著者
今枝 奈保美 後藤 千穂 加藤 利枝子 服部 奈美 山本 和恵 小田 敦子 田中 秀吉 藤原 奈佳子 徳留 裕子 徳留 信寛
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.229-240, 2011 (Released:2011-10-25)
参考文献数
41
被引用文献数
1 1

【目的】地域在住高齢者のビタミン摂取量分布を観察し,摂取量評価や栄養計画がまだ十分に実践されていないビタミン群(α-カロテン,β-カロテン,β-カロテン当量,クリプトキサンチン(以下Cry),葉酸,V.B6,V.B12,V.E,パントテン酸)と,従来から評価されてきたビタミン4種(V.A, V.B1, V.B2, V.C)との相関を観察し,栄養計画の効率化を検討する。【方法】健康な地域在住高齢者242人を対象に,隔日4日間の食事を調査し,ビタミン摂取量の分布,分布を正規化する変換係数,個人内分散と個人間分散の分散比を観察した。ビタミン間の関連はデータを正規化後,エネルギーを調整した偏相関係数で評価した。【結果】不足者割合が高かったのは,V.A, V.B1, V.B2, V.B6, V.Cであった。個人内/個人間の分散比はV.D,V.B12 で男女とも高値,V.K,葉酸,V.C,は男性で低値,V.B2 は男女とも低値であった。次にV.B2 の摂取量はV.B6,葉酸,パントテン酸の摂取量と相関が高く,V.CはV.K,V.B6,葉酸との相関が高かった。V.AとCryの相関は低かった。【結語】偏相関係数の観察から,4種のビタミンを増やすよう食事計画すると,β-カロテン,レチノール,V.K, V.B6,葉酸,パントテン酸の摂取増加が期待できるが,Cry, V.D, ナイアシン,V.B12 に関しては独立した食事計画が必要であることが示唆された。
著者
佐藤 翔輔 今村 文彦
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.383-396, 2019 (Released:2019-05-20)
参考文献数
11

本稿では,2018年西日本豪雨災害を対象に,発災当時に発信されていた「# 救助」ツイートに対する内容分析を,先行研究として実施した2017年7月九州北部豪雨の事例と比較しながら行った。その結果はつぎのようにまとめられる。1)「#救助」ツイートで,場所や人数等の具体的な状況を記述している「救助要請」のニーズを発信していたツイートは,分析対象の2,171件のうち,16.5 %とごくわずかであり,「救助要請」を実際に求めているツイートが埋没し,ハッシュタグ「#救助」による検索か゛困難て゛あった状況か゛定量的に確認された。2)「#救助」は付与されているものの,「救助要請」て゛はない, 「#救助」の存在や注意点を紹介するニュース記事とそのリンクや,一般ユーザーからの善意の投稿は依然として多く存在していた。「#救助」ツイート のうち,真に「救助要請」を行っていた発信の比率は,西日本豪雨災害では九州北部豪雨災害に比べて倍程度となり,やや検索・抽出しやすい状況になったものの,被災地外の不急の発信は依然として多いことが明らかになった。
著者
渡辺 晋
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.506-512, 1989-05-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
11

Many studies have been performed on cases with chronic Ménière's disease who have had recurrent previous attacks. The purpose of the present study was to investigate the vestibular and cochlear manifestations of incipient Ménière's disease. None of the patients in this study had had a single attack until the current hospitalization, thereafter, they had recurring episodes of vertigo and hearing loss. The following results were obtained: 1. Meniere's disease is most often seen in the fifth decade of life. However, in my investigation, 91% of the 34 cases occurred before 48 years of age, and the most incidental age at onset was at 35 years of age. 2. At onset and at the second attack, a marked fluctuation in the lower frequencies was noted when compared with the third attack. 3. The vertigo score was 3.1 at the second attack, 2.4 at the third attack, and 2.2 at the fourth attack. The interval between the third and fourth attack was longer than the previous attack intervals.
著者
宝満 聡
出版者
The Japanese Society of Printing Science and Technology
雑誌
日本印刷学会誌 (ISSN:09143319)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.88-92, 2003-04-30 (Released:2010-09-27)
参考文献数
5

