著者
八木 直樹
出版者
大分大学教育福祉科学部
雑誌
大分大学教育福祉科学部研究紀要 (ISSN:13450875)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.47-62, 2012-04

本稿では、16世紀後半に大友義鎮(宗麟)が行った豊後府内から臼杵への城下町移転について考察した。その結果、城下町移転の背景には、義鎮政権が抱える政治的不安定性があったことを指摘した。この城下町移転により大友政権とそれを構成する家臣団の階層に変化はなく、家臣たちの政権への出仕は、大名城下町と自己の所領との間を行き来する形であった。最後に、戦国大名城下町が大都市である必要性がないことを提起した。######This paper considers the relocation of the castle town to Usuki from###Bungo-Funai carried out by Yoshishige(Sorin) Otomo in the latter half of###the 16th century. As a result, it is pointed out that the politically insecure###nature of the Yoshishige Administration served as a backdrop to the###relocation of the castle town. This relocation brought no change to the###class of the vassal team constituting the Otomo Administration. Their###service to the political power was in the form of a coming and going###between the castle town and their own territory. In the end, it emerged###that there was no necessity for the Sengoku Daimyo Castle Town to be a###big city.
著者
橋本 操六
出版者
大分県地方史研究会
雑誌
大分縣地方史 (ISSN:02876809)
巻号頁・発行日
no.123, pp.29-48, 1986-09
著者
下仲 順子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.303-309, 1980-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究は, 文章完成テストに投映された老年群と青年の自己認知概念を中心にした心理特徴面を比較することにより, 老年期の自己概念の諸特徴を世代差, 性差の観点から追求することを目的として行われた。対象者は, 青年群は私立大学生男112, 女112, 計224 名である (年齢範囲18~25才)。老年群は居宅老人男110, 女89, 計199名である (年齢範囲69~71才)。社会経済条件は両群共平均かそれ以上に属している。結果: 家庭イメージでは, 両群共約半数の者は肯定的表現をしているが否定的反応では青年群の方が多く, 中立的客観的反応では老年群の方が多い。友人イメージにおいて, 肯定的反応は青年群女に多い。老年群では肯定反応とほぼ同率で客観的反応がなされておりそれは老人女に多い。体イメージでは, 青年女子が健康等の肯定反応が多く, 老年群では否定的な表明は老人女性に多い。加齢イメージにおいては性差, 世代差は示されなかった。過去および現在の自己イメージでは青年群に否定的自己記述が多く示された。だが未来の自己イメージでは, 老年群は肯定および否定反応に集中しているが, 青年群は過半数の者が肯定的な未来志向を示していた。生と死イメージは, 老年群のみに性差が示され, とくに女性老人の否定的表明が特徴的であった。次に生きる喜びを老年群は家族との交流や自己の健康面に求めているが青年群は物事の達成による充実感覚に喜びを求めている。また青年群は自分の人生に対して肯定的表明を示しているのに比し老年群は客観的記述が多い。以上の両群の諸特徴は世代差, 性差の観点から考察された。すなわち世代的差違として青年群に示された心理特徴面は, 成人として自我を確立してゆく過程の中で, 種々の観点からの自己省察の機制が反映していると解釈された。これに対し老年群の肯定した自己の受け入れ等の特徴は, 自我の統合性の段階を反映していると推定される反面, 自己の未来に対して冷静, 否定的であるといった面や家族という縮少した世界の中で安定しているという面は日本の老年期特有の心的特性が表明されていると考察された。
著者
加藤 厚
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.292-302, 1983-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16
被引用文献数
3 9

