもこの軸を当てはめ,有敬語地域と比較することはできるのであろうか。無敬語地域では,地域を構成する成員間の関係が都市部と比較してより緊密であり,ウチ/ソトといった関係も,都市部とは異なり,ウチ社会のみをベースとして形成されていると考えられる。無敬語地域では一般的に敬意表現や配慮表現が有敬語地域と比較して希薄に見えるのは,このような要因が大きく関与しており,ウチ社会独特の言語行動の規範となるメカニズムが存在するという仮説を立てることができる。この仮説検証のため,本年度はおもに無敬語地域とされる北関東地域の茨城県の漁村地域を中心に調査を実施した。この調査を進めるなかで次第に明らかになったことは,無敬語地域といえども都市化が急速に進みつつあり,従来、無敬語地域とされてきた地域の有敬語化が起きており、この変化はかなり進行しているということであった。これに伴い、配慮表現の運用についても、有敬語地域とほとんど変わらない実態が明らかとなった。
著者
堀内唯生作
出版者
岩谷画廊
巻号頁・発行日
2014
著者
小山武士 松尾俊彦 鴨田浩明
雑誌
第74回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.587-588, 2012-03-06

情報システムにおいて、例えばSNSにおける投稿のように1処理毎にIDを付与して管理するような場合、大量のIDを迅速に発行することが求められる。このようなシステムにおいて、IDにランダム性が求められるようなケースでは、新たなIDを発行する際に、ランダムに生成された大量の既存IDとの重複の有無を確認する必要がある。そのためIDを発行するまでに要する時間が既存IDのボリュームに応じて増大するという課題がある。そこで本稿では、生成したIDに対応する配列のフラグをチェックすることで重複有無を確認する方式を含め複数の確認方式を提示し、その処理時間を比較し、安価に実装可能かつ実用的な方式を示す。
著者
伊藤 正子 舟島 なをみ 野本 百合子 鈴木 美和
出版者
日本看護教育学学会
雑誌
看護教育学研究 (ISSN:09176314)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.62-75, 2006

本研究の目的は、患者の安全保証に向け看護師が講じている対策と実践を明らかにし、その特徴を考察することである。測定用具には、日々の実践の中、看護師が患者の安全保証に向けて何を実践しているかを問う自由回答式質問からなる質問紙を用い、郵送法により全国の病院に就業する看護師1056名に質問紙を配布した。回収された質問紙622のうち、自由回答式質問に回答した588名分の記述をBerelson,B.の内容分析の手法により分析した。その結果、対象者の記述は患者の安全保証に向け看護師が講じている対策と実践38カテゴリを形成した。この38カテゴリとは、【与薬・処置・検査などを確実に行うために最適な確認方法を選択すると共に、状況に応じて複数の確認方法を組み合わせて用いる】【可能な限りクライエントと直接関わることを通して個別状況を把握し、危険が予測される場合には頻繁に訪室し要点を捉えた観察を緻密に行う】などであった。Scott, W.Aの式によるカテゴリへの分類の一致率は76.7%,72.5%,71.3%であり、カテゴリが信頼性を確保していることを示した。考察の結果は、看護師の講じている安全保証対策と実践が8つの特徴を持つことを示唆した。これらの38の対策と実践、その特徴は、安全教育の系統的な知識の提供や、安全に関する実践を自己評価できるための指標として活用可能である。
出版者
日経BP社
雑誌
日経メディカル (ISSN:03851699)
巻号頁・発行日
no.402, pp.67-69, 2001-05

ディスポーザブル(単回使用)器材に関する調査によれば,感染リスクに不安を抱きつつも,多くの医療機関でこの種の器材が再使用されている。米国では食品医薬品局が厳しいガイドラインを作成した結果,来年以降,病院でのディスポ器材の再使用は実質的に不可能となる。わが国も,いつまでも野放し状態を続けているわけにはいかない。
著者
石原 謙
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.S162, 2018

