著者
佐藤 俊樹
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.37-48, 2000-06-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
21

社会学は「システム」という用語を瀕用するが、その経験的意義は決して明確ではない。ここではN.ルーマンのシステム論を、相互作用システムという事例から考察する。彼の理論は行為概念の変更までふくむラディカルなものであり、「社会とは何か」への有力な答えとなっている。だが、厳密にその論理をおっていくと、複数のレベルを交錯させることで、システムの実在性を不当前提している可能性が高い。そのことは、たんに「システム」だけでなく、「行為」「コミュニケーション」「社会」といった社会学の基本概念自体に再検討をせまる。
著者
戸塚 武美 藤田 桂史 吉田 光汰 橋本 和賢 飯田 幸英
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.403-406, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
3

われわれは先行研究において雷鳴頭痛の概念を踏まえた情報聴取教育が, 神経学的所見に乏しい出血性脳卒中に対する救急隊の病院選定的確率を改善させる可能性を報告した。救急隊に広く普及しているシンシナティ病院前脳卒中スケール (Cincinnati Prehospital Stroke Scale ; CPSS) は, 脳局所症状を判断するものであり, 脳卒中で最も危険といわれるくも膜下出血では該当しない症例がある。また, くも膜下出血の典型的な症状である「突然の激しい頭痛」は客観性に乏しく, 救急隊が判断に迷う一因となっている。この対策として, 吐気, 意識消失, めまいなどの症例では必ず頭痛の有無を確認し, 頭痛を訴えた場合には雷鳴頭痛の概念を踏まえた情報聴取を行うよう教育に取り組んだところ, 頭痛情報聴取率は統計学的に有意に改善し, 病院選定的確率は改善傾向を認めた。雷鳴頭痛の概念を踏まえた情報聴取教育は, 神経学的所見に乏しい出血性脳卒中に対し, 的確な病院選定を行う一助となり得る。
著者
細川 大瑛 平山 和美
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.168-177, 2020-12-25 (Released:2021-01-09)
参考文献数
24

記号,人物,風景,物品に関する意味記憶障害について解説した.意味記憶障害は,感覚の種類を超えた問題として起こる.記号の意味記憶障害では,記号とそれが指し示す事柄との対応ができなくなる.責任病巣としては左の側頭葉先端部が重視されている.人物の意味記憶障害では,人の顔,声,職業など種々の知識が失われる.風景の意味記憶障害では,ある場所の景観,聞こえる音,所在地など種々の知識が失われる.いずれも,右の側頭葉先端部が重視されている.物品の意味記憶障害では,物の形,出す音,用途など種々の知識が失われる.両側の側頭葉先端部病変が重視されている.
著者
片岡 博美
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-25, 2004-03-30 (Released:2017-05-19)
被引用文献数
6

近年の国際労働力移動を取り巻く変化の中,外国人労働者と彼らのエスニック・コミュニティ,エスニック・ビジネスは,積極的に評価される傾向にある.本研究では,受入先の地域社会におけるエスニック集団の主体的活動であるエスニック・ビジネスに注目し,静岡県浜松市のブラジル人を対象としたエスニック・ビジネス事業所でのアンケート調査及び聞き取り調査をもとに,その現況,地域的展開を分析し,それらビジネスがブラジル人や受入先の地域社会に対して果たす役割や意義を検討した.1990年の入管法改正以降の浜松市及び浜松都市圏内におけるブラジル人の増加に伴い,浜松市のエスニック・ビジネス事業所の多くはその商圏を拡大させ,近隣居住のブラジル人を対象とした小規模な「狭域エスニック型」とともに,市外の広域な地方のブラジル人を対象とした「広域エスニック型」,ブラジル人以外をも対象とした「外部市場進出型」事業所が増加した.2000年以降,ブラジル人を対象とした市場が飽和状態となり淘汰・転換期を迎えた浜松市のエスニック・ビジネスであるが,広域な地方をターゲットにした事業展開や外部市場への進出に活路を見出す事業所は依然増加傾向にあり,今後も継続的発展が予測される.浜松市におけるエスニック・ビジネスは,ブラジル人コミュニティの中心やブラジル人援助の中心,そして受入社会との接点としての役割も果たしており,「民族/生活様式」専門化地域として,交流・接触の場として,トランス・ナショナルな文化空間として,自助組織結成の布石として,地元の地域社会に貢献し得る可能性を持つ.
著者
濱田 由紀
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.215-224, 2015-12-16 (Released:2015-12-19)
参考文献数
13
被引用文献数
7 5

