著者
掘野 緑 市川 伸一 奈須 正裕
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.3-7, 1990
被引用文献数
3

自己学習力が強調される今日の教育において, 学習者自身のもつ「学習観」は極めて重要である. 現在の学校教育で形成されがちな学習観として, 失敗は悪いことであり, 正答さえ良ければ良いといった「結果主義」があげられよう. 本研究では, 「失敗に対する柔軟的態度」, 「思考過程の重視」という2つの側面に着目し, 基本的な学習観の尺度を作成した. さらに, 学業成績との関連について検討した結果を報告する.
著者
小林 昭裕
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.425-430, 2016 (Released:2017-03-17)
参考文献数
101
被引用文献数
2

This study examined the processes of contextual affection among stakeholders toward Maruyama Park, which was located beyond the administrative boundaries of the city, using sociocultural perspectives. The proximity of the park to Sapporo Shrine was thought to impart special meaning to the place. The Sapporo Subdivision Congress and city mayor were eager to establish a park in the former forestry experiment station site. The Maruyama Park plan made by Nagaoka to comply with the requirements of the Sapporo Subdivision appeared to have defined the framework for the park of today. The need of the shrine to fulfill upgrading the level of shrine and the deep relationship between the citizens and the shrine had made the beautification of the ground with cherry blossoms, and became Maruyama Park and shrine as a famous place of appreciating cherry blossoms. Several stakeholders of Sapporo civil society have involved for establishing nature conservation and recreational use of the Maruyama Park and around area. This study clarified those values from sociocultural perspective: identity of the place, relationship among stakeholders, momentum of social background, effect of civil activities in environmental conservation and recreational use.
著者
菊池 慶之 手島 健治
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

<b>1</b><b>.はじめに<br></b>オフィスビルの取壊と建替を空間的に扱った研究は非常に少ない.これは,オフィスビルの取壊に関して公表されているデータが非常に少ないことや,オフィスビルの耐用年数は長く,取壊自体が少なかったことに起因するものと考えられる.しかし東京においては,大型オフィスビルの大量供給と企業のオフィススペース再編の動きを背景に,2003年頃から老朽化した狭小なオフィスビルの取壊と建替の動きが顕在化してきた.このようなオフィスビルの取壊と建替は,CBDをより高密で集約された業務地域に再編成する可能性がある.そこで本稿では東京都心3区におけるオフィスビルの取壊と取壊後の建替動向を検討し,オフィスビル建替の空間的特徴を明らかにする. 分析にあたっては,日本不動産研究所が実施している全国オフィスビル調査の詳細資料を用いる.全国オフィスビル調査では,2006年から全国のオフィスビルストックに関するデータを公表し,取壊ビルについても集計結果を公表している.調査対象は建物用途が主に事務所機能のビルであり,東京都心3区においては床面積5,000㎡以上のすべてのオフィスビルについて,毎年12月末時点の状況が分かる.このうち本稿では,オフィスストックの全数を把握できる2004年から2010年にかけての取壊を分析対象とした.<br><b>2</b><b>.オフィスビルの取壊<br></b>東京都心3区においては,2004年~2010年にかけて182棟(257万㎡)の取壊があり,2003年末時点のオフィスビルの11.2%(床面積:8.3%)にあたる.取壊オフィスビルの平均築後年数は38年となっている.区別にみると千代田区55棟(123万㎡),中央区66棟(66万㎡),港区61棟(68万㎡)となる.2003年末時点のオフィス床面積に対する取壊比率を町丁別にみると,JR山手線沿線などの利便性に優れたエリアで高くなる傾向にある.<br><b>3</b><b>.オフィスビルの建替<br></b>取壊後の建替の動向を見ると,取壊182棟のうち167棟は建替が完了しているか計画・建設中で建替後の用途が判明している.建替後の用途はオフィスが138棟(83%)と最も多く,続いて住宅が15棟(9%),商業店舗9棟(5%)の順となる.建替後の用途を区別にみると,千代田区では92%がオフィスであるのに対して,中央区,港区では2割強がオフィス以外に用途転換されている.<br><b>4</b><b>.おわりに<br></b>東日本大震災を受けて,オフィスビルの耐震性が改めて注目されているほか,省エネ性能やエネルギー効率などの環境対応も重視されつつあることから,今後性能の劣る築古ビルの取壊が増えていくことが予想される.一方で,立地に劣るオフィスビルでは取壊後の用途転換が進む傾向にあり,東京都心3区では業務地域の再編成が進行しつつあるものと言えよう.
著者
今井 亮佑 日野 愛郎
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.5-19, 2012

