著者
松本 美枝子
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.345-352, 1990-08-05 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
1

ハクサイにおける,ゴマ症発生と基肥窒素施用量(10a当たり10,20,30kg)の関係を体内成分の面から検討した.基肥窒素施用量の増加に伴い生育が促進され,ゴマ症の発生も増加した.基肥窒素30kg施用区でとくに発生が著しかったが,10kgおよび20kg施用区であっても生育が促進された場合は発生が多くなった.この発生株ではNO_3-Nおよびαアミノ態窒素濃度が上昇し,糖濃度は逆に低下する傾向を示した.また,機関別体内成分とゴマ症発生の関係では,葉柄よりむしろ葉身中でのNO_3-Nおよびαアミノ態窒素濃度の蓄積が発生を助長した.これらの事実から,ゴマ症の発生を防止するためには,基肥窒素施用量を20kg以下にすることが必要と考えられた.
著者
小手川 良江 本田 多美枝 平川 オリエ 本田 由美 寺門 とも子 八尋 万智子
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学intramural research report = The Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing, intramural research report (ISSN:13478877)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.15-25, 2010-12-25

本研究の目的は看護師の「職業キャリア成熟」に影響する要因を明らかにすることである。看護師の「職業キャリア成熟」(27点〜135点)に、属性・経験年数・家族の支援・キャリア計画をたてるうえで影響の大きいライフイベント・役割モデルの有無・メンターの有無が影響していると考え、概念枠組みに基づき調査項目を設定した。設置主体が同じである二つの総合病院(A病院509床、B病院301床)に勤務する看護師を対象とし、無作為抽出により374名に調査用紙を配布した。調査は無記名自記式質問紙調査とし、郵送にて回収を行った。分析は記述統計量、t検定、一元配置分散分析、相関分析を行った。結果、「職業キャリア成熟」と経験年数に有意な差はなかった。しかし、全ての経験年数で他の下位尺度と比較して<職業キャリア計画性>が低かった。現在起こっているライフイベントの中でキャリア計画をたてるうえで影響が大きいものとしては、結婚61名(30.7%)、育児49名(24.6%)が多かったが、配偶関係や子どもの有無による「職業キャリア成熟」に有意差は認められなかった。しかし、家族の支援が高い群は有意に「職業キャリア成熟」が高く、家族の支援による影響が示唆された。また、役割モデルやメンターの存在がある群は、「職業キャリア成熟」が有意に高く、キャリア成熟の影響要因であることが示唆された。
著者
伊藤 英之 角野 秀一 辻 盛生 市川 星磨 高崎 史彦 成田 晋也
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

近年,宇宙線ミュオンを用いた火山体内部の透視技術が確立され,浅間山,薩摩硫黄島などで成果を出している(Tanaka, et.al 2008).我々は,岩手山山頂から約6km東麓に位置している国立岩手山青少年交流の家にミュオン測定機を設置し,2016年10月14日より観測を実施している.合わせて,岩手山起源の湧水の化学組成について連続観測を行い,ミュオグラフィーから得られる山体内部構造のイメージングとあわせ,火山体内部の深部地下水流動系の解明を目指している.現在のデータの取得状況は安定しており,二次元の簡易イメージは得られている状況にある.しかしながら,測定から得られる山の密度長は実際の山の厚さとはかけ離れた値を示しており,電磁シャワーや周囲からの散乱によって入ってきたミュオンによる影響が大きい.一方,数値地図火山標高10mメッシュを用いて,実測密度長と地形データの距離との比を取り,密度分布にすると,北側と南側で濃淡が異なってくることから,今後はバックグラウンドを仮定して,山体の密度分布を把握していく予定である.一方,湧水の化学組成から,岩手山麓の湧水の多くはCa(HCO3)2型であるが,北麓の金沢湧水と北東麓の生出湧水では,Ca(HCO3)2に加えSO42-の濃度が高い.これらの湧水についてトリチウム年代を測定したところ,13.9~23.5年の値が得られた.特に生出,金沢湧水については,それぞれ19.4年,23.5年の測定値が得られ,1998~2003年岩手山噴火危機の頃に涵養された地下水が今後湧出してくる可能性が示唆された.
著者
杠岳文
出版者
新興医学出版社
雑誌
アルコール医療入門
巻号頁・発行日
pp.121-123, 2001
被引用文献数
1
出版者
上智大學法學會
雑誌
上智法学論集 (ISSN:04477588)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.3-11, 2019-03

