著者
木脇 太一 牧野 貴樹 合原 一幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IBISML, 情報論的学習理論と機械学習 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.279, pp.103-106, 2012-10-31

Restricted Boltzmann Machine(RBM)の過学習問題を緩和するために隠れ変数のエントロピーを正規化項として用いる学習手法を提案する.従来のRBMには不要な複雑性を取り除くための機構が欠如していたため,データの複雑性に関係なく必要以上に複雑な表現を学習してしまう,いわゆる過学習が問題となっていた.本手法ではデータに合わせて最適なRBMの複雑性が動的に調節される,いわゆるモデル選択をRBM上に実現する.本稿ではこの正則化項に基づく学習アルゴリズムを統計力学の手法を用いて導出する.
著者
趙 暁燕
出版者
山口大学大学院東アジア研究科
雑誌
東アジア研究 (ISSN:13479415)
巻号頁・発行日
no.13, pp.157-171, 2015-03

明石姫君という人物は,光源氏が流謫生活を送っていた頃に,明石の浦で受領の娘である明石の君との間で儲けた女君である. 帰京して,政界復帰を果たした光源氏は,辺境での出生,及び地方官の娘腹という明石姫君の出自を「口惜し」と思っている. 本稿で注目するのは,その姫君の出産から袴着までに至る人生儀礼の諸相を語る物語の文脈において,光源氏の姫君に対する「口惜し」という表現が頻出する点である. また,本稿では姫君の裳着という儀礼についても考察を展開する. 特に,裳着において重要な役割を果たす腰結役に着目し,その「腰結役」に込められた象徴的な意味を検討してゆく. 光源氏によって領導される姫君の人生儀礼とは,明石姫君の身に存在する「口惜し」き要素を段階的に取り除く営みとして捉えることができる. 実際に物語では,袴着以降,明石姫君に関して「口惜し」という表現が消失することになっている. そして,袴着の次の段階の人生儀礼,即ち成人儀礼となる裳着において,明石姫君の運命が決定的に変更される契機を迎える. 本稿で注目するのはその裳着における腰結役である. これは,男子の元服における加冠役と同じく,儀礼にとって重要な存在となる. 通常,腰結役は男性が務めるものであるが,明石姫君の裳着については,女性が腰結役であるという点において,留意すべき事例であると考えられる. 女性が「腰結役」を務めることによって生み出されてくる意味とは何か. 本稿では,この「腰結役」となる秋好中宮をめぐって,史料を参照しつつ,物語内部の論理としてそれを考察する. 加えて,秋好中宮の斎宮という経歴にも着目し,その神話的イメージをも探ることになる.
著者
研究業務部船舶工務課
出版者
海洋科学技術センター
雑誌
JAMSTEC
巻号頁・発行日
vol.11(3), no.43, 1999-07-01
著者
飛田 努 松村 勝弘 篠田 朝也 田中 伸
出版者
日本財務管理学会
雑誌
年報財務管理研究
巻号頁・発行日
no.25, pp.1-17, 2014

本稿は,2010年夏に東京証券取引所第1部上場企業を対象として実施したアンケート調査から得られた結果をもとに,日本企業の経営管理システムと企業業績との因果関係を分析したものである。その結果,以下の点が明らかになった。(1)企業価値や利益を重視することは人事制度や業績連動給与に正の影響を及ぼす。(2)人事制度や業績連動給与といった評価システムが組織成員のコミュニケーションに正の影響を及ぼす。(3)社員のコミュニケーションがそのモチベーションに正の影響を及ぼす。(4)これらのシステムとは独立して,価値観を共有することは組織成員のモチベーションに正の影響を及ぼす。(5)サンプル全体ではモチベーションの向上により,業績(ROA)に正の影響を及ぼす。
著者
遠藤 敏夫 額田 彰 松岡 聡
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.169-179, 2011-10-05

