著者
門田 吉弘 北浦 靖之 遠藤 明仁 栃尾 巧
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.123-131, 2020 (Released:2020-08-19)
参考文献数
35

ケストースは, スクロースに1分子のフルクトースが結合した三糖のオリゴ糖である。我々は, プレバイオティクスとして流通している種々のオリゴ糖との比較試験を実施し, ケストースが, 最も幅広い腸内有用菌に対して良好な増殖を示すオリゴ糖であることを明らかにした。さらに, ケストースの継続的な摂取によって, アレルギー疾患や生活習慣病を予防・改善できる可能性も明らかにしており, ケストースが様々な生理機能を有するプレバイオティクスとして, 人々の健康維持に貢献できる可能性を示した。また, 我々は, ケストースの実用化に関する研究として, 工業的製造の際に使用される酵素の改良にも取り組んでいる。本稿では, ケストースによる有用菌増殖効果をはじめとして, ケストースが有する様々な生理機能および, 製造酵素の改良に向けた取り組みについて紹介する。
著者
金本 郁男 金澤 ひかる 内田 万裕 中塚 康雄 山本 幸利 中西 由季子 佐々木 一 金子 明里咲 村田 勇 井上 裕
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.133-140, 2020 (Released:2020-08-19)
参考文献数
24

2種類の低糖質パンを摂取した時の食後血糖推移を食パンおよび全粒粉パンと比較するとともに, セカンドミール効果および糖質の消化性を評価するために試験を行った。健常成人11名 (男性2名, 女性9名) を対象者とした。摂取する熱量を統一した食パン (糖質38.6 g) , 全粒粉パン (糖質36 g) , マイルド低糖質パン (糖質8.5 g, 高たんぱく) , スーパー低糖質パン (糖質3.4 g, 高たんぱく高脂質) のいずれかを朝食に摂取し, 昼食にカレーライスを摂取する4通りの試験を行い, 食後血糖を経時的に測定した。糖質の消化性はGlucose Releasing Rate法で測定した。その結果, マイルド低糖質パン, およびスーパー低糖質パン摂取後の血糖値は低値を示したが, セカンドミール効果は認められなかった。本研究で用いた2種類の低糖質パンのうち, 消化性, 食後血糖, 満腹度の観点からマイルド低糖質パンの方が優れていると考えられた。
著者
野瀬 和利 近藤 孝晴 荒木 修喜 津田 孝雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.161-165, 2005 (Released:2005-04-08)
参考文献数
12
被引用文献数
4 4

Since both acetone and β-hydroxybutyrate are metabolized compounds from acetoacetate, the relationship between the concentrations of acetone and β-hydroxybutyrate in gases released from human skin and blood, respectively, were studied. For collecting gases released from human skin, a home-made collector was used. The collector was a bag-type (inner volume, 70 ml), which was made with sheets of perfluoro (ethylene/propylene). After a finger was pushed into the collector at the center of a shield film made by PARAFILM®, its state was maintained for a period of 3 minutes for collecting human emanated gases from the inserted finger. Then, the acetone concentration in the collector was estimated by gas chromatography. We found a good relationship between them. Its correlation factor was 0.88 (p <0.01). The concentration of acetone can be used as an alternative marker for β-hydroxybutyrate in blood. The present proposed method for estimating the ketone-value is non-invasive, and its sampling procedure is very easy.
著者
大喜多 敏一
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.90-98, 1986-06-20 (Released:2011-06-28)
参考文献数
37
著者
林 堤和
出版者
日本美術教育学会
雑誌
美術教育 (ISSN:13434918)
巻号頁・発行日
vol.1975, no.213, pp.6-11, 1975
著者
〓 志宏 伊藤 崇博 大野 勝久
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.220-227, 2002-08-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
18

3次元箱詰め問題(three-dimensional container packing problem)は, 様々なサイズの荷物をコンテナ(トラック)に詰め込み, コンテナ(トラック)の空間利用率を最大化する組合せ最適化問題である.現実問題においては, 空間利用率以外に積み荷安定性とX-Y軸の回転も考慮しなければならない.本論文では, この現実問題を対象に, 独自の手法に基づいたメタヒューリスティックスを提案する.数値実験により, 本解法をベンチマーク問題に適用し, 公表されている最良解との比較により提案手法の有効性を示している.
著者
八木 清
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.19-25, 2012-01-31 (Released:2013-01-31)
参考文献数
32
被引用文献数
1

分子振動スペクトルを計算するには,(1)ポテンシャルエネルギー曲面生成,及び(2)振動Schrödinger 方程式の効率的な解法が必要である.本稿では,我々の開発した方法論を中心に,量子化学計算による非調和ポテンシャル生成法と 3N −6 次元の量子多体問題の取り扱いを解説する.新しい非調和振動理論は 100 自由度系を分光学的な精度で扱うことができ,水素結合系の振動スペクトル計算に威力を発揮する.
著者
岩田 充永 梅垣 宏行 葛谷 雅文 北川 喜己
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.330-334, 2008 (Released:2008-07-14)
参考文献数
5
被引用文献数
4 3

