著者
Gunawan Gozalie A. 柴田 恵司
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
no.59, pp.p35-97, 1986-03

インドネシアの漁業はその生産高において,この国の石油産業,農林業に次ぐ重要な産業であるが,漁船の95%は10G/T未満の在来型の小型漁船で構成され,その水揚げ高はインドネシアの海洋漁業総生産の約98%を占めている。近年,インドネシア政府は漁業生産性向上のあめの様々な近代化政策を進めつつある。しかしながら,インドネシアにおける漁船あるいは,その将来的なビジョンについて,未だ,充分明らかにされていない。本研究の目的の一つは,先ず,この漁船の現状を明らかにし,ひいては,近年とみに変貌しつつあるインドネシア沿岸漁村の在来型小型漁船の現状を記録保存することにある。同時にまた,東南アジア諸国,また,日本の漁船との比較の中から,インドネシア沿岸漁船の将来像を求めようとした。漁船の現状を漁業との関連において把握するため,予想される3種の主な船型について,漁船の25の各部寸法と漁具漁法を含む33の調査項目を記入する調査用紙を予め用意して,1984年7~8月の間,24日にわたって,ジャワ島周辺の8漁村において,調査を行い,在来型漁船175隻の資料を得た。なお,これらの調査地城はインドネシア水産庁の助言により選定された。以上の調査と並行して,新しく作成した船型計測装置を使用して漁船20隻の正確な船体線図を求めた。ジャワの在来型漁船は丸木船(d/o),半構造舟(s/d)および,構造舟(pl)の3種に大別され,構造舟にはアウトリガーが無く,d/oとs/dには原則としてダブルアウトリガーを持っている。しかし,d/oでは,これを持っていない例もあり,また,Rembangのs/dでは特殊構造のシングルリガーを備えている。調査結果によると,以上3種はそれぞれ,基本的には相似の船型であるが,漁村毎に固有の船型を持っている。この傾向は帆走装置にも見られ,この地方独特のラテンセールやマレーインドネシアセールはアラブ,インドからもたらされたという。一方,ジャワ在来型漁船は一般に痩せた船型で,特にd/o, s/dではこの傾向が強い。なお,推進機関を有する船はd/oで,16%, s/dで56%また,plで78%,全体で,66%であった。しかし,この平均馬力は11.7psと,日本のFRP漁船の98.7psに比較して著しく小さい。127隻の資料について行った主な考察結果は次の通りである。1)全長と幅の比は,平均で,ジャワ漁船では,s/dの14.8が最も大きく,d/oで9.3, plで4.1であり,フィリッピンs/dの12,5, d/oの12.4,日本のFRE漁船の4.1,タイ漁船の4.6に比べて,ジャワs/d, d/oは-般に痩せた船型といえる。この傾向は,この地方の周年穏やかな海況のほかに,近年まで帆や「かい」によって推進されていたため,船型的に船体抵抗を最小にするように淘汰された為と考えられる。2)全長と深さの比は,平均で,ジャワのd/Qで,14.3, s/dで,12.6であり,フィリッピンd/o, 15.2, s/dの13.4とほぼ等しく,また,ジャワ構造舟の11.3は,日本のFRP漁船の8.5やタイ漁船の9.3に比べ,著しく浅い。これはジャワでは漁村地先の遠浅の沿岸や川口のように水深が比較的浅い水城に漁船を係留する為と考える。3)色々の漁船の様々な組み合わせについて行ったクラスター,あるいは判別分析の結果によると,ジャワ漁船は漁村毎にそれぞれ固有の船型を持つと判断されるが,そのs/dは船型的にフィリッピンのと相似であると考えられた。4)一方,ジャワで計測したd/o, 3隻,s/d, 7隻及びp1, 10隻の他,その他の資料,すなわち,インドネシア,7隻,和船,26,中国,10,韓国,11および,欧州,9隻の構造船,ならびに,ソロモン,パプアニューギニアおよび,沖縄のd/oとs/dの7隻,合計94隻分の船体線図について,それぞれ,船型関係諸係数を計算し,その中の15係数の無次元化データを用いて,ジャワ漁船を中心にそれぞれの船型比較を行った結果,ジャワ構造舟はその地方の先行的船型であるd/oまたはs/dと比較的相似で,基本的にはそれから発達したものと考えられる。また,中国や西欧からの船型的影響も認められたが,日本の和船や韓国漁船のものとは明らかに異なっている。5)今後,インドネシア漁船の改良,発展に直接利用できるジャワ構造に関する若干の近似式を次に示す。なお,これらは本研究の過程で得られた。i)船に搭載できる重量,LoadW: LoadW=0.04159Loa+6.78133B-0.39049D-7.27249 (kg) ここで,長さの単位はメートルである。ii)今後,搭載すべき推進機関の馬力,ps: ps=0.37991 LoaLoa²-4.0877
著者
今井 千文 道根 淳 村山 達朗
出版者
水産大学校
雑誌
水産大学校研究報告 (ISSN:03709361)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.91-97, 2014-03

