著者
村田 卓士 久野 友子 穂積 正俊 玉井 浩 高木 雅博 上脇 達也 伊東 禧男
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.165-171, 1998-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
23
被引用文献数
4 7

卵殻カルシウムを添加したチョコレートおよび卵殻カルシウムを含まないチョコレートをヒトに投与し, 糞便中総脂質, 脂肪酸, カルシウムを測定するとともに, その安全性について検討を行った。1) 卵殻カルシウムを添加したチョコレート摂取群(Ca添加群) は, 卵殻カルシウムを含まないチョコレート摂取群 (コントロール群) に比して糞便中総脂質が有意に高値であった。2) 糞便中カルシウム濃度と糞便中総脂質濃度は, 有意な正の相関関係にあった。3) 脂肪酸分析の結果, Ca添加群は, コントロール群に比してパルミチン酸およびステアリン酸の吸収率が有意に低値であった。4) 試験期間中, 2群間で血清中各種脂質, カルシウム, リン, 脂溶性ビタミンに有意な変動はなかった。5) いずれのチョコレートの摂取期間中も重篤な副作用は認めなかった。以上より, ヒトにおいて卵殻カルシウムはチョコレート中に含まれる脂質の吸収抑制効果を示すことが示唆された。
著者
趙 成河 園山 繁樹
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.227-236, 2018-03-31 (Released:2018-10-06)
参考文献数
31
被引用文献数
1

本研究では、選択性緘黙の有病率に関する先行研究を概観し、有病率の推定値とその根拠資料を把握することを目的とした。対象とする先行研究は英文および和文の学術誌に掲載された選択性緘黙の有病率を調査した論文を選定した。選定基準に適合した16編の論文を分析対象とし、12の項目について分析した。調査研究の対象年齢は3.6~17歳で、有病率は0.02~1.89%であった。また幼稚園および学校で調査を実施した論文が12編、クリニックで実施した論文は4 編であった。選択性緘黙の診断基準としてDSM-III-Rを用いた論文は1 編、DSM-IVを用いた論文は8 編、DSM-5を用いた論文は1 編、記載のない論文は6 編であった。和文誌は4 論文と少なく、最近の日本の選択性緘黙の有病率に関する大規模の調査は見当たらず、今後、日本における選択性緘黙の現状を把握する必要がある。また、今後の研究では選択性緘黙の発症時期について検討する必要がある。
著者
阿久津 守
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.139, no.5, pp.693-697, 2019-05-01 (Released:2019-05-01)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

The number of persons arrested in Japan for drug-related offenses in 2016 increased from the previous year. Especially, cannabis offenses have increased since 2014, with more than 2000 persons arrested in 2015. As a feature of the year 2017, we analyzed many cannabis concentrates, called “Cannabis wax”, in the process of analyzing cannabis in the Narcotics Control Department. “Cannabis wax” refers to concentrates of the hallucinogenic component of cannabis, tetrahydrocannabinol (THC). Increasingly, cannabis wax containing 50 times higher THC than general dry cannabis has been confiscated. More than 2300 compounds are currently regulated as new psychoactive substances in Japan. In a recent trend, there is an increasing number of cases in which a wide range of regulated substances have been seized and confiscated, ranging from those that have been abused for a long time, to those that are newly regulated. Many structural isomers are present among these, and we are constantly developing techniques for the rapid and accurate analysis of these compounds.

1 0 0 0 OA カラスの社会

著者
伊澤 栄一
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.55-68, 2011 (Released:2011-07-15)
参考文献数
105
被引用文献数
5 2

Recent behavioural studies in corvids (i.e. crows and jays) have demonstrated their sophisticated cognitive abilities such as mental-time travel, theory-of-mind-like ability, reasoning, and tool manufacture and use. These abilities are thought as a case of cognitive convergence which has been evolutionary driven by the social complexity common between corvids and primates. However, ‘complexity’ of the social life of corvids has been less understood. Here I review the social ecology of crows and jays with focusing on the social relationships and inter-individual interactions. Particular attentions are paid to affiliative relationships, including social bonds and friendships, and cooperation styles as the foundation of the conflict management which should evolutionarily work as a socio-ecological demand for cognitive-processing power of corvids.
著者
森本 佑子 田辺 雄一 堀 天明 宮内 勇貴 佐藤 麻紀 工藤 道誠 菅屋 潤壹
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
pp.2314, (Released:2019-10-25)
参考文献数
23

