著者
余田 翔平
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.98-106, 2018

<p>本稿の目的は,パネルデータを用いて,有配偶女性の就業とメンタルヘルスとの関係をめぐる2つの相反する仮説を検証することである.第1の仮説は役割過重仮説と呼ばれ,多重役割がメンタルヘルスの悪化をもたらすと予想する.第2の仮説は役割展開仮説と呼ばれ,職業役割の獲得は社会的アイデンティティにつながるためメンタルヘルスにも良好な影響を持つと予想する.クロスセクションデータを用いた先行研究によると,日本ではこれらのいずれの仮説も支持されていない.「全国家族調査パネルスタディ(NFRJ08-Panel)」を用いた分析の結果,時間不変の個人特性を統制すると,有職時は無職時よりもメンタルヘルスが良好なことが確認された.この結果は役割展開仮説と整合的であり,有配偶女性が職業役割から心理的メリットを得ている可能性を示唆するものである.ただし,本稿には方法論上残された課題やデータの制約も多く,それらについて最後に整理する.</p>
著者
磯田 恵子 松崎 孝世 吉田 禎宏 藤野 良三 斎藤 勢也 高橋 正倫 Naohiko HAYASHI Hiroshi FUKUDA Kunimi HAMADA Naohiko KUROKAMI Takashi NAGANO
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.2453-2457, 1989-11-25 (Released:2009-04-21)
参考文献数
14

最近経験した胆嚢ポリープ癌の4例を報告するとともに,過去10年間に当院外科で手術した胆嚢ポリープ様病変について検討した.内訳はコレステロールポリープ4例,腺腫3例,過形成1例,腺癌4例であった.切除標本ではコレステロールポリープは5mm以下の小病変が多く腺癌は1例を除き10mm以上であった.超音波検査では12例中10例に病変を描出しえており,コレステロールポリープはIaないしIIa型であり,IV型は全て腺癌であった.超音波検査で胆嚢内にポリープ様病変を認めた場合,5mm以下のもの及び5~10mmでもエコーパターンがI型のものは経過観察,II, III, IV型は悪性の可能性もあり手術適応である.また,10mm以上のものは手術を原因とする.手術を施行する際の術式として,術後に癌と判明した場合m, pmの早期癌では胆嚢摘出術のみでよいが,ss以上の進行癌では積極的に再手術を勧めるべきと考えられる.
著者
平井 正良 雨木 若慶 渡邊 博之
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.160-166, 2006 (Released:2007-06-01)
参考文献数
16
被引用文献数
8 20

本実験ではLEDを唯一の光源とし,第一本葉展開後のナス,リーフレタス,ヒマワリに,青,青緑,緑,赤色の単色光を50, 100, 150μmol m-2 s-1のPPFDで照射した.単色光照射開始から,25日後にナス,リーフレタス,42日後にヒマワリの生長を調査した.主茎の伸長は,ナス,ヒマワリにおいて青色光で顕著に促進され,他の単色光ではほとんど促進されなかった.リーフレタスの主茎伸長は,赤,緑,青緑色光の順に促進されたが,青色光では著しく抑制された.また,照射した単色光により全葉長に占める葉柄長の割合は植物種ごとに変化し,単色光照射による植物の生長反応は種により大きく異なった.
著者
齋藤 康輝
出版者
朝日大学
雑誌
朝日法学論集 (ISSN:09150072)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.179-192, 2011-02-01
著者
山下 親正
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.468-476, 2009 (Released:2010-01-08)
参考文献数
55
被引用文献数
1 4

蛋白質やペプチドなどの高分子医薬品に適した新規の粉末吸入システムを構築するために,予め製造工程で経肺投与に適した微粒子を設計するという従来の基本的な製剤設計の既成概念を脱却し,発想の転換を図った.すなわち,不安定な蛋白質やペプチドなどの高分子医薬に適した製造方法である凍結乾燥法と,空気力学的に大変有利な多孔性を有する凍結乾燥ケーキに着目し,凍結乾燥ケーキが吸入時にはじめて微粒子化するという新しい概念の粉末吸入システムOtsuka dry powder inhalation(ODPI)システムを開発した.このODPIシステムは,吸気と同調して空気がデバイス内に導入され,その空気衝撃により,凍結乾燥ケーキが瞬時に経肺投与に適した微粒子になるメカニズムを採用している.このシステムは,製剤としては,微粒子の集合体ではない蜘蛛の巣のように形成されたユニークな多孔性の網目構造を有する凍結乾燥ケーキと,空気の通路と微粒子の排出経路が備わっていれば成立するシンプルな構造の吸入デバイスを使用することを特長とする.
著者
岩田 聡 井上 裕
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1312, pp.138-140, 2005-10-17

