著者
向井 誠時 早野 順一郎
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.217-224, 1996-05-31 (Released:2010-09-09)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

心拍変動解析の標準化のための基礎データとして, 心拍変動解析時の種々の要因が解析結果に与える影響を調べ, 次のことを明らかにした. (1) 不整脈処理時に行うデータ欠損部の補間処理はLF成分振幅の過大評価と, HF成分振幅成分の過少評価の原因となる. (2) 自己回帰スペクトル分析の次数を変化させたところ, LF成分, HF成分の振幅はともに16次以上で一定となる. (3) 呼吸周波数の減少は心拍数の変化を伴わずにHF成分の振幅を増加させることから, HF成分振幅は心臓迷走神経活動レベルとは独立に呼吸周波数の影響を受ける. (3) 心拍数が変化する時, R-R間隔による心拍変動の増減と瞬時心拍数による心拍変動の増減と一致しないことがある. (5) complex demodulation法は心臓自律神経活動の経時的変化の分析に適する.
著者
塩津 裕康
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.344-350, 2019-06-15

要旨:本報告の目的は,限られた介入頻度でも,Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(以下,CO-OP)を用いた介入の有用性を示すことである.方法は,2事例の事例報告で,介入はそれぞれ2回(約1ヵ月に1回)であり,その前後を比較した.結果は,CO-OPを用いることで,粗大運動および微細運動スキルどちらの課題でも,スキルを獲得することができた.さらに,最小限の介入頻度で,スキルの獲得およびスキルの般化,転移を導く可能性が示唆された.結論として,CO-OPの適応児の選定に検討の必要性はあるが,認知戦略を発見および使用できる子どもに対しては,有効である可能性が示された.
著者
赤堀 雅幸
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:24240508)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.307-333, 1994-03-30 (Released:2018-03-27)

エジプトの西部砂漠地中海沿岸に居住するベドウィンは,祖先との関係が現在生きている人々の関係に反映され,それを整序すると見なす。父と子の間にたどられるアスル(起源)という概念に結集する祖先との関係性は,これまではしばしば「部族」組織と関連づけてとらえられてきた。しかしながら,父系出自集団への帰属は,祖先と自己を結び付ける仕方の一つにすぎず,ベドウィンたちがアスルを社会関係に繁栄する多様な方法の一部としてある。本稿はそうしたアスルの表現の形式を四つに分け,個人の名前への埋め込みと系図化,介在する祖先の網羅と特定の祖先の選出という観点から,たがいを対比して紹介する。それらが全体としてベドウィンの社会的な位置の認識にどのように関わっていくかを論じ,最終的にはベドウィンが自分たちを「ベドウィンである」あるいは「アラブである」と見なす認識も,そうした祖先との関連付けの延長上にあることを指摘する。
著者
Taku Suzuki Takuji Iwamoto Noboru Matsumura Masaya Nakamura Morio Matsumoto Kazuki Sato
出版者
The Keio Journal of Medicine
雑誌
The Keio Journal of Medicine (ISSN:00229717)
巻号頁・発行日
pp.2019-0004-OA, (Released:2019-07-06)
参考文献数
20
被引用文献数
7

Percutaneous ultrasonic tendon needling has been used to treat persistent lateral epicondylitis, and its efficacy has been demonstrated. However, whether ultrasonography is necessary remains unclear. The purpose of this retrospective study was to evaluate the efficacy of percutaneous tendon needling without ultrasonography for lateral epicondylitis. A total of 36 patients who underwent tendon needling without ultrasonography for lateral epicondylitis were retrospectively included in the study. The tendinotic lesion was needled by fenestration approximately 20–30 times without sonographic assistance. The Visual Analogue Scale (VAS) pain score, the grip strength, and success rates were assessed at baseline and at 1, 3, 6, and 12 months after treatment. The Nirschl tennis elbow score was evaluated at baseline and at 6 and 12 months after the needling procedure. The mean VAS pain score and grip strength at 3, 6, and 12 months significantly improved compared to the baseline values. At 6 and 12 months, the success rates had significantly increased compared to the rates at 1 month. The mean Nirschl scores at 6 and 12 months were significantly better than the baseline value. No severe complications were observed during the study period. Percutaneous tendon needling without ultrasonography is a simple and safe technique. The procedure is effective for lateral epicondylitis that is unresponsive to conventional conservative treatments.
著者
ミルトス編集部編
出版者
ミルトス
巻号頁・発行日
1998
著者
中田 光 大沢 和樹 横田 理央
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.461-462, 2019-02-28

