出版者
小学館
巻号頁・発行日
vol.4(2), no.38, 1992-02
著者
佐々木 嘉三 田阪 茂樹
出版者
岐阜大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

岐阜県北部の跡津川断層直近の東京大学宇宙線研究所神岡地下観測所奥の坑道で、ボ-リング孔より噴出している地下水を導水し、水中ラドン濃度の測定をしてきた。1990年12月以降の予備的観測および本年度の観測からは次のような成果が得られている。震央距離(△)50km以内,マグニチュ-ド(M)3.5以上の地震活動とラドン濃度の変化を対比すると,東側の北アルプスに沿う地震活動,すなわち烏帽子岳,焼岳,乗鞍岳周辺に発生する群発地震の活動に対しては,△が小さいにもかかわらず,ラドン濃度の変化は明確ではない。跡津川断層,午首断層に沿う地震活動では,Mが3.0程度のものも含めて、ラドン濃度に変化が現われるものもあった。特に,1991年2月28日のM=3.9の地震に関連した変化は,2日前から減少し,地震後の振動変化と増大、そして5日後に通常のレベルにまでもどっていることが分かった。さらに多くのデ-タを得るため,観測は現在も継続している。又,根尾谷断層に近い岐阜大学の上水道(地下水)についても断続的であるがラドン濃度の観測を行い,人工的原因による変動を検出し、その影響を除外することが可能となった。火山噴火予知の基礎的デ-タを得るため,活動の活発な桜島周辺で,大気中ラドン濃度の測定を鹿児島市内(鹿児島大学),と有村(桜島)で行なってきた。鹿児島市内では,12月16の噴火と降灰にともない2日間に渡って20%のラドン濃度増大があった。有村では,噴煙の降下に伴い,2倍にまで濃度が増加することが知られた。白根火山での11月の約10日間の観測では,噴気の高温ガスの冷却および導引方法を考慮した観測容器を製作し、1日以下の大気圧の短期変動とラドン濃度が逆相関にあるという結果を得た。又,トリウム系列のThC'も高濃度で検出され,ウラン系列のもとの対比等で,火山深部の活動情報が得られることも分ってきた。
著者
木村 愛子 内田 芙美佳 鈴木 哲
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.563-567, 2017 (Released:2017-08-20)
参考文献数
24

