著者
中嶋 徳正 大塚 信吾
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.J207-J213, 2017 (Released:2017-07-25)
参考文献数
14

AMラジオ放送用レクテナに搭載するアンテナコイルの動作原理は大学初年次程度の知識で理解できるが,動作特性の詳細については著者の知る限り報告されていない.本論文では受信時のアンテナコイルの等価回路を仮定し,開放電圧とインピーダンスの周波数特性を述べる.そして開放電圧が最大,アンテナコイルが自己共振状態ならびにインピーダンスが最大,となる三つの周波数をそれぞれ導出する.これらに基づいて,特定のAMラジオ放送の周波数において開放電圧が最大となるアンテナコイルの設計法を提案する.インピーダンス測定により等価回路の妥当性ならびに自己共振とインピーダンスの最大を明示する.さらに,エナジー・ハーべスティング実験を通じて提案の設計法の有効性を検証する.
著者
金子 順一 堀尾 健一郎
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.831-832, 2009

本研究は工作機械の旋回軸加速度を陽に設定可能な知的工具姿勢計画法の実現を目的とする。本報では、M-Map上の各点における工具加工面間の相対姿勢の分布を可視化し、この情報をもとにM-Mapの透明度を設定してCAVE内部の視線透過に反映させる新しい旋回軸指令値候補の計画法について述べる。提案手法により良好な面性状をもたらす相対姿勢の維持と、干渉回避および旋回軸の急激な動作の回避が共に実現可能となった。
著者
及川 秋夫
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.1278-1280, 1992-08-05 (Released:2009-10-08)
参考文献数
2
著者
シマモンティ シルヴィ 小木曽 綾
出版者
日本比較法研究所 ; [1951]-
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.75-81,83-113, 2013

フランスでは, 2011年8月10日法律(以下法という)により,参審制の拡大と,重罪判決への理由付記の義務づけが定められた。法は重罪院での参審員数を減じ,裁判1件当たりの参審員の人数を減らすことで制度拡大に必要となる参審員を増やそうとしているが,その結果,従来は,参審員の数が職業裁判官を上回っていなければ有罪評決ができなかったものが,職業裁判官と参審員同数でよいこととなった。これが市民の刑事裁判参加という理念と一致するかは疑問である。法は軽罪に参審員関与の範囲を拡大し,その権限は一部の成人軽罪の事実認定と量刑,それに少年事件のそれに及ぶ。軽罪参審員制度は,成人の裁判については, 2014年1月までの試行(2012年1月からToulouseおよびDijon,2013年から他の10の控訴院管轄区内)を経て2014年から施行されることとされているが,少年裁判についてはすでに2012年1月から施行されている。軽罪裁判所は, 3人の職業裁判官と2人の参審員で構成され,その裁判に対する上訴審も同様に構成される。対象事件は,個人法益に対する罪のうち5年以上の収監刑が法定されているもの(重過失致死,傷害,性犯罪,薬物所持・譲渡等),強盗, 5年以上の収監刑が科される個人の身体に危険を及ぼす放火等による器物損壊であって,財産犯は対象とされておらず,社会ないしは有権者の関心が高いものに限定されている。重罪院では,参審員は事実認定と刑の量定のみに関与するのに対して,軽罪参審員は刑の執行にも関与する。2004年以来フランスには刑の執行裁判所があり,仮釈放の決定等の判断を担っているが,軽罪参審員はここにも参加する。これは,受刑者の釈放時期という社会の関心の高い事項に市民を参加させようとの立法趣旨によるものである。また,従来,少年裁判所の陪席裁判官は,法務大臣が少年問題に造詣のある30歳以上の民間人の中から4年任期で任命することとされてきたが, 2012年1月から,二つの少年軽罪裁判所が創設された。一つは,罪を犯す時16歳以上18歳以下の,3年以上の収監刑が科される罪で起訴された累犯少年を扱う職業裁判官のみで構成される裁判所である。この裁判所では,少年係裁判官が裁判長を務め,保護処分のほか刑罰を言い渡すことができる。いま一つは,成人の軽罪裁判所と同様の構成(ただし裁判長は少年係裁判官)と事物管轄をもつ少年軽罪裁判所である。 軽罪参審員制度には,当初3,270万ユーロ,次いで毎年840万ユーロが必要とされており,国家の財政状況に照らして決して軽微な支出とはいえないことから,現在の2裁判所での試行が10裁判所に拡大されるか,さらには全国施行に至るかは予断を許さないところである。 証拠の証明力の判断については,自由心証主義が採用されており.証明程度は事実認定者が「内心で確信する」程度とされている。無論,裁判官の心証は法廷に提出された証拠によらなければならないが,軽罪に関しては裁判に理由を付すことが求められてきたものの,伝統的に重罪院の裁判には理由が付されてこなかった。今般,法12条はこれを改め,評決に理由を付すことを求めたが,これは2009年から2011年にかけての判例と立法の変化の帰結である。 法の施行以来数カ月での評価は尚早ではあるが,この制度改革の一つの柱,すなわち,重罪裁判への理由付記は透明性ある刑事裁判実現のための必然である。軽罪参審員については,軽罪への厳罰対処という前提が崩れているほか(参審員が加わった裁判で以前より刑が重くなったという事実は示されていない),訴訟が遅滞していることが4か月の試行で明らかであって,制度の経済的および手続的代償はきわめて大きく,完全施行に至るかどうかは,定かではない。
出版者
産経新聞年鑑局
巻号頁・発行日
1958
著者
森田 裕之 中原 孝信
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.7, 2006

