著者
石井 裕子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.1, pp.63-70, 1991-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
40
被引用文献数
4

シュウ酸カルシウムは水溶液中で一般には一,二,または三水和物の混合物沈殿として生成する。高温では一水祁物のみが生成するが,本研究によれば少量のクエン酸あるいはリンゴ酸ナトリウムの共存の下で二水和物のみが生成し,やや多量のクエン酸またはリンゴ酸ナトリウムの共存の下で三水和物のみが生成した。シュウ酸カルシウムー水和物の溶解度は6×10-5M程度で二水和物および三水和物が一水和物よりやや大きい。一水漁物の溶解度は100℃ではわずかに大きくなった。シュウ酸カルシウムの一,二および三水和物沈殿の形態はそれぞれ長い六角形板状,八面体および平行四辺形板状である。二および三水和物は不安定で水中で約10分煮沸すると一水和物に転移した。シュウ酸カルシウムー水胸物沈殿の結晶核は誘導時間の測定からCa3(C2O4)3n・H2Oと推定できた。シュウ酸カルシウムー水和物および二水和物は植物の葉または茎に見いだされたものと沈殿粒子との形態を比較し,またX線回折によって同定できた。植物中のシュウ酸カルシウム結晶は極めて安定で一水和物に変化するには1時間以上煮沸することが必要であった。
著者
亀井 淳三 林 隼輔 大澤 匡弘
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.131, no.6, pp.429-433, 2008 (Released:2008-06-13)
参考文献数
24
被引用文献数
3 4

咳は痰を喀出するための反射である.咳のメカニズムは明らかにされていないことが多い.そのためにピンポイントに作用する薬剤がないのが現状である.現在までに明らかにされているメカニズムは複雑である.咳が出る現象について概略を説明すると,気道に炎症があったり,また分泌物が溜まったりすると排出させようとする反射が起きる,それが咳と考えられる.咳反射の中枢への伝達経路はAδという有髄線維によると考えられている.臨床的に鎮咳薬は,咳の末梢あるいは中枢内経路のどの部位を遮断することによって咳を抑制するかが問題となる.例えば,コデインのような中枢作用性の薬剤は咳のメカニズムの中で共通経路を遮断することより効果は大きい.しかし,本来止めてはならない咳も止めてしまう危険性がある.また,中枢抑制の薬剤であるため咳以外の中枢作用,眠気なども低下させる可能性を持つ.これらを考慮すると,中枢性の薬剤で咳を遮断することは好ましくなく,より選択的な手段で鎮咳をもたらすべきである.日本において,鎮咳剤と称されているものは中枢性の鎮咳剤しかない.薬理学的には末梢性鎮咳剤と呼ばれるものがあってしかるべきであるが,実際には認可されていない.その大きな理由としては,咳のメカニズムが明確に示されていなかったことが大きな理由であろう.本稿ではこれらの問題を解決する基礎的知見となるべき咳の咳反射の求心路であるAδ線維の興奮性調節機序,特にC線維を介した咳感受性亢進機序について概説したい.
著者
福本 昌人
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.15-23, 2019-10-29 (Released:2020-07-03)
参考文献数
9

農業用水の利用実態を把握する上で、水田の取水開始時期を把握することが重要になっている。その取水開始時期を複数のSentinel-2衛星データ(マルチスペクトル画像;無償で利用可能)を用いて広域的に把握する手法を開発した。本手法では、①短波長赤外バンドのデータの解像度アップ、②修正正規化水指数(MNDWI)画像の作成、③二値化画像の作成、④湛水有無の判定、⑤取水有無の判定、⑥取水開始時期の判定、という手順で、圃場毎に取水開始時期を把握する。4月~6月に観測された8つのSentinel-2衛星データと圃場区画データを用いて本手法により対象地区の各圃場の取水開始時期を把握した。その結果、4月14日~4月20日に取水が開始された圃場が最も多かった。対象地区の一部において取水有無の判定結果に関する精度検証と内訳の分析を行った。その結果、5月15日には98%の正答率で取水有無の判定がなされていた。また、6月4日には稲の生育が進んでいた多くの圃場が「湛水なし」と判定されたが、それらは4月~5月に少なくとも一度「湛水あり」と判定されていたので、「取水あり」と判定された。したがって、本手法を適用すると、高い精度で取水開始時期が把握できる。
著者
兼宗 進
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.78-83, 2004-02-01 (Released:2017-05-25)
参考文献数
21
被引用文献数
2

WWW(World Wide Web)上の文書を検索する検索エンジンは,インターネットを利用する上で不可欠な存在である。検索エンジンは従来の情報検索技術を基礎としながら,独自の発展を遂げてきた。しかし,内部の検索アルゴリズムが十分に公開されていないことから,検索エンジンは,中の見えないブラックボックスとして手探りの使い方をされることが多い。そこで本稿では,検索エンジンの検索アルゴリズムを構成する「適切なページの収集手法」「ノイズや漏れのない検索を高速に行う手法」「適切にランキングして表示する手法」について解説する。
著者
石垣 文 山本 幸子 下倉 玲子 小林 文香 福田 由美子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.84, no.756, pp.377-386, 2019 (Released:2019-02-28)
参考文献数
24

