著者
谷本 奈穂
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.418-433, 2005-03-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
31

本稿では複数ある「ものの見方=視覚モード」を整理する.「言葉」をモデルにして対象に潜む意味や物語やイデオロギーなるものを「読解」するというモードや, 「芸術作品」をモデルにして対象と (論理を媒介にしない) 「直接的交流」をするモードが考えられる.しかし現代においては, メディア (広告ポスター, テレビ, マンガ, インターネットの動画) をモデルにした視覚モードもある.本稿ではそのモードを〈イメージ〉の生成と名づけた.このモードは「じっくり鑑賞する」というより「ちらっと・ぼんやり散見する」点, 対象に表層と深層があるとするなら「深層」ではなくて「表層」に焦点を当てる点に特徴がある.また〈イメージ〉の生成の登場は, 人が魅惑に対してむしろ醒めて麻痺したような態度を取るようになったことを意味している.
著者
永吉 希久子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.19-35, 2012
被引用文献数
5

日本の排外意識の研究においては, 外国人住民の規模が排外意識に与える効果が, その国籍によって異なることが指摘されてきた. しかし, なぜそのような差が生じるのかについては, 十分に検証されていない. 本稿は, 外国人住民と日本人の間の労働市場の分断に注目することにより, この国籍による効果の差の説明を試みる.<br>労働市場分断仮説によれば, 外国人住民がホスト社会住民よりも低い賃金の職に集中している場合に, ホスト社会住民の賃金や労働環境の悪化への懸念が生じ, 排外意識が高まると説明される.<br>この仮説のもと, 日本版総合的社会調査の2006年度のデータ (JGSS-2006) を分析したところ, 以下の結果がえられた. 第1に, 労働市場の分断状況と排外意識には関連がみられ, 労働市場の分断状況が顕著であるほど, 排外意識が強くなる傾向があった. 第2に, 労働市場の分断状況をモデルに投入することにより, 国籍別の外国籍割合の効果が有意でなくなることから, 先行研究において指摘されてきた国籍別の外国籍割合の効果が, 労働市場の分断の程度によって説明されることが示された. 本稿の結果からは, 日本人の排外意識を考えるうえで, 個々人としての日本人側の要因だけでなく, 日本の労働市場の構造とそこにおける外国人労働者の位置づけという, マクロな視点をとる必要があることが示唆される.
著者
[川路聖謨] [著]
巻号頁・発行日
vol.[3], 1000
著者
越沢 明
出版者
国際交通安全学会
雑誌
IATSS review = 国際交通安全学会誌 (ISSN:03861104)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.60-69, 1997-09-30
参考文献数
32
被引用文献数
1
著者
長野 隆
出版者
新潮社
雑誌
週刊新潮 (ISSN:04887484)
巻号頁・発行日
vol.39, no.41, 1994-10-27
著者
持永 芳文 浜田 博徳 新井 浩一
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.41-50, 1990-01-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
6
被引用文献数
1

In the single-phase AC railroad electrification, the voltage unbalance of three-phase electric power system has to be reduced. For this purpose, three-phase power is converted to two-phase power by the Scott-connected transformer, and the electric power is received from a powerful or high-tension source.Recently, regenerative braking has come to be applied to electric rolling-stocks, but occasionally the regenerative brake increases the voltage unbalance in the three-phase electric power source with the ordinary two-phase feeding system. So, in some cases unbalance power compensation may be found more profitable than the Scott-connected transformer.This paper describes a theoretical study and results of a test on a mini-model which uses a scalene Scott-connected transformer, switched reactors and capacitors for the purpose of reducing the voltage unbalance in the three-phase electric power source. By this method, main phase (M) and teaser transformer (T) voltages of scalene Scott-connected transformer secondary side are decided by a single load power factor, and the sum of the capacities of the reactors and the capacitors is equal to the apparent power of single-phase load.For example in SCR switched control of the reactors/capacitors which has four steps in power running and two steps in regenerative braking, the voltage unbalance in the three-phase electric power source can be reduced satisfactorily.
著者
阿部 公博 藤田 秀徳 武村 浩志
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.194-199, 2012 (Released:2013-02-01)

熊川橋は,常磐自動車道の延伸工事のうち,福島県双葉郡大熊町に位置する熊川を横過する PC 3 径間連続波形鋼板ウェブ箱桁橋である。本橋梁の品質および耐久性をより向上させるため,設計段階から温度応力解析によるひび割れ対策や FEM 解析による上げ越し計算などの種々の検討を行うとともに,施工においてもひび割れ対策や PC 鋼材の防錆対策など,様々な点に対して配慮した。本稿はこれらの内容に対して報告するものである。
著者
鴨脚 清
出版者
日本大学社会学会
雑誌
社会学論叢 (ISSN:0582933X)
巻号頁・発行日
no.97, pp.p24-39, 1986-12
著者
石原 元
出版者
魚雑
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.241-285, 1987