目的:精神障害をもつ人のリカバリーにおけるピアサポートの意味を明らかにすることである.方法: Denzinの解釈的相互作用論を理論的前提とする質的研究デザインである.精神疾患と診断され,電話相談によるピアサポートを行う人20名に,リカバリーにおけるピアサポートの経験について半構成的面接を行った.結果:リカバリーにおけるピアサポートの意味は,1. 他者との出会いによって固有の人生を生きること,2. 他者の幸せに自分を生かすこと,であった.〈他者との出会いによって固有の人生を生きること〉は,1)精神病による画一性からの解放と,2)固有の人生を模索すること,という様相から,〈他者の幸せに自分を生かすこと〉は,1)痛み・気遣い,2)ありのままを受け入れてもらう経験,3)つながり・連帯,4)他者に対する有責感,5)他者支援に自分を生かすこと,6)意味ある人間関係を本質とする仕事,という様相から捉えられた.考察:Lévinasの他者論から,これらの結果は,「他者」との出会いによる固有性の再獲得と,痛みをもつ他者に対する倫理的な応答としての主体性の確立と解釈された.
著者
桑原 昌則 古野 貴志 西村 拓哉 吉本 光広 北岡 裕章
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1342-1348, 2021-12-15 (Released:2022-12-18)
参考文献数
18

症例は54歳男性.役場の職員で,右視床ラクナ梗塞,脂質異常症,高尿酸血症などで近医通院中であった.昼休み中に突然,胸痛を訴えて,その場に倒れこみ心肺停止状態となった.すぐに同僚の職員がAEDを使用し心肺蘇生に成功した. 当院へ救急搬送時は意識レベル清明,血圧144/100 mmHg,脈拍数103/分であり,心電図,心エコー検査等より,急性心筋梗塞と診断した.緊急冠動脈造影検査を行ったところ,左冠動脈前下行枝#6に99%狭窄を認め,引き続き同部位に対して経皮的冠動脈形成術を施行した.当院搬送後は,術中術後とも心室細動を起こすことなく経過し,10日間の入院期間中も,致死的不整脈は起こさず,後遺症なく独歩退院した.バイスタンダーの一般市民による迅速なAED使用により,後遺症なく救命できた症例を経験したので報告する.
著者
Yuta Sawada Toshitsugu Sato Ryosuke Fukushi Yoshihito Kohari Yuuki Takahashi Sayaka Tomii Lifeng Yang Takashi Yamagishi Hirofumi Arai
出版者
The Mycological Society of Japan
雑誌
Mycoscience (ISSN:13403540)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.156-165, 2023-11-20 (Released:2023-11-20)
参考文献数
41

Edible basidiomycetes are highly active in the oxidative decomposition and polymerisation of polyphenols, and soybeans contain large amounts of isoflavones, which are polyphenol glycosides. Isoflavone aglycones exhibit weak estrogenic activities. In this study, we investigated the isoflavone content, polyphenol production, antioxidant activity and ergothioneine (EGT) content of soybeans fermented by Pleurotus cornucopiae and Pleurotus ostreatus. Isoflavone glycosides, which were abundant in unfermented soybeans, decreased, and aglycones increased on day 10 of culture in both edible basidiomycete-fermented soybeans. The total maximum polyphenol content in soybeans fermented by both mushrooms were approximately 4 times higher on day 30 to 40 of culture, than that of unfermented soybeans. P. cornucopiae-fermented soybeans showed maximum antioxidant activity on day 20 of culture, and this was approximately 6.1 times higher than that of unfermented soybeans. EGT was not detected in unfermented soybeans, whereas both fermented soybeans showed a maximum EGT content on day 20 of culture, which was especially high in P. cornucopiae-fermented soybeans. The antioxidant activity and EGT of P. cornucopiae-fermented soybeans were higher than those of P. ostreatus, suggesting that EGT was responsible for the increase in the antioxidant activity of P. cornucopiae-fermented soybeans.
著者
Tie-Zhi Liu Li Liu Jing Wen Shu-Yan Liu
出版者
The Mycological Society of Japan
雑誌
Mycoscience (ISSN:13403540)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.150-155, 2023-10-27 (Released:2023-11-20)
参考文献数
26

A powdery mildew was found on Leontopodium leontopodioides (Asteraceae) in China. Phylogenetic analyses using a combination of internal transcribed spacer and 28S rDNA sequences showed that this species, which clusters as sister to Neoerysiphe joerstadii, is allied to N. galii, N. geranii, and N. nevoi. This species differs from the closely allied N. joerstadii in the number and size of asci (3-10 asci, 55-75 × 20-40 µm versus 16-32 asci, 40-60 × 20-30 µm). This species is morphologically very similar to N. gnaphalii, but clearly differs from this species in having larger chasmothecia and colorless appendages. Therefore, the powdery mildew on L. leontopodioides is described as N. leontopodii sp. nov.
著者
中澤 真弓 鈴木 健介 小川 理郎
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.14-18, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
6