2010 年 11 月に稼働開始した TSUBAME 2.0 スーパコンピュータは,Intel プロセッサに加え 4,000 以上の NVIDIA GPU を備えるペタスケールのヘテロ型システムである.この TSUBAME 2.0 における Linpack ベンチマークの実行について報告する.本システムは 2CPU と 3GPU を備えた計算ノードを約 1,400 台持ち,それらはフルバイセクションのファットツリー構造を持つ Dual-Rail QDR InfiniBand ネットワークにより接続される.理論演算性能は TSUBAME 1.0 の約 30 倍となる 2.4PFlops であり,それを TSUBAME 1.0 とほぼ同じ規模の電力で実現している.Linpack ベンチマークのコード改良およびチューニングを GPU を用いた大規模システムの特性に合わせて行い,実行速度として 1.192PFlops を実現した.この結果は日本のスパコンとしては初めて PFlops を超えるものであり,Top500 スパコンランキングに 4 位にランクされた.さらに電力性能比は 958MFlops/W であり,Green500 ランキングにおいて the Greenest Production Supercomputer in the World 賞を獲得した.We report Linpack benchmark results on the TSUBAME 2.0 supercomputer, a large scale heterogeneous system with Intel processors and > 4,000 NVIDIA GPUs, operation of which has started in November 2010. The main part of this system consists of about 1,400 compute nodes, each of which is equipped with two CPUs and three GPUs. The nodes are connected via full bisection fat tree network of Dual-Rail QDR InfiniBand. The theoretical peak performance reaches 2.4PFlops, 30 times larger than that of the predecessor TSUBAME 1.0, while its power consumption is similar to TSUBAME 1.0. We conducted improvement and tuning of Linpack benchmark considering characteristics of large scale systems with GPUs, and achieved Linpack performance of 1.192PFlops. This is the first result that exceeds 1PFlops in Japan, and ranked as 4th in the latest Top500 supercomputer ranking. Also TSUBAME 2.0 has received "the Greenest Production Supercomputer in the World" prize in Green500 ranking for its performance power ratio of 958MFlops/W.
著者
長島 重夫
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.21-25, 1995-01-25

Japanese supercomputers, which are almost vector processing type, have kept the position of the highest performance since 1983 when the first supercomputer shipped. Vector computers have the capability of easy-to-use for programming, but can not extensively increase the effective performance more than present level due to the limitation of memory throughput. The expected maximum performance of vector type will be up to 100GFLOPS. Therefore, Japanese supercomputer makers will adopt the parallel processing type for next generation supercomputers. 1TFLOPS at the effective level of performance will be realized by the end of this century.
著者
宮本 悌次郎 山崎 匡美 松田 生恵 山本 由喜子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.274-278, 1988-12-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
12
被引用文献数
2

Growth inhibition of bacteria in chicken bone soup by four ground spices used commonly for the soup, namely clove, thyme, laurel and black pepper, was investigated. Bacterial growth was measured by the plate colony count method.1. Commercially available ground spices especially black pepper were contaminated with spore forming bacteria. Therefore black pepper and thyme suspended in the soup were autoclaved at 121°C for 20 min. and 10 min., respectively and the soup suspended clove and laurel was gently boiled for 5 min.2. Each spice was added into the soup at the same concentration. The soup with spices was distributed into sterile open bottles. These bottles were kept in the laboratory for 30 min., then capped and stored in a room at 23°C. Growth inhibition of bacteria in the soup was observed in the presence of 0.05% each of four spices, and complete prevention of the growth for 9 days was achieved by adding 0.125%, each.3. Escherichia coli IFO 3301 inoculated into the sterilized soup was little sensitive against 0.125% each spice. But the growth of Staphylococcus aureus IFO 3761 was inhibited by 0.05%each, and in the presence of 0.125% each, these spices exhibited bactericidal activity. In the soup adjusted to pH 5.0 with acetic acid, E. coli did not grow regardless of spices, however the growth of S. aureus was inhibited in proportion to the concentration of spices, yet the bacteria could grow a little up to 0.125% each.4. Comparisons of growth inhibition of S. aureus by some assortments of these spices indicated that any of these four spices contributed to the inhibition, but clove was most effective.5. The soup supplemented into bouillon medium suppressed the antibacterial activity of clove extract against S. aureus.
著者
平野 恭弘
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第125回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.786, 2014 (Released:2014-07-16)