Marcia, J. E. による同一性地位概念を客観的な測度によって測定し, その成立における11の心理社会的領域 (家族との関係, 将来の仕事, 生き方や価値等) および 3つの時期 (現在, 大学に入ったころ, 高校2年生のころ) の重要性を検討し, あわせて各同一性地位の特徴を明らかにすることが本研究の目的である。概念的検討整理をふまえて, 「現在の自己投入」, 「過去の危機」, 「将来の自己投入の希求」の3変数の組合わせによって, 6つの同一性地位を定義する同一性地位判定尺度を作成した。大学生310名 (男子170名, 女子140名) のデータを分析した結果, 以下の諸点が示された。(1) 同一性拡散地位および権威受容地位は, それぞれ全体の約4%を占めるにすぎず, 同一性拡散-積極的モラトリアム中間地位が, 全体の約50%を占める。(2) 男子においては, 「将来の仕事」および「生き方や価値」の領域における危機と自己投入, 「勉強」の領域における自己投入が, 同一性地位と密接に関連している。(3) 女子においては, 「大学に入ったころ」の危機の水準, および大学入学以降の「同性の友人との関係」, 「勉強」, 「将来の仕事」, 「生き方や価値の追求」の各領域における自己投入の水準が, 同一性地位と密接に関連している。(4) 「政治」や「宗教」は, 大学生における同一性地位の形成において, 重要な領域であるとは言い難い。各同一性地位の特徴およびその性差も, 特に「大学に入ったころ」の危機および自己投入の水準に関して, 詳しく検討された。
著者
北岡(東口) 和代
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.31-40, 2005-09-15 (Released:2012-10-29)
参考文献数
26
被引用文献数
3 4

本研究は, 精神科勤務の看護者のバーンアウトと医療事故との因果関係を検討したものである. 精神科を主とする16病院に勤務する全看護者1,684名を対象に自己記入式質問紙調査を行い, 1,295名の有効データを得た. データ収集は研究用日本版Maslach Burnout Inventory-General Survey, 臨床看護職者の仕事ストレッサー測定尺度, General Coping Questionnaire特性版, 医療事故に関する質問紙を用いて行った. 最終的に仕事ストレッサー, コーピングスタイル, バーンアウトと医療事故との関係を示した因果関係モデルが構築され, 次のことが示唆された. 仕事量の多さや患者との関係に由来する負担感や葛藤が続くと, バーンアウトの最初の現象である疲弊感が生じる. この疲弊感は, シニシズム的態度というバーンアウトの次の現象を生む. 患者に対する冷淡で無関心な態度は患者関係にうまく対応できない看護者で特にみられるが, 職場の上司や同僚関係に悩んでいる看護者もそのような態度に陥りやすくなると考えられた. 看護者のこのようなバーンアウト状態が医療事故発生を導く. 特に感情表出型のコーピングスタイルをとる看護者はバーンアウトに陥りやすく, 医療事故発生に繋がりやすい集団と考えられた.

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出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.601-605,i, 2005-08-01 (Released:2008-12-25)
著者
岡本 勲
出版者
中京大学文学部
雑誌
中京大学文学部紀要 (ISSN:02873443)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.p177-154, 1983
著者
伊藤 秀彦
出版者
関東学院大学経済学部教養学会
雑誌
自然・人間・社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
no.50, pp.75-97, 2011-01

本稿は、生成文法理論に基づき受動化と繰り上げについて考察するものである。1章では受動化について考察する。その結果、能動文とそれに対応する受動文とでは意味が異なる場合があるということ、受動文は「併合」と「移動」という文法操作を経て派生されるということ、主要部と補部の「親密さ」が受動化の可否に影響を与えているということが理解できる。2章では繰り上げについて考察する。その結果、主語繰り上げ構文は格フィルターとθ役割の付与で説明できるということ、目的語繰り上げ構文では主文の動詞が補部の指定部に目的格を付与しているということ、受動化と繰り上げは「項の移動」という1つの操作にまとめられるということ、いくつかの文法操作により、ある種のThere構文と進行形の文の派生を統一的に説明できるということがわかる。
著者
伊藤 秀彦
出版者
関東学院大学経済学部教養学会
雑誌
自然・人間・社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
no.50, pp.75-97, 2011-01