〔目的〕介護職員に対する腰痛に関する情報提供が,破局的思考および腰痛予後に対する認知に与える影響,またその影響と腰痛の有無・程度との関連性を検討することとした.〔対象と方法〕対象は介護職員29人とし,腰痛に関する情報提供を講義形式の研修会にて行った.対象者を腰痛群と非腰痛群の2群に分け,介入前後間で評価項目の得点を比較した.〔結果〕腰痛予後に対する認知の得点は,腰痛群と非腰痛群のいずれも,介入後に有意に向上した.破局的思考の得点は,非腰痛群では介入後に有意に改善したが,腰痛群では有意な変化はみられなかった.〔結語〕介護職員に対し腰痛に関する情報提供を行うことで,腰痛のある者には破局的思考および腰痛予後に対する認知を,腰痛のない者には腰痛予後に対する認知を改善できる可能性が示唆される.
著者
船引 啓祐
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1572, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】看護師・介護士の腰痛発生率は高率であり大きな問題となっている。腰痛治療において推奨される治療の1つに認知行動療法が挙げられる。また,集団的に行う認知行動療法は,集団の作用を活用しながら認知・行動に関する知識・方法を獲得し,集団に対して治療的に働くという相乗効果が期待でき,セルフコントロール力を高めることができるとされている(岡田,2008)。そこで,当院の病棟勤務看護師・介護士98名(有効回答率84%)に腰痛の有無を質問紙による調査を実施した所,57%に腰痛の訴えがあった。本研究は当院病棟勤務看護師・介護士に対し腰痛教室を開催し,集団認知行動療法を実施することで,腰痛が軽減できるのか,また,痛み・腰痛関連QOL・不安・抑うつについても検討した。【方法】腰痛教室は第1回「腰痛基礎知識,認知行動療法」,第2回「腰痛予防対策(姿勢工夫,介助動作工夫,腰痛体操),ディスカッション」とし,1回の講義時間は40分,参加者15名程度と設定し,同内容の資料も配布した。また,腰痛教室第1回を計4回,第2回を計4回開催した。対象者は,第1・2回ともに参加した各評価において有効回答を得た非特異的腰痛者の看護師31名,介護士16名,計47名とした。評価時期は腰痛教室実施前,実施3ヶ月後とし,各評価項目における実施前後の分析を行った。評価として,痛み評価Numerical Rating Scale(以下NRS)と腰痛関連QOL評価Roland-Morris Disability Questionnaire(以下RDQ),不安・抑うつ測定尺度Hospital Anxiety and Depression Scale(以下HADS)を行い,NRS,RDQ,HADSの変化を対応のあるt-検定を用いて比較した。(p<0.05)また,Spearmanの順位相関係数を求め,相関分析を行った。集団認知行動療法実施前後のNRS,RDQ,HADSの効果量についても検討した。【結果】実施前と実施後を比較した結果,NRS(4.6±1.9→2.7±1.8),RDQ(2.5±2.5→1.2±1.7)であり,HADS不安(7.7±4.2→5.2±3.4),抑うつ(6.9±2.6→6.8±3.3),合計(14.6±5.5→12.1±5.8)であり,NRS,RDQ,HADS不安,HADS合計において有意な改善を認めた。NRSとRDQは優位に相関関係にあったが,NRSとHADS,RDQとHADSには相関が認められなかった。また,効果量については,NRS(r値:0.81),RDQ(r値:0.88),HADS(r値:0.71)であった。【結論】本研究の結果より,非特異的腰痛者において集団認知行動療法がNRS,RDQ,HADSの改善に有効であることが示唆された。またそれらの効果量においても効果を認めた。しかし,NRS・RDQとHADSに相関が認められなかった。看護師・介護士の職業性腰痛には身体的負荷以外にも精神的ストレスをはじめとする心理社会的要因が関与しているためであると考えられた。本研究より,非特異的腰痛者の看護師・介護士に対して,産業保健としての理学療法が,身体機能面だけでなく,心理・社会面のアプローチにより痛みが軽減できることが示唆された。
著者
五十嵐 歩 松本 博成 鈴木 美穂 濵田 貴之 青木 伸吾 油山 敬子 村田 聡 鈴木 守 安井 英人 山本 則子
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.283-291, 2018-10-20 (Released:2019-11-15)
参考文献数
7

本研究は,訪問介護を利用する在宅高齢者におけるコンビニ利用の実態を把握することを目的とした.東京都A区において調査協力への同意が得られた訪問介護事業所および小規模多機能型居宅介護事業所の管理者(n = 28)を対象とし,コンビニが生活支援の役割を果たしている利用者の事例に関して,利用者特性やコンビニの利用状況を問う質問紙への回答を依頼した.対象事業所より64事例について回答があった.事例の利用者は,平均年齢77.8±11.4歳,男性30人(47%)であり,要介護1(31%)と要介護2(30%)が多かった.1人で来店する者が68%であり,徒歩での来店が75%を占め,購入品は弁当・パン・惣菜がもっとも多かった(91%).ADL障害のある者はない者と比較して,サービス提供者の同行が多く(p = 0.001),車いす等徒歩以外の来店割合が高かった(p = 0.018).サービス提供者は,日中1人で過ごす者(p = 0.064)とADL障害がある者(p = 0.013)に対して,コンビニの存在をより重要と評価していた.
著者
笠原 勇二
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.329-341, 1986-10-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
39
著者
下村 剛 藤浪 麻美 油布 邦夫 齋藤 聖多郎 竹中 隆一 中嶋 辰徳 三城 英昭 岡田 憲広 髙橋 尚彦 坂本 照夫
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.671-679, 2019-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
14

