著者
佐藤 義則
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.526-531, 2009-11-01 (Released:2017-04-25)
参考文献数
45

GIS(Geographic Information System)は,地図インターフェイス上でのさまざまな情報の視覚化にとどまらず,分析と意思決定を支援するツールとして大きな発展を遂げた。近年では,時間軸を導入した歴史GIS(Historical GIS)の活用も進んでいる。本稿では,図書館や情報センターにおけるGISの活用,特に,古地図等の資料のデジタル化や時間空間データベースの活用および関連するツールの整備について,現状を整理することを目的とする。また,今後の整備においては,図書館・情報センターという枠組みを超えた幅広い協力が必要であることを示す。
著者
矢野 桂司 鎌田 遼
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

<br>&nbsp;本研究の目的は、国内外の図書館・博物館などが所蔵する日本で作製・出版された過去の地図・絵図などの古地図を、総合的・横断的にインターネット上で検索、閲覧、分析することができる、オープンソースによるWebGISベースでのポータルサイト『Japan Old Maps Online(仮)』を構築し、ボランタリーなクラウドソーシングを活用しながら、伝統的な人文学の「蛸壺的な」研究スタイルを、学際的・国際的な協働でのプロジェクト型研究に革新することにある。<br>&nbsp;近年、人文学で扱う紙ベースの学術資料のデジタル化と、それらのによる公開が急速に進んでいる。日本においても、『国立国会図書館デジタルコレクション』がその代表で、国立国会図書館に所蔵されている多くの学術資料がデジタル化され、インターネット上に公開されている。その学術資料の中には、本研究が対象とする日本の地図・絵図などの古地図も含まれる。例えば、『国立国会図書館デジタルコレクション』には2,644件もの絵図が含まれている。この他、国土地理院の『古地図コレクション』(300件)をはじめ、東京都立図書館、国際日本文化センター、歴史民俗博物館、各大学図書館など多くの古地図を所蔵する機関が独自に公開を積極的に進めている。しかし、それらインターネット上に公開されたデジタル古地図を総合的・横断的に検索できる効果的なWebGISベースのポータルサイトは日本に存在していない。<br>&nbsp;2000年代中葉から、伝統的な人文学においても、ICTを活用して学術資料のアーカイブ構築、文化コンテンツの分析、学術成果の公開や展示の方法などを、文系・理系の連携・融合・統合によって複数の研究者によるプロジェクト型の研究スタイルをもつデジタル・ヒューマニティーズが展開している。その中で、地理空間情報を扱う歴史GISは、人文学の空間的ターンとしての地理人文学(GeoHumanities)あるいは空間人文学(Spatial Humanities)などの人文学の新しい学問分野の形成において中心的な役割を果たしている。日本における歴史GIS、ひいては伝統的な人文学を、学際的・国際的な協働による新たなプロジェクト型の研究スタイルに飛躍的に展開させるためにも、その基礎資料となる日本の古地図を総合的に・横断的に検索し、さらにGIS分析を可能とするポータルサイトの構築が急務である。 <br>&nbsp;本研究が目標とする国内外に散在する日本の古地図のポータルサイトを構築するためには、大きく、1)ポータルサイトそのものを構築し運営するための基盤づくり(オープンソースによるシステム開発)と、2)そのポータルサイトに取り込む日本の古地図の情報収集(各機関が所蔵する地図目録とメタデータ、デジタル化、さらには権利関係の処理など)が必要となる。 まず、ポータルサイトのシステム開発に関しては、全てを新たに独自開発するのではなく、Harvard大学空間解析センター(CGA)のWorldMapを拡張したHarvard HypermapやMapWarperなどのオープンソースソフトウェアと、古地図を共有するための既存のプラットフォームであるOld Maps Online(OMO)などのコンテンツを活用し、日本の古地図に特化した多言語対応型のポータルサイトを構築する。 <br>&nbsp;本研究が対象とする日本の古地図は、基本的に、日本で作製され、日本を描いた紙地図である。時代的には、近世以前と近代のものを順に整備するが、最終的には、現在のボーンデジタルなものをも含めて運用できるものとする。<br>&nbsp;前述したOMOには、すでに多くの地図が登録されているが、日本の古地図は必ずしも多くない。さらに、OMOに地図画像を提供している機関のすべての地図がデジタル化され、公開されているわけでもない。例えば、OMOに参加している大英博物館には約600件の日本の古地図があるが、それらは未だデジタル化されていないし、Harvard大学図書館が所蔵する122の日本の古地図のうちデジタル化され公開されているものは現時点で25件に過ぎない。また、UCB東アジア図書館が所蔵する三井コレクションの中には江戸時代から明治にかけての日本の古地図2,200件余りが含まれているが、デジタル化が完了しているものは800件で、今後、残りのデジタル化が必要である。ポータルサイトの構築の過程には、図書館・博物館の地図部門のキュレータと古地図を対象あるいは活用する研究者、そしてそれらをICT技術でつなぐ3者の協働でのプロジェクト型研究が必須で、このような国際的・学際的な協働は、伝統的な人文学を革新する原動力となる。
著者
佐々木 悠人 水野 治久 永井 智
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第IV部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.259-270, 2017-02-28