本稿は、生成文法理論に基づき受動化と繰り上げについて考察するものである。1章では受動化について考察する。その結果、能動文とそれに対応する受動文とでは意味が異なる場合があるということ、受動文は「併合」と「移動」という文法操作を経て派生されるということ、主要部と補部の「親密さ」が受動化の可否に影響を与えているということが理解できる。2章では繰り上げについて考察する。その結果、主語繰り上げ構文は格フィルターとθ役割の付与で説明できるということ、目的語繰り上げ構文では主文の動詞が補部の指定部に目的格を付与しているということ、受動化と繰り上げは「項の移動」という1つの操作にまとめられるということ、いくつかの文法操作により、ある種のThere構文と進行形の文の派生を統一的に説明できるということがわかる。
著者
玉置 雅彦 山本 由徳
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.29-34, 1997-03-05
被引用文献数
5

遮光および施用窒素量が, 水稲の出葉転換点とその前後の出葉速度ならびに分げつ発生数に及ぼす影響について検討した. 1/5000a ワグネルポットを用いて, 3レベルの遮光処理(0, 50, 95%)と3レベルの施用窒素量処理(移植時から10日毎に25, 100, 200 mgN/ポット施用)を組み合わせた計9区の処理区を設定し, 移植時から収穫時まで処理を行った. 主茎の葉齢の増加は, 95%遮光区を除き, 出葉転換点を境にして2本の直線で近似することができた. 95%遮光区は, 出葉転換点が存在せず1本の直線で近似された. 出葉転換点までの出葉速度は, 施用窒素量よりも光条件によって強く左右され, 強光下ほど出葉速度は早かった. しかし出葉転換点後は, 出葉速度に及ぼす光条件の影響は小さくなった. 無遮光区では, 出葉転換点前後とも施用窒素量が多くなるにつれて出葉速度は早くなったが, 遮光区では施用窒素量が出葉速度に及ぼす影響はほとんど無かった. 分げつ発生には, 出葉転換点前後とも光条件が影響し, 無遮光区で分げつ発生数は最も多かった. 無遮光区では, 施用窒素量が多くなるにつれて分げつ発生数は増加したが, 50%遮光区では窒素量の影響が小さくなり, 95%遮光区では影響は認められなかった. 出葉転換点がみられた無遮光区と50%遮光区について出葉速度と分げつ発生数との関係をみると, 出葉転換点前では有意な正の相関が認められたが, 出葉転換点後では有意な相関は認められなかった.
著者
田中 謙
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.405-414, 2014 (Released:2015-01-01)
参考文献数
8

I used a questionnaire to find out the nature and problems of the support system for young children with disabilities in centers for early childhood education.   The questionnaire was distributed to 762 centers for early childhood education throughout Japan in October and November 2011, and 255 were collected (33.4%).   ① There is a difference in the support system between the kindergartens and nursery schools.   ② It is likely that the geographical distance between kindergartens and nurseries may be the cause of the difference in the support system.   ③ Only a few kindergartens and nurseries introduced the new support system after they changed to centers for early childhood education, and some centers for early childhood education are still using the conventional support system.   ④ Those who have been appointed as special needs coordinators include nursery teachers.   ⑤ There are some centers for early childhood education which adopt good points from kindergartens and nurseries. And they feel that these will help them to provide more support for young children with disabilities.
著者
福原 実 藤原 峰一 山口 一格 土井 章
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
日本セラミックス協会学術論文誌 : Nippon Seramikkusu Kyokai gakujutsu ronbunshi (ISSN:18821022)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1131, pp.1420-1423, 1989-11-01
被引用文献数
4 4

The formation of Hidasuki, a characteristic red-colored pattern on the surface of Bizen-yaki, was investigated from the viemponats of its mineral composition and coloration. Hematite, corundum and quartz were found in Hidasuki. Corundum was formed regardless of the cooling rate after heat treatment of a mixture of Bizen-clay and 8 to 10 wt% potassium chloride at 1300℃ for 3 h. Hematite was not formed when the mixture was quenched. However, the amount of hexagonal plate like hematite in the heated mixture increased with the lowering of the cooling rate, and the color of the heated mixture became more reddish with the increase of the amount of hematite. The same phase composition, coloration and morphology as those of Hidasuki were obtained when a mixture of Bizen-clay and 8 to 10 wt% potassium chloride was heated at 1300℃ for 3 h followed by cooling at the rate of 0.2 to 0.5℃/min in air.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1343, pp.30-33, 2006-05-29