古城誠教授退職記念号
著者
阿部 泰隆
出版者
法曹会
雑誌
法曹時報 (ISSN:00239453)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.p1957-2022, 1990-08
著者
石 磊 張 〓 山中 敏正 原田 昭
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.21-28, 2007-01-31 (Released:2017-07-11)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究は快適な運転を実現するため、運転中のドライバーの感性的な評価を脳前頭部α波ゆらぎリズムによって測定し、ドライバーの感じ方と車両運動特性の相関性を解明することを目指した。特に車両曲線運動におけるドライバーの感じ方を考察の中心とした。走行実験としては、被験者に180°コーナリングの設定コースを実車で走行させた。走行中収録した被験者の前頭葉α波をHSK中枢リズムモニタースリムの出力モデルに基づき、ドライバーの快適感を「気分と覚醒感」の二軸に評価し、車両挙動指標との関連性を解析した。本研究は脳波の計測と解析による、人間の製品に対する感情など主観的な体験を客観化して評価するアプローチである。ユーザの心理活動に随伴する生理反応を利用し、人工物を客観的に評価する試みはある程度検証できた。
著者
坪井 祥一 淺川 義堂 田中 利典 森 憲司 岩砂 三平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Bb1420, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 大脳基底核は脳出血の好発部位でもありながら,大脳皮質や脳幹と強い機能的連結を持ち運動プログラムの生成や随意運動の実行,姿勢制御プログラムおよび自動歩行運動の制御を担う(高草木2009,花川2009)など,理学療法において最も重要な脳器官の一つであると考えられる.大脳基底核は直接路や間接路,ハイパー直接路からなる回路構造を持ちその内部で大脳皮質および脳幹から得た情報を元に,抑制増強と脱抑制を相互に用いながら(南部2009),運動の開始・切り替え・終了といった随意制御を担っているとされている.また,特に補足運動野との機能的連結によって記憶誘導性運動を,一方で同じ高次運動野でも運動前野は視覚誘導性運動を担っている(乾2001)とされている.この双方の比較的相反する機能を応用し,パラレルニューラルネットワーク(彦坂2003)が運動学習理論として提唱されている.今回左被殻出血を呈した患者様に対して上記メカニズムを応用した理学療法を実施し,得られた結果,その一考察を報告する.【方法】 症例は60歳代女性,右利き,病前ADLは自立,特筆すべき既往歴はなし.MRI所見として,主に左被殻後部・放線冠を中心とした損傷と内包後脚方向への血腫による圧迫を認めた.尾状核,被殻前部の直接的損傷は免れていた.当院入院当初(第37病日後)重度右片麻痺SIAS-motor0-0-2-1-0,表在・深部感覚重度鈍麻,筋緊張は弛緩性であった.神経心理学的所見としては伝導失語,軽度の失行,軽度の注意障害を認めた.機能的制限として,座位保持は自立であるが,起立・移乗は軽介助,立位保持は後方へ倒れやすく中等度介助,歩行は右下肢の振り出しが自己にてわずかにできる程度,右膝関節の膝折れ著名であり中等度介助を要した.本症例に対し,大脳基底核を中心としたメカニズムを応用し理学療法を実施した.視覚情報を用い随意運動を制御するため,姿勢矯正鏡の前で1日40分程度の動的立位,バランスex.(起立動作,スクワット,左右への重心移動,踵上げ,ステップ動作,リーチ動作を各20回程度),および20分程度の歩行,階段昇降ex.等を実施した.その際,本症例の能動的視覚性注意が保たれ,十分な視覚情報が随意運動・姿勢制御に寄与するよう,指差し指示やセラピストの視線等を有効に用い,姿勢矯正鏡に写る症例自身の身体関節運動を注視させ,視覚的注意対象を限定させた.また必ずジェスチャーにてセラピストがやって見せ,動作理解が行えた事を確認しながら行なった.その後,課題動作が概ね監視あるいは自己にて可能なレベルまで改善されたことを確認し,同様の動作を閉眼位にて行なった.【倫理的配慮、説明と同意】 本症例に対し,研究に関する趣旨を説明し,同意を得た.【結果】 第78病日後,SIAS-motor1-0-3-2-1,表在・深部感覚重度鈍麻,筋緊張は弛緩性であった.神経心理学所見として特筆すべき変化は認めなかった.動作能力としては起立動作,立位保持は自立,歩行はT字杖および短下肢装具着用下において二動作前型歩行を獲得し,病棟歩行が自立となった.【考察】 今回,左被殻出血を呈した重症片麻痺症例に対し,大脳基底核を中心とする脳機能メカニズムを応用した理学療法を試みた.今回損傷された被殻を中心とする大脳基底核は,補足運動野との機能的連結により,運動の開始・切り替え・終了を随意的に制御し,内発的かつ記憶誘導性の運動制御を担っていると考えられる.一方で同じ高次運動野でも運動前野は頭頂連合野,小脳との機能的連結により,外部情報を起因とする視覚誘導性運動を担っているとされている.またパラレルニューラルネットワークの概念図より,新しい運動を学習する運動学習初期段階では,後方線条体を中心とした体性感覚情報と比較し,より前方線条体を中心とした視覚情報を元に運動学習が行なわれるとしている.これらのことから被殻後部を損傷した本症例に対し,体性感覚情報を用いた随意運動制御と比較して,視覚矯正鏡等を用いた視覚情報による随意運動制御を行なった方が,小脳-頭頂連合野-運動前野系経路による視覚誘導性運動をより賦活することになったと考えられ,理学療法介入初期において,より運動学習が行なわれやすかった可能性が示唆された.また本症例にとって,視覚情報による運動制御がある程度成立した後に,閉眼位課題を導入することで,視覚情報と体性感覚情報の異種感覚統合がより行なわれやすくなり,更なる運動学習が進んだ可能性があることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 本症例において大脳基底核を中心とした脳機能メカニズムの理学療法応用は有用である可能性が示唆された.