本稿は,日本の参院選の選挙サイクルが総選挙のそれと異なる点に着目し,「二次的選挙」(second-order election)モデルの視点から,参院選における投票行動について検討するものである。欧州の選挙研究は,欧州議会選挙や地方選挙等のいわゆる「二次的選挙」において,その時々の政権の業績が問われ,与党が敗れる傾向があることを示してきた。本稿では,2009年総選挙,2010年参院選前後に行った世論調査(Waseda-CASI & PAPI 2009,Waseda-CASI 2010)をもとに,政権の業績に対する評価が投票行動に及ぼす影響を探った。その結果,業績評価の影響は,「一次的選挙」(総選挙)と「二次的選挙」(参院選)の重要性に関する有権者の主観的評価によって異なることが明らかになった。
著者
舒 梦雨
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

1.はじめに <br>&nbsp; &nbsp; ジャイアントパンダは世界で最も絶滅に瀕している動物で、中国の西南地区に広く分布している。最近の200年以来、気候の変化と人為的な原因でジャイアントパンダの生息地域どんどん破壊されている。ジャイアントパンダの生息地域面積も減少し続いている。この研究は中国四川省の臥龍自然保護区内のジャイアントパンダの生息地の状況を分析します。 &nbsp;<br><br> 2.目的 <br>&nbsp; &nbsp; この研究はパンダ生存に関するいくつの影響因子を選んで、パンダの生息地を評価する。実際の野生パンダの分布に比べて、パンダにとってどんなかん環境はいいのか、パンダ生存にとって有益なのか、その 生息地の状況を簡単的に分析する。その分析の結果に基づいて、生息地に適当な保護手段を探し出す。 &nbsp; <br><br>3.方法 <br>&nbsp; &nbsp; まずはパンダ生存に関する比較的に重要な影響因子を七つ選択します。その七つの因子は竹の種類、水源からの距離、道路からの距離、人間聚落からの距離、標高そして地形の傾斜です。各因子を3つあるいは4つのレベルを分けて、従来の研究結果に基づいて各レベルに値Rを設定する。 Rはパンダ生存の抵抗力、Rの値は大きくなるほどパンダの生存にとって不利になります。 &nbsp; <br><br> 4.結果 <br>&nbsp; &nbsp; 実際のパンダ分布地域の50%はRが2から31の範囲内にいます。45%のR値が31から53の範囲内にいます。Rが53以上の分布地域は僅か5%。評価の結果と実際のパンダ分布が基本的に一致しています。
著者
竹石 洋介 Yousuke Takeishi 九州情報大学 経営情報学部 経営情報学科
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.75-84, 2012-03

本研究は、日本の「伝統」を教えるための「相撲の教材研究」のひとつの試みである。江戸時代後半から衰退し始め、近代日本においてその存続を危ぶまれた相撲は、「国内に向けたナショナリズム」と「国外に向けての倫理主義」を前面に押し出すことで、近代日本の「国技」として存続し発展してきた。その際、近代相撲にはじめて現れた「天覧試合」「国技館」「品位・礼節」などは、「創られた伝統」として「内に向けたナショナリズム」と「外に向けての倫理主義」を象徴するものだったのである。つまり、相撲における「品位・礼節」は、近代になって発明された「伝統」に過ぎず、それを教える意義は、少なくとも、「伝統」の教育としてではない。では、学校体育で教えるべき相撲の「伝統」とは如何なるものか。「身体」に焦点化しながら考察する。
著者
今泉 文寿 早川 裕弌 經隆 悠 堀田 紀文
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