本研究は,研究Iとして,大学生の専門的心理的援助要請態度にどのような変数が関連するかを明らかにするために質問紙調査が実施された。大学生193名を対象に調査を行い,社会的スティグマが自己スティグマに正の影響を,自己スティグマが専門的心理的援助要請態度に負の影響を与えていた。研究IIとして,自己スティグマの軽減と専門的心理的援助要請態度の改善を目的とした介入プログラムを作成,実施した。大学生及び大学院生11名を実験群,25名の大学生と大学院生を統制群とし,60分間×2コマの介入を行った。分析の結果,専門的心理的援助要請態度のみ改善を示した。Factors that affect college students' professional help seeking preferences were explored and an intervention was conducted to change their attitudes about help seeking. First, a questionnaire study was designed to examine how college students viewed psychiatric patients (perceived social distance), their self-stigma about receiving professional help, and their willingness to seek professional help. Undergraduate and graduate students (N=193) responded to questionnaires consisting of the Self-Stigma Scale, Social Distance Scale-Revised version (SDS-R) and Attitudes Towards Seeking Professional Psychological Help Scale (ATSPPH-SF). Results were analyzed by Structural Equation Modeling, which indicated that social distance positively affected self-stigma and self-stigma negatively affected help seeking preferences. Next, an intervention program was conducted for attitudes toward professional help seeking in 11 college and graduated students, which consisted of two sessions. In the first session (sixty minutes), the researcher gave basic information about mental illnesses and introduced the college counseling center as a helping resource. In the second session, researches helped each participant focus their coping strategies. Results indicated that the intervention did not reduce self-stigma regarding mental illnesses. However, the mean score of the participants in the Help Seeking Scale improved. Limitations and implications of this research are discussed.
著者
夏野 剛
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.558-559, 2017-06-15
著者
欠ノ下 郁子 澤田 いずみ 吉野 淳一
出版者
札幌医科大学
雑誌
札幌保健科学雑誌=SAPPORO MEDICAL UNIVERSITY SAPPORO JOURNAL OF HELTH SCIENCES (ISSN:2186621X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.14-20, 2017-03-01

目的:思春期に統合失調症を発症した人が不調を感じてから精神科病院へ受診し、統合失調症との認識を持つまでのMHLの様相を明らかにすることである。研究方法:研究協力者4名を対象に半構成的面接を行い、質的記述的研究法を用い分析を行った。結果:本研究の結果として、MHLは4つのカテゴリーで構成され、初回受診過程におけるMHLの様相は(健康状態への自己認識)の変化に沿って4つのフューズに分かれた。対象者は(病気になって初めてわかる精神疾患に関する知識)を語り、病気になるまでは知識がない中で(必死に模索してきた自己対処行動)を行っていた。初回受診に至ったのは、(周囲の人の健康状態への認識)の変化によるものだった。結論:初回受診過程におけるMHLは4つのフューズに分かれ、このMHLに影響する要因は個人特性、思春期の特徴、対象者を取り巻く人々のMHLが考えられ、DUP短縮に向けた看護の可能性が示唆された。
著者
後藤 綾文 松浦 均 GOTO Ayafumi MATSUURA Hitoshi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.69-75, 2017-03-31

本研究の目的は、児童期から青年期にあたる小学生から大学生までの子どもを対象とした援助要請研究について、友人に対する援助要請を促進する要因という観点から整理することである。先行研究で扱われている援助要請に関わる概念を、操作的に援助要請意図、援助要請態度、援助要請行動の3つの概念に分類し、小学校、中学校、高等学校、大学という各学校段階ごとに概説した。その結果、どの学校段階にあっても、子どもを取り巻く周囲との関係性や周囲の価値観、子どもが所属する集団や組織、環境に関わる要因が、子どもの援助要請に関わっていることが示唆された。子どもの援助要請を促進する支援や実践を考えるうえで、今後は環境要因に注目し、援助要請者と援助者との相互の影響を明らかにする必要性を指摘した。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.867, pp.23-25, 1996-11-25