ソニーやマイクロソフトと一線を画し独自路線を歩む。(聞き手は本誌編集長、井上 裕) 問 「東京ゲームショウ2005」の基調講演で、次世代家庭用ゲーム機「レボリューション(仮称)」のコントローラーを初公開しました。片手で操作するリモコン型とは、意表を突かれました。
著者
筒井 真優美
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.585-594, 1993-12-15

I.はじめに ニューヨーク大学は総合大学であり,マンハッタンの南,多くの芸術家が住むグリニッチ・ヴィレッジやソーホの近くに位置する。大学の南には中華街やリトル・イタリーがあり,さまざまな人種が住んでいる。 ニューヨーク大学看護学部の名誉教授はマーサ・ロジャーズ(M.Rogers)で,1975年までの看護学部長であった。ニューヨーク大学は教育の根底にロジャーズの看護科学(Nursing Science)がある。ロンヤーズは,看護はunitary humanbeing(人間)とその環境についての科学であると述べており,人間に関する概念を中心に看護を説明している。ロシャーズの看護学に関する概念は他の看護理論よりも抽象度が高く,操作的定義が困難であると述べられているが,これはロジャーズが看護理論ではなく看護学(看護科学)について述べているからである。

1 0 0 0 OA SNTVとM+1法則

著者
茨木 瞬
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.129-142, 2013 (Released:2017-12-06)
参考文献数
11

大選挙区単記非移譲式投票制(SNTV)における“候補者数”をめぐる研究に関しては,中選挙区時代の衆議院議員選挙のデータを用いて分析したReed (1990, 1997) と川人(2004)がある。しかし,中選挙区時代の衆院のデータでは,“泡沫”候補が多く存在し,“泡沫”候補を除外するための工夫が必要であるが,これまでの先行研究では,“泡沫”候補を除外する方法がやや恣意的であり,疑問が残る。そこで本論では,政令指定都市の道府県議会議員選挙のデータを活用することを提案し,先行研究における“泡沫”候補問題を回避して,SNTV におけるM+1法則の検証が行えることを示す。さらに,定数是正が国政選挙と比べて頻繁に行われている,という政令市県議選の利点を生かし,定数変更前後での候補者そのものの動きや,有効候補者数の変化等によりM+1法則の安定性を確認していく。
著者
田嶋 磨美 天谷 美里 杉田 隆 西川 朱實 坪井 良治
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.193-196, 2005
被引用文献数
7

<i>Malassezia</i>は脂質要求性の皮膚常在菌で,癜風,脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の発症に関与していることが指摘されている.今回,我々はアカツキ病の3例を経験したので,その鱗屑痂皮に含まれる<i>Malassezia</i>の菌相を解析し,健常人,アトピー性皮膚炎患者と比較検討した.症例1は,両上下眼瞼部,症例2は左鼠径ヘルニア手術瘢痕部,症例3は頭頂部のアカツキ病であった.それぞれ,病変部鱗屑からNested PCRを用いた非培養法にて<i>Malassezia</i> DNAを検出した.症例1及び3はともに,<i>M.obtusa</i>と<i>M.slooffiae</i>が検出され,症例2は<i>M.slooffiae</i>のみが検出された.健常人皮膚からは,<i>M.globosa</i>,<i>M.restricta</i>および<i>M.sympodialis</i>が高頻度に検出されのに対し,今回アカツキ病で分離された2菌種は比較的稀で,病態との関連性が示唆された.

1 0 0 0 OA 六家文選60卷

著者
梁蕭統撰
出版者
袁氏嘉趣堂刊
巻号頁・発行日
vol.[18], 1549
著者
Ismail ABDUL RAHMAN Norlizaa MOHAMAD Jafri MOHD ROHANI Raemy MD ZEIN
出版者
National Institute of Occupational Safety and Health
雑誌
Industrial Health (ISSN:00198366)
巻号頁・発行日
pp.2018-0043, (Released:2018-09-13)
被引用文献数
10