大分県では2017年4月17日より,大分県遠隔画像伝送システムへの機能追加の形でクラウド型12誘導心電図伝送システムの運用を開始した。各消防本部に1台ずつのクラウド心電計を配置し,伝送には,既存のタブレット端末および回線を利用した。このシステムでは5地域中核病院を含む18施設が参加し,大分県の広い範囲を網羅している。運用開始から 2018年3月12日までに,111件(男性71例・女性40例:平均年齢75.6±12.7歳)の心電図伝送を行った。搬送先は,救命救急センター36例,PCI施設36例,地域中核病院32例で,そのほか7例あった。緊急心臓カテーテルが行われた22例(19.8%)の72.7%がACSであり,PCIが行われた14例は,コントロール群に比べ,有意にdoor to balloon time(DTBT)が短縮した。また,心電図所見からACSが否定的な45例(40.5%)は,近隣の施設で対応することにより不必要な遠隔地への搬送が回避できた。
著者
田中 尚人 二村 春香 秋山 孝正
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.407-415, 2006-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
13

本論文は, 水辺を基盤として発展してきた都市形成におけるコミュニティの成立構造, 変化のプロセスについて考察し, 水辺のインフラストラクチャーとコミュニティのあり方について考察したものである.具体的には, 岐阜市中心部長良橋周辺を対象として, 文献資料から都市基盤整備の概要を把握, 特に水防と水辺利用の要として整備されてきた陸閘に着目し現地調査を行った.さらにヒアリング調査により, コミュニティの変遷と現況を整理し, 水辺に対する意識や工夫, ルールを抽出した.本論文の成果として, 水辺のコミュニティが自ら継承してきた水防システムを保持している場合適切な水辺利用が可能となり, 水防と水辺利用のバランスを保つシステムの運用には, 地域住民のインフラストラクチャーに対する理解が重要な要素となることが明らかとなった.
著者
猪木 武徳
雑誌
社会科学研究 = SYAKAIKAGAKU-KENKYU
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-38, 2016-03-31
著者
山名 裕子
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.446-455, 2002
被引用文献数
2

本研究での目的は,均等配分が幼児期に成立するのか,またするならば,どのような発達的な変化があるのか検討することであった。12個のチップを数枚の皿に配分させていく個別実験には,3歳から6歳までの幼児288名が参加した。主な結果は以下のようなものであった。(1)年齢の上昇に伴い正答率は上昇し,選択される配分方略が変化した。(2)どの年齢においても,チップを何回にも渡って皿に配分する数巡方略が選択されていたが,その方略を正答が導くように選択できる人数は,年齢の上昇に伴い増加した。この方略は従来指摘されていた方略であったが,(3)1個あるいは複数個のチップをそれぞれの皿に一巡で配分する一巡方略と,配分されない皿が残っている空皿方略が本研究で明らかになった。(4)また一巡方略の中でも特に配分前に皿1枚当たりのチップの数を把握する「単位」方略が明らかになった。この単位方略は数巡方略ほど,年齢の上昇との関係が明確ではなかった。
著者
楠見 孝 村瀬 公胤 武田 明典
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.33-44, 2016-06-20 (Released:2016-06-17)
参考文献数
32
被引用文献数
2

本研究は,児童・生徒用一般的批判的思考態度(CT-G)と学習場面の批判的思考態度(CT-S,各10項目)を用いて,認知的熟慮性-衝動性,認知された学習コンピテンス,教育プログラムとの関係を解明した.小学校5,6年生312人,中学1,2,3年生306人に,4ヶ月間隔をおいた2回の調査を実施した.そのうち,中学1年生125人に対しては,28ヶ月後の3回目調査を実施した.1回目調査において一般的および学習場面の批判的思考態度の2尺度の信頼性を内的整合性によって確認した.さらに,構成概念妥当性を確認的因子分析,基準関連妥当性を関連尺度との相関に基づいて確認した.パス解析の結果,3回の調査いずれにおいても,(i) 熟慮性は,一般的批判的思考態度に影響を及ぼし,(ii) 一般的批判的思考態度は学習場面の批判的思考態度に影響を及ぼした.そして,(iii) 学習場面の批判的思考態度は学習コンピテンスに影響を及ぼした.最後に,教育プログラムの影響について考察した.