著者
柴山 知子 江藤 宏美
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.293-302, 2015 (Released:2016-02-24)
参考文献数
27
被引用文献数
1

目 的 分娩第2期に会陰部に温罨法を行うことで,第1度,第2度会陰裂傷の発生を減少させることができるかを明らかにすることである。対象・方法 対象は正期産,経膣分娩予定,単胎,頭位であり,医学的合併症がない初産婦とし,historical controlled trial designを用いた。介入方法は,産婦が子宮口全開大に近い時期から外陰部消毒を行う前まで,温湿タオルを用いて会陰部を温めた。タオルは30分毎に交換し温度を保つようにした。会陰裂傷の程度は,分娩に立ち会った医師が分娩直後に判断した。同時に,産婦の基本的情報を医療記録より収集した。データ分析は,t検定,χ2検定を行った。本研究は倫理委員会の審査を受け,承認を得て実施した。結 果 対象は,介入群49名,コントロール群50名であった。対象者の特性について両群間に有意差はなかった。 会陰裂傷の発生頻度について,介入群では第1度会陰裂傷は28名(57.1%),第2度会陰裂傷は16名(32.7%)であった。コントロール群では,第1度会陰裂傷は31名(62.0%),第2度会陰裂傷は13名(26.0%),2群間で有意差はなかった(p=0.517)。また,第3度会陰裂傷は介入群3名(6.1%),コントロール群3名(6.0%),第4度会陰裂傷は両群ともに発生しなかった。 温罨法の実施時間は,介入群で平均2.77±2.43時間であった。温罨法の実施時間と会陰裂傷では,第1度会陰裂傷における温罨法実施時間は平均2.27±2.59時間,第2度3.98±1.99時間,第3度1.85±1.51時間で有意差が認められた(p=0.002)。出血量と温罨法の実施時間,出血量と温罨法開始から児娩出までの時間に有意な相関はなく,温めることによる出血量の増加は見られなかった。結 論 分娩時に会陰部に温罨法を行うことによる第1度,第2度会陰裂傷低減の効果を得ることができなかった。しかし,温罨法は生理学的に皮膚の伸張性の向上や,循環血液量の増加,回復に影響があると言われるheat shock proteinが喚起されるといったメリットがあり,効果が期待できる。今後その時期や方法を検討していく必要がある。

1 0 0 0 OA 剣術教範

著者
堀田捨次郎 著
出版者
自彊会
巻号頁・発行日
1912

1 0 0 0 OA 剣術教範

出版者
川流堂
巻号頁・発行日
vol.第1部, 1889
著者
井村 亘 石田 実知子 渡邊 真紀 小池 康弘
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2-2, pp.433-439, 2018

本研究は,高校生の自傷行為に対する自己および他者に対するネガティブなスキーマと対人ストレスとの関連を明らかにすることを目的に,高校生に対して無記名自記式の質問紙調査を実施した.統 計解析には553人分のデータを使用し,ネガティブなスキーマが対人ストレス認知を介して自傷行為 に影響するとした因果関係モデルを構築し,そのモデルの適合性と変数間の関連性について構造方程 式モデリングにより検討した.仮定した因果関係モデルのデータへの適合度は統計学的許容水準を満 たしていた.変数間の関連性は,自己および他者に対するネガティブなスキーマが対人ストレス認知 に対して有意な正の関連性を示し,同時に対人ストレス認知が自傷行為に対して有意な正の関連性を 示していた.なお,本分析モデルにおける自傷行為に対する寄与率は35.0% であった.本研究結果は, 高校生の自傷行為に対する有効な支援方法の開発に対して一定の示唆を与えると考える.
著者
Makoto Oguma
出版者
Japanese Society of Cultural Anthropology
雑誌
Japanese Review of Cultural Anthropology (ISSN:24325112)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.237-250, 2016 (Released:2017-01-27)
参考文献数
25

Research findings of Japanese folklore studies have rarely been introduced in English in the past. One distinguishing feature of Japanese folklore studies is that it covers not only folklore, but also all aspects of Japanese people’s lives. Nihon-Minzokugaku, the official journal of the Folklore Society of Japan (FSJ), alone has published over 1,500 articles since 1958. With the cooperation of the Japanese Society of Cultural Anthropology, the FSJ will publish a series of articles in the Japanese Review of Cultural Anthropology (JRCA) to introduce the society’s research efforts in the following areas: (1) family, kinship, and local communities; (2) environment and livelihoods; (3) religion and rituals; (4) festivals and performing arts; (5) oral tradition; (6) material culture; and (7) museums and public folklore. This introductory piece discusses the development of Kunio Yanagita’s folklore studies, particularly the influence of Western ethnology and anthropology in this process, in an attempt to characterize Japanese folklore studies.
著者
白川 典子 藤本 和久 市山 進 小林 征洋 佐伯 秀久
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.50-54, 2017-01-31 (Released:2017-02-28)
参考文献数
18