著者
森田 とわ 山口 智史 小宅 一彰 井上 靖悟 菅澤 昌史 藤本 修平 飯倉 大貴 田辺 茂雄 横山 明正 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ea0348, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 膝蓋骨骨折や膝蓋腱断裂,大腿四頭筋断裂などでは,膝伸展筋の機能不全によって歩行時に膝折れを呈し,膝伸展位保持が困難になる.この膝折れを防止するために,膝伸展位保持装具(以下,膝装具)が使用されることがある.支持性の良い膝装具は膝伸展筋力を代償するだけでなく,他の関節周囲筋の筋活動を変化させる可能性がある.しかしながら,膝装具使用時の歩行時筋活動量について言及された報告はない.本研究では,膝装具が歩行時の下肢筋活動量へ及ぼす影響を検討した.【方法】 対象は健常成人9名(年齢:24.4±2.8歳,身長:1.73±0.04m,体重61.2±6.3kg)とした.課題は20m/minに設定したトレッドミル上での膝装具装着および非装着の2条件の歩行とした。膝装具は,両側支柱付きのニーブレース(アルケア株式会社)を使用し,十分な練習後に装着非装着での歩行,装具装着での歩行の順番で課題を行った. 表面筋電図の測定には,筋電図記録用システム(Delsys社)を使用した.記録筋は,両側下肢の大殿筋(GM),内側ハムストリングス(MH),大腿直筋(RF),ヒラメ筋(SOL),前脛骨筋(TA)とした.電極は,筋腹上に能動筋電を貼付し,サンプリング周波数は1kHzで記録した.また,両側の母趾球部と踵部にフットスイッチを貼付し,歩行周期の特定および時間距離因子(重複歩幅,歩行率,立脚期割合)の算出をした.得られた筋電図波形は、全波整流後30歩行周期分を加算平均して平滑化した後,フットスイッチの情報から,立脚相と遊脚相に分け,それぞれの積分値(μVs)を算出した.また歩行時の重心動揺を計測するため,小型加速度計(ワイヤレステクノロジー社)を使用した.加速度計は,第三腰椎棘突起部に伸縮ベルトで固定し,サンプリング周波数60Hzで記録した.加速度データは,10歩行周期分のデータを加算平均し平滑化した後,時間で2回積分し変位を算出した.その変位から1歩行周期における左右移動幅を算出した.統計解析は,装具の有無による各筋活動量と時間距離因子,重心動揺の違いを検討するため,対応のあるt検定を用いた.有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 所属機関の倫理審査会により認可され,事前に全ての対象者に研究内容を説明し,同意を得た.【結果】 装具着用により,装着下肢の立脚相においてGM,MH,RF,TAの筋活動量が有意に減少した.装具着用側の立脚相における各筋の平均積分値は(装具あり条件、装具なし条件)で,GM(6.33μVs,7.98μVs),MH(4.22μVs,5.39μVs),RF(1.43μVs,1.80μVs),TA(2.71μVs,3.53μVs)であった.一方,SOLについては,装具あり条件7.79μVs,装具なし条件7.88μVsで統計的有意な差を認めなかった(p=0.783).遊脚相においては,いずれの筋でも筋活動量に有意な差を認めなかった.また,装具非装着側の立脚相および遊脚相においては,いずれの筋でも装具着用の有無による有意な筋活動量の差を認めなかった.時間距離因子については,装具着用の有無による有意な差を認めなかった.重心の左右移動幅は,裸足歩行17.7cm,装具歩行23.8cmで装具装着により有意に増加した.【考察】 膝装具は,膝伸展筋以外の筋活動量も減少させることが示された.GM,MH,RFの筋活動量の減少は,膝装具によって体重支持に必要な筋活動が代償されたためだと考えられる.重心の左右移動幅が増大したが,これは膝関節を伸展位に保持したことにより,下肢を振り出すために生じた体幹側屈や分回し歩行などの代償動作が影響していると推察される.分回し歩行では,初期接地において通常より底屈位での接地になり,このことが,荷重応答期におけるTAの筋活動量が減少につながった可能性がある.また,立脚相のSOLにおいては,有意な変化を認めなかったことから,SOLの役割である下腿が前方へ倒れていく速度の制御に必要な筋活動は,膝装具によって影響をうけないと考えられた.しかしながら,本研究においては各関節の関節運動に言及することはできないため,今後,三次元動作解析装置などを用い検討する必要があると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 膝装具を使用することにより,膝関節周囲筋だけでなく股関節や足関節の筋活動量も減少することが示唆された.膝装具を適用する際には,他の下肢筋の負荷をも軽減できる一方で,筋力低下の誘引にもなると考えられ,十分な配慮が必要である.
著者
三浦 麻子
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.3-12, 2018 (Released:2019-07-11)
参考文献数
21
被引用文献数
6