深層学習は与えられた膨大なデータに対し柔軟な学習を可能にする一方、学習を汎化させ未知のデータに対しても精度を保つことが一つの大きな課題となる。近年では、ベイズ推定を深層学習に適用し、学習によって得られたニューラルネットワークの重みの不確かさを推定することにより学習を汎化させる試みが注目されつつある。Zhangらによって提案されたNoisy K-FACは、自然勾配法に基づく一種の変分推論を行うことによりベイズ推定を行う手法であり、学習が汎化することが示されている。本研究ではNoisy K-FACに着目し、重みの更新時に複数のサンプルを用いた場合の学習の変化ついて比較検証を行った。
著者
本田 和也 橘 伸也 飯塚 敦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.31-39, 2019

<p> 災害時の初期対応において,意思決定者は一刻も早く災害対応の決断を行う必要がある.この初期対応の迅速性を高める手段として,逐次得られる災害情報から被災者数を予測することで意思決定に利用するという考え方がある.</p><p> 本研究では死亡者数の経時変化を表す関数について検討を行い,発災後初期に被災規模を予測できる被害予測モデルの精度向上を考える.発災後初期の情報更新が多い事例については,死亡者数再現関数として双曲線関数を採用することで,ワイブル分布の場合よりも早い時点で信頼できる被害予測を行うことができることがわかった.また,出来るだけ初期にその災害の被災規模を予測できる被害予測モデルの運用方法を検討した.情報更新速度を向上させることで,本モデルを用いて災害初期段階で被害予測を行うことができると考える.</p>
著者
小杉 考司
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
no.9, pp.1-7, 2019-03

本研究では大学教育における学習管理システムから収集された,学生の授業資料へのアクセス記録から,学習成績に及ぼす影響を検討した。授業履修者77名の14回の投影資料の閲覧日時,閲覧回数と,第15回に行われた授業内試験による学生の成績を用いて,アクセス変数について指数分布に基づくモデルを,またそのモデルで推定された平均アクセス日数による成績への回帰モデルをベイズ推定した。分析の結果,アクセスしようとするかどうかという意思決定にかかわる態度が,成績に対して最も強く影響しており,最終的な評定値について最大10点程度の違いを産むことが明らかになった。最後に,モデリングによって柔軟な表現が可能になってはいるが,妥当な変数を選出し,意義のある予測モデルにすることの重要性について言及した。
著者
山田 章吾
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.18, no.12, pp.12_77-12_79, 2013-12-01 (Released:2014-04-04)
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
酒井 麻衣
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

