著者
高田 崚介 林 威 安藤 宗孝 志築 文太郎 高橋 伸
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2016-HCI-169, no.10, pp.1-7, 2016-08-22

防水機能を有するタッチパネル端末 (以下,防水端末) において,画面タッチ時の圧力を取得する手法を示す.本手法は気密性を有する防水端末にタッチした際に端末内部の気圧が上昇し,端末に内蔵された気圧センサの出力値が変化する現象を利用する.同じ圧力にてタッチした際の防水端末の気圧の変化量は,タッチ位置によって異なる.我々は実験により,タッチ位置ごとの気圧の変化量,ならびにタッチ圧力と気圧の変化量の関係を調査した.本稿にてその調査結果および考察を示す.
著者
久留島 典子
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.182, pp.167-180, 2014-01-31

戦功を記録し、それを根拠に恩賞を得ることは、武士にとって最も基本的かつ重要な行為であるとみなされており、それに関わる南北朝期の軍忠状等については研究の蓄積がある。しかし戦国期、さらには戦争がなくなるとされる近世において、それらがどのように変化あるいは消失していくのか、必ずしも明らかにされていない。本稿は、中世と近世における武家文書史料の在り方の相違点、共通点を探るという観点から、戦功を記録する史料に焦点をあてて、その変遷をみていくものである。明治二年、版籍奉還直前の萩藩で、戊辰戦争等の戦功調査が組織的になされた。そのなかで、藩の家臣たちからなる軍団司令官たちは、中世軍忠状の典型的文言をもつ記録を藩からの命令に応じて提出し、藩も中世同様の証判を据えて返している。これを、農兵なども含む有志中心に編成された諸隊提出の戦功記録と比較すると、戦死傷者報告という内容は同一だが、軍忠状という形式自体に示される儀礼的性格の有無が大きな相違点となっている。すなわち幕末の藩や藩士たちは、軍忠状を自己の武士という身分の象徴として位置付けていたと考えられる。ではこの軍忠状とは、どのような歴史的存在なのか。恩賞給与のための軍功認定は、当初、指揮官の面前で口頭によってなされたとされる。しかし、蒙古襲来合戦時、恩賞決定者である幕府中枢部は戦闘地域を遠く離れた鎌倉におり、一方、戦闘が大規模で、戦功認定希望者も多数にのぼったため、初めて文書を介した戦功認定確認作業がおこなわれるようになったという。その後、軍事関係の文書が定式化され、戦功認定に関わる諸手続きが組織化されていった結果が、各地域で長期間にわたって継続的に戦闘が行われた南北朝期の各種軍事関係文書であったとされる。しかし一五世紀後半にもなると、軍事関係文書の中心は戦功を賞する感状となり、軍忠状など戦功記録・申告文書の残存例は全国的にわずかとなる。ところがその後、軍忠状や頸注文は、室町幕府の武家故実として、幕府との強い結びつきを誇示したい西国の大名・武士たちの間で再び用いられ、戦国時代最盛期には、大友氏・毛利氏などの戦国大名領国でさかんに作成されるようになった。さらに豊臣秀吉政権の成立以降、朝鮮への侵略戦争で作成された「鼻請取状」に象徴されるように、戦功報告書とその受理文書という形で軍功認定の方式は一層組織化された。関ヶ原合戦と二度の大坂の陣、また九州の大名家とその家臣の家では、近世初期最後の戦争ともいえる島原の乱に関する、それぞれ膨大な数の戦功記録文書が作成された。この時期の軍忠状自体は、自らの戦闘行動を具体的に記したもので、儀礼的要素は希薄である。しかもそれらは、徳川家へ軍功上申するための基礎資料と、恩賞を家臣たちに配分する際の根拠として、大名の家に留めおかれ管理・保管された。やがてこうした戦功記録は、徳川家との関係を語るきわめて重要な証拠として、現実の戦功認定が終了した後も、多くの武家で、家の由緒を示す家譜等に編纂され、幕府自体も、こうした戦功記録を集成していくようになった。以上のように、戦功記録の系譜を追ってくると、戦功を申請し恩賞に預かるというきわめて現実的な目的のために出現した軍忠状が、その後、二つの方向へと展開していったことが指摘できる。一つは事務的手続き文書としての機能をより純化させ、戦功申告書として、申請する側ではなく、認定する側に保管されていく方向である。そしてもう一つは、「家の記憶」の記録として、家譜や家記に編纂され、一種の由緒書、つまり記念し顕彰するための典拠となっていく方向である。最初に考察した幕末萩藩の軍忠状も、戦功の記録が戦国時代から近世にかけて変化し、島原の乱で、ある到達点に達した、その系譜のなかに位置づけられる。そしてこのことは同時に、近代以降の軍隊が、中世・近世武士のあり方から執拗に継受していった側面をも示唆するといえる。
著者
五十嵐 芹菜
出版者
東京女子大学言語文化研究会
雑誌
東京女子大学言語文化研究 (ISSN:09187766)
巻号頁・発行日
no.30, pp.1-30, 2022-03-31