Open science is an academic movement to transform scientific research into a more open endeavor. For the purposes of this paper, we define open science as the infrastructure of a “statistical revolution,” which indicates the transformation of fundamental ideas in psychometrics. The four basic components of open science are: (1) open access, (2) open data, (3) data-centric science, and (4) civil science. With regard to open data and open access, we surveyed the present situation of psychological research and considered how it is associated with the statistical revolution internationally and domestically in Japan. To date, the introduction of open science to academic psychology circles has arrived relatively late in Japan. The future prospects of psychology in open science are discussed, especially with regard to what to do and how to do open science as a researcher.
著者
大向 一輝
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.13-21, 2018 (Released:2019-07-11)
参考文献数
11
被引用文献数
4

In recent years, research data through advanced network environments and sensors has dramatically increased, and scientific research methods, called “fourth paradigm” and “data centric science,” have been attracting attention. From the viewpoint of research fraud prevention, the momentum of disclosing data on research results is increasing. These activities are widely called “open science.” To activate open science, it is necessary to promote daily data sharing inside and outside the research community. This paper introduces cases of open science on institutional and technical aspects, and discusses future prospects.
著者
権 純哲
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.39-51, 2019

京城帝國大學創設に參晝し、法文學部朝鮮語學文學第一講座教授となる高橋亨は、朝鮮文學/史のほか朝鮮思想/史・朝鮮儒學/史を講義し、學間的基礎・骨格を作り上げた。彼の京城帝大講義ノートは、既知の著書・論文とは異なる性格を帶び、帝國・植民地學間として誕生した朝鮮學の實態を明かす資料としてその意義は大きい。その概觀と、この研究に至る經緯、高橋亨と京城帝國大學につき略述した。
著者
稲垣 千文 青木 萩子 鈴木 力
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.51-60, 2015-12-25 (Released:2016-03-31)
参考文献数
18
被引用文献数
2

要 旨 研究の目的は,前立腺全摘除術を受けた既婚男性の治療に伴う気持ちの変化を明らかにすることである.Modified Grounded Theory Approach(M―GTA)に沿い,研究対象者8 名よりデータ収集し分析した.結果,彼らは診断より【どうすればいいか分からない】と衝撃を受けるが,病気の特徴を知ることなどにより,【自分の病気はたいしたことない】安堵の気持ちに至り,【じっくり治療法を選びたい】【前立腺全摘除術を受けたい】へ変化した.治療選択では,【男ゆえに尿漏れは避けたい】と【性機能は諦めたくない】の気持ちが影響し【他の治療法を考えたい】に至った.【性機能は諦めたくない】は【性機能障害は仕方がない】へ変化し,【自分だけじゃない】気持ちとともに,【前立腺全摘除術を受けたい】へ気持ちが変化する際に影響を与えた.そして,術前の【男ゆえに尿漏れは避けたい】は,術後には【尿漏れをなんとかしたい】から,【尿漏れは苦にならない】へ変化し,妻に援助を求める気持ちも含まれていた.対照的に,妻と話し合うことを避けたいとする【性機能障害はあえて触れない】気持ちは持続した.また,術前に【性機能は諦めたくない】【性機能障害は仕方がない】【性機能障害はこだわらない】の気持ちをもち,術前の【性機能は諦めたくない】と【性機能障害は仕方がない】は術後【失った性機能は惜しい】へ変化した.明らかになった気持ちの変化より,彼らへの病気の特徴の理解を促進する援助と尿漏れを理解し対策がたてられる援助が,看護への示唆となった.
著者
武田 尚子
出版者
日本都市社会学会
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.17, pp.55-71, 1999-07-03 (Released:2011-02-07)
参考文献数
18
被引用文献数
1