症例は21歳男性。3年前, サケのホイル焼きを摂食後, 全身に搔痒を伴う発疹が出現し, 呼吸苦をきたした。その後もハモで顔面腫脹・発疹・呼吸苦, タラで顔面腫脹・発疹, ウナギおよびサンマで口腔内違和感, アミノコラーゲン入り栄養ドリンクで膨疹が出現した。Prick to prick test ではウナギ (加熱) , アナゴ (加熱) , サンマ (生) が陽性だったが, サンマ以外の生魚は陰性であった。ELISA法によるアレルゲンの検索を行い, 魚類コラーゲンが原因抗原であると診断した。魚類コラーゲンアレルギー患者では, 生魚を用いたprick to prick test では偽陰性になることがあり注意を要する。また, コラーゲンは加熱によっても抗原性が低減化しない。さらに近年では, 魚類コラーゲンが栄養ドリンクや化粧品にも用いられている。ウナギ目の魚類による即時型アレルギーの報告は少なく, 検査方法および生活指導に注意を要する。
著者
太田 肇
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第87集 日本の経営学90年の内省と構想【日本経営学会90周年記念特集】 (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.82-89, 2017 (Released:2019-09-26)

企業の関わる事件や事故などの不祥事が発生するたびに「管理の強化」が唱えられ,対策がとられる。しかし,同種の不祥事が後を絶たないばかりか,同じ組織体のなかで不祥事が繰り返される場合もある。その背景には,日本型組織の特徴が深く関係している現実がある。日本型組織の特徴として,非公式組織と公式組織の二重構造,職務の不明確さ,ならびにそこから生じる圧倒的に組織優位な組織と個人の力関係,集団無責任体制があげられる。それが存在するため,企業不祥事のなかでもとくに組織的性格の強い不祥事の場合,管理強化がプレッシャーと集団的機会主義を生み,不祥事防止に逆効果となるのである。したがって不祥事の防止には,日本型組織の特徴を踏まえた対策をとる必要がある。現実的な対策として,短期,中期,長期の3レベルの提案を行った。
著者
木内 敦詞 荒井 弘和 中村 友浩 浦井 良太郎 橋本 公雄
出版者
社団法人全国大学体育連合
雑誌
大学体育学 (ISSN:13491296)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.3-11, 2009-03-15

運動の意思決定バランス(運動実践の恩恵-負担)は,身体活動・運動の採択や継続に重要な役割を果たすとされている.本研究の目的は,体育実技終了時のセルフ・モニタリングが,運動の意思決定バランスと日常の身体活動量に及ぼす影響を検討することであった.対象者は日本の大学新入生男子(N=869)であった.介入群(N=398)は週1回の体育授業におけるスポーツ活動実施後にセルフ・モニタリングを行い,非介入群(N=471)はそれを行わなかった.セルフ・モニタリング・シートは,心理学的・社会学的・生理学的な側面からみたスポーツ活動中の自己評価項目から構成されていた.全授業の共通プログラムは以下のとおりであった(数字はプログラムの順序に対応する);1:ガイダンス,2:講義,3-5:実技,6:講義,7-9:実技,10:講義,11-13:実技,14:まとめ.3回の講義は,生活習慣と健康の関わりに関する内容であった.介入プログラムは,運動の意志決定バランスにおける統計的に有意ではない改善傾向と,運動実践の恩恵における有意な増加をもたらした.運動実践の負担および身体活動量においては,いずれの効果も認められなかった.本研究で示された介入効果は,体育実技の果たす健康教育としての役割を具体的に提案している.
著者
木内 敦詞 橋本 公雄
出版者
社団法人全国大学体育連合
雑誌
大学体育学 (ISSN:13491296)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.3-22, 2012-03-15