本研究は、日本語の語形成の一種である短縮について論じる。先行研究から、日本語の複合語短縮では短縮された語の多くが 4 モーラ語であり、その大半が短縮される前の複合語の前部要素の語頭 2 モーラと後部要素の語頭 2 モーラを結合したものであるなど、いくつかの形成パターンが明らかになっている。本研究は、アニメーション作品の題名における短縮語形成を分析し、先行研究で明らかにされていない 3 要素以上からなる複合語(多要素複合語)や句、文の単位においてどのような短縮語形成パターンがあるのか、その形成要因および特徴はどのようなものか、また、短縮語形成時にどのような要素が残されるのかを分析、考察することが目的である。近年のアニメーション作品 456 作品を調査し、得られた短縮された名称、合計 276 事例を分析対象とした。短縮された名称を作品名の構成単位ごとに、単純語、複合語、多要素複合語、句、文に分類し、それぞれについてモーラ数や形成パターン、変音現象、形態素などの観点から分析を行った。分析の結果、アニメーション作品の題名における短縮語形成では、「語頭 2 モーラ+語頭 2モーラ」の 4 モーラ語の形成が最も生産性が高いことが分かった。多要素複合語、句、文における短縮語形成では、複合語の短縮語形成と異なり 5 モーラ以上の語も一定の割合で形成されることなどが分かった。また、短縮語として残される要素は固有名詞が優先され、固有名詞が無い場合は 2 語以上を結合し短縮する傾向があると明らかになった。
著者
鹿野 利春
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.626-629, 2017-06-15

次期学習指導要領の改訂の背景,各教科で身に付けるべき資質・能力の3つの柱を述べ,改訂のスケジュールを提示して実施までに必要なことをまとめる.また,小学校〜高等学校までのプログラミングを含む情報活用能力について概観し,次期学習指導要領における高等学校情報科の「見方・考え方」,学習過程,情報Ⅰ・Ⅱの内容,未来への期待を述べる.
著者
植田 康孝 磯部 珠緒
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.30, 2020-03-15

人工知能を基盤としたデータサイエンス領域の発達は,自然科学分野に留まらず,経営学,社会学,歴史学,文学など文系分野においても,研究手法の変革を起こしている。これら領域においても,動画,写真,絵,文字など様々なメディア要素をデータ化し,ビッグデータや人工知能などの最新技術を応用する動きが広まっている。データサイエンスは,統計学や数学,情報学の考え方を採用して,データのパターンを読み解き,物の見方や判断力を体得する学問である。統計的な解析手法で緻密な分析が出来るようになり,定説を覆したり,思わぬ発見が生まれたりと,若手研究者と学生による研究の質と成果が経験豊富な専門家による既存研究を上回る。例えば,社会学や文学では,様々なデータを回帰分析や時系列分析,主成分分析といった様々な統計手法で関連性を解析する試みが生まれ,過去の蓄積された研究を質において凌駕する。 企業のマーケティングや金融機関の投資などの社会活動は,データに基づいて意思決定がなされる。金融分野,特に投資部門には多数の自然言語処理の専門家が配置され,研究においても実証分析される。彼らは企業経営者の発言など話し言葉をデータに還元して分析する。決算発表の席でCEO の発言がどのような単語を選んでいるかは,有益なデータになり,そこから読み取れる感情が企業における超過収益の源泉となる。同じく文系出身者が多いマスメディア領域,広告領域,エンターテインメント領域は,従来,目に見えないもの,例えば義理や人情,体力や運といったものに左右されて来た。しかし,人工知能の発達によりSNS 上のトピックや投稿からユーザーの属性情報を把握して蓄積し,ターゲットを絞り込み,ニュースや広告を表示できるようになった。音楽においては,自然言語解析を援用したJ-POP やアニソン等の歌詞を対象とした定量的研究が登場した。本論文では,16 作品の「プリキュア」シリーズの楽曲に対し,歌詞をデジタルデータ化した上で形態素解析を施し,語の頻度,特徴語といった観点から歌詞の特徴について考察を行う。アニメの主題歌は本稿の内容を反映して作るという前提の下,主題歌を分析することが本編の内容を分析する際に参考になると捉えた。
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
After/Withコロナの「国際日本研究」 : ヨーロッパからの報告
巻号頁・発行日
2022-03-31

2020年12月11日-13日の3日間、国際日本文化研究センターを舞台にオンラインを結び開催された「国際日本研究」コンソーシアム主催の「ヨーロッパ日本研究学術交流会議--緊急会議After/Withコロナの「国際日本研究」の展開とコンソーシアムの意義」の記録。「国際日本研究」コンソーシアム刊行の第5論集にあたる。
著者
井上 学 桐村 喬
雑誌
じんもんこん2009論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, no.16, pp.345-350, 2009-12-11

