著者
瀬筒 秀樹
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.135-137, 2017-03-10 (Released:2017-03-24)
参考文献数
7

カイコ(蚕)がつむぐシルク(絹)は,古来より衣服の材料として人間に利用されてきた。シルクは,肌に優しく,低CO2排出量の天然タンパク質長繊維として見直されつつある素材である。カイコを育てて繭からシルクをとる「養蚕」は,明治時代以降の日本の主要な外貨獲得産業となり,日本の近代化を支えた。しかし,世界恐慌や代替品の化学繊維の登場,さらに国際価格競争の激化や農家の高齢化により,日本の養蚕業は深刻な存亡の危機に立たされている。そこで近年,日本に蓄積された高度な養蚕技術と,遺伝子組換え等の新たなバイオテクノロジー技術を組み合わせることで,従来の養蚕業を新たな産業(新蚕業)に転換する試みが進められている。その象徴が,「ひかるシルク」である。ひかるタンパク質=蛍光タンパク質をシルクに組み込んで,ひかるシルクをつくる技術は,これまでにないシルクと新素材をつくり出すことができるだけでなく,カイコを医薬品の製造工場として利用可能にする技術であり,「蚕業革命」を起こしうる技術である。表面科学やナノテクノロジーの研究は,今後のシルク新素材・新デバイスや新利用法の開発において,非常に重要な役割を果たしていくことが期待される。
著者
道本 徹
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.203-209, 2001

昨年都立病院で発生した女性患者が消毒液の注射により死亡した事件で, 死亡した患者の遺族が医療ミスとその隠蔽工作によって受けた精神的苦痛に対して提訴する考えであることが報じられており, これに対し病院側は医療事故対策を検討し再発防止のために「航空機の事故防止対策の手法を取り入れ, 事故報告をどんどん出すように奨励している」と述べている.また, 今年の5月の朝日新聞の記事では医療ミス防止に向けてNASA (航空宇宙局) 方式を導入する米国の復員軍人省の例が紹介されている.<BR>NASA方式というのは航空の自発的安全報告制度のことでFAA (米国連邦航空局) から委託を受けて第3者であるNASAが1976年から運用している制度であり, 人間はミスを犯す者であるとの認識から故意でない限り, 報告者を罰するより事故の再発防止の方を重要視する免責制度を基本とした安全報告制度である.この制度は航空機のパイロットや客室乗務員, 整備士, 航空管制官等が, 安全を脅かすようなミスを犯したり, いわゆるヒヤリ・ハット的な出来事を自発的に報告し, 事故となる前にプロアクティブに対策をとり事故を未然に防止するために活用されている.米国においてはこのような免責を基本とする安全報告制度は航空の世界だけでなく他の交通機関や医療の事故を未然に防ぐ対策を取るうえで有効とされている.<BR>最近の航空機事故の原因を分析するとヒューマンファクターに起因するものがほとんどであり, 事故後のパイロット, 整備士あるいは管制官の証言で「その問題は前から分かっていたんだよ」ということがしばしばある.GAINはこれら航空に携わる人々の自発的な安全情報を集め, 分析し, 事前に安全対策を取る世界的なネットワークを構築しようとするものである.本稿は航空の専門家でない利用される立場の皆様に航空界で現在進められている安全報告制度「GAIN」の活動についてご紹介すると共に, 「GAIN」のプロアクティブな事故防止の考え方はあらゆる方面での事故防止対策に応用され得るものであることをお伝えするものである.
著者
黄 宸佑 竹田 謙一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.243-246, 2016-08-25 (Released:2016-09-13)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究では,羊毛食い発現の日内変動を2つの飼育密度条件下で調べた.供試個体を高密度(全45頭,1頭/m2)と低密度(全24頭,0.4頭/m2)条件下で供試個体の羊毛食いを10分間隔で5分間の連続観察を行い,各個体ごとの羊毛食い発現回数と,羊毛食い1回あたりのバイト数,羊毛食い発現個体数を記録した.両飼育密度条件下において,夕方の給餌後の時間帯での羊毛食い回数,バイト数が他の時間帯より有意に多かった(P<0.05)が,1回あたりのバイト数は有意に少なかった(P<0.05).また,1日あたりの羊毛食い発現個体割合は,夕方の給餌後に最も多くなった(P<0.05).以上より,ヒツジの羊毛食いは摂食行動後に多発し,摂食時における何らかの口唇への刺激不足が羊毛食い行動発現に影響している可能性が示唆された.

