著者
芥川 真一 笠原 敏志
出版者
Japanese Society for Engineering Education
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.26-32, 2000
被引用文献数
2 2

自然現象の数理モデルを計算機によってシミュレーションする手法として有限要素法が発展し,現在では科学技術計算の根幹を支える手法のひとつとしてその地位を確立している.航空機の設計に初めて用いられた有限要素法は,既に半世紀ほどの開発の歴史を経て現代に至っており,その最先端技術には目を見張るものがある.一方,大学などの専門教育課程においては学部3年から大学院にかけて有限要素法を学習するカリキュラムが多く見られるが,初めて有限要素法に取り組もうとする学生は,半世紀前の学生と同様に,変分原理,仮想仕事の原理,発散定理などの難解な概念,あるいは偏微分方程式,積分方程式などの数学的表現と格闘することになる.多くの場合,これらの概念を学ぶ事と,実際の問題を解くプロセスとを関連付ける事が困難であるために,初期の段階で学習意欲が低下したり,実際に計算を正しく行う事が出来るようになった段階でも,力学問題における応用力に欠けている場合もある.本論文は,これらの状況を勘案し,「物体に荷重が作用したときに何がおこるのか?」という極めて明快な課題に対して,リアルタイムに解を求め,その結果を即時にコンピュータのスクリーンに表示できるように作成した有限要素法解析プログラムについて,その適用性と可能性を考察したものである.
著者
吉川 峰加 栢下 淳 津賀 一弘 木村 浩彰 吉田 光由
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

背景:本研究では,全身の機能と口腔機能との関連を横断調査で確認し,希望した者に栄養指導または口腔リハビリテーションを8週間実施することで,半年毎に平成31年秋まで全身・口腔機能に変化があるか否かを確認することを目的とした.方法:対象者は自分の歯または義歯等で咬合の安定している41名(男性17名,女性24名,68-90歳)とした.全身疾患,服薬状況,日常生活に関する質問票,MMSE,EAT-10,MNA-SF,口腔機能評価としてディアドコキネシス,最長発声持続時間,3オンステスト,口腔湿潤度,咬合力検査,舌圧検査,咀嚼能率検査を実施した.また握力,歩行速度,膝伸展力を計測し,栄養調査とINBODYによる体組成調査を行った.結果:協力者は皆高血圧等の全身疾患を有するものの自立して日常生活を送っていた.前向き調査へ参加できている者は,対照群18名(男性9名,女性9名),栄養指導群13名(男性6名,女性7名),口腔リハ群8名(男性3名,女性5名)であった.第一回目の調査結果より,MNA-SFで低栄養の疑いのあった者は8名(男性2名,女性6名),サルコペニアの者は7名(男性3名,女性4名)であった.これら低栄養やサルコペニアを呈する者は舌圧やEAT-10との相関が認められなかった.また舌圧が20kPa未満の者において,EAT-10 の錠剤服用困難感の項目で関連を認めた.加えて,女性において舌圧と膝伸展力に有意な相関を認めた.まとめ:本研究協力者は日常生活を自立して送る,健康に自信のある者が大多数であったものの,サルコペニアやオーラルフレイルを有する者が存在した.また栄養調査より,高齢者の栄養や運動に関する知識に偏りを認め,今後我が国の健康寿命延伸の上で,大きな課題が浮き彫りとなった.
著者
松田 幸子
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

オーラルフレイルの前兆を予測するための評価の1つとして、舌骨の位置を側方セファロ分析によって水平および垂直的位置の推移について評価した。加齢とともに舌骨が垂直方向の下方に推移する傾向があること、特にそれは男性において著明であったことを国際学会において発表した。同様の発表は少なかったが、ディスカッションの場で、海外でも患者が加齢によりむせやすくなる傾向があるという情報を共有することができた。現在英文誌に投稿中である。簡易的に舌骨の評価を行うことができないかを評価するために、歯科治療においてよく用いられているパノラマエックス線写真を用いることができないか評価した。パノラマエックス線写真における舌骨の見え方を評価した。顎変形症や症候群、口蓋裂などの顎骨の変形を主とした患者を除いた333名(25本以上の歯を有している22-69歳までの矯正治療を予定している患者)のパノラマ分析と側方セファロ分析を行いった。パノラマエックス線写真で舌骨の見え方を前回同様に6群に分けて評価した。舌骨が一部ないしほぼ見えない群では、側方セファロ写真でも舌骨が低い位置にある傾向を示した。ただし、パノラマエックス線写真上で舌骨が完全に見えている症例でも、側方セファロ分析では舌骨が低い位置にある症例も認められたことから、パノラマエックス線写真で舌骨が一部しか見えない患者は舌骨が低位にある傾向が高いが、パノラマエックス線写真で舌骨がすべて見えている症例でも側方セファロ分析では舌骨が低い位置に認められる症例があることが明らかになった。この研究成果を国際学会にて発表した。咬合高径の低さとの関連性について検討した。リケッツの分析の下顔面高(LFH)と舌骨の上下的な位置について分析を行ったが、有意な傾向は認められず、咬合高径と舌骨の垂直的な位置の関連性は低いことが示唆された。
著者
森田 学 丸山 貴之 竹内 倫子 江國 大輔 友藤 孝明
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