女性用下着大手、トリンプ・インターナショナル・ジャパン(東京都大田区)の吉越浩一郎社長は、1992年の社長就任前夜にドイツ人オーナーが語った一言が今も忘れられない。場所はトリンプグループのアジア拠点である香港オフィス。オーナーは吉越社長に日本市場の攻略法を助言した。 ドイツ人のオーナーが「シンセイヒン」という単語だけは日本語を使ったことが強く印象に残った。
著者
杉村 和美
出版者
愛知学泉女子短期大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1.研究実施計画の第1点である、性別、ライフスタイルによる中年期の自我同一性再構成の様相については、先行研究で特徴が明確化されていない女性に焦点を当て、面接法による検討を行なった。対象は、40代女性59名(有職群・専業主婦群)である。結果は以下の2点である(杉村,1993)。(1)次の4つの自我同一性再構成のパターンを見いだした。a.社会的役割同一性の安定→個人的同一性、b.社会的役割同一性の動揺→個人的同一性、c.社会的役割同一性の安定→その再確認と継続、d.社会的役割同一性の動揺→変化の方向が不明確。(2)パターンa・cは有職群、パターンbは専業主婦群に多いという結果から、中年期の自我同一性再構成の様相がライフスタイルによって異なること、特に専業主婦において心理的葛藤が顕在化しやすことが示された。2.研究実施計画の第2点である、自我同一性再構成における親子関係の変化の重要度については、有職群、専業主婦群ともに40%の対象者が、自我同一性再構成の要因として、子供の成長を契機とした“子育ての再考"(Erikson,et.al,1986)を報告するという結果を得た。このことから、女性に関しては、どのライフスタイルにおいても、親子関係の変化が、中年期の自我同一性再構成の重要な要因であることが確認された。3.自我同一性再構成を、親子関係と関連づけながら、より確実に把握するための新しい方法論を検討した。具体的には、対人関係的領域を重視し、自我同一性発達の力動的過程を把握し得る、Grotevant & Cooper(1981)の自我同一性地位面接を、わが国で初めて翻訳して修正を加え、予備面接を実施した。結果は現在分析中で、次年度は、第1に、この結果をもとにして本面接法を確立すること、第2に、本法を用いて自我同一性再構成を把握するとともに、これと親子関係の変化との関連の詳細を検討することを計画している。
著者
Ikeda Masahiko Komatsu Shin-ya Nakamura Yuichiro
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
MATERIALS TRANSACTIONS
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.1106-1112, 2004
被引用文献数
43

Using Ti-50Ta, Ti-50Ta-Sn and Ti-50Ta-Zr alloys, the effects of Sn and Zr additions on phase constitution in the solution treated and quenched state and aging behavior were studied by electrical resistivity and Vickers hardness measurements and X-ray diffactometry. All alloys were solution treated at 1173 K for 3.6 ks and then quenched into ice water (STQ). STQed specimens were isochronally aged at temperatures up to 1323 K in Ti-50Ta-Sn alloys and 1173 K in Ti-50Ta-Zr alloys. Shape recovery test was also performed in bent Ti-50Ta, Ti-50Ta-Sn and Ti-50Ta-Zr alloy specimens. In the STQed state, only reflections of orthorhombic α″ martensite were observed by XRD in Ti-50Ta and Ti-50Ta-4Sn alloys. In STQed Ti-50Ta-10Zr alloy, coexistence of α″ and β (bcc) phases were found by XRD. In STQed Ti-50Ta-8Sn and Ti-50Ta-20Zr alloys, only β phase was identified. In Ti-50Ta, Ti-50Ta-4Sn and Ti-50Ta-10Zr alloys, resistivity at liquid nitrogen temperature and resistivity ratio increased with isochronal aging up to a certain temperature. It is considered that these increases are due to reverse-transformation of α″ into metastable β phase. Shape-recovery test confirmed the shape memory effect of Ti-50Ta, 50Ta-4Sn and 50Ta-10Zr alloys.