A current issue in Japan is building sustainable living environments in light of its shrinking and aging population. Depopulated regions in particular have seen significant declines in birthrates, and face the problem of the consolidation and closure of elementary schools. There are fears that the withdrawal of schools from an area may impoverish the region and make for less sustainable living. Meanwhile, the issue of school consolidation has triggered the development of resident-led efforts for regional preservation in various areas, and these efforts have been recognized as forming part of sustainable living support infrastructure. Accordingly, this study looked at elementary schools with a rural village student-family schooling system to sustain elementary schools and their surrounding regions for the purpose of clarifying the actual conditions of these schemes, and conducted a survey of three areas with a comparatively good record for such a scheme on a national level. The study produced the following findings. 1. The study clarified the processes and operating structures of village schooling schemes in the three areas, from inception to the present. One feature shared by all three areas is that the region's residents participated in the village schooling activities, and got involved with a sense of being interested parties to the scheme. Another characteristic is that the organizational structure is inherent in the three areas, and the members of the organization differs depending on the activity history. 2. As a feature of the content of the initiatives, each organization has a common point in interviewing, offering houses, life counselling and introducing work at the start of schooling. Next, at the stage of the start of schooling, matches such as entrance examination and interview of decision to join schooling system are made by the organization. Thirdly, there are two types of houses to be offered: " Houses for newcomers (vacant houses used)" and " Houses exclusively for mountain village schooling families (public housing)". In the latter, there are one that utilizes existing public housing and the other is newly constructed. 3. The schemes can be considered to have a certain effect towards sustaining schools, as the numbers of pupils at elementary schools were maintained through village schooling students. In addition, part of the improvement of regional power was caught, as the accumulation power of building resources has increased due to the continuation of schools and the utilization of vacant houses, and the formation organization of residents' organizations has improved due to the formation of three groups. However, further research is necessary as to whether the operation of the rural village schooling system will lead to the community sustainable.
著者
高橋 啓介
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.68-73, 2003 (Released:2008-06-30)
参考文献数
11

腰部脊柱管狭窄症に対する物理療法および体操療法については科学的検証がなされておらず,その効果については明らかではない.しかしながら,整形外科の日常診療において,物理療法は腰椎疾患に対する重要な治療手段である.骨盤間欠牽引療法は狭窄そのものに対する効果は期待できないが,腰痛などの改善が期待できる場合がある.施行する際には牽引方向に注意する必要がある.末梢神経電気刺激療法は神経根の血流を増加させ,一過性ではあるが間欠跛行の軽快が期待できる.腹筋や背筋の筋力増強運動は運動中に狭窄部に強い圧迫力が生じるため本症には勧められない.物理療法は,本症の病態からみると,狭窄に対する根本治療とはならず症状の緩和が目的となる.今後,物理療法の科学的検証が必要で,日本腰痛学会の主導のもと,大規模研究が行われることを期待する.
著者
坪山 雄樹
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.39-54, 2022-06-20 (Released:2022-09-17)
参考文献数
32

国鉄の再建計画,その中でも計画の根幹をなす貨物輸送の需要想定を,実態と脱連結された組織ファサードの事例として取り上げ,その需要想定の下で国鉄内の部門間でどのような相互 作用が展開されたのかを,当事者たちへの聞き取り調査で得られたデータに基づいて明らかにする.
著者
伊藤 恵子
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-11, 2012 (Released:2013-09-18)
参考文献数
32
被引用文献数
1

本稿は、自閉症スペクトラム障害(ASD)児の指示詞理解における非言語情報の影響を調べることを目的とした。対象は10名のASD児、対照群は10名の定型発達(TD)者であった。方法は、まず言語教示のみで、つづいて言語教示と異なる対象に視線を向けて、最後に言語教示と異なる対象に指さしをして指示対象を特定する指示詞理解実験を行った。その結果、ASD児はTD者に比べ、話し手の非言語情報を指示対象特定の手がかりとして活用しない者が多く見いだされた。これには、話し手の視線方向の特定や、視線からの話し手のコミュニケーション意図の理解などが関連していると推察され、語用論的能力とも深くかかわる可能性があった。このように対人的情報の処理に多くの困難を抱えるASD児の語用論的能力への支援に際し、その場に即した適切な言語や話しことばの獲得といった表層的行動を扱うだけでは十分でなく、言語獲得の基礎になる社会性の育成への働きかけの重要性が示唆された。
著者
Kentaro Nakanishi Keiichi Hiramoto Kazuya Ooi
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.884-887, 2021-06-01 (Released:2021-06-01)
参考文献数
27
被引用文献数
7

