著者
大櫛 陽一 小林 祥泰 栗田 由美子 山田 敏雄 阿部 孝一 脳卒中急性期患者データベース構築研究グループJSSRS
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.125-137, 2008 (Released:2015-03-20)
参考文献数
40

血圧の基準が下げられ健診で高血圧とされる人が増え,高血圧治療費と降圧剤はそれぞれ医療費および薬剤費の1位になっている.このような治療の背景となっている高血圧治療ガイドラインについて検証した.①住民コホートによる血圧レベルと総死亡の比較,②血圧レベルと原因別死亡率の比較,③降圧治療群と非治療群での総死亡率の比較,④一般住民と脳卒中患者との高血圧およびその治療率の比較,により検討した.160/100mmHgまで総死亡率および循環器疾患による死亡率の上昇はみられなかった.ベースラインで180/110mmHg以上の群では,160/100未満に下げると緩やかな降圧群に較べて死亡率が4倍であった.脳梗塞群での高血圧治療オッズ比が有意に高かった.160/100mmHgまで治療の必要はない,薬物による降圧は20mmHg程度に抑える必要がある,高血圧治療ガイドラインはエビデンスに基づいて修正すべきである.
著者
二宮 嘉行
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.29-47, 2023-09-07 (Released:2023-09-07)
参考文献数
29

説明変数の候補がたくさんあるときの回帰分析手法として,今やスパース推定は標準手法となっている.一方,スパース推定における正則化パラメータの選択については,たとえスパース推定のためのAICがシンプルな形で得られていて,かつ目的が良い予測をしようというものであっても,必ずしもそのAICは用いられておらず,つまり標準手法は定まっていないように見受けられる.本稿では,そういった標準手法が定まっていないケース,正確には正規線形回帰分析でLASSOを用いるケースで,LASSOとAICを組み合わせて推定したモデルの性能評価を数値実験でおこなう.具体的には,LASSOとAICを組み合わせたとき,リッジ正則化法とAICを組み合わせたとき,最尤法と通常のAICを組み合わせてベストサブセット回帰を用いたとき,およびLASSOと交差検証法を組み合わせたときを,予測二乗誤差の評価を通じて比較する.また,その交差検証法で,データの分割の仕方で推定結果がどのくらい違ってくるのかを,予測二乗誤差や選ばれたモデルの自由度のばらつきを数値評価することで確認する.このLASSOのためのAICはSURE理論により導かれるが,それほど知られていないように見受けられるため,最後に僅かに一般化した設定で導出をおこなう.
著者
三條場 千寿 亘 悠哉 松本 芳嗣 宮下 直
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.1-8, 2021-03-25 (Released:2021-03-19)
参考文献数
76
被引用文献数
1

Toxoplasmosis is a zoonosis caused by Toxoplasma gondii, which infects almost all mammals and birds. Felids are definitive hosts that shed oocysts of T. gondii with their feces, which is then transmitted by oral ingestion. The study analyzed the prevalence of T. gondii infection in free-ranging cats on Tokunoshima Island, Kagoshima Prefecture from 2017 to 2018, and found a seropositivity rate of 47.2% (59/125). This result indicated the importance of understanding and managing the behavioral patterns of felids, including the free-ranging cats. Toxoplasmosis is also an important food-borne parasitic disease due to its ability to be transmitted by consuming undercooked meat of infected animals. Considering that all developmental stages of T. gondii, including oocyst, tachyzoite, and cysts, are capable of infection, a One Health approach that considers the health maintenance of humans, animals, and the environment is important for the control of toxoplasmosis.
著者
榎本 鐘司
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.44-53, 1980-12-15 (Released:2012-11-27)
参考文献数
23

It will be Kenjutsu that underwent transfiguration most of the budo in the last days of the shogunate. In the evolution of 'the theory of the practical bugei', Kenjutsu was forced to change in quality in the position between the hojutsu (the Japanese gunnery) raising its head and the declining kyujutsu (the Japanese archery)and jujutsu.Now in this paper, mainly considering the various materials related to Sugane Kubota and Nobutomo Odani which were cleared up in the research, and refering to the documents related to the Itto-ryu Kenjutsu, positively I discussed the inclination of the change in guality of Kenjutsu in the last days of the shogunate.I will arrange them in order next.Shinai Uchicomi Shiai Kenjutsu (the Kenjutsu by the matches hitting each other with shinai) whose systematization of the technics had been immature was weeded out taking it as an opportunity long shinai's coming into vogue, and, the disciplining and practical Kenjutsu was groped by Kenjutsuka (the proffssor of Kenjutsu), with it, the systematization of the teechnics of Shinai Uchicomi Shiai Kenjutsu had progressed.
著者
渡辺 大輔
出版者
日本教育政策学会
雑誌
日本教育政策学会年報 (ISSN:24241474)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.56-65, 2017 (Released:2018-08-27)