目的:夏季の高温多湿が進む日本では,熱中症が増加することが予想されるが,高齢者の熱中症については十分な検討がなされていない.高齢者熱中症の特徴を明らかにするために,65歳以上高齢者で入院となった熱中症例について検討した.方法:2006年の7∼9月とおよび2007年の7∼9月に名古屋掖済会病院救命救急センターを熱中症で受診し,入院となった65歳以上高齢者を対象に,発症日の気候,同居家族,発症環境,空調設備の有無や利用状況,基本的ADL,かかりつけ医の有無,認知症の有無,介護サービスの利用状況,重症度,入院期間,転帰について調査した.結果:研究期間中の熱中症受診104例中31例(31%)が入院となり,そのうち65歳以上高齢者は25例中20例(80%)で,若年者79例中11例(13.9%)に比較して有意に入院率が高かった(p<0.001).平均入院期間は20.6±17.8日で,65歳以上入院群27.5±18.6日,65歳未満入院群5.3±3.0日と高齢者群の入院期間は有意に長期となった(P<0.001).自宅内発症の熱中症は16例で,全例65歳以上で入院を必要とし,65歳以上高齢者の入院熱中症症例(20例)の80%を占めた.自宅内発症例の多くは,最高WBGT 28°C以上(14例),空調設備を有していない(11例),ADL自立(10例),認知症(12例),介護サービス未利用(11例),独居もしくは配偶者と2人暮らし(14例)などの特徴を認めた.入院症例のうち12例(60%)が自宅に退院できなかった.結論:高齢者は通常の自宅生活でも熱中症を発症する危険があり,WBGT28°C以上の日は特に危険が高い.高齢者の熱中症を予防するためには,(1)ADLが比較的保たれ介護サービスを受けない高齢者や独居もしくは配偶者と2人暮らしの高齢者に対する見守り体制の構築,(2)住居における空調設備の設置援助と適正利用への啓発と見守り体制の構築の2点が重要である.
著者
厚生行政研究会
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.958-959, 1994-10-01

「クーラー事件」が問いかけたもの 記録破りの猛暑も終わりに近づいた頃,行政当局では,「クーラー事件」なる熱い問題が沸騰した.桶川市の生活保護受給者がクーラーを購入したことで生活保護受給資格が問われ,結果,クーラーは取り外され,当該受給者が脱水症に陥り入院に至った事件である.生活保護制度は,日本国憲法第25条1項にうたわれている「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という理念を直接的に実現するために設けられている制度であり,「最低限度」以下の生活を余儀なくされている約90万人(1か月平均)が制度の対象となっている.90万人は人口の約0.7%である. クーラー事件で議論されたのは,何をもって「最低限度」以下であると認定するかの行政的基準であった.普及率が70%以下の高額機器を保有している状態は「最低限度」以下の生活とはいえない,という判断に基づいてとられた処分が思わぬ波絞を呼んだわけであるが,この事件に対して,有力メディアの多くは,「現場の状況に応じて,担当者が自由に裁量できる制度にしておくべきだ.行政はお役所仕事で血も涙もない」という論調であった.桶川市におけるクーラーの普及率がたまたま70%という微妙な値であったことから担当者自由裁量論が主張されたのであろうが,国民の税金を使用するのに,本来,自由裁量論はなじまない.
著者
清本 奈々恵 松村 豊大
出版者
徳島文理大学
雑誌
徳島文理大学研究紀要 (ISSN:02869829)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.161-180, 2017-09-09 (Released:2018-04-18)

本論文では,平成18年徳島市中心市街地活性化基本計画が,なぜ効果のない計画であるかを,総務省(2004)「中心市街地の活性化に関する行政評価・監視結果に基づく報告書」と経済産業省産業構造審議会中心市街地活性化部会(2013)の「中心市街地の再活性化に向けて(提言)」により評価・検討する。その検討結果や足立(2011)の中心市街地の衰退や商店街などのシャッター通り化の再生に必要な六つの要素を基に,徳島市の計画を評価・検討した結果や街の現状・ニーズの把握を基に,徳島市や地域住民はどうすべきかを,徳島市の特性を活かした中心市街地活性化政策を提言した。特に,徳島市中心市街地活性化基本計画が効果のない計画であるのは,現状や地域住民等のニーズの把握が不十分であるために,目標の設定や事業の選定の不適切が原因であると主張する。
著者
谷口 晋吉
出版者
日本評論社
雑誌
一橋論叢 (ISSN:00182818)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.p196-217, 1981-02

論文タイプ||論説
著者
野口 泰弥 大島 稔
出版者
北海道立北方民族博物館
雑誌
北海道立北方民族博物館研究紀要 (ISSN:09183159)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.85-110, 2019

In June in 1942, Japanese army invaded and occupied Attu and Kiska islands of theAleutian Islands. In those days 42 Unangan (Aleut) people and two white man andwoman lived on Attu Island. Some islanders died in the period of the Japaneseoccupation. On September in 1942, Japanese Army transferred these islanders (exceptone white woman) to Otaru city of Hokkaido prefecture in Japan and detained themuntil the end of war. In Otaru, Tuberculosis was going around among islanders so manypeople died. After the war, survivors returned to the U.S. However, the U.S. governmentdidn't allow them to return to Attu Island. This is the reason why Attu Island is now anuninhabited island. This text is a report on Unangan (Aleut) people of Attu Island which was writtenby Karl Kaoru Kasukabe(春日部薫: 1913-1995)during WWII. He followed JapaneseArmy as interpreter and attended "Aleutian Islands Campaign." During his militaryservice, Kasukabe researched culture and language of Attu people. The original text was handwritten between 1942 and 1943 and is housed in HokkaidoUniversity Library (Identification No. 572.9/KAS/別シ). Generally speaking,ethnographic records about Attu islanders have been very rare. This text includesdetailed ethnographic information about culture, history, and language of Attu peopleand partly includes important description about the background of Aleutian IslandsCampaign. Therefore, this text is worth publishing for future study.