健康なボランティアの前腕浴における皮膚血流に対する炭酸ガスおよび乳化油剤の影響を測定した.浴湯中に炭酸ガス(60ppm)のみ,乳化油剤(10ppm)のみ,炭酸ガスおよび乳化油剤を溶解させた前腕浴において,炭酸ガスと乳化油剤の併用は,炭酸ガス単独にくらべて皮膚血流量を有意に上昇させた.乳化油剤が炭酸ガスの経皮吸収を高めた結果,炭酸ガスの皮膚血管に対する実効濃度が高くなった可能性が考えられた.  さらに,炭酸ガスと乳化油剤を組み合わせた入浴剤を作製し,健常成人を対象に,2週間の連用が発汗に及ぼす影響を調べた.連用後,入浴剤群では,安静時の鼓膜温が低下傾向を示した.発汗テストによる体温変化は連用前と同等であったが,発汗量は有意に増加した.鼓膜温および発汗量,発汗波頻度を用いた解析から,発汗量の増加は,発汗中枢を介したものであることが示された.コントロール群では,これらの変化は認められなかった.以上の結果から,乳化油剤を配合した炭酸入浴剤が発汗機能に有益な効果を有する可能性があることが示された.
著者
鈴木 修武
出版者
日本食品保蔵科学会
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.115-121, 2004 (Released:2011-03-05)

本研究は炒めもの、焼きもの等の用途に適する食用油脂を製造するために、ハネ現象の解明を目的とした。加熱温度によるハネは、鉄板の表面温度が120℃以下ではほとんど認められず、140℃から少量跳ねはじめ、160℃で本格的に跳ね、180℃で著しく跳ね、200℃で爆発的に跳ねた。投入油量と投入水量によるハネは、油量の多少にかかわらず跳ね、水は少ない状態ではあまり跳ねなかったが一定量以上になると跳ねた。市販の食用油脂類については、ハネない油として売られている油はハネ防止の効果があり、また炒め油でもハネ抑制効果があった。ごま油やラードのような油脂は激しく跳ねたが、ファットスプレッドやバターはハネ防止効果があった。調味料によるハネは、穀物酢や料理酒のような粘性のないものは断続的に激しく跳ねた。醤油、ソース、みりんのような粘性のある固形物の多い調味料は、泡が出て持続的に跳ねた。食材の違いによるハネでは、牛肉は豚肉よりも跳ね、ジャガイモ、人参、ナスの野菜類については付着水や材料の吸水性、吸油性により異なった。食材におけるハネない油、炒め油、菜種油のハネ量の違いは、ハネねない油<炒め油<菜種油の順で跳ねた。異なる食材でも傾向は同じであった。ホットブロックバスにおいては温度が高いとよく跳ねた。また鉄板焼き器のように初期の温度が高くても食材を入れることによって急激に温度低下するとハネは少なかった。以上のことから、食用油脂のハネ現象は鉄板の温度が高く、油脂が存在し、一定以上の水が存在するときに跳ねた。ハネない油やハネ防止処理をした油脂は跳ねなかった。調味料、肉類や野菜類の違いによりハネ方が異なり、ハネない油等でハネを抑制できた。
著者
太田 均
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.25, pp.168-155, 2020-02