土石流はその速度,移動距離,破壊力から,甚大な災害を引き起こす土砂移動現象である。土石流の発生・流下特性は土石流の材料となりうる不安定土砂の土石流発生域における貯留状況の影響を受けていると考えられるが,土石流の発生域はアクセスが困難であり,また危険性が伴うことからほとんど明らかになっていない。そこで静岡県北部の大谷崩において,定期的な地上レーザースキャンやUAV撮影,現地観測によって不安定土砂の貯留状況が土石流の発生・流下特性へ及ぼす影響について調べた。その結果,土石流の発生位置は不安定土砂の堆積状況,および支流から土石流渓流への水の供給の影響を受けていることがわかった。土石流発生域においては渓床勾配が急なことから不飽和土石流が重要な流動形態である。さらに堆積土砂量が15,000m3を超えるときには不飽和土石流が,10,000 m3を下回るときには飽和土石流が多く発生した。また,流動形態は流下とともに変化をすることが明らかになった。このように,土石流の発生・流下特性は発生域における不安定土砂の堆積状況の影響を受け,さらに流下・堆積域で観測される土石流と流下形態が異なることがあることが明らかになった。
著者
片岡 みなみ 尾原 祐三 Leona VAVRO Kamil SOUCEK Sang-Ho CHO Sang-Sun JEONG
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.135, no.5, pp.33-41, 2019-05-31 (Released:2019-05-25)
参考文献数
32
被引用文献数
5

岩石のモードI破壊靭性を評価するための試験法がこれまでに数多く提案されてきているが,同じ岩石の破壊靭性を異なった試験法で評価し,得られた結果が比較されることはまれである。このため,破壊靭性に及ぼす試験法の違いが明らかにされているとは言い難い。また,岩石の破壊靭性は試験法の違いだけでなく,用いる供試体寸法によっても影響を受けると考えられる。これらの影響を明らかにするために,様々な破壊靭性試験が行われてきた。しかし,これまでの実験では,同じ岩石で作製された供試体数が十分でなかったり,あるいは供試体寸法の違いの範囲が狭かったために,それらの影響を明らかにするまでに至っていないと考えられる。 本論文では,来待砂岩を供試体として用い,3種類の破壊靭性試験法,すなわち,CB試験,SCB試験およびSNDB試験を実施し,破壊靭性に及ぼす試験法の影響を検討するとともに,半径12.5mm〜150mmの範囲の供試体を用いたSCB試験を実施し,供試体寸法の影響を検討した。この結果,CB試験とSCB試験による破壊靭性はほぼ同等の結果を得ることができたが,SNDB試験の破壊靭性はそれらの値より小さく評価されることを示した。また,供試体寸法が大きくなるとともに破壊靭性も増大することを明らかにした。
著者
杉岡 誠 溝口 勝
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

東京電力福島第一原子力発電所の事故で全村民が避難していた飯舘村では平成2017年3月に一部地域を除き避難指示が解除されたが、生活環境の未整備、環境中の放射能への不安から、実際に飯舘村に定住している人は1割以下である。しかしながら、飯舘村役場は農家の希望に応じた4つの農業プラン(農地を守る農業、生きがい農業、なりわい農業、新たな農業)を提案し、「農」の再生に向けて努力している。本発表では、そうした取組を紹介する。
著者
河村 聡人 早川 尚志 玉澤 晴史 磯部 洋明 柴田 一成
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

太陽は人類が最も研究している恒星ではありますが、その知見は限られた時間スケールでの観測に基づいています。太陽活動の科学的な記録は、黒点に関して約400年、エネルギーの解放を伴う突発的増光現象であるフレアに関して約160年にわたります。一方で、人々は何千年にもわたって太陽活動の痕跡を観察し記録してきました。その現象を今日の我々はオーロラと呼んでいます。我々の研究の第一のゴールは、科学的な黒点観測と歴史資料に残るオーロラの記録とを組み合わせ、過去400年の太陽活動を解明することです。我々が知りたい物理変数はフレアの強度で、現代の太陽観測に基づく統計からその強度を推定する手法を開発しました。この手法の鍵となるのは、フレア時にコロナ質量放出が起こったことを強く示唆する低緯度オーロラの観測です。黒点の大きさの科学的観測と低緯度オーロラ観測の歴史資料から、フレア強度を推定することができるようになりました。当ポスター発表では、歴史資料を用いた太陽物理学の将来性と課題を議論します。当ポスターを科学と歴史学のコラボレーションの成功の一例として提示します。
著者
菊野 雅之
出版者
全国大学国語教育学会
雑誌
国語科教育 (ISSN:02870479)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.82-75, 2009-03-31 (Released:2017-07-10)