この総説の目的は,大学体育授業による健康づくり介入研究の意義と必要性を述べ,日本の大学体育教員の授業研究への動機づけを高めることであった.第1に,大学体育授業による健康づくり介入研究の教育的意義を指摘した.すなわち,健康づくりと友達づくりの場としての体育授業は,今日の大学における初年次教育の重要な要素である「学問的適応」と「社会的適応」の双方への貢献が期待されるものの,このような期待される教育効果の検証はこれまで十分になされていないことを述べた.第2に,大学体育授業による健康づくり介入研究の持つ公衆衛生的意義を指摘した.すなわち,座位行動蔓延と大学大衆化進行により,大学体育の公衆衛生的役割がいっそう高まっていることを述べた.第3に,大学体育授業による健康づくり介入研究の学術的意義を指摘した.すなわち,「大学生」の健康づくり介入研究,とりわけ,「身体活動」増強のための介入研究は国内外を含めてもまだ初期段階にあり,これまで大きな成果はあがっていないことを述べた.その後,以下のことについて討論した;大学生の生活習慣・健康度に関するこれまでの知見,わが国の健康づくり対策と学校体育の関係,わが国の大学体育の歴史と新たな動き,米国学校体育の転換,行動科学を活かした健康づくりの動向.最後に,大学生の健康づくり研究の今後の課題として,以下の4点を挙げた;1)大学体育のラーニング・アウトカムを提示すること,2)理論およびエビデンスに基づく介入研究を行うこと,3)介入効果の科学的評価が可能な研究をデザインすること,4)大学生対象の健康づくり(とりわけ,身体活動)介入研究を行うこと.
著者
豊田 かおり
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・造形学研究 (ISSN:13461869)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.147-160, 2006-01-31

モード史におけるモダニズムとは何か。芸術,建築や装飾デザインにおけるモダン・ムーヴメントの理念と実際の経過を辿り,1920年代のモダン・ファッションと照合し考察する。モダン・ムーヴメントは,バウハウスやデ・スティル,更には「国際様式」へ移行し,装飾を排除し,機能美を追及した合理主義へと向かう。また1925年のアール・デコ展やキュビズム等の影響により直線的・幾何学的フォルムが絵画から日用品に至るまで浸透する。モード史におけるモダニズムは1906年にポール・ポワレが女性をコルセットから解放したことに始まる,と一般に言われる。更にモダン・ファッションを打ち出したシャネルやヴィオネ等,当時のパリの有名メゾンのクチュリエ達は簡素化への道を辿る。第1次世界大戦を経て都市化や女性の社会進出が進み,窮屈でデコラティブな夜会服は徐々に姿を消した。1920年代には昼夜を問わず着用できる簡素でストレートなシルエットの服が登場し,階級間における差異がなくなり始めた。シンプルで無駄のない服は,現在のモードにおいても欠くべからざる要素である。1920年代が生んだモードは現代服の原点と言えるのである。
著者
相川 択弥 三村 未美 金山 美鈴 鈴木 理香
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.665-669, 2014 (Released:2015-03-10)
参考文献数
3
被引用文献数
2

A病院は地域での急性期中核病院の役割を担っている。それに加え, 平均在院日数の短縮化や看護師不足と, 看護師の業務は多忙を極めている。この環境下で働く看護師は, どのようなストレスを感じて業務を行なっているのか実態調査を行なった。 研究方法は, A病院看護師, 准看護師 (師長・副師長・主任を除く) に看護職場にみられるストレス要因についての質問用紙を作成し調査を行なった。業務量, 業務内容, 人間関係, プライベートの4つのカテゴリーに分類し, さらに年代別に比較した。 集計の結果, 全ての年代でストレスの1位は業務量, 2位は業務内容であった。患者の病状経過の把握, ケアや検査, 処置, 医師の診療の介助, 医療安全への配慮, 他部門との連携など業務が多岐にわたり, 常に時間に追われていることが要因であると考える。ストレス3位は人間関係であった。多忙な業務の中, 患者とゆっくりと向き合えないジレンマや, 医師とのコミュニケーションが出来ていないことへの不満, 上司や同僚との関係などが関与していると考えられる。ストレス4位はプライベートであった。30・40歳代は, 家庭を持つ看護師が多く, 希望の休日は家庭の用事などに当てなければならず, 自分の時間が確保できないこと, 夜勤や時間外勤務, 研修への参加等も, 影響していると考えられる。今後は, スタッフ同士が同じストレスを抱える仲間として助け合い, 働きやすい環境となるよう努めていく必要がある。