小売業では競争の激化に伴い,商品の効率的な値段設定が望まれている.しかし大量の商品の中からどのような商品を値引きして販売すると効率的であるかを決めることは,POS データが蓄積されていても,その組合せの多さからそれほど単純であるとはいえない.本稿では,実際のPOS データを利用して,各商品の値引きの意思決定が総売上に対する影響を持つ1つのモデルを定式化する. その上で,回帰モデルを利用して値引きによる効用を算出し,ナップザック問題を解くことによって全体として最適になるようなプライシング戦略を提案する.
著者
Amer Al Saif Samira Alsenany
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.1697-1700, 2015 (Released:2015-06-30)
参考文献数
26
被引用文献数
5 21

[Purpose] Obesity is a global health problem and is associated with a multitude of complications. This study was designed to determine changes in cardiopulmonary functions after aerobic and anaerobic exercise training in obese subjects. [Subjects and Methods] Forty obese subjects, whose ages ranged between 18 and 25 years, were divided into 2 equal groups: group A received aerobic exercise training in addition to dietary measures, and group B received anaerobic exercise training for 3 months in addition to dietary measures. Measurements of systolic blood pressure, diastolic blood pressure, heart rate, maximum voluntary ventilation, maximal oxygen consumption, and body mass index were obtained for both groups before and after the exercise program. [Results] The mean body mass index, systolic blood pressure, diastolic blood pressure, heart rate, and maximal oxygen consumption decreased significantly, whereas the mean maximum voluntary ventilation increased significantly after treatment in group A. The mean maximum voluntary ventilation also increased significantly after treatment in group B. There were significant differences between the mean levels of the investigated parameters in groups A and B after treatment. [Conclusion] Aerobic exercise reduces weight and improves cardiopulmonary fitness in obese subjects better than anaerobic exercise.
著者
鷹取 泰子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