Up to now, when using "The death of Atsumori" as teaching material, the following has been overlooked. There was a samurai of the Kumagai house who renounced his position when grieving. On the other hand, another member of the Kumagai house promoted the procedure to recognize the honor of officially identifying a severed head. This appearance should be clarified. Another point is that in the textbook, the ending has been deleted ("even music and the arts can in the end can lead a man to praise the way of Buddha"), which has the potential for study in the original 'The Tale of Heike'. Moreover, the modernistic significance of classical education should consider study conditions that include the clarification of the modernism of the classics. Part of this significance is <otherness> in the classics. Acknowledging classics as a different existence for modern values is considered necessary in teaching material theory.
著者
伊藤 綾香 五十嵐 大貴 吉田 圭佑
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0908, 2017 (Released:2017-04-24)

【目的】Schinzel-Giedion症候群(以下,SGS)は,1978年にShinzelとGiedionが報告した先天性疾患で,顔面中央部低形成,重度精神遅滞,痙攣,心・腎奇形,内反足等の骨格異常を特徴とし,国内外で数十例の報告しかない予後不良な稀少疾患である。2歳前後の死亡例や呼吸不全が死因となるという報告がある。責任遺伝子としてSETBP1の同定等,近年報告は増えているが,リハビリテーションに関する報告はない。今回,SGSに対し,1歳11ヶ月から3歳にかけて訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)介入を行ったため経過を考察し報告する。【方法】対象は,SGSの女児。在胎37週,帝王切開で出生。出生時体重3106g。APS3-7。両側腎盂拡張,脳室拡大,特異顔貌,第5指・第4・5趾重複趾や内反足を認め,遺伝学的検査でSETBP1が同定されSGSと診断。2ヶ月時,全身性強直発作が群発,6ヶ月時にWest症候群と診断,ACTH-Z療法で発作は軽減。副作用として低カリウム血症,高血圧,脳萎縮を認め,低カリウム血症,高血圧は投薬で対応,脳萎縮は改善しなかった。ADLは全介助レベルで表情は乏しい。経鼻栄養だったが,2歳5ヶ月時に胃瘻造設。サービス利用はなく,週1回の訪問リハのみ利用。介入時,心拍数70-160bpm,SpO280-99%と変動あり,夜間酸素投与していた。呼吸数15~16回/分,時折咳嗽,舌根沈下があり,シーソー呼吸様で痰貯留による喘鳴あり。肺炎での入院が1回/1~2ヶ月で,母は夜間不眠があった。発作による四肢のぴくつきや,非対称な反り返りが多い。体幹低緊張で未定頸なため座位保持困難。左背面皮膚短縮,胸郭の非対称性,可動域低下著明で下肢は蛙状肢位。日常姿勢は背臥位又は側臥位のみ。口腔内唾液貯留が多い。易感染性のため外出は病院受診のみであった。医療的ケアは母のみ実施で,外出も制限されていた。【結果】易感染性により呼吸器感染リスクが高く訪問リハ適応となった。肺炎再発防止,母の負担軽減を目標に,上気道通過障害の改善,胸郭呼吸運動の発達促進を目的とした運動療法と腹臥位ポジショニング指導を行い,排痰を促した。呼吸状態が不安定な時は主治医へ報告した。介助座位で喘鳴軽減したため座位保持装置を作製,抗重力姿勢増加により体力向上を図った。日中覚醒時間,夜間睡眠量が増え,2歳5ヶ月頃より入院頻度が1回/3~4ヶ月に軽減した。2歳9ヶ月時に夜間CO2平均50.8mmHgのため,夜間時のみ非侵襲的換気療法を開始した。夜間時SpO2値の変動や痰量は減少し,換気量は0.08L→0.13Lに上昇。移動用バギー貸出で外出頻度が増加した。また,入浴時負担軽減のため,入浴用椅子を作製。しかし,痙攣発作や痰貯留は継続しており,母の不安は残存し夜間不眠が継続している。【結論】呼吸障害に対し呼吸理学療法,ポジショニング指導を実施し,生活の質向上のため補装具作製を行い,生活リズムや外出頻度が変化した。SGSに対し呼吸理学療法は必要であり,補装具利用による日常生活管理の重要性が示唆された。さらにDrへの適宜報告と連携が必要であると考える。
著者
杉山 直子
出版者
アメリカ学会
雑誌
アメリカ研究 (ISSN:03872815)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.30, pp.121-135, 1996-03-25 (Released:2010-11-26)
参考文献数
27