- 著者
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桐渕 壽子
川嶋 かほる
- 出版者
- The Japan Society of Home Economics
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.10, pp.877-887, 1987-10-20 (Released:2010-03-10)
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
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3
1) 未加熱の調理においては, 一部の食品を除いては, 総アスコルビン酸量はほとんど変化がなかった.アスコルビン酸酸化酵素を有するものはただちにデヒドロアスコルビン酸に酸化されるが, それ以上変化することはなかった.2) 大根と人参の “もみじおろし” の場合も酸化型になってしまうが, 総アスコルビン酸量には変化はなかった.3) 馬鈴薯を加熱調理したさい, 高温急速加熱ではアスコルビン酸はほとんど変化せず残っていた.比較的低温で長時間 (140℃, 60分) かけて焼くと, 約60%は分解された. “ベークドポテト” は総アスコルビン酸は約50%残存し, 大きめの馬鈴薯 (約200g) を1個食べるとアスコルビン酸の1日の所要量をほぼ満たす.4) 馬鈴薯をゆでた場合, 馬鈴薯のほうには約50%残存し, ゆで汁への溶出は約10%で, 他の葉菜類に比べると溶出量は少ない.30~40%は分解されていた.5) キャベツやピーマンをゆでた場合, ゆで汁と合わせると, 総アスコルビン酸量はほとんど変化していなかった.また油いためも同様, 分解はみられなかった.6) 酸化型の生理学的効力もレアスコルビン酸と同等とみなすと, 総じて, 調理による損失はきわめて少ないといえる.