室生山寺の創建及びそれに至る「前身寺院」の事情を明らかにして、その宗教環境につき考察した。室生山寺は山部親王の病気平癒を祈る「延寿法」(宝亀九年)成就後の創建で、前身寺院は宝亀元年から同五年の間に成立したと推定した。前身寺院創建に関与した賢璟は、後に平安京を地相しており、寺地の選定にあたり優れた地相能力を発揮し、地相に臨んでは『高僧伝』『続高僧伝』などに記される、中国における山に対する信仰を念頭に、特に龍穴神を護法神と位置づけることを重視したと見られる。以上の考察に際し、初期室生寺(室生山寺とその前身寺院)成立に関し必須の史料である『宀一山年分度者奏状』と、それに関する従来の解釈を踏まえた。
著者
豊島 秀範
出版者
弘前学院大学・弘前学院短期大学
雑誌
紀要 (ISSN:03854167)
巻号頁・発行日
no.27, pp.1-10, 1991-03-25

1 0 0 0 OA 朝日年鑑

著者
朝日新聞社 編
出版者
朝日新聞社
巻号頁・発行日
vol.昭和12年 附録 日本遊覧案内, 1940
著者
康巳 黄金井
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.1, pp.11-18, 2012 (Released:2017-10-23)
参考文献数
10
被引用文献数
2

平成6年の規制緩和により製造開始された地ビールは,当初のブーム後の品質淘汰を経て現在では品質も安定し,一定の市場を獲得し,我が国に「地ビール文化」を創造した。本稿では,全国で唯一の地ビール製造業の業界団体であるJBA(全国地ビール醸造者協議会)会長に,地ビール誕生から変遷を概観し,地ビール製造業の実態,地ビールの商品特性と社会的役割,将来展望等について解説していただいた。新たな市場を開拓する観点から,他種類の製造業者等にも参考となるので,ご一読をお勧めしたい。
著者
伊藤 忠弘
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.24-34, 1994-11-30 (Released:2016-12-03)
被引用文献数
2

The present studies were conducted to examine the effects of the controllability and stability of self-handicapping and the style of self-handicapping on observers' impressions. Subjects were requested to read a description of a person (self-handicapper) who acquired or claimed a handicap before a test. The results showed that (a) contorollable and unstable handicaps augmented the perception of responsibility and reduced observer's intention of helping behavior, (b) uncontorollable and stable handicaps reduced the perception of self-handicapper's confidence and success-probability, and (c) claimed self-handicapping was perceived more negatively than acquired self-handicapping. These results suggested the negative effects of self-handicapping on self-handicappers in both a short term and a long term.
著者
石田 尚之
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.253-259, 2015 (Released:2018-02-01)
参考文献数
33

疎水性引力は,水溶液中にある疎水性の表面間にvan der Waals引力をはるかに上回る長距離から強い引力が働く現象であり,液相コロイド分散系の挙動に重要な影響を及ぼす。しかし,なぜこのような長距離引力が働くのかというメカニズムについては,多くの研究例があるにもかかわらず長く不明であった。本稿では,原子間力顕微鏡 (AFM) による直接測定を中心とした検討により,疎水性引力の発生メカニズムの 「謎」 の解明を目的とした研究について,その成果を俯瞰したい。
著者
星野 真由美 渡邉 揚介 後藤 博志 小野 賀功 加藤 廉 上瀧 悠介 九鬼 直人 上原 秀一郎 越永 従道
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.86-90, 2020

<p>症例は日齢0女児.他院にて妊娠初期に妊娠が確認されたが,その後未受診となっていた.在胎36週6日に自宅分娩となったため,母児ともに救急搬送となった.児は腹壁破裂を認め,日齢1にSilo形成を行い,脱出臓器を徐々に腹腔内に還納後,日齢10に腹壁欠損部への臍帯充填によるsutureless腹壁閉鎖法を施行した.術後敗血症などの重篤な合併症はなく日齢78に退院となった.未受診妊婦から出生した児は予後不良とされるが,腹壁破裂のように合併奇形が少なく,生存率が高い疾患の場合は,出生後の処置が適切であれば,自宅分娩であっても救命可能であると思われた.未受診妊婦の出産は非常にハイリスクであるが,腹壁破裂の母体の特徴から未受診で妊娠経過を過ごし,出生前診断されないまま,自宅分娩や飛び込み分娩にて出生することは今後も起こりうる事象であり,妊婦健診および胎児診断の重要性については女性のみならず,男性へも教育するシステムの充実が急務である.</p>