キダイは北海道南部以南の日本周辺海域、東シナ海、黄海および南シナ海の水深100~200mの砂泥底域に生息し、全長35㎝程度まで成長するタイ科魚類である。産卵期は春~初夏と秋の年2回あり、春初夏発生群と秋発生群の2群が認められる。また、雌性先熟の性転換が起こり、性比は年齢とともに低下する。山口県下関漁港と島根県浜田漁港に在籍する2隻曳沖合底曳網漁船(以下では「日本海西部沖合底曳網」と略称する)が漁獲対象とする魚類資源の中で、漁獲量は最大級であり、最重要資源の1つである。キダイ日本海、東シナ海系群の資源動向については福若、依田が公表している。しかし、東シナ海のキダイ資源は中国および韓国漁船も利用しており、我が国の漁獲量資料だけでは全容を知るには不十分である。本研究では日本海西部沖合底曳網の水揚げ総計より得た年齢別漁獲尾数資料を山口、島根両県の小型底曳網第1種漁業による漁獲量で引き延ばしてコホート解析法により資源量計算を実施した。得られた年齢別資源尾数資料から再生産関係を解析し、加入量変動とその要因として重要な環境因子である水温との関係について考察する。
著者
高木 健 木下 健 寺尾 裕 井上 憲一 田中 進 小林 顕太郎 山田 通政 高橋 雅博 植弘 崇嗣 内山 政弘 江嵜 宏至 佐藤 増穂 岡村 秀夫
出版者
日本学術会議 「機械工学委員会・土木工学・建築学委員会合同IUTAM分科会」
雑誌
理論応用力学講演会 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.132-132, 2006

この論文では、環境負荷の小さい基幹エネルギー源として、帆走型洋上発電施設を提案している。この施設は、台風を避けながらかつ好適風力を求めて日本のEEZ内を航行するのが特徴である。また、このコンセプトの目標として、水素社会が実現される頃に、環境負荷が最も少ない基幹エネルギーとして成立することを目指している。試設計によれば、この施設は台風を上手に避ける運動性能と、充分な強度を有することが判った。また、フィージビリティ・スタディによれば、この施設3900個で石炭から得られるエネルギーに相当する日本全体の発電量の18%のエネルギーを代替することができ、2002年のCO2レベルの10%を削減できることがわかった。
著者
鳥井 正志 関田 欣治 関 和市
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 海洋学部 (ISSN:13487620)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-10, 2008-03-31