三重県松阪市および多気町で覆われている櫛田川流域において、流域の持続可能性を危惧する事象の一つに、森林地域のシカ問題があげられる。臨床環境学研修では、博士後期課程の学生が、地域住民に聞き取り調査などを行い、農林業被害を引き起こすシカによる森林環境の変化に焦点をあて、臨床環境学的診断と処方に取り組んだ。特にシカの活用とシカ肉の流通に関して問題となる点を明らかし改善の提案をすること、また本流域の持続可能性に問題となりうるその他の事象について、シカ問題を中心にそれらのつながりを俯瞰的に明らかにすることを目的とした。 シカの活用と流通については、個体数管理のため廃棄されているシカに着目し、狩猟者、肉屋、シェフに聞き取り調査を行うことで、枝肉として利用することが三者にとってコスト的にもメリットがあることを処方箋として提案した。さらにシカ個体数の増加は、単に人工林の管理不足など森林だけでなく、少子高齢化や都市山村間のグローバリズムなどの問題とも密接に関連している可能性が問題マップを描くことで示唆された。
著者
本田 敏文 横井 利彰 松山 実 山田 新一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第39回, no.人工知能および認知科学, pp.408-409, 1989-10-16

ニューラルネットワークの適用対象の1つに組み合わせ最適化問題が存在し,HopfieldのネットワークやBoltzman Machineのような相互結合型のネットワークが一般に用いられている.Boltzmann Machineは確率的に動作するため,焼きなましの手法等を用いることによりローカルミニマムを避けることが可能とされている.しかし,温度変化のスケジュールは経験的に選んでいるのが現状であり,このスケジューリングを誤ると精度の高い解が求められない,あるいは現実的な時間内での解決が不可能となる.本研究ではネットワークのエネルギー関数により適切なものを選択すれば,シビアな温度調節を回避できると考え,ネットワークの状態に応じてエネルギー関数をダイナミックに変更する手法を提案する.これを組み合わせ問題の1つである巡回セールスマン問題(TSP)に適用し,デジタルシミュレーションによって比較,検討を行う.
著者
粟野 皓光 佐藤 高史
雑誌
研究報告システムとLSIの設計技術(SLDM) (ISSN:21888639)
巻号頁・発行日
vol.2015-SLDM-173, no.7, pp.1-6, 2015-11-24

本論文では Line sampling(LS) を利用した高速なトランジスタ・レベルの遅延歩留まり解析手法を提案する.集積回路製造プロセスの微細化にともない,トランジスタ特性のばらつきが増加しており,集積回路の設計は困難を極めている.確率的にばらつく回路遅延を解析するために統計的静的遅延解析 (SSTA) が考案され,その高速化に対して数多くの研究が行われてきた.SSTA ではゲート・レベルの遅延モデルを用いている.一層の正確性を期すために,タイミング検証の最終段階では,最悪遅延を与えうるパスを抜き出し,トランジスタ・レベルのモンテカルロ解析 (MC) を行うことが一般的であるが,純粋な MC は収束が遅く実際の歩留まり解析には適用できない.収束性を改善する手法として重点的サンプリング (1s) が一般的に用いられるが,最適な代替分布の決定が必要となり,これはばらつき変数が高次元になるほど困難な問題となる.遅延歩留まり解析においては,最悪遅延パスに限定したとしても数百から数千個のトランジスタにおけるばらつきを考慮出来ることが求められ,次元数にスケーラブルな手法が必要である.本論文では,回路遅延が,ばらつき変数の線形和で近似できるという特性に着目し,LS の応用を提案する.数値実験の結果,最新の歩留まり解析手法である,subset simulation と比較して,同等の解析精度を得るために必要な回路シミュレーション回数を 1/14 から 1/300 程度にまで低減可能であることが明かとなった.