1 0 0 0 OA 滋野井家記録

出版者
巻号頁・発行日
vol.[94],
著者
折田 明子
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2009-EIP-44, no.4, pp.1-6, 2009-05-29

ブログや SNS、掲示板などのソーシャルメディアにおける匿名性の高いコミュニケーションにおいては、会員登録や仮名利用によって利用者の識別性が確保されている。だが、第三者が、ID そのものを乗っ取るまでにいかないものの、趣味や嗜好を真似て特定のユーザに「なりすます」という問題が発生している。長らく使っていた仮名を他者が意図的に名乗り出してコミュニケーションに混乱を招いたり、個人のブログやサイトの管理者であるかのようにふるまうといった行為だ。本稿では、ネット上の匿名性と識別性の整理を踏まえた上で、こうしたなりすまし問題についての考察を試みる。

1 0 0 0 OA 貞觀政要10卷

著者
唐呉兢撰
出版者
忠田吉兵衞活字印
巻号頁・発行日
vol.[6], 1623

1 0 0 0 OA 贅語

著者
三浦晋安貞 著
出版者
加賀屋善蔵 [ほか]
巻号頁・発行日
vol.第5(下), 1829

1 0 0 0 OA 両国往復書謄

巻号頁・発行日
vol.[157], 1000

1 0 0 0 OA 市中取締類集

出版者
巻号頁・発行日
vol.[14] 市中取締之部,
著者
大平 麻由佳 中川 元斗 大田 政史 石橋 康弘 有薗 幸司 横山 誠二 甲斐 穂高 山口 雅裕
出版者
大学等環境安全協議会
雑誌
環境と安全 (ISSN:18844375)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.31-42, 2015-03-31 (Released:2015-04-10)
参考文献数
58

亜鉛は、メッキや真鍮の原料などに広く用いられる工業的に重要な金属であり、人体の必須ミネラルでもある。一方、大量摂取は他の重金属と同様、ヒトを含めた生物にとって有害であり、日本においても環境基準が設定されている。本研究では、亜鉛暴露がメダカ仔魚に与える影響を検討した。塩化亜鉛溶液を用い、亜鉛イオンのメダカ仔魚に対する96時間後の半数致死濃度を求めたところ、5.4(5.2-5.7 95% CL)mg/Lであった。また、塩化ナトリウムやリン酸二水素ナトリウム共存下では、塩化亜鉛の毒性が大きく軽減され、特にリン酸二水素ナトリウムの毒性軽減効果が顕著だった。また、塩化亜鉛溶液に曝露した仔魚において、組織学的に重篤な異常は認められず、培養細胞で報告されている細胞増殖の抑制も認められなかった。以上の結果から、ナトリウム塩の種類によって亜鉛の急性毒性に対する軽減効果に違いがあることが確認された。また、培養系における細胞の傷害は個体レベルで生じる傷害を必ずしも反映していないことが示された。
著者
松川 安樹 宮下 守 朝倉 祝治
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.392-399, 2008-09-15 (Released:2009-03-20)
参考文献数
12
被引用文献数
3

本研究は,冷却水など建築設備配管として多用されている亜鉛めっき鋼管の腐食挙動を明らかにするために行った.実験では,40℃の水道水,純水,および各種アニオンを含む水溶液に純亜鉛を浸漬し,腐食速度,腐食電位,および腐食状態から,亜鉛の腐食挙動に対する各種アニオンの影響を評価した.実験の結果は,以下の通り要約される.HCO3-は亜鉛の腐食反応を抑制する.これは,亜鉛表面に生成する腐食生成物 (Zn4CO3(OH)6·H2O) がアノード反応を抑制するためである.一方,SO42-, Cl-,およびNO3-は亜鉛の腐食を加速する.水道水に含まれる各種アニオンの濃度範囲 (<1 mmol L-1) における腐食の促進度の順位は,SO42->Cl->NO3-の順である.SO42-とCl-が亜鉛の腐食を加速する要因は,表面に生成した保護皮膜の破壊による.NO3-については,その酸化性がカソード反応を促進することによるものと推測する.純水中の亜鉛の腐食速度は,つくば市水中のそれよりも必ずしも小さくない.これは,つくば水中に含まれる各種塩類により亜鉛表面に保護的な皮膜が形成されることが原因と考える.本報を基に,水道水の腐食性を論じることができる.
著者
梶田 孝道
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.68-77, 2003

この数十年に及ぶ日本の「外国人問題」の変容は、「国際化」から「グローバル化」への動きであり、また「国際化」についていえば、いわば友好としての「国際化I」から「内なる国際化」を意味する「国際化II」への動きであった。日本の外国人も、在日韓国・朝鮮人や在日中国人に代表される「オールドカマー」から各種の「ニューカマー」へと多様化した。そこでの第一の着眼点は、外国人というと「3K労働」も厭わない労働者というイメージが強いが、外国人労働者就労は単純労働の分野に限られず、日本企業の多国籍化や国際進出に伴う部著にも広がっている。また、卒業後に日本企業に就職する留学生も増加した。彼らのなかには新中間層に属する人も多く、従来の外国人労働者のイメージでは捉えきれない。第二に、これまでの「オールドカマー」に見られるように、日本社会への定住化がほぼ前提とされ、その上で同化や帰化の是非、あるいは民族文化を保持したままでの定性化の是非が議論されてきたが、南米社会と日本を行き来する南米日系人リピーターに代表されるようなトランスナショナルな存在が目立ってきた。こうした二つの多様化は世界各国で見られる現象であり、このような現実の変化に対応して、分析上のパラダイムの方も、当該社会への同化や統合の是非を問題とする「統合パラダイム」に加えて、国境を越えた複数の社会関係のなかで生きる人々を捉える「トランスナショナル・パラダイム」を併用することが必要となってきている。