■研究の背景・目的 <br>農林水産省の農産物地産地消等実態調査によれば、2010年世界農林業センサスで把握された全国16,816の産地直売所の92.9%が常設施設利用型であり、朝市等の常設施設非利用型は7.1%に過ぎない。後者の場合、初期投資が少ない等の利点があるほか、近年では軽トラックを活用した市場(軽トラ市)などの直売形態が全国各地で認められる。また同調査では地場農産物販売にあたり「高付加価値品(有機・特別栽培品)の販売」への取組状況が相対的に低いと報告されている一方、大西(2012)のような、有機・特別栽培品を中心に取り扱う直売活動の事例は全国各地で観察・注目される。そこで本研究では常設施設非利用型の直売所、および高付加価値品を取り扱う直売所の活動について、その存在意義を明らかにしながら、直売所がローカル・フードシステムに果たす役割や展開について明らかにすることを目的とする。<br><br>■事例地域概観 <br>本研究では北海道十勝(総合振興局)管内の屋外型の有機直売市場を事例として取り上げる。同管内は日本で有数の大規模農業経営が展開され、食料供給の重要な拠点として機能している。北海道の大規模畑作農業地域は、井形ほか(2004)が指摘するように加工原料などを主たる生産物とする産地形成の中で、直売や契約栽培などによる環境保全型農業の推進が難しい地域の一つでもある。<br><br>■帯広市の直売市場(マルシェ)の概要 <br>今回事例としてとりあげる直売市場(マルシェ)は商業施設(パン販売店)の店舗入口付近に設置される屋外型市場である。5月から10月までの約半年間、毎日2時間限定の営業である。創業60年以上のパン販売店は新しく旗艦となる店舗の開店に合わせ、有機農産物等を販売する直売市場の設置を模索し、帯広市内の有機農家Y氏に相談を持ちかける形で始まった。2013年に4シーズン目を迎えた市場は、有機農業や自然農法で生産された農産物やその加工品を販売する14軒の農家・農場からなる産直会によって運営され、シーズン中毎日2-4軒の農家が当番制で生産物の販売をおこなっている。<br><br>■常設施設非利用型の有機直売市場の存在意義 <br>十勝管内の直売所は2012年時点で45個所が確認されている中にあって、分散する有機農家が本市場に参集し、有機や特別栽培品を志向する消費者の来店を促し、両者の出会いや交流の場としての役割を果たしている。またとくに本事例の場合、パン販売店の強力なバックアップと協力体制が直売市場を支える大きな基盤である。限られた季節・短時間の営業、当番制の販売形態では各農家の販売金額に占める割合はさほど大きいものではない。しかし既存の商業施設との協力しながら常設施設を利用しないことによる経済的負担の軽減等の効果は大きく、農産物の量り売り販売等とあわせコスト削減が実現できている。結果として慣行品よりは割高な値段設定をした場合でも、他所で販売される高付加価値品(有機・特別栽培品)に比較した場合の低価格を実現できている。これらが一部の購買層に評価され、少量多品目で珍しい品目の販売も生かしつつ直売市場の魅力や強みを生んでいた。<br><br>■今後のローカル・フードシステムの展開の可能性 <br>地産地消をめざし地元農家と協力しながら地場産農産物の積極的な活用を実現してきたパン販売店と有機農家のネットワークにより支えられる直売市場の存在は、国の農業政策の中に位置づけられる十勝管内にあって、経済的な意義は大きいものではない。しかしながら近年、直売所の競合や需要の飽和状態という課題が諸分野から指摘されている状況で、例えば直売所の差別化を探る方策の一つとして、あるいは2011年の東日本大震災の発生に際し、直売所によって支えられるローカル・フードシステムが非常時の食料供給に重要な役割を果たしてきたという報告(大浦ほか(2012))なども踏まえながら、ローカル・フードシステムの中に積極的に位置づけること等でさらなる展開の可能性が見込まれるだろう。<br><br>■文献<br>井形雅代・新沼勝利 2004. 北海道大規模畑作地帯における環境保全型農業の展開--津別町の有機,減農薬・減化学肥料タマネギ生産を事例として.農村研究 99: 82-90.大浦裕二・中嶋晋作・佐藤和憲・唐崎卓也・山本淳子 2012. 災害時における農産物直売所の機能―東日本大震災被災地のH市直売所を事例として―. 農業経営研究 50(2): 72-77.大西暢夫 2012. この地で生きる(6)にぎわいを創り出す支え合いの朝市: オアシス21オーガニックファーマーズ朝市村(名古屋市・栄).ガバナンス 137: 1-4.<br>
著者
草柳 千早
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2008 (Released:2016-11-21)

制度:新 ; 報告番号:乙2166号 ; 学位の種類:博士(文学) ; 授与年月日:2008/4/16 ; 早大学位記番号:新4823
著者
坂井 健
出版者
佛教大学
雑誌
京都語文 (ISSN:13424254)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.132-150, 2010-11-27