北西太平洋産ガンギエイ属Rajaの標本を, この海域のほぼすべてのnominal speciesのtype標本と比較した結果, 従来イサゴガンギエイとされていた種は新種<I>R.(Okamejei) boesemani</I>であることが明らかとなった.北西太平洋産オカメエイ亜属<I>R.(Okamejei) </I>の中でこの種は, 尖った吻, 長いprocaudalおよびpost-dorsal length, 広いinterdorsal distance, 体盤上の黒色粒状斑点, 縦扁したscapulocoracoidを持つことなどで, キテンカスベ (新称) <I>R.(O.) hollandi</I> Jordan et Richardsonに極めてよく似ていて, Ui (1929) 以来両種は混同されてきた。しかしイサゴガンギエイはキテンカスベと, ややせまいinterdorsal distance, 黒色粒状斑点が集合したrosette-like patches, 胸びれ腋部の1対の黒色ring, 前側方突起が長く延長するatr 1 clasper cartilage, scapulocoracoidに円形のanterior fenestraを持つことなどで区別される.<BR><I>Raja porosa</I> G&uuml;ther, <I>R. fusca</I> Garman, <I>R. japonica</I> Nystr&ouml;m, <I>R. tobae</I> Tanaka, <I>R. katsukii</I> Tanaka, <I>R. meerdervoortii</I> sensu Jordan and Fowler (1903) はいずれも<I>R.(O.) kenojei</I> M&uuml;er et Henleのjunior synonymであることが判明したので, コモンカスベの学名は<I>R.(O.) kenojei</I>となる。<I>Raja (O.) meerdervoortii</I> Bleekerはvalidな種で, メダマカスベ<I>R. macrophtholma</I> Ishiyamaのsenior synonymであることが明らかと。なったガンギエイ<I>Raja kenojei</I> sensu Okada et al.(1935) は<I>R.(Dipturus) kwang</I>-tungensis Zhuのjunior synonymと判明した。以上のことからIshiyama (1967) が記載したテングエイ亜属<I>R.(Dipturus) </I>4, オカメエイ亜属<I>R.(Okamejei) </I> 7, 計11種の内5種は学名が変更される.本論文の1新種を加えて北西太平洋には, テングエイ亜属5, オカメエイ亜属6, 計11種のガンギエイ属魚類が分布することになった.この11種に北東太平洋産テングエイ亜属の2種, <I>R.(D.) binoculata</I> Girardと<I>R.(D.) rhina</I> Jordan et Gilbertを加えた13種の検索表を作成した.
著者
松原 康介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.691-696, 2011-10-25
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

番匠谷堯二の時代以来、シリアの首都ダマスカスでは日本の国際協力が継続されてきた。現在の最新のプロジェクトであるダマスカス首都圏都市計画・管理能力向上プロジェクトでは、都市保全が主題の一つとされ、カスル・ル=ハッジャージュ通りの歴史的ファサードの改善に焦点が当てられている。本稿は、ファサードの現地調査を実施して、歴史的正統性とイスラームに根差した空間構成に基づく、原状復旧型ファサード改善のあり方を考察する。土地利用計画図およびファサード立面図の分析に基づき、この地区は住宅地であり伝統的なまちづくりの材料がまだ生きていることがわかった。結論として、派手な観光開発ではなく、穏健な改善方針がこの静かな地区のために提案された。

1 0 0 0 OA 乾也粉本

巻号頁・発行日
vol.[10], 1800
著者
大倉 典子 荒巻 孝輔 中村 康明 中山 記男
出版者
日本感性工学会
雑誌
感性工学研究論文集 (ISSN:13461958)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.51-58, 2004
被引用文献数
4 2

This paper focuses attention on the concepts used in the developments of various therapeutic robots. Websites related to these concepts were statistically analyzed from the standpoint of Kansei Engineering. Results of this analysis highlighted important keywords employed in relevant Websites that indicate the concepts of the developments. Another analysis using dual scaling also revealed the position of each therapeutic robot. This study also clarified transitions of the weights of the employed keywords and the robot's positions. This new knowledge will contribute to suggesting trends in the therapeutic robots of the next generation.
著者
池上 俊也
出版者
日経BP社
雑誌
日経systems (ISSN:18811620)
巻号頁・発行日
no.228, pp.62-67, 2012-04

「とにかく慎重に選ぶことを考えた」―。就職・転職・進学情報の提供などを手掛けるマイナビの薄井照丈氏(システム統括本部 業務システム統括部 部長)は、昨年末に導入したBI(Business Intelligence)ソフトの選定作業をこう振り返る。候補となるBIソフトの種類は多く、どれを選べばよいか分からない。製品選定に失敗すれば、導入後の効果にも影響が出る。
著者
高松 敦子
出版者
早稲田大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