海流・潮流は、地球全海域に広く賦存しているが、その平均的エネルギー密度は風と同様に低い。しかし、海流は恒常性が高く、潮流は規則性があり、また流れの集中する海域では高いエネルギー密度を持つ。地球温暖化ガスの排出削減と、化石燃料からのエネルギー源の転換は、現在人類共通の課題である。このため、日本の排他的経済水域(EEZ)内の海洋資源の利活用として、海流・潮流エネルギーの回収の実用化を図る。本研究は、まず日本のEEZ内の海流・潮流エネルギー賦存量を明らかにする。つぎに、水流エネルギーの変換装置として直線翼垂直軸型タービンを選択し、海洋環境である水流や波浪中で使用するための課題を解決して適用可能性について検討する。そのうえで、この水流タービンを用いてEEZから回収可能なエネルギー量を試算する。
著者
養松 郁子
出版者
地域漁業学会
雑誌
地域漁業研究 (ISSN:13427857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.203-216, 2007
被引用文献数
1

<p>ベニズワイガニ籠漁業は日本海に特徴的な漁業のひとつである。ベニズワイガニ漁業には大臣許可と知事許可の2つがあり,これらは漁場によって区別される。この二つの漁業では,漁船の規模,漁場までの距離,水揚げ後の流通形態,市場単価が異なっている。</p><p>努力量と資源水準との関係を明らかにすることを目的として,大臣許可漁業における漁獲努力量(籠数)の分布状況およびCPUE(1籠あたり漁獲量)を指標とした資源水準の経年変化を解析した。1999年に日韓暫定水域が制定される以前は努力量と資源水準との間には負の相関が認められたが,1999年以降は,暫定水域外では負の相関が認められたものの,暫定水域内では逆に正の相関が認められた。このことから,暫定水域内において,日本船による努力量の増加以上に,韓国漁船による努力量が減少した可能性が考えられる。努力量とCPUE値との間の負の相関関係を利用して,CPUE値を指標とする漁場ごとの努力量管理(どこへどれだけの籠を投入するか)という考え方は,ベニズワイガニの資源水準を著しく落とすことなく漁業を持続させるための,重要な視点のひとつであると考えられる。</p>
著者
山崎 哲生
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ : journal of the Mining and Materials Processing Institute of Japan (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.829-835, 2008-12-25
参考文献数
31
被引用文献数
1

Japan has a manganese nodule mining claim in the Clarion Clipperton Fracture Zones, the Kuroko-type massive seafloor sulfide deposits (SMS) and cobalt-rich manganese crusts (CMC) in Japan's exclusive economic zone (EEZ) and the continental shelves. Japan needs to use these deep-sea mineral resources as future strategic metal and rare earth element supply sources. Furthermore, the development technologies have wide variations in applying for the other food and energy supply targets in EEZ and continental shelves and the same-type resources of Pacific island nations'.<BR>Some current topics in deep-sea mineral resources development and the development technologies are introduced. Possibility and necessity of deep-sea mineral resources development for Japan are discussed.
著者
Son Hai VU Bomin KIM Alisha Wehdnesday Bernardo REYES Tran Xuan Ngoc HUY John Hwa LEE Suk KIM Hyun-Jin KIM
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.20-0630, (Released:2021-01-19)
被引用文献数
1

To better understanding Brucella abortus infection, serum metabolites of B. abortus -infected and -uninfected mice were analyzed and twenty-one metabolites were tentatively identified at 3 and 14 days post-infection (d.p.i.). Level of most lysophosphatidylcholines (LPCs) was found to increase in infected mice at 3 d.p.i., while it was decreased at 14 d.p.i. as compared to uninfected mice. In contrast, acylcarnitines were initially reduced at 3 d.p.i then elevated after two-weeks of infection, while hydroxysanthine was increased at 14 d.p.i. in infected mice. Our findings suggest that the significant changes in LPCs and other identified metabolites may serve as potential biomarkers in acute phase of B. abortus infection.
著者
Hwanhee KIM Teasung HAHN Sookyun KIM Shinjin KANG
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE Transactions on Information and Systems (ISSN:09168532)
巻号頁・発行日
vol.E103.D, no.8, pp.1901-1910, 2020-08-01 (Released:2020-08-01)
参考文献数
36
被引用文献数
1