高齢者をターゲットとした研究は、日本をはじめとする先進国の喫緊の課題である。これまでの歯科領域における研究対象としての“高齢者”は、主に“要介護高齢者”あるいは“要支援高齢者”である。これに対して近年、“オーラルフレイル(口腔機能の虚弱)”という口腔機能の軽微な衰えを表す概念が注目されている。現実には、日常生活で口腔機能に不自由を感じていない高齢者(前オーラルフレイル期高齢者)は多数存在する。しかし、このような高齢者を対象に歯・口の機能の継時的変化(機能の衰え)を追跡した研究は少ない。本研究では、オーラルフレイルに関連する要因とオーラルフレイルに至るまでのプロセス(パス)を解明することとした。岡山大学医療系部局研究倫理審査専門委員会で承認を得たのちに大学病院外来患者を対象に、オーラルフレイルと関連する身体的、精神的、社会的指標を調査した。オーラルフレイルの判定には、オーラルディアドコキネシス、舌圧、口腔乾燥、咀嚼能力、咬合接触面積、細菌検査、質問票の結果から総合的に判定した。オーラルフレイルと関連している可能性のある指標として、全身の老化指標(BMI、栄養状態、日常生活動作)、生活のひろがり(活き活きとした地域生活を送っているか否か)、精神・心理状態(WHO Five Well-Being Index)など調査した。総計150名の患者が調査に参加した。現在35名(平均年齢74.3±5.0歳、男性10名、女性25名)について入力し、分析を開始している。舌圧、口腔乾燥、咀嚼能力、質問票については正常の者が多かった。しかし、細菌検査、咬合接触面積、オーラルディアドコキネシスについては、正常以下の者が多かった。総合的に判断した口腔機能低下症が認められる群(6名)と認められない群(29名)との間で、全身の老化指標、生活のひろがり、精神・心理状態を比較したところ、2群間で有意に異なる指標はみられなかった。
著者
市川 哲雄 誉田 栄一 矢儀 一智 南 憲一
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

アンケート調査でフレイル得点もオーラルフレイル得点も年齢とともに一様の増加傾向を示した.歯が悪いこと,唾液,食べこぼしがフレイル得点に関係していた.食生活と摂食行動は 40歳以降で適正な方向に推移した.オトガイ舌骨筋断面積と開口力,舌圧,嚥下の持続時間に比例し,筋量と咀嚼・嚥下機能との関連性が示された.咬合支持喪失群においては,速筋化が見られた.生体電気インピーダンス分析で,上腕と咬合力に相関が,舌圧は認められなかった.以上の結果,筋量関係が最も有効であり,バイオマーカーとしても筋量を示す指標が重要であり,当初予想した速筋,遅筋等の運動速度については指標になり得る知見は得られなかった.
著者
近藤 祐介
出版者
九州歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

フレイルとは高齢者の筋力や活動が低下している状態であり,歯科口腔領域においては食環境の悪化から始まる筋肉減少を経て生活機能障害に至るものをオーラルフレイルと呼ぶ.オーラルフレイルを引き起こす要因は様々であるが,加齢に伴う唾液腺の機能低下も一因となる.超高齢社会に突入した本邦ではフレイルに陥る高齢者は飛躍的に増加することが予想される.そこで我々は,高齢者における唾液腺機能低下のメカニズムを解明し治療法を開発することにより,オーラルフレイルを予防することを目的とし,本研究を立案した.研究には16週齢と48週齢の老化促進モデルマウスであるSenescence-Accelerated Mouse Prone 1 (SAMP1) を用いた.In vivo 解析において16週齢と48週齢のSAMP1を比較すると,耳下腺唾液量は同等であったが,顎下腺唾液量は48週齢で有意に低下した(p=0.005).Ex vivo顎下腺灌流モデルにおいても,副交感神経刺激による顎下腺からの分泌量は48週齢で有意に低下したが(p=0.036),副交感神経刺激と交感神経刺激を同時に行ったところ唾液分泌量は16週齢と48週齢で同等であった.一方,細胞内Ca2+濃度を評価したところ,副交感神経単独刺激および副交感神経,交感神経同時刺激のいずれにおいても16週齢と48週齢で同等であった.HE染色においては,顎下腺では48週齢でのみリンパ球浸潤の増加が確認され,耳下腺では16週齢と48週齢いずれにおいてもリンパ球浸潤は認めなかった.免疫組織化学では耳下腺,顎下腺ともに16週齢と48週齢においてAQP5,NKCC1,TMEM16Aそれぞれの発現に明らかな差はみられなかった.
著者
Sung-Bum Ju Gi Duck Park
出版者
理学療法科学学会
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.278-281, 2017 (Released:2017-02-24)
参考文献数
24
被引用文献数
4