運動性シアノバクテリア細胞は集団化することで、円盤形の回転型運動や彗星型運動など様々なマクロ構造をとる。H23年度は、標準環境下において、束状、円盤状、彗星状のそれぞれの集団形態の運動解析を行った。その結果、コロニー形態に係わらずバクテリア密度が高いほど運動生が優れていることを見いだした。そこで、H24年度はコロニー形態毎の運動速度の解析と、バクテリアが分泌する粘液を想定した理論モデルの構築に取り組んだ。並進運動を行うコロニー重心の運動速度は、一本鎖、束状、彗星状の順に大きいことが分かった。また、同じコロニー形態でもコロニーサイズ(設置面積)にわずかに依存して速度が大きくなる傾向が見られた。さらにコロニー速度は培地表面にバクテリア自身が分泌した粘液の有無に大きく左右されることがわかった。以上のことを纏めると、バクテリアが集合することで粘液分泌総量が増加し、それが培地から受ける抗力を低減するものと思われる。これを基に、彗星状の積層コロニーについて、底面細胞のみが駆動力を生成し、側面および底面細胞が全面、底面の水(または培地)からの抗力を受け、その他の細胞は粘液を分泌するという運動モデルを構築した。その結果、上述に見られたコロニー毎の運動特性の定性的な性質を説明することができた。しかしながら、バクテリアが自発的に集合し、それによって多様な運動が生成するメカニズムは解明されていない。鍵となる粘液の定量化、1本鎖同士の相互作用の定量的観察を通して、より現実的な数理モデル構築を行うことが今後の課題である。
著者
野口 喜三雄
出版者
日本化學雜誌
雑誌
日本化學會誌 (ISSN:03694208)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.7-17, 1939

(1) 淺間火山附近諸種湧水,井戸水,河水等33種のラドン含有量を測定したるに河水は此測定法の精度に於ては零であつた.湧水,井戸水等に於ては測定値の最大は小瀬温泉1.25マツヘ,最小は片山要藏氏井戸水,つるや旅館井戸水等の0.05マツヘである.著者は之等33種の測定結果よりラドン分布を圖示し,且ラドン含有量と水温, <i>p</i>H,溶在瓦斯量・重水濃度,蒸發殘滓, Fe, Ca, Cl, SiO<sub>3</sub>等との間の關係の有無を檢討し,其結果よリラドンの根源に就て論述した.<br>(2) 著者は地獄谷噴氣孔溜水及び地獄谷湧水に就て稍長期のラドン含量連續測定を行つた結果,地獄谷噴氣孔溜水に就てはラドン含有量は淺間火山の活動の旺盛である時は著しく増減する.ラドン含有量と水温との間には統計的に觀察する時は一つの曲線關係が成立し,水温が低下するほどラドン含有量は増加する傾向を示した.又ラドン含有量と湧水量との間には統計的に觀察する時は直線關係がほぼ成立し,湧水量増加するほどラドン含有量増大する傾向を示した.尚測定値の最大は0.31マツへ,最小は0.07マツへである.次に地獄谷湧水に就てはラドン含有量と淺間火山の活動との間には關係なく,又ラドン含有量と水温,湧水量等との間にも關係は見出せない.此湧水のラドン測定値の最大は0.23マツへ,最小は0.05マツへである.<br>(3) 菱野鑛泉(花崗宇三郎),地獄谷蛇堀川源水,蛇堀川端湧出水(橋の測I)等に就ては其ラドン含有量を昭和11年及び昭和12年の二囘測定したが大なる變化を示さない.
著者
山口 敬太 西野 康弘
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.128-139, 2014-04-25 (Released:2014-04-25)
参考文献数
72
被引用文献数
1

本研究は、神戸市における河川沿緑地形成の起源を探るため、阪神大水害(1938)の復興計画の策定過程と、水害復興時の公園緑地構想の内容、構想主体としての古宇田の計画理念と、その戦災復興への影響について明らかにした。水害復興時に古宇田實(建築家、神戸高等工業学校校長)によって示された市内の複数の河川沿いに幅100mの「遊歩園」を設ける構想は、水害復興では予算獲得の困難のため実現しなかったが、戦災復興において原口忠次郎のもと採用されるに至り、神戸市独自の復興基本計画要綱ならびに緑地設定計画要綱に位置づけられ、神戸市長施行の土地区画整理事業により実現した。本論ではこの経緯の詳細を明らかにした。また、古宇田による本構想は、関東大震災からの都市の防災・防空に基づく理念と、留学時にみた欧州の都市美への憧憬を動機とする都市の美観・緑化という理念の双方に基づいていたことを示した。