This paper describes graph-based Wave Function Collapse algorithm for procedural content generation. The goal of this system is to enable a game designer to procedurally create key content elements in the game level through simple association rule input. To do this, we propose a graph-based data structure that can be easily integrated with a navigation mesh data structure in a three-dimensional world. With our system, if the user inputs the minimum association rule, it is possible to effectively perform procedural content generation in the three-dimensional world. The experimental results show that the Wave Function Collapse algorithm, which is a texture synthesis algorithm, can be extended to non-grid shape content with high controllability and scalability.
著者
大矢 裕一
出版者
江戸川大学
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
no.30, pp.251-255, 2020-03

社会的厚生は,個人の効用の集積であり,社会全体の望ましさを示すものである。公共経済学ではこの社会的厚生を最大化させる制度設計のあり方がこれまで議論され,社会的厚生を最大化させることが政府の役割であることが認識されている。しかし,周知されている通り,「市場の失敗」及び「政府の失敗」によって,社会的厚生の拡大が抑制・毀損される。これらのことに加え,事業の許認可における行政の判断の誤りによって社会的厚生の拡大が阻害され得る。本研究は,事業に対する行政の許認可に関して,社会的厚生毀損の要因を行政と市場との関係から検討し,社会的厚生を確保するための,市場に対する行政の役割を明確にする。 行政は事業の許認可権限を持つため,行政は実質的に企業の市場参入を規制(審査)する権限を持つことになる。言わば,行政は企業の市場参入への門番(ゲートキーパー)の役割を果たすことになる。公害等負の外部効果を発生させる事業者,食品衛生の維持に不備のある事業者や危険物を適切に処理する能力を有しない事業者等,不適切な事業者に対して,また,事業の許認可をめぐり事業者間で競合となった際に社会的厚生の最大化に適さない事業者に対して,市場参入への事業の許認可を行政が与えることを,本稿は「行政の失敗 (administrationfailure) 」という概念で示す。「行政の失敗」の要因は,事業の審査に関する法の不備,行政と事業者との情報の非対称性,行政(官)の審査能力の欠如,事業審査の際の行政への贈賄が考えられる。外部不経済を発生させる無許可操業や,国民生活に弊害を及ぼす薬物の売買等の犯罪行為に対する取締りの不備も,予算と人員の制約を受けるが,それらを取り締まる立場にある警察行政という観点で「行政の失敗」と言える。
著者
井上 晴夫
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.260-267, 2017-06-10 (Released:2017-06-20)
参考文献数
38

Development of artificial photosynthesis is prospected on the basis of its history, the three milestones in late 20th century, and recent advances in biological approach, molecular catalysts, and semiconductors chemistry. Photon-flux-density problem to be resolved in getting through one of the bottleneck issues is discussed as well as renewable energy factor (REF) as one of the most crucial points to be considered even in the early stage of fundamental research.
著者
秋山 早弥香 加藤 由花
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.129-130, 2015-03-17

本稿では,日常生活における長期的なストレス要因の特定を目指し,装着型デバイスから取得した脈拍データを利用したストレス状態推定手法を提案する.心理的なストレス状態を表す指標の1つに,脈波のピーク間隔のゆらぎから算出されるLF/HF(Low Frequency/High Frequency)値がある.提案手法では,このLF/HF値を脈拍データから推定するとともに,推定値の時系列データを解析することにより,長期的なストレス状態の検知とその要因分析を行なう.
著者
古川 里一郎 横井 正裕 河村 隆 奥田 一郎 松居 雄毅
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp._1P1-F01_1-_1P1-F01_2, 2008

The small flight robot which made a flapping of wings the model is manufactured. Some kinds of mechanisms of a flapping of wings are examined, wings area is changed, and lift is measured. Furthermore, paying attention to the size and form of a lattice of wings, it analyzes using finite element method using the piece model of an examination manufactured by 3DCAD about lateral bending, longitudinal bending, and torsional.
著者
徳永 新太郎
出版者
長崎高等商業學校大東亜經濟研究所
雑誌
商業と經濟 (ISSN:02869101)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.129-188, 1943-04-30