『小僧の神様』で、小僧が最初に入った屋台は、当時の最新のヒット商品鮪のトロを売り出した有名店であり、鮪一貫六銭という値段は、当時としても、かなり高い値段設定であった。それでも、小僧が執着したのは、番頭という身分への憧れがあったからなのだ。小僧がご馳走になった方の鮨屋は、古いタイプの江戸前鮨を出す店で、小僧は醤油をつけなくてもよいように調理された、盛り込みの大皿の鮨を座敷で箸を使って食べたのである。
著者
古川 久敬
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.47-58, 2018-12-20 (Released:2019-02-12)
参考文献数
43

有力とされてきた知見や議論に,発想を縛りつけられていることはないのか? 組織が抱えているパラドックスの観点から,組織,集団,個人を見つめ直してみると,重要でありながら,看過されている組織行動のダイナミックスと原理が洞察できる.本稿では,モチベーション,リーダーシップと集団活動,そして創造性とイノベーションの3つの領域に絞り,パラドックスを意識化することで,従前の見解や論理をとらえ直し,再考を迫っている新たな研究も随時引用しながら,組織行動研究の新たな展開可能性について論じる.

1 0 0 0 OA 正宝事録

出版者
巻号頁・発行日
vol.[49],
著者
生坂 政臣
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.77-79, 2011 (Released:2015-05-30)
参考文献数
3
被引用文献数
2

診断推論のプロセスは, 疾患仮説を生成する前半と, 生成された仮説を検証する後半に分けられる. さらに前半の疾患仮説生成のプロセスは, 症例の難易度や医療者の有する経験と知識体系により, 1) 確信のある疾患を即座に思いつく, 2) 自信はないが何とか疾患を想起できる, 3) 何も浮かばない (あるいは絞り込めないほど膨大な鑑別数となる) の3パターンに分けられる. 1), 2) の場合はヒューリスティックバイアスに注意しつつ, そこから疾患仮説の検証作業に入る. 3) の場合は, ①キーワードやキーフレーズを選ぶ, ②Semantic Qualifierに置き換える, ③解剖学的またはVINDICATE+Pから検討する, などにより疾患仮説を生成する. ある疾患と診断することは, 他の疾患の確率を相対的に低下させることになるので, 危険な疾患だけでなく良性疾患を含めて適切に診断する姿勢が大切である.
著者
柿田 文和 稲石 亨
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集 2011年度秋季
巻号頁・発行日
pp.253-258, 2011-09-15 (Released:2017-06-08)

2001年,17人の軽量開発手法の指導的実践者が「アジャイルソフトウェア開発マニフェスト(以下,アジャイル・マニフェスト)」を宣言して以来,「アジャイル」は世界規模で開発の主流となりつつある.日本においても2007年以降アジャイルに関するコミュニティやワークショップが多数設立,開催され,アジャイルはもはや異端の開発方法論とは言えない状況である.しかし,アジャイルソフトウェア開発とは一体何であろうか.アジャイルという用語の意味する範囲は曖昧模糊として捕らえどころがないように見える.そこで本論文では,最初にアジャイルの原典であるアジャイル・マニフェストとアジャイルの12原則から分析をはじめ,次いでアジャイル手法とプラクティスの価値を考察する.そして最後に「持続可能なペース」と「自己組織化」というキーワードを手がかりに,漠然と受け取られがちなアジャイル開発の総体を描き出し,その特徴と真の価値の提示を試みる.
著者
土`谷 敏治 高原 純 平林 航
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