Prolonged standing can cause discomfort on the body of the workers and can lead to injury and occupational disease. One of the ergonomic intervention is through improving the work-rest scheduling. The purpose of this study are to identify the fatigue level from the perception of the worker and to investigate the impact of the work-rest scheduling to the standing workers for 12 hours working time with a different gender. This study involved two methods which are self-assessment of the worker and direct measurement by using electromyography (EMG). For self-assessment, 80 workers have been interviewed using questionnaire in order to identify the fatigue level. For direct measurement, EMG was attached to the 15 selected workers at their respective leg and lower back to analyse the muscle efforts. In terms of perception, the results show the discomfort and fatigue level at the lower body region in the following order as foot ankle, lower back and leg. There is a significant difference between gender on discomfort pain for foot ankle and leg. The results show short frequent break by 10 minutes can reduce the fatigue at the leg and infrequent long break is preferable in order to reduce the fatigue at the lower back. In conclusion, it was found that prolonged standing affect the muscle fatigue and discomfort especially lower extremities such as foot ankle, lower back and leg. Besides that, different type of work rest scheduling and gender have significant result towards the muscle fatigue development.
著者
藤井 三晴 栗原 祐史 代田 達夫 八十 篤聡 武井 良子 高橋 浩二
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.567-572, 2015 (Released:2016-03-09)
参考文献数
7

今回,われわれは構音障害を主訴に来院した,巨大な口蓋隆起と両側性の下顎隆起の症例を治療する機会を得たので報告する.症例は60歳男性である.口蓋および下顎舌側臼歯部の骨隆起を放置していたところ徐々に増大し,構音障害を生じたため,当科を受診した.初診時,口蓋正中部に約27×20×14mm,上顎右側臼歯部に約16×11×13mmの骨様硬の膨隆を認め,下顎右側前歯部舌側から臼歯部にかけて約6×7×8mm,下顎左側前歯部から臼歯部にかけて約20×14×13mmの骨様硬の膨隆を認めた.全身麻酔下で,口蓋隆起および下顎隆起除去術を施行した.術前と術後で構音障害について,発語明瞭度検査,文章了解度検査,会話明瞭度検査により評価したところ,術後に改善が確認された.また,患者本人も術後に構音障害の改善を自覚し,満足感を得ていた.なお,創部の治癒経過も良好であった.
著者
歌門 美枝 鈴木 規子 齋藤 浩人 山本 麗子 松浦 光洋
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.674-677, 2003-12-20 (Released:2011-04-22)
参考文献数
10
被引用文献数
1

The speech function of a 55-year-old woman with a speech disorder due to a large torus palatinus was evaluated before and after surgery. Auditive impressions were assessed by a speech intelligibility test of 100 syllables, an articulation test, and a diadochokinetic ability test. Speech functions were measured by static palatography, tongue cephalography with contrast media, and acoustic analysis. The results showed slight speech disorder during production of /hj/, /kj/, and /gj/ before surgery and improvement in speech function without speech therapy after surgery.
著者
木部 佳延 奥村 和史
出版者
一般社団法人 日本接着学会
雑誌
日本接着学会誌 (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.271-275, 2016-09-01 (Released:2018-07-03)
参考文献数
8

種々のポリカーボネート系ポリオールを原料とするポリウレタンを合成した。1,6-ヘキサンジオールポリカーボネート系ポリウレタンは100%モジュラスが高く,高硬度であったのに対し,3-メチル-1,5ペンタンジオールポリカーボネート系ポリウレタンは低モジュラスで柔らかく,その引張強さは低かった。1,10-デカンジオールポリカーボネート系ポリウレタンは低モジュラスで,高引張強さを示した。半経験的分子軌道法(PM6)の計算より見積もった分子鎖間の相互作用による安定化効果は,1,10-デカンジオールポリカーボネート系>1,6-ヘキサンジオールポリカーボネート系>3-メチル1,5-ペンタンジオールポリカーボネート系の順であった。ウレタン結合間の水素結合が強いポリウレタンほどその引張強さが高いと考えられる。
著者
荒川 政彦
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.113-121, 2008-03-31

氷衛星上の衝突クレーターや外惑星領域における惑星・衛星の衝突集積過程に関連して,氷を用いた高速度衝突実験が行われている.氷の衝突実験は融けやすい氷の取り扱いに問題が生じ精度の高い実験をすることが難しかったが,衝突実験装置自体を大型の低温室に設置することによりその問題が解 決され,研究が飛躍的に進歩した.特に氷中を伝播する衝撃波や破壊素過程の理解が進み,さらに弾丸にも氷を用いた高速度衝突実験が衝突速度700m/sまで可能となった.その結果,氷クレーターの形態変化やスケール則及び氷の衝突破壊強度が明らかになった.