著者
矢内原 忠雄
出版者
岩波書店
雑誌
世界 (ISSN:05824532)
巻号頁・発行日
no.175, pp.170-175, 1960-07
著者
菊川 美代子
出版者
基督教研究会
雑誌
基督教研究 (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.57-74, 2009-12

矢内原忠雄はこれまで絶対非戦論者と考えられてきたが、実際には義戦(正戦)論者であった。矢内原は、弱者の権利を強者の侵害、圧迫から防衛することを正義とし、そのような正義の不履行を最上位の罪悪と考えた。そのため、正義が蹂躙される場合には、地上における相対的な善として、悲しむべき必要悪としての戦争を認めた。そして、矢内原の言説には、戦争による犠牲の死を正当化する要素が含まれているという問題点があり、そこに彼の神学の限界が存在した。論文(Article)
著者
吉馴 明子
出版者
国際基督教大学キリスト教と文化研究所
雑誌
人文科学研究 : キリスト教と文化 : Christianity and culture (ISSN:00733938)
巻号頁・発行日
no.48, pp.139-167, 2016-12

昨年筆者は、日清戦争論を「義戦論」の変容を追う形でまとめたが、今回は日露戦争論について植村正久の非「非戦論」の内容を検証する形でまとめることにした。当時の新聞紙上で日露開戦を巡って、非戦論と主戦論が競うように発表され、キリスト教世界でも、内村鑑三の「非戦論」が出ると同時に、海老名弾正のように日本の帝国膨張をキリスト教的博愛の精神を以て弁証する「聖戦論」的な主張が広まった。このような状況であればこそ、現代の研究者は日露戦争論を「非戦論」と「主戦論」として概括したと考えられる。植村もしばしば主戦論者といわれてきたが、本稿では『福音新報』の記事によって、彼が「非戦」論を非として、国際関係どう捉えたか、戦争、文明、国家をどう捉え、これらをキリスト信仰においてどのように統括的に考えようとしたかを追究してみた。 日清、日露の戦間期に、イエスの十字架に「正義は敗れて興り、不義は勝ちて滅ぶ」とのメッセージを受け取った内村鑑三は、米西戦争とボーア戦争を人類の救済という観点から捉え、ボーアにこそ「贖罪史」の本質が現れていると考えた。ここから日露戦争を見て彼は「非戦論」を説くようになった。 植村正久の場合は、ボーアの抵抗に「自由」実現への希求を見るとともに、国際関係は軍事力・経済力が物をいうとの認識を持った。日露開戦期のアジア情勢についても、ロシア、中国、日本の力関係をリアルに見ている。その意味で日露開戦は不可避とし、国家の一員として戦争に参加すべしと「非戦論」はとらない。しかし、彼の願いは、戦争が人間の自立の促進や社会革新を進めることに役立つことにある。ここに、植村特有の日露戦争論が生み出される。 彼は、白色対黄色、ヨーロッパ対アジア、キリスト教対異教といった対立軸を以ての日本を攻撃する「黄禍論」に批判を加えていくうちに、大きく東洋主義のリストを作り上げた。帝王の威力重きに過ぐる。君主専制。人格の観念薄く、其の価値軽き。神てふ観念低く、人類を礼拝する。夫婦の道明かならず、妻妾を擁して愧づることを知らざる。命の意義に深く通ぜず、自殺を罪悪と見做すこと能はざる、といった諸点である。これを矯正するのは、「開国の精神を振起」することによる。それは、「維新の改革」において「士の常職を解いて四民同等の制を定め」たことから始まり、個人主義の確立、立憲自治の種子となった「精神」である。従って、「自由立憲の制度を樹立し、平民主義を拡張」するなど、「西欧文明の真髄と同化し、深く基督教の精神を吸収して、世界に特色ある文明を現出」することが、日本の使命とされる。 今ひとつ、植村はこの四民同等の導入を、ナポレオン三世率いるフランスがプロシアに敗れそうになった時に、フランス国民が共和政治を組織して、「国民一団となって国家と共に亡びんとする」愛国精神に範を取って考えている点に着目したい。ここに立憲政体は「国は民の為に存し民は国の為に存する」という精神に基づいて理解されることになった。単に忠愛の心厚き」によるのではない。それゆえ、一方で「自由を重んじ、権利を尊ぶ」ことを「国民国家」の必須要件とするとともに、兵役に従事し、国家を守る実力を保持することをも「国民国家」の要件とされることになった。 ここに、植村は「国家権力」についてのキリスト教による説明を余儀なくされる。彼も他のキリスト者と同じように、「基督の平和は血の流れる十字架上の平和である」という。ただ、彼が強調するのは、キリストが「十字架に血を流すまで戦ひて罪悪を征服し」「世に勝ちぬ」と勝鬨を挙げられた、ということである。対外戦争を罪悪の征服と等値して語ることができるのかは、大きな問題であろう。ただ、戦死をキリストが罪を贖うための「犠牲」死と等値したのではないことには注意を払っておきたい。 植村がかつて、福沢諭吉の「報国心」に潜む不公平を責めたこと、法然の専修念仏の教えに支えられて勇ましく戦った武士がいたと述べていたことを頭において、植村にとっての「愛国」とはいかなるものであったか、国家権力と主権的個人との関係如何について考えたい。また、これらの課題との関連で植村が尊重した「武士道」がどのようなものであったかをも、次の論考の課題としたい。
著者
小原 道法
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