Several studies have been conducted to investigate the anti-cancer effects of vitamin C (VC). However, the effect of high-dose VC administration on tumor angiogenesis remains unclear. Focusing on our high-dose VC, our study investigated the effect of high-dose VC (4 g/kg) on vascular endothelial growth in mice with xenografts of a rectal cancer cell line referred to as Colon 26. Male mice harboring Colon 26 tumors were established, and high-dose VC solution was orally administered once daily for 14 d. On the final day of the study, the lower limb tumor tissues and serum samples were collected and analyzed for the expression of tumor angiogenesis related proteins as well as the levels of reactive oxygen species (ROS). Oral VC administration decreased tumor volumes and increased p53 and endostatin levels. In addition, plasma and in tumor part ROS levels and tissue hypoxia inducible factor-1α (HIF-1α) were reduced by VC administration. In addition, the levels of vascular endothelial growth factor A (VEGFA) and vascular endothelial growth factor D (VEGFD) were decreased by VC administration. These results suggest that VC exerts its anti-cancer effects by suppressing angiogenesis.
著者
三島 英換 阿部 高明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.5, pp.919-925, 2017-05-10 (Released:2018-05-10)
参考文献数
15
被引用文献数
2

腸管と腎臓の連関「腸腎連関」が近年明らかになりつつある.腸管および腸内細菌叢は腎臓病の病態に相互に関与する.慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)では腸内細菌叢や腸管機能が変化しており,この変化は腸内細菌由来尿毒素,炎症反応,免疫制御などを介して腎臓病の病態に影響を及ぼす.そのため,プロバイオティクスやバイオティクス,緩下剤などにより,腸内細菌を含む腸内環境を是正することが腎臓病の新しい治療介入になる可能性が期待されている.
著者
福原 淳示 住友 直方 谷口 和夫 市川 理恵 松村 昌治 阿部 修 宮下 理夫 金丸 浩 唐澤 賢祐 鮎沢 衛 麦島 秀雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement4, pp.28-33, 2008-11-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
10

15歳,女性.3歳時にWPW症候群と診断され,6歳時より動悸を自覚,7歳時に当院でカテーテルブレーション(RF)を行い,顕性の右室後中隔ア副伝導路(RPSAP)を介するorthodromic房室回帰性頻拍(AVRT)で,RFに成功した.13歳時に再度動悸を訴えた.心臓電気生理学的検査(EPS)ではISP1μg/分投与下の右室高頻度刺激で頻拍が誘発された.頻拍は減衰伝導を有するRPSAPを順伝導するantidromic AVRTであり,頻拍中の心室最早期興奮部位への通電でRPSAPの途絶に成功した.通電直後一過性に2:1房室ブロックを認めたが1:1伝導に回復したため,1分間の通電を加えRFを終了したが,その後II度房室ブロックが再出現した.約3カ月後に房室ブロックは自然に消失した.Antidromic AVRTを起こした機序として副伝導路に対する通電により,副伝導路もしくはその周辺組織に減衰伝導特性を与えた可能性が示唆された.房室ブロックを起こした機序としては,後中隔部位への通電がcompact AV nodeに影響を与えたことが考えられた.同部位へのRF時には,His束との距離のみならず,わずかな心電図変化にも細心の注意が必要と思われる.
著者
杉田 隆 高島 昌子
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.107-115, 2011 (Released:2011-06-20)
参考文献数
27
被引用文献数
2 4
著者
市川 新
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.11-22, 2020-07-10 (Released:2020-07-10)
参考文献数
33

本稿の題名の演練とは,昭和16年6月頃から11月頃にかけて,すなわち,1941年に研究され計画され実施された社会システム・ゲーミングを示す.演練は,当時の軍事用語であるが,現代用語では,ゲーミング・シミュレーションに相当しよう.演練は,当時の官僚を中心に33名の若手エリートによる政策研究ゲーミング,あるいは当時の大日本帝国の運命を研究する国家戦略研究ゲーミングともいえる.その構造と内容について,現在までにわかったことについて報告する.なお,近衛内閣直轄の総力戦研究所における演練が現代における社会システムのゲーミング・シミュレーションの原型でないかと思われる.戦後,この演練が最初に文献に現れたのは1950年後半のアメリカのランド研究所の報告であり,その研究員らが戦争ゲームとして分類していた.1941年の当時に,日本でこのような社会システム・ゲーミングが実施されていたとは理解できなかったのではないかと推測される.そればかりか,このゲーミング・シミュレーションが,政策科学における世界最初の創始となるのではないかと思っている.
著者
酒井 由紀子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.71-85, 2014-09-05 (Released:2017-10-31)

大学図書館の機能・役割の高度化・多様化に伴い,専門性を有した大学図書館員の人材確保はより重要なものとなっている。本稿では,そのために必要な人材養成・育成の現状と強化の取組みを幅広く概観し,大学図書館員の専門職制度を目指して今後とるべき関係者の方策を探る。