はじめに : 救急救命士による気管挿管は現場での実施頻度も少なく, 技術維持のため訓練が必要である。目的 : 救急救命士養成課程の学生が雪山において, 屋内の床上で習得した気管挿管と同様の基本手技を施行できるかを検証した。方法 : 日本体育大学救急医療学科2年生72名を対象に, 気道管理トレーナを用い, 雪上において(1)傷病者頭部谷側斜面(2)傷病者頭部山側斜面(3)傷病者立位(4)傷病者埋没の4想定で気管挿管基本手技訓練を行い, 屋内で実施した結果と比較した (対応のあるT検定・有意水準P<0.05) 。結果 : 胸骨圧迫の評価が雪山で有意に低かった。環境に関係なく目視で確認できる項目は雪山で有意に高得点であった。アクシデントは「滑落」「資器材の凍結」「歯牙損傷」が発生した。考察と結論 : 雪山での気管挿管は, 基本手技の習得が現場での応用を可能にしていると思われた。
著者
杉原 辰哉 山陸 孝之 山本 美幸 藤田 和絵 門永 陽子 芦田 泰之
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.349-357, 2023-07-25 (Released:2023-07-25)
参考文献数
9

心電図について講義を行った救急救命士および救急隊員に対しアンケート調査を実施し,救急現場における疑問点や需要を明らかにした。対象は島根県内の消防本部に所属する救急救命士62名,救急隊員20名。病院前12誘導心電図(PH-ECG)の現状と重要性,モニターおよび12誘導心電図の装着方法とコツ,頻出する心電図の判読,急性心筋梗塞の心電図判読,頻脈性不整脈の心電図判読について講義を実施した。アンケート内容については,上記講義内容の理解度についての回答とST変化の評価,脚ブロックとの鑑別,鏡面現象の理解について回答を設定した。職種別の認知度と理解度の違いは,全ての質問項目において救急隊員に比べ救急救命士が有意に高値であった。項目別の認知度の違いは,ST変化の評価に比べ,脚ブロックとの鑑別は有意に低値であった。救急救命士と救急隊員は共通してST変化の評価は理解できているが,脚ブロックとの鑑別における知識は不十分な傾向にあり,救急現場で誤った判読をしてしまう可能性もある。理解度が低かった項目に重点を置いて講義内容を作成し,理解を深め,救急救命士および救急隊員と病院間における報告や連携の質の向上に繋げていく。
著者
會澤 綾子
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織学会大会論文集 (ISSN:21868530)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.174-179, 2021 (Released:2021-08-21)
参考文献数
7

In this study, corporate corruptions cases were collected and classified into 17 categories, and we found that the status of submission of third-party reports was focused on specific types of corruption. These specific corruptions have two characteristics: “organizational” and “low clarity of norm deviation conditions.” Thus, they may not be related to a particular person’s ethics or motives, and they are likely to become normal and continue if there is a structural equivalence network. When corruption occurs, the motive could be an issue, but the person involved may be doing it without any special motive. Although there are cases in which organizational wrongdoings focusing on organizational networks are proposed, the discussion is not sufficient, and it can be said that this is an important issue for which organizational factors should be clarified.
著者
鈴木 伸嘉 工 穣
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.126, no.6, pp.777-785, 2023-06-20 (Released:2023-07-01)
参考文献数
24

昨今, インフルエンザや COVID-19 などの感染症の流行予測に Social Networking Service (SNS) からのビッグデータを用いる手法が注目を集めている. 感染症の流行と同様に, 花粉の飛散はリアルタイムな気象条件や複雑な外的要因に左右され,それに伴う症状の出現も即時性が高い. そこで, SNS の一つである Twitter に投稿されている花粉症にまつわるツイートは花粉飛散数との関連があるのではないかと考えた. 2022年 2 月 3 日から 5 月22日の間に316,505ツイートを得ることができた. 東京都と松本市のスギ花粉およびヒノキ花粉の飛散数とツイート数との関連を検討したところ, 東京都のスギ花粉飛散数が増えるにつれ花粉症に関連したツイート数が増加し, 両者の相関関係は0.85と強い相関が認められた. 一方地方都市である松本市の花粉の飛散数とスギ花粉症に関連するツイート数との間にもかなりの相関があった. 次に, 花粉症に関連するツイートの内容について形態素解析を行った. 「くしゃみ」, 「鼻水」 といった単語が多く使われているのに対し 「鼻づまり」 の使用数が少ないことが特徴的であった. 一方, 「かゆみ」 や 「かゆい」 といった掻痒感を表す単語が多く使われていることが分かった. 代表的な SNS である Twitter を用いることで, 医学的な現象である花粉症のリアルタイムな動向を把握することができた.