まずはこんなクイズの出題から…。あなたは行政改革を公約に掲げ,ある政府の首長に当選した。地元経済は国際競争力を失い,街には失業者があふれている。政府機関は余剰人員を抱え,税収は減少し,財政は破綻寸前の状況にある。あなたの使命は,次の選挙までに経済を再生させ,新たな雇用を創出し,行政のスリム化と効率化を図ること。
著者
常盤 純子 石川 奈津美 山本 莉奈 竹下 孝之 中澤 徹
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.257-262, 2014 (Released:2015-03-19)
参考文献数
11
被引用文献数
1

調節痙攣は毛様体筋の不随意的な持続的収縮により過剰な近視を呈する病態であり、その多くは心因性である。調節は通常両眼対称性に生じる反応であることから、心因性の調節痙攣も一般的には両眼性で生じ、片眼性での報告は希である。今回我々は、片眼性の調節痙攣と心因性視覚障害が合併した特異な症例を経験したので報告する。 症例は14歳女性。左眼の視力低下を自覚し近医を受診、他覚的にあきらかな異常が認められなかったため精査目的で当院を紹介され受診した。左眼は通常の視力検査では視力が出ず、トリック法を用いると良好な矯正視力が得られた。また視野検査では求心性視野狭窄を認めた。細隙灯検査や眼底検査などの他覚的検査で異常は見られなかったことなどから、心因性視覚障害と診断された。また、右眼に比べ左眼のみ過度の近視化が認められたが、調節麻痺下では屈折値に左右差はなく、眼軸長も左右差がなかったことから、左眼の片眼性調節痙攣が疑われた。 その後、経過観察中に矯正視力の変動を繰り返し、トリック法を用いても良好な視力が得られなくなり、自覚的視力は無光覚まで低下するようになった。それと同時期に輻輳痙攣も見られるようになった。 調節痙攣に対する治療として、累進屈折力レンズや調節麻痺剤の点眼を使用したが、十分な改善は得られず、輻輳痙攣が若干軽減した程度であった。片眼性の調節痙攣と心因性視覚障害という特異な所見を呈し、各種治療にも抵抗性であったが、その後の生活環境の変化で心理的ストレスが軽減された様子があり、発症1年後には自覚症状は改善し、調節痙攣などの所見は自然消失した。
著者
古宮 誠一 今泉 俊幸 橋浦 弘明 松浦 佐江子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.5, pp.1-8, 2014-03-12

プログラミングの初学者にとって,プログラムの記述から,そのプログラムの挙動を思い描くことは難しい。その原因は,初学者がプログラムの実行を制御する構文の記述内容が変わるとプログラムの挙動がどのように変化するかということを理解できていないからだと考えられる。そこで著者らは,制御構文と再帰関数を採り上げ,これらの構文の記述内容によってプログラムの挙動がどのようになるか,プログラムの挙動を可視化するシステム AZUR を開発した。そして,AZUR をプログラミングの演習授業に導入し,学生達が使用した結果を分析することにより,AZUR の可視化機能がプログラミングの学習に有効であることを示している。It is difficult for beginner programmers imagine how a program does behave. It is thought that the cause is because beginners cannot understand it how the behavior of the program changes when control statements (e.g. if-statement, while-statement, switch-statements) are changed. Therefore they focused on control statements and recursive function, and developed system AZUR which visualized the behavior of the program. And they introduce AZUR into a programming class and verified that a visualization function of AZUR is effective for learning of the programming by analyzing the result that students used.
著者
藤原 未雪
出版者
日本読書学会
雑誌
読書科学 (ISSN:0387284X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.43-57, 2017-05-22 (Released:2017-06-08)
参考文献数
14

This study examines how advanced Japanese learners misunderstand the meanings of texts within Japanese novels. Four native Chinese speakers studying at a graduate school in Japan participated in the survey, which collected concurrent verbal reports. The results revealed two types of misunderstandings: (a) text cohesion-related misunderstandings, such as when readers make incorrect inferences about unmarked agents or speakers; and (b) misunderstandings related to the interpretation of words and sentences. Based on these observations, this paper suggests two practices that may be effective for reading Japanese novels: namely, (i) learning skills to improve comprehension for text cohesion and different sentences; and (ii) promoting readers' contextual interpretation of words and sentences.
著者
石井 陽一
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法學研究 : 法律・政治・社会 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.30-56, 1990-05

論説はじめに一、複数政党の復活二、数次の選挙と政党の盛衰三、欧州議会選挙の法源四、第三回欧州議会選挙前後のスペインの政局むすび