Printing ink is a kind of printing materials, that is used for making image to substrate, and has to keep printability for each, mimeograph, off set, gravure, flexo, and such-like. In addition, special ink has functions that stimulate five senses of people. So it is called “Functional ink” or “Added-values ink”. It is a good device with high functions, so it will give you a big help. However, it depends on the plan to use it whether you succeed or not. I show it as follows.
著者
山岡 誠一 蜂須賀 弘久 桝岡 義明
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.203-212,4, 1967-03-25 (Released:2016-12-31)

As compared with the physical fitness between children and adults from point of view of energy metabolism, the results are as follows. In the case of sprint, oxygen requirement of adults is more than that of children because adults are faster in speed than children. But in the case of giving the same load to children and adults at bicycle work, there is no difference in oxygen requirement between them. Moreover, in the exercise in proportion to each physique (body weight), oxygen requirement of children is less than that of adults, and comparing oxygen requirement per body weight, we don't see the difference.
著者
佐村 俊和 林 初男 酒井 裕 相原 威
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.50-56, 2014-06-05 (Released:2014-07-31)
参考文献数
24

記憶に関与する脳の海馬にはCA3と呼ばれるリカレントネットワーク構造の領域が存在する.我々はCA3領域における指向性を持つ神経活動伝播が,海馬の時系列記憶形成機構の解明の鍵になると考えている.リカレントネットワークを用いた神経活動伝播に関する計算機シミュレーション結果より,抑制性結合の回路構造から推測される抑制(静的抑制構造)と活動中のネットワークに生じる抑制性結合の回路構造から推測されない抑制(動的抑制構造)の2つによって神経活動の伝播方向が制御されることを紹介する.また,これらの神経活動の伝播方向の制御機構とCA3領域との解剖学的な対応から,静的抑制構造と動的抑制構造によってCA3領域の神経活動伝播が制御されていることが示唆される.最後に,静的および動的抑制構造を生み出す抑制性介在細胞の軸索投射の異方性と偏りへの着目や,神経活動伝播に基づく海馬の時系列記憶形成機構の解明を目指す研究の必要性に関して議論する.
著者
本郷 峻
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第27回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.6, 2011 (Released:2011-10-08)

アフリカ大陸中部の熱帯雨林林床に生息するマンドリルMandrillus sphinxは、最大800個体を超える群れが報告され、100 km2以上に及ぶ広大な遊動域を持つことで知られる。系統的には、one-male unitを単位とする重層社会を持つマントヒヒやゲラダヒヒを含む、ヒヒ亜族(Papionina)に分類される。これまでいくつかの野生群を対象とする報告がなされているものの、観察の困難さ・広い遊動域などの理由により研究は極めて遅れており、社会構造に関する統一された見解は得られていない。本発表では、野生マンドリルの集団個体数の変化や群れの社会構造に関する予備的な結果を報告し、彼らの食性の季節的変化との関連から考察する。 調査はガボン共和国・ムカラバ‐ドゥドゥ国立公園において、2009年8-11月と2010年1-6月の間、合計約7ヶ月間にわたり実施された。約30 km2の調査域において発見されたマンドリル集団の個体数を目視によりカウントするとともに、集団が調査路や川など開けたところを横切る際にビデオカメラで撮影し、群れの性・年齢構成と移動時の個体順序を分析した。また、通跡上の糞を採集して分析し、果実・葉・葉以外の繊維質・アリなど節足動物などの食物カテゴリー体積比から食性を推定した。 調査の結果、集中分布する果実を多く食べる時期の方が、繊維質や地表のアリ類といった高密度一様分布する食物を多く食べる時期に比べて、集団内でカウントされた個体数が有意に少ないことがわかった。また、しばしば集団が複数の小集団へ分派し、再び合流することも観察された。これらの結果は、マンドリルが各時期の主要食物の分布様式に対応して、分派と合流によって群れのまとまりの程度を変化させている可能性があることを示す。 さらに、集団に占めるオトナオス・ワカモノオス(推定6歳以上)の割合は、最大でも7.2%にしか及ばず、移動時の個体順序もone-male unitとして想定されるものとは異なり、オトナオス・ワカモノオスは集団内に均等に配置されていなかった。この結果は、マンドリルが極端に社会性比に偏りのある群れ構成を示し、マントヒヒやゲラダヒヒで見られるような重層社会とは異なる社会構造を持つことを示唆する。
著者
八島 不二彦 今井 優子 斎藤 清二 宮脇 利男 西川 友之 立浪 勝 松井 祥子 瀬尾 友徳 竹澤 みどり 酒井 渉 彦坂 伸一 野原 美幸 二上 千恵子 原澤 さゆみ
出版者
富山大学保健管理センター
雑誌
学園の臨床研究 (ISSN:13464213)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.13-18, 2013-03