伊豆諸島御蔵島のミナミハンドウイルカは、胸ビレで相手をこする社会行動(ラビング)を、左ヒレで行う傾向がある。この現象が、イルカに共通して現れる行動形式なのか、後天的に獲得された行動が伝播した個体群特有の行動形式(文化)であるのかを明らかにする。そのために、ラビングの左右性の発達・個体群間比較・種間比較を行う。本年度は、御蔵島に約40日間滞在しミナミハンドウイルカの水中行動のビデオデータを収集した。また、能登島に定住する本種8個体に対し予備調査を行い、水中観察可能であることを確認した。篠原正典氏より本種の小笠原個体群の水中ビデオデータを借用し、ラビングの左右性を解析中である。鳥羽水族館のイロワケイルカ4個体(オトナオス1、ワカオス1、オトナメス2)を対象に、ラビングのビデオ撮影及び目視観察を行った。その結果、オトナオスは154例のうち97%、ワカオスは74例中81%で左ヒレを使用することがわかった。オトナメスは12例中42%、11例中82%で左ヒレを使用した。今後、メスのデータを増やす予定である。Kathleen Dudzinski氏より、野外の生簀に蓄養されているハンドウイルカ27個体の水中ビデオデータを借用し、ラビングの左右性を分析した。その結果、左ヒレを使用した例は735例中54%で大きな偏りはなかった。23個体の使用ヒレの偏りを検定したところ、1個体のみ有意に左ヒレを多く使用していたが、有意に右ヒレを多く使用する個体はいなかった。Kathleen Dudzinski氏より、バハマの野生マダライルカの水中ビデオデータを借用し、ラビングの左右性を分析した。その結果、左ヒレを使用した例は499例中53%で大きな偏りはなかった。18個体において使用ヒレの偏りを検定したところ、2個体のみ有意に左ヒレを多く使用していたが、有意に右ヒレを多く使用する個体はいなかった。今年度の解析で、使用ヒレの左右性は、種によって違いがあることが示唆された。
著者
鈴木 宏典 藤原 雅也 三澤 亮介
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.358-360, 2010-05-01 (Released:2011-09-01)

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校で行なわれた本研究は,平成21(2009)年度日本農芸化学会大会(開催地 福岡)での「ジュニア農芸化学会」において“優秀賞”に選ばれた.配糖体色素であるアントシアニンの消長に焦点を当て,紅葉のプロセスをエネルギー(糖),光(可視光・紫外光),光合成能の観点から説明しようとする意欲的な内容の研究である.
著者
寺沢 拓敬
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.5-27, 2012

本研究の目的は,新制中学校英語科の「事実上の必修化」がいつ,どのように成立したかを検討し,その上で,必修化を促した要因を明らかにすることである。この分析を通して,ある教育内容が「すべての者が学ぶことが自明視される」という意味での《国民教育》の構成要素に,いかに成長していったか検討する。<BR> 新制中学発足当初こそ,選択科目であることが当然視されていた英語科だが,既に1950年代には中1の履修率がほぼ100%に近づき,「全員が一度は学ぶ」という意味での事実上の必修化が現出した。60年代になると中3の履修率も上昇し,「全員が3年間学ぶ」という今日的な意味での事実上の必修化が進行した。<BR> 同時期に「3年間必修化」を促した主たる要因は,教育内容そのものに関わる内在的な要因よりも,外在的な制度的・構造的要因であった。すなわち,英語の必要性の増大や英語教員の必修化推進運動ではなく,高校入試への英語試験導入,高校進学率の上昇,ベビーブーマー卒業後に生じた人的リソースの余裕など,構造的・制度的な変化の影響のほうが大きかった。なお,当時,自覚的な「運動」こそなかったが,関係者によって「英語の必要性」論への対抗言説が編まれており,これにより英語の《国民教育》としての正当性が高められ,その後の事実上の必修化を条件付けた面もある。以上のように,英語科の《国民教育》化は,種々の要因の複合的な結果として生じたと言える。
著者
阿部 彩 上枝 朱美
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.67-82, 2014-09-10 (Released:2018-02-01)
被引用文献数
1

本稿は,「最低限必要な住まい」の広さや設備といった具体的な「質」について,三つの調査((1)「2011年社会的必需品調査」,(2)ミニマム・インカム・スタンダード法(MIS法)による最低生活費の推計.(3)「最低限必要な住まいに関する調査」)により明らかにしようとしたものである。三つに共通するのは,どれも,一般市民に許容範囲の「最低限の住まい」とはどのような広さや間取りであり,どのような設備が備わっているべきか,また,家賃は収入のどれくらいの割合に収まるべきかという質問を投げかけ,社会規範としての最低生活の住まいの姿を明らかにしようとした点である。これを国土交通省による最低居住基準と比較することにより,求められる住まいの具体像に接近することが可能となった。
著者
猪熊 範子
出版者
早稲田大学国文学会
雑誌
国文学研究 (ISSN:03898636)
巻号頁・発行日
vol.117, pp.35-45, 1995-10-15