本研究は,戦前期における大都市内部の公共交通機関の利用実態を復原することを目的としている.対象地域は京都市であり,1937年に実施された市電・市バスの交通調査結果と,1941年に実施された市民調査結果を利用する.GISを利用した2つの資料の地図化により,当時の都市内交通の結節点が示され,市電と市バスの利用パターンの差異が示された.また,都心部での昼間時の在宅者が多い一方で,都心部への通勤・通学需要の大きさも示された.
著者
スタインバーグ マーク エルネスト・ディ・アルバン エドモン 須川 亜紀子 松井 広志 エルナンデス・エルナンデス アルバロ・ダビド
出版者
国際日本文化研究センタープロジェクト推進室
雑誌
メディア論、メディア表現とファン文化報告書 : MANGAlabo 7公開ワークショップ
巻号頁・発行日
pp.1-71, 2021-03-27

現代日本の大衆文化の一種であるアニメやマンガが益々注目を集める中、同人誌やコスプレなどのように、このメディア文化を中心にして行われる活動にも注目が集まっている。アニメやマンガといったメディア表現とファン文化を考える際、「商品と消費者」という単純な構造を超え、メディアの性質とその発展、メディア表現の特徴や我々がどのようにメディアと付き合うのかを、考える必要がある。この公開ワークショップにおいては、最先端のメディア論を踏まえ、3名の講師から現代日本の大衆文化におけるメディア表現とメディア使用の接点について学ぶ。
著者
藤井 仁奈
出版者
文教大学大学院言語文化研究科付属言語文化研究所
雑誌
言語と文化 = Language and Culture (ISSN:09147977)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.269-284, 2012-03-01

Miyoji is a main character of Tempo 12nen no Shakespeare. He is a man of the humblest birth in Edo period; he is a cunning schemer who wants to be in the ruling classes by using words. He idntifies himself as an expert wordsman just like his master who was an expert swordsman. He commits crimes just like as Macbeth: an old which woman makes a prediction about him, which controls him completely. She also tells him that his taboo is one pair of twin women. However, he fervently feels a secret love for them and at last he rapes and kills one and he married the other after killing her husband. This violation of his taboo collapses his identity: he loses his ability to use words and takes his own llife. He can't use any trick or scheme with his wife. He is a defective schemer. This kind of absurdity, which Inoue wanted to write in this play, is put together into Miyoji. I hope to analyse Miyoji's identity as an expert wordsman while showing his contradiction and insanity and suggest the absurdity coming from Inoue's satire on this modern world.
著者
小枝 義人
出版者
拓殖大学国際日本文化研究所
雑誌
拓殖大学国際日本文化研究 = Journal of the Research Institute for Global Japanese Studies (ISSN:24336904)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.141-168, 2023-03-25

池田勇人の首相政務秘書官、池田が創始した自民党の派閥「宏池会」事務局長、首相・大平正芳のブレーンも務めた政治評論家・伊藤昌哉の死後、筆者は淳夫人から伊藤の遺した大量の未公開史料を譲り受けた。本稿は、その中にあった草創期の宏池会に関する未公開史料を解析・検証したものである。内容は一九六四年一〇月の東京オリンピック後間もなく病気のため首相を辞任する池田の退陣表明文案、後継指名に至る政局シミュレーションと池田亡き後の宏池会の展望が中心である。前者は二〇〇字詰め原稿用紙二枚、後者は二五枚に亘り、いずれもブルーのインクで記されている。本稿が今後の戦後日本政治史研究の一助となれば幸いである。
著者
池田 さなえ
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:24343110)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.7-73, 2023-03-31

本稿は、明治期の政治家を中心として広がる多彩な属性の人的ネットワークを可視化する方法を考案し、それをもとに明治政治史における地方人士「組織」の問題に新たな光を当てるものである。明治期の政治においては、地方人士の中に根強く存在した強固な反政党意識や組織への強い忌避感という条件のもと、議会に基盤を持たない藩閥政府の指導者たちはそのような「組織されたくない人びと」にアプローチせざるをえなかったという固有の困難が存在した。 本稿では、このような条件下での藩閥政府の指導者による「組織」の実態を明らかにするために、藩閥指導者を中心とした地方人士のネットワーク把握の方法を考案・提示した。具体的には、明治期に地方「組織」に奔走した政治家の一つの拠点に軸を据え、明治政治史の基礎的史料である書簡のみならず、異なる種類の複数の史料から人名データを抽出し、独自の指標で四象限平面上に配置・色分けする方法である。本稿で検討対象としたのは、政社―国民協会、団体―信用組合の組織化を目指して全国をくまなくめぐり、自らの手足と耳目で「組織」することにこだわった政治家・品川弥二郎とその京都別荘・尊攘堂である。 分析の結果として、以下の諸点を指摘した。1. 品川にとって尊攘堂は、政治家別荘一般について指摘されているような政界からの逃避や慰安のためだけの場ではなく、また維新殉難志士の慰霊・祭典を行うという堂創設の本来的目的のみでもなく、在野における地方人士「組織」のための拠点、あるいは連絡機関であった。2. 品川―尊攘堂を中心とするネットワーク自体の持つ魅力に惹き寄せられ、全国から多様な属性の人びとが集まっていた。3. 尊攘堂は、これら様々な背景を持つ人びとがそれぞれの目的や持ち場を一時的に離れて集う大規模なコミュニタスであり、このようなコミュニタスを持ったことが、組織を忌避する地方人士を品川が幅広く把握できた要因であったと考えられる。