富山大学では平成20年度に4人,平成21年度に3人の自殺が発生し,その対策として平成21年12月に富山大学自殺防止対策室が設置された。\富山大学自殺防止対策室は自殺者ゼロを目標に掲げ,約3年間さまざまな活動を行って来た。その結果,自殺防止対策室が本格的に活動を始めた平成22年度から平成24年12月現在までの自殺者は2人に止まっている。自殺者の減少という結果は出ているが,富山大学の自殺防止対策システムは本当に機能しているのか疑問が残る。\そこで本研究ではこれまでの富山大学自殺防止対策室の活動実績を分析し富山大学における自殺防止対策システムが有効に機能しているかについて検討する。
著者
Yun-Ru CHEN David TSENG Chieh TING Pei-Shou HSU Tsu-Hsien WU Siling ZHONG En-Cheng YANG
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.46, pp.S7-1, 2019

<p>Multiple factors have been associated with the honey bee colony losses in the past 25 years. Accumulating evidence indicates that at sublethal doses, neonicotinoids cause honey bee brain dysfunction and reduce immunocompetence, leading to impaired navigation and olfactory learning and memory, and susceptibility to pathogens. Moreover, such pesticides disturb the reproductive system of queen bees, i.e., the number of eggs and viability of sperm stored in the spermatheca of queen bees, thereby reducing the numbers of adult bees and broods. Pesticide exposure during the larval development stages prolongs larval development and shortens adult longevity. In addition, the density of synaptic units in the calyces of mushroom bodies in the heads decreases; this effect has been further associated with the abnormal olfactory learning ability of adult honey bees exposed to sublethal doses of imidacloprid during the larval stage. Therefore, numerous physiological aspects of honey bees might be altered after exposure to pesticides at sublethal doses, regardless of the developmental stage. We evaluated the impact of the most widely used neonicotinoids—imidacloprid—on different developmental stages of honey bees by profiling the transcriptomes of worker bees with imidacloprid during only the larval stage. Our results confirm that even intaking 1 ppb imidacloprid during only the larval stage would be enough to severely impact a bee's gene expression. The existence of many differentially expressed genes may reflect or result in honey bee disorder.</p>
著者
平山 るみ 田中 優子 河崎 美保 楠見 孝
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.441-448, 2010-02-20 (Released:2016-08-06)
参考文献数
27
被引用文献数
7