It is important that Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT), has expanded its coverage of support to“Sexual Minorities” and promoted Human Rights Education about Diversity of Sexuality in schools in the“Regarding the Careful Response to Students with Gender Identity Disorder”(2015). On the other hand, the challenges are that support cases are only for Gender Identity Disorder students, and that those are yet be reached to rethink gender binary system in school. Bullying situations that come from one’s Sexual Orientation, Gender Identity, and Sexual Expression are seen from the first grade in elementary school. It proves that children already KNOW about “Sexual Minorities”as negative things. Therefore, we need to learn about “Sexual Diversity”from before a lower grade of elementary school. This means “to match the developmental stage”. The current Guideline for the Course of Study is biased to the“Cis-gender and Heterosexual”education. Therefore, in order to guarantee the neutrality of education, learning about “Sexual Diversity”is necessary for us.
著者
宮内 昭 伊藤 康弘
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.77-81, 2018 (Released:2018-08-24)
参考文献数
13

最近の30年間に世界的に甲状腺癌が急増している。増加したのは小さい乳頭癌のみであり,甲状腺癌による死亡は増加していない。このことから,小さい乳頭癌の過剰診断・過剰治療を警告する報告が多い。剖検でのラテント癌の頻度や甲状腺癌検診での癌の発見率と臨床的甲状腺癌罹患率の著しい乖離からわれわれは成人の微小乳頭癌の大部分はほとんど進行しない無害な癌であるとの仮説を立て,1993年から成人の低リスク微小乳頭癌に対して積極的経過観察を行ってきた。本論文では甲状腺癌検診のあり方への提言,積極的経過観察の適応と注意点および積極的経過観察の結果を手術群と対比して報告し,さらに積極的経過観察中の微小乳頭癌の生涯腫瘍進行予測値についても紹介する。
著者
金 玲花 中野 亜里沙 安藤 元一 Kim Ryonghwa Arisa Nakano Motokazu Ando
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.137-144, 2014-09

自由行動ネコが野生鳥獣にどのような捕食圧を与えているか,神奈川県厚木市で調査した。神奈川県自然環境保全センターの傷病鳥獣保護記録を調べたところ,保護鳥獣の10%はネコに襲われたものであり,キジバトやスズメなど地上採餌性の種,あるいはヒヨドリなどの都市鳥が多かった。育雛期である5-7月には鳥類の巣内ヒナが半数以上を占め,ネコの襲いやすい位置に営巣するツバメなどが多かった。同市の住宅地帯および農村地帯におけるアンケート調査では,ネコは13%の世帯で飼育されていた。このうち屋外を自由行動できる飼いネコの比率は,住宅地で29%,農村で59%であり,生息密度に換算すると住宅地で2.2頭/ha,農村で0.35頭/haと推定された。こうしたネコが家に持ち帰る獲物の種類は,住宅地では小鳥と昆虫が多く,農村ではネズミ,小鳥や昆虫など多様であった。持ち帰った獲物の半分以上は食されなかった。これらのネコが年間60頭程度の鳥獣を捕らえると仮定すると,1年に捕食される鳥獣はそれぞれ132頭/ha,21頭/haと推定された。飼いネコによる生態系への影響を避けるためには,室内飼いが望まれる。
著者
河本 大地
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.50-60, 2014-03-31 (Released:2014-04-23)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

ジオパークに関わる動きが活発化している.その中で日本においては,多くのジオパーク,およびそれを目指す地域で,地方自治体が主導する形がとられている.そこで本稿では,行政主導型のジオパークマネジメントの先例として,ピレネー山脈のスペイン側にあるソブラルベジオパークをとりあげ,意義と課題を整理した.その結果,地質・地形等に関わる施策を展開しやすくなったこと,学校教育との連携などが行政主導型マネジメントの意義として,見いだされた.他方,ジオパークに関する民間の主体的活動はほとんど見られず,またジオパークとしての取り組みが地質・地形関係に特化するなど行政の縦割りの弊害も存在する.しかし,域内企業とのパートナーシップ協定やマウンテンバイク用ルートの整備等,地質・地形への関心喚起や地域資源活用の手法は,日本のジオパークにとって参考になると考えられる.
著者
渡利 泰山
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.362-371, 2016-06-05 (Released:2016-08-10)
参考文献数
13