Ⅰ.はじめに<br> 本来鉄道は,通勤・通学,買い物,通院,観光,用務などの諸目的を実現するため,その目的地に到達する移動手段の1つであり,鉄道に乗車すること自体が目的ではない.しかし,諸目的のうち観光については,鉄道が単なる移動手段だけではない場合が考えられ,鉄道そのもの,あるいは鉄道に乗車することが観光の目的となりうる.新納(2013)によると,鉄道をはじめとする乗り物は,①観光地への移動手段,②観光資源をみるための移動手段,③それ自体が観光資源となるものの3つの位置づけが可能であるとしている.すなわち,①は他の目的達成のための派生需要に過ぎないが,②と③は鉄道自体が目的の本源的需要であるとする.<br> 静岡県の大井川鐵道は,旧国鉄の蒸気機関車が全廃された後,SL列車の運行を最初に復活させ,さらに定期的に運行していることで知られる.収支面や技術面などさまざまな側面からの検討がなされた結果,1976年にSL列車の大井川本線での運行が開始され(白井,2013),明らかにSL列車自体を観光資源と位置づけた経営をしている.しかし,これまで利用者に対して,その属性や観光利用の特色について調査したことがないという.これを踏まえて,本研究では大井川鐵道のSL列車利用者について,その諸属性,旅行目的とその特色を調査・分析し,利用者の側面から大井川鐵道の観光利用の特色と今後の課題について検討することを目的とする. <br><br> Ⅱ.調査方法<br> 今回の調査は,大井川鐵道のSL列車利用者,すなわち,観光目的での大井川鐵道利用者を対象としている.このため,調査は2013年10月19日(土)と20日(日)の2日間にわたって実施した.両日は,いわゆる秋の観光シーズンの週末,土曜日と日曜日に相当する.また,大井川鐵道でもこの日から11月末までを観光シーズンの重点期間と位置づけており,19日に観光シーズンに向けての列車ダイヤ改正を実施した.<br> アンケート調査は,2日間3往復6列車の車内で,利用者に調査票を配布し,利用者自身が記入する方式で回答を求めた.主な質問項目は,年齢・性別・居住地等の利用者の属性,個人・家族・団体等の同行者構成,旅行日数,大井川鐵道乗車回数,観光の目的などである.また,SL列車の利用パターンを明らかにするため,SL列車の停車駅間で,乗車中の旅客数を数え,輸送断面を作成した.<br><br> Ⅲ.調査結果の概要<br> 2日間の調査によって,SL列車の旅客輸送断面とその特色が明らかになるとともに,アンケート調査の結果,503人から有効回答がえられた.<br> 1.SL列車の利用は,往路の下り千頭行きが中心で,上り新金谷行きは往路の半分程度以下の利用である.また,ツアー客を中心に,新金谷・家山間の区間利用がみられ,上り列車利用促進,全区間乗車促進策が求められる.<br> 2.SL列車の利用者は,いわゆる中高年の女性中心という観光客の一般的特色に比べ,広い年齢層にわたっていることが明らかになった.また,鉄道が対象ということもあり,比較的男性の利用者が多い.その居住地は,愛知県,三重県,岐阜県など中部地方が多く,距離的に大きな差がない東京都,神奈川県など南関東からの誘客が課題である.<br> 3.SL列車利用者の旅行目的は,SL列車に乗車することに集中しており,SL列車以外の観光目的への誘導が必要である.<br> 4.SL列車利用者は,一人旅をはじめ,夫婦旅行・家族旅行・友人同士などの個人旅行と,旅行会社のツアーやグループ旅行などの団体旅行に2分される.前者は,大井川鐵道までの交通手段として,家族旅行を中心に自家用車の利用が多い.ただし,夫婦旅行や一人旅のように同行者人数が少ないとJR線利用が増加する.後者は,ツアーバス利用が基本である.また,団体旅行に比べ個人旅行では,SL列車乗車以外の旅行目的の割合が高まる.<br> 5.SL列車利用者は約1/4が再訪者で,比較的リピーター率が高い.さらに,再訪者ほどSL列車乗車以外の旅行目的をもつ場合が多い.<br> 以上の結果から考えられる今後の課題としては,区間利用の対策として,蒸気機関車はもちろん,旧型客車,駅や検修設備を含めた大井川鐵道全体の特色・魅力をこれまで以上に利用者に伝え,車内・駅での見学の機会を増やすことが求められる.SL列車乗車に偏重した旅行目的,片道乗車への対策として,沿線・沿線以外の静岡県内の観光地・観光施設の活用・連携と広報,ツアーを企画する旅行会社への働きかけ,JR各社との協調,各種マスメディアの活用も重要である. 参考文献<br>白井昭 2013.保存鉄道とは技術と文化の継承である。(インタビュー).みんてつ44:20-23.<br>丁野朗 2013.観光資源としての地域鉄道.運輸と経済73(1):10-17.<br>新納克広 2013.鉄道経営と観光 ―派生需要と本源需要―.運輸と経済73(1):4-9.&nbsp;