本研究では,批判的思考を支える能力を測定するための尺度としてコーネル批判的思考テスト・レベルZ(ENNIS et al.1985)を用いて,日本語版批判的思考能力尺度を構成した.まず,コーネル批判的思考テスト(ENNIS et al.1985)を日本語に翻訳し,その内的整合性および難易度を検討した.さらに,批判的思考態度尺度,および認知能力としての知能を測定する京大SXとの関係性を検討した.大学生43名に対し,批判的思考能力尺度,批判的思考態度尺度,認知能力尺度を実施した.そして,批判的思考能力尺度について検討した結果,尺度の内的整合性が得られ,課題の難易度は適切であることが確認された.また,批判的思考能力尺度得点と言語性の認知能力尺度得点との間には正の相関がみられ,この尺度には言語能力が関わることが示された.そして,批判的思考能力尺度と情意的側面を測定する批判的思考態度尺度とは,関係性がみられず,それぞれ独立した尺度であることが示された.
著者
金澤 優太 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
インタラクション2017論文集
巻号頁・発行日
pp.597-600, 2017-02-23

動画投稿サイトに見られる「弾いてみた」動画を楽器演奏の練習に活用している事例は多い.しかし,ほとんどの動画投稿サイトでは,演奏技術が巧みな卓越した演奏の動画が優先的に表示されるようになっている.お手本動画の技術レベルが,自分のレベルとあまりにかけ離れている場合,練習モチベーションを低下させることが危惧される.そこで本研究では,動画投稿サイトに投稿された「弾いてみた動画」の技術レベルを集合的に順位付けし,各楽器演奏練習者がそれぞれのレベルに応じた動画を探しやすくする手法を提案する.これにより,楽器練習の継続意欲を維持することができるようにすることを目指す.本稿では,提案手法の基本的動作を確かめるために,シミュレーション実験を行った.理想順位との一致率はあまり高くなかったが,ある程度レベルの近いものを塊として提示することができることが示唆された.
著者
小島 紀徳 堀内 都雄
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.43-50, 1997 (Released:2013-02-19)
参考文献数
11

植物プランクトンによる窒素の取り込み速度と施肥された肥料の海洋表層の水平方向の拡散を考慮した海洋表層の拡散モデルを用いて, 施肥により有効に利用される肥料 (窒素) 分を計算し, さらに船舶による窒素, リン肥料の輸送のエネルギー的評価を行い, 散布方法を検討した. その結果, 船舶からの散布された肥料は施肥1日後には表層中を1km以上まで均一に拡散し, その後徐々に植物プラントンに取り込まれることがわかった.半径10km程度の海域に, 大気に残留する二酸化炭素の約1/500を全量吸収することができる量の溶存無機態窒索を均一に散布した場合には, 散布後1年の間に表層中の溶存無機態窒素はほぼ全量が有機物として取り込まれた. 有機物は半径100kmから200kmのオーダーまで拡散した. その間一部は有機物となる前に溶存無機態窒素として深海に移動するが, その量は1/104以下と非常に小さいことがわかった. このことから, 施肥された肥料は表層の水平方向の混合によりすばやく拡散しながら植物プランクトンにより取り込まれるため, 散布された肥料のほぼ全量が大気中の二酸化炭素の海洋への吸収に寄与することがわかった.また船舶運行に必要なエネルギーから放出される二酸化炭素量は散布範囲を広げても, 施肥による大気中二酸化炭素の固定量の約0.23%であり, 肥料製造に必要なエネルギーから放出される二酸化炭素量と比べると1/50以下程度で無視できるほど少ないことがわかった.以上, 本研究では, 光合成速度, 散布法を仮定し, 光合成による二酸化炭素の取り込みの遅れ, あるいは水平方向に広く散布するための船舶運行のためのエネルギーを算出したところ, いずれも無視できるほど小さく, 多少の光合成速度, あるいは散布条件の違いでは, 既報で得た結論には大きな変更をもたらさないことを明らかにした. 本報では表層中の有機物濃度上昇の環境影響についての評価は行ってはいないが, この点についての危惧を考えると, 本報で仮定したよりもさらに広範囲に均一に散布することが望ましいとの結論にいたるものと考えられる.