超弦理論は重力子を含む量子論になっている(つまり重力の量子化をする理論である.その理論を我らが自然が択んでいるかどうかはまた独立な問題だが).そして,超弦理論では,時空が1+9次元になっていないといけないらしい.でも,9次元のうち6次元分が十分に小さければ,既存の実験事実とは矛盾しないからOK.さらに,超弦理論の低エネルギーでは,重力子のほかに,素粒子の標準模型っぽい代物も(おおざっぱに言えば)ついでに出てこないでもなさそう.だいたいうまくいっている感じ….一般向け科学啓蒙書によく書かれているこのお話は,ほぼ1980年代の半ばまでに専門家の間で成立してきた理解を基にしている(文献2).それから30年ほどが経った.その間,このお話はどのように深化してきたのだろう.超弦理論と現実世界との関わりという文脈でのお話の続きを紹介するのが,本稿の目標である.その他の文脈での弦理論の発展には立ち入らない.本稿ではお話の続きを三本立てという形で切り出して紹介する.1点目は,コンパクト化って何?という点で,80年代後半から90年代後半の進展にあたる.主なメッセージを抽出しておくと,空間の次元という概念自体が量子重力の理論たる超弦理論では自明なものでなくなること.そして,超弦理論の双対性の発見は,弦理論と現実世界との接点という問題を考えるうえで(も),革命的な変化をもたらした,ということである.2点目は,弦理論の解の全体像の理解の深化.別の表現では,冒頭の「だいたいうまくいっている感じ」を精密化しようという話でもある.現時点での超弦理論の理解に従うなら超弦理論には解がきわめてたくさんある,ということが知られている.それらの解の低エネルギーでのゲージ群や物質場の世代数は,個別の解ごとに種々様々であり,粒子の相互作用の結合定数の値も,様々である.ゆえに,冒頭に「素粒子の標準模型…出てこないでもなさそう」と記したのは,この種々雑多な解の中の一つとして,我々の宇宙を記述する解も多分存在するんじゃない…?という意味で理解することになる.学問分野としては,“多分”ではなしに“ちゃんと”存在を示せ,という話になる.これを示せれば,超弦理論という仮説を棄却する必要がなくなるからだ.そのためには,どうするか.コンパクト化という手法で得られる超弦理論の解の範囲内に話を限れば,まず,コンパクト化に用いる幾何と低エネルギーで実現される場の理論模型との間の翻訳関係を調べ,次に,幾何の選択肢の範囲内で素粒子の標準模型が実現できるかを調べることになる.超弦理論の双対性の発見から十数年が経った現在,ゲージ群,世代数,それにクォークやレプトンの質量,混合角のおおまかな特徴をどのように翻訳すべきか,理解が整理されてほぼ落ち着きつつある.3点目は,超弦理論が現実に矛盾しないという消極的達成だけでなく,何か素粒子物理に新たな知見をもたらす積極的達成はないの?という話.全くないわけでもないですよ,,,というのが現状である.紙幅の都合上,陽子崩壊の分岐比,右巻きニュートリノの質量,ゲージ結合定数の統一,の3つのテーマについて得られた弦理論ならではの知見を取り上げて,紹介する.
著者
木島 泰三
出版者
法政大学文学部
雑誌
法政大学文学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Letters, Hosei University (ISSN:04412486)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.31-46, 2019-09-30

Once, Schopenhauer had criticized Descartes and Spinoza as holding judgmental (or intellectualist) theories of the will. But, largely, scholars agree that Descartes’ theory of judgment is, in fact, a volitional or voluntaristic one. In this paper, we argue that Spinoza inherits such a volitional theory of judgment, which subordinates judgment to the will instead of subordinating the will to intellectual judgment, from Descartes.It is true that, in his book Ethics, Spinoza criticizes Descartes’ free-will doctrine and two-step theory of judgment, as per which first the intellect provides ideas and then the will asserts or denies them. Nevertheless, Spinoza does identify the intellect with the will, or ideas with judgments, and we can consider his view as a deterministic volitional theory of judgment as well as an identity theory of ideas and volitional judgments. According to this identity theory, every idea necessarily contains volitional and assertive elements and is identical with affirmative or negative judgment.However, such reading may be doubted because the term “will” may have different meanings in his theory of judgment and in the context of practical decisions. One of the scholars who suggests Spinoza’s equivocal use of “will” is Bennett. He insists his reading by referring to Spinoza’s remark in his Ethics Part II, Proposition 48, Scholium. However, we argue that this is not sustainable. Yet, there is another reading which attributes equivocal usage of the term “will” to Spinoza, according to which the term “will” in Spinoza’s theory of judgment denotes a deserted concept used in his previous writing, which happens to be incorporated into Ethics. We also deny this reading and provide a univocal usage of the term “will” in the contexts of both intellectual judgments and practical decisions.

39 0 0 0 OA 東京府統計書

著者
東京府 編
出版者
東京府
巻号頁・発行日
vol.大正4年, 1925
著者
四ノ宮 成祥
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.3103-3113, 2012 (Released:2013-11-10)
参考文献数
11

バイオテロは決して頻度の高い事象ではないが,一旦起きると社会への衝撃は計り知れない.我々は,過去にオウム真理教のバイオテロ未遂事件やアメリカ炭疽菌郵送事件のような事例を経験したことを忘れずに,適切な対策を講ずる必要がある.また,過去に生物兵器として開発された生物剤がテロに用いられることのないよう注視するだけでなく,今後は遺伝子組換え技術を利用した新たなタイプの生物剤を用いたテロが起きないよう防止することも大切である.