[Purpose] This study was conducted to investigate the effects of ankle functional rehabilitation exercise on ankle joint functional movement screen results and isokinetic muscular function in patients with chronic ankle sprain patients. [Subjects and Methods] In this study, 16 patients with chronic ankle sprain were randomized to an ankle functional rehabilitation exercise group (n=8) and a control group (n=8). The ankle functional rehabilitation exercise centered on a proprioceptive sense exercise program, which was applied 12 times for 2 weeks. To verify changes after the application, ankle joint functional movement screen scores and isokinetic muscular function were measured and analyzed. [Results] The ankle functional rehabilitation exercise group showed significant improvements in all items of the ankle joint functional movement screen and in isokinetic muscular function after the exercise, whereas the control group showed no difference after the application. [Conclusion] The ankle functional rehabilitation exercise program can be effectively applied in patients with chronic ankle sprain for the improvement of ankle joint functional movement screen score and isokinetic muscular function.
著者
佐々木 政文
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.124, no.4, pp.62-85, 2015 (Released:2017-05-16)

本稿は、1910年代奈良県下の被差別部落において、寺院や神社を媒介とする民衆教化政策がいかなる形で実施されたのかを、地域での信仰活動の変化と関連づけながら検討したものである。 奈良県下の被差別部落民は、浄土真宗を第一の信仰対象とする一方、神祇信仰や国家祭祀に対しては消極的であり、さらに他の地域から氏子組織上の差別を受けている場合が多かった。これに対し、日露戦争後に県が実施した部落改善政策は、来世信仰の改革、「真俗二諦」説の強調、氏子差別の解消、神棚の設置、国旗掲揚の普及、大神社への参拝奨励といった様々な手段を通して、彼らの国家意識を強化しようとした。本稿ではこの過程を、近代日本の民衆教化政策が、従来地域一般の信仰生活から排除されていた人々を神社祭礼の体系に取り込んでいった過程として評価した。 同時に、日常的に部落住民との関係が深かった被差別部落寺院の僧侶には、部落改善政策の担い手となることが強く期待された。しかし、彼らは部落住民からの収入に経済的に依存していたことから、貯蓄・節約の奨励という県の政策を貫徹することが難しかった。このようななかで、県下の部落内有力者によって1912年7月に結成された大和同志会も、寺院・僧侶の部落改善事業参加に期待する一方で、檀家からの収入に依存する教団組織の体制を厳しく批判した。 第一次世界大戦中の1916年以降には、県は部落住民の国家意識を高める目的から、被差別部落への神社導入を政策的に推進しはじめた。この政策の変化を受けて、部落単位でも各部落の有力者が中心的主体となって信仰改革が進められ、部落内の寺院に明治天皇遙拝所が建設されるなど、国家意識に繋がる新たな信仰形態が模索された。
著者
森下 正康
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.145-152, 1979
被引用文献数
1

A hypothesis was tested that an affectionate bond with parents (parental affiliation) makes a child to take in the attitude and behavioral pattern of the parents (anaclitic identification). Eighty-five female students in a college and their parents were asked to answer a questionnair on value judgement, personality, and parental affiliation. The children had value system and personality similar to those of their parents as they perceived, rather than the actual parents themselves. There was a correlation between the degree of resemblance (between a child and the parents) and the degree of parental affiliation, partly supporting the hypothesis.
著者
永井龍男著
出版者
講談社
巻号頁・発行日
1992

1 0 0 0 東京の横丁

著者
永井龍男 [著]
出版者
講談社
巻号頁・発行日
2016

1 0 0 0 花の生涯

著者
舟橋聖一著
出版者
新潮社
巻号頁・発行日
1961