<p>従来医療現場では少しでも危険な可能性があれば回避・忌避する習慣が尊重された。人の命や健康を守る立場から当然でありそれ自体は好ましい。20年前の心臓ペースメーカでは、当時の携帯電話からの電波強度で誤動作をすることが実験でたしかめられていた。しかしペースメーカー自体は当時から何重にも安全に作られていた。生存を脅かす機能停止はせぬよう設計されていた。さらにペースメーカのEMI耐性は著しく改善され、10年ほど前からの製品では医療現場を含めた生活圏における無線電波による機能異常は発生していない。PCやタブレット端末などの電波を発するNW機器についても医療機器に致命的障害を与える医療事故は報告されていない。結果としてこの20年、電波干渉による心臓ペースメーカでの死亡事故は起きていない。 病院での入院患者では携帯電話や無線LANが普段以上に有り難い存在となる。家族や友人との会話は回復への大きな励みになるし、治療部位以外は健常で仕事ができる状態の患者にはNWは必須である。 医療用電波を利用したME機器はゾーン設計の元で適切に使用されてはいるものの、無線LANや携帯電話などの無線端末が、利便性が高いために数多く導入され野放し状態に近い。 医療現場における電波利用の実態を調査し、さらに安全に電波利用を推進することが望まれ、管理監督強化ではなく、医療現場の負担を軽減する方向での活用を促進する合理的なガイドラインが望まれる。</p>
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.897, pp.38-42, 1997-06-30

世界最大の貿易黒字国,日本の貿易港が非効率だと国際的に批判されている。そんなはずはない,と思ったら,非効率な仕組みは主に製品輸入をしている岸壁の様々な規制や労働慣行だった。流通の規制や慣行が崩れているなかで,港だけが変わらない。どうして日本の水際が物流の「聖域」になったのだろう。
著者
富岡 強 阿部 隼也 長谷川 誠
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.J151-J154, 2017

メガネ型のビデオカメラを着用して保育士が園児を撮影し,顔認証システムを用いて個人識別する.撮影された映像中に複数の園児が登場することから,これらの情報を用いて園児間および保育士の関係をソーシャルグラフで図示する.ソーシャルグラフを分析することによって,仲良しグループや孤立児の存在が分かる.ソーシャルグラフにおける各園児の次数中心性,媒介中心性,近接中心性,固有ベクトル中心性を算出し,中心的な園児を推定する.実験により,ソーシャルグラフの生成,および,中心的な園児の推定が可能であることを明らかにした.
著者
澁谷 栄 山内 繁 桐越 和子 谷田貝 光克
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.17-27, 2018-01-25 (Released:2018-01-28)
参考文献数
33
被引用文献数
1

木酢液類の消臭剤としての機序を検討するため,中和した木酢液類を用いて消臭試験を行い,原液との比較から悪臭原因物質の削減効果を化学的に考察した。本研究ではナラ,ウバメガシ,モウソウチクから得られる3種類の木酢液類(順に黒炭木酢液,白炭木酢液,竹酢液と呼ぶ)を水酸化ナトリウムで中和して用いた。代表的な5つの悪臭原因化合物を対象として消臭試験を行った。アンモニアに対する消臭効果は,原液よりは低くなるが,いずれの中和木酢液類でも明確に確認された。トリメチルアミンでも同様に各中和木酢液類で消臭効果が確認されたが,白炭木酢液では効果の低下が著しかった。硫化水素ではいずれの木酢液類についても,メチルメルカプタンでは黒炭木酢液と竹酢液で,中和により消臭効果の増加が認められた。また,中和によって,木酢液類から放散するアセトアルデヒドの量が大幅に抑制されることが示された。
著者
趙 世明
出版者
大阪産業大学学会
雑誌
大阪産業大学経済論集 (ISSN:13451448)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.31-51, 2019-10

本稿の目的は2008年から急拡大する中国商業銀行のオフバランス業務,いわゆる中国式のシャドー・バンキングについて,経済成長との関連性を分析することにある。金利自由化の進展,中国金融市場は規制緩和の方向に転じる一方,2008年からは金融市場における資金の需給ギャップの拡大により,中国特有のシャドー・バンキングが爆発的に成長した。このような現象は商業銀行が総量規制や窓口制限などのプルーデンス政策を回避するために行われた金融活動であり,「規制裁定(regulatory arbitrage)」という行為として捉えられる。本稿では,経済成長と並行して,中国の融資環境が単純的な人民元貸付からシャドー・バンキングを含めた多様な融資方式へ転換したことを明白にするために,中国人民銀行ホームページにて公表されている人民元貸付,シャドー・バンキングと経済成長の3変数を用いて,ベクトル自己回帰モデル(VAR モデル)による中国シャドー・バンキングの拡大と経済成長との因果関係について統計的な検証を行った。その結果,シャドー・バンキングと人民元貸付両方とも経済成長にグレンジャー因果関係があることが確認された。