乳がんは女性のがんで多く見られる悪性腫瘍で、現在1年間に新たに乳がんと診断される日本人女性は6万人を超える。根治が困難な症例も多く、適切な乳がんモデル動物で乳がんの生物学特性、治療および予防法を研究するのは急務である。乳がんモデルとしてツパイの検討を行ってきた。ツパイは、体重が約150グラムの小型哺乳動物で、ツパイ目ツパイ科に属している。ツパイは人に近い遺伝情報を持ち、ツパイの神経伝達物質の受容体は齧歯類より霊長類のものと高い相同性を持つために、毒物学とウイルス学、抗うつ薬などの前臨床研究で利用されている。また、ツパイの乳腺の生理学的特徴と発育などはヒトに類似している。自然発症乳腺腫瘍を観察した結果、発生率は24.6%(15/61)、再発率は60%(9/15) であった。細胞診の結果、上皮系悪性腫瘍であった2個体の腫瘍組織について精査を行った。多発性の全ての腫瘍組織でプロゲステロンレセプターが陽性、91.3%でエストロゲンレセプターが陽性、4.3%がHER-2陽性であった。また病理組織学的検索と実験動物用X線CT LCT-200解析の結果、腹腔内で内分泌系腫瘍も観察された。以上の結果から、ツパイは自然発症乳腺腫瘍モデルとして有用である可能性が示唆された。
著者
高野 淳一朗
出版者
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究でヒトと類人猿以外で唯一B型肝炎ウイルス(HBV)に感受性のあるツパイ(Tupaia belangeri)を用いて、HBV感染動物モデルの作製を目的としてHBV高感受性ツパイ系統の樹立を目的とした。血中ウイルス量としては低いレベルしか確認はできなかったが、検出率の比較では雑系動物であるツパイにおいてHBV分子クローンの有用性が確認でき、F1群とF2群で比較したところ、2倍以上の検出率であることが確認できた。また、1頭だけだが、肝臓の腫瘍化も確認できた。これらの結果から、HBV高感受性ツパイ系統樹立の高い可能性と今後のHBV研究での有用性が確認できた。
著者
鈴木 了司 小津 茂弘 会田 忠次郎 武井 伸一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.491-495, 1973-03-01 (Released:2011-02-17)
参考文献数
5

埼玉県北西部の秩父市において, 1970年頃より水田皮膚炎が発生し, その臨床症状等からセルカリアの皮膚侵入によるものと考えられた。水田棲息の貝類に寄生のセルカリアの有無を検査したところ, ヒラマキモドキより, Schistosomatidaeに属すると考えられる岐尾セルカリアを見出し, 感染実験でも人体皮膚に侵入することが認められ, このセルカリアが水田皮膚炎の原因になっていることを明らかにした。このセルカリアは, Gigantobilharzia sturniaeに類似しており, 埼玉県では東部において, ヒメモノアラガイを中間宿主とする種類と北西部における本種と, 少なくとも2種の鳥類住血吸虫のセルカリアによる水田皮膚炎が存在している。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1502, pp.26-29, 2009-08-03

旭化成ホームズが2007年に発売した「ヘーベルハウス フレックス ピロティガレージのある家」。3階建て、延べ床面積155m2のプロトタイプで税抜き4200万円。1階部分をほぼ柱だけで構成して駐車場などのスペースとし、2階以上を居住空間とする戸建て住宅の商品だ。 この住宅が、今売れている。その理由は「水害」だ。
著者
山崎 元 遙 洋子 内藤 忍
出版者
日経BP社
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.329, pp.44-47, 2010-04

──実は皆さん3人とも、アラフィフ(50歳前後)です。同世代に名前をつけるとしたら?山崎 「年金割り負け世代」。今の50歳前後は自己負担比2倍程度の年金をもらえることになっています。でも、会社負担分を加味すると、受取額は1倍スレスレ。年金財政を考えると、これはもっと悪化するでしょう。つまり、払った分より少ない年金額しか受け取れない世代ということです。
著者
加藤 和夫
出版者
方言研究ゼミナール
雑誌
方言資料叢刊 (ISSN:09173277)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.139-149, 1996-11-07

金沢大学人間社会研究域歴史言語文化学系