著者
新山 智基
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.185-189, 2012-09-01 (Released:2012-09-28)
参考文献数
8

本稿の目的は、ガーナ共和国内のブルーリ潰瘍の実態と、保健医療に関連する制度である国民健康保険制度との関係を明らかにすることである。 1998 年に設立されたGlobal Buruli Ulcer Initiative を契機に、ガーナ共和国のブルーリ潰瘍対策は、National Buruli Ulcer Control Programme(NBUCP)によって管理・運営されている。ブルーリ潰瘍の治療に関連する費用(患部切除の手術や抗生物質投与に関わる処置など)は無料であり、国家予算と支援組織による寄付金によって運営されている。2003 年に開始された国民健康保険制度は、ブルーリ潰瘍を含む多くの病気が適応外である。そのため、国民健康保険制度を利用した治療は行われず、すべて NBUCP による費用で治療を行わなければならない。 しかし、治療費に関する費用のなかには、包帯などの関連する費用は含まれず、これに対して病院が自己負担しているケースも少なくない。また、運営予算のほとんどが支援組織による寄付によるものである。その実態は、国際援助に依存していることが明らかとなった。
著者
鄭 基浩 黄 権煥 小松 幸平
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.153-159, 2006 (Released:2006-05-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

第1報1)に引き続き,ホゾ-込み栓接合部における接触応力を測定することによって,周期的な相対湿度(RH:Relative Humidity)変化が接合部間の接触応力に及ぼす影響について検討した。さらに,増し打ちによる接触応力の上昇効果を調べると共に,スギ圧縮木材を用いた込み栓が接合部の接触応力の緩和防止に及ぼす影響について評価した。その結果,スギ圧縮込み栓を挿入した接合部の接触応力は,RH40%からRH80%への変化によってシラカシのそれより高い40Nを示し,RH85%で56Nまで到達した。かつRH40%における接触応力は,シラカシの接合部では初期の14Nが第2周期に13Nへ減少した反面,圧縮木材の場合は初期20Nであった値が第2周期目には27Nへ上昇した。このような結果から圧縮木材の込み栓は,周期的な相対湿度変化により接合部の接触応力緩和の防止効果があることが明らかになった。一方,シラカシとスギ圧縮木材の拘束状態において,相対湿度を周期的に繰り返し変化させると(RH40%-80%),シラカシは第3周期目から最大膨潤力(σmax)が3.3MPaまで低下したが,圧縮木材は第4周期目まで低下することもなく同じ傾向を示し,4.6MPaまで到達した。これによって圧縮木材がシラカシより応力緩和防止の効果を持つことが明らかになった。
著者
田阪 茂樹 松原 正也 田口 彰一 長田 和雄 山内 恭
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.31-38, 2011-01-31

第46次南極地域観測隊において,高感度ラドン検出器を南極観測船「しらせ」に設置し,2004年12月3日〜2005年3月19日まで南極海洋上大気中の^<222>Rn濃度を連続観測した.フリーマントルから昭和基地沖合まで(往路)の15日間,昭和基地沖合からシドニーまで(復路)の38日間を解析した.濃度の平均値は往路が39mBq/m^3,復路が48mBq/m^3であった.日平均した濃度と風速には相関があり,風速が5m/secの場合濃度は32mBq/m^3,13m/secに増加すると62mBq/m^3となった.寒冷前線に伴うラドン濃度増大現象(ラドニックストーム)時の濃度は,往路の事例では70mBq/m^3,復路の事例では114mBq/m^3であった.海洋からの放出量が風速の2乗に比例する条件を与えた全球移流拡散モデルを使ってラドン濃度を計算し,観測された風速依存性の検証を行った.
著者
益岡 了 材野 博司
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.1-10, 1997-11-30
被引用文献数
7

人間の移動における継起的体験と空間構造との関係に基づいたシークエンスの研究において, どのような行動変化を手がかりに, 実際の空間や景観の変化に伴った行動として認識するのかが問題となる。そこで本報告は, シークエンスにおける短時間の行動や視覚の認知の連続をより正確に把握するために, 心理学などの研究で用いられている特定の装置を改良し, 景観行動の実態を解明することを目的とする。調査の結果, 特定の空間の変化と行動, および生体反応とが対応した関係にあることが明らかになった。また全く同一の空間の歩行であっも, 往路と復路という歩行方向によって行動・反応に違いがあることが分かった。これらのことから, 実際に空間や景観を体験する歩行者の行動や認識を予想することにおいて, 空間を歩行方向に向けて断面図的に解析し, 継起的な歩行者の体験に基づく景観の分析を行う手法の有効性が確認できた。
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.784, pp.161-165, 2000-12-04
被引用文献数
1

周りからみると,それは不可思議な光景だった。朝から晩まで実験室にこもり,出来損ないのしゃぶしゃぶ鍋のような容器を作っては,そこに塩を入れ水を流す作業を延々と繰り返しているのだ。たまに実験室の外に居たかと思えば,今度はうつろな目つきで「1.2cmで0.7秒だから,ああだ,こうだ」と独りつぶやいている。 1999年1月。
著者
園田 吉弘 滝川 清 齋藤 孝 青山 千春
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1026-I_1030, 2012

We examined fluctuation about sedimentary environment and benthic biota of the Okigamisenishi point in Inner Ariake Sea. and focused on the impact of formation of oxygen-deficient water and resuspension of fine sediments with the typhoon in Summer 2006. As a result, about the relation between oxygen-deficient water and benthos, benthos with poor mobility as Annelida, Mollusca fluctuated corresponding to change of dissolved oxygen, while Arthropod escaped from the ocean space of oxygen-deficient water. About the relation between water contet of fine sediments and benthos, decrease in water content was increased the stability of the sediments, and benthic species and population increased. Dissolved oxygen and water content are an important environmental factors of the benthic habitat.

1 0 0 0 OA 高等代数学

著者
新井万弥 編
出版者
高等数学書院
巻号頁・発行日
1891
著者
桐山 隆哉 野田 幹雄 藤井 明彦
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.431-438, 2001-12-20
参考文献数
9
被引用文献数
22

藻食性魚類7種(メジナ,ブダイ,アイゴ,ニザダイ,ウマヅラハギ,カワハギ,イスズミ)にクロメを投与し,摂食状況を観察したところ,ブダイ,アイゴ,イスズミの3種がクロメをよく摂食した。<BR>これら3種の摂食痕は,口器の形状を示す弧状の痕跡の形や大きさ,中央葉部や茎部等の厚みのある部位の縁辺や摂食面に残る痕跡に相違があり,魚種による特徴が認められた。<BR>これらのことから,海中林において葉状部が消失する現象が発生した場合,残された痕跡が新しければその特徴を比較検討することで,魚類の摂食の有無や摂食した魚種の推定が可能であると考えられた。
著者
小柳 知代 富松 裕
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.245-255, 2012-11-30

人間活動が引き起こす景観の変化と生物多様性の応答との間には、長いタイムラグが存在する場合がある。これは、種の絶滅や移入が、景観の変化に対して遅れて生じるためであり、このような多様性の応答のタイムラグは"extinction debt"や"colonization (immigration) credit"と呼ばれる。近年、欧米を中心とした研究事例から、絶滅や移入の遅れにともなう生物多様性の応答のタイムラグが、数十年から数百年にも及ぶことが明らかになってきた。タイムラグの長さは、種の生活史形質(移動分散能力や世代時間)によって、また、対象地の景観の履歴(変化速度や変化量)によって異なると考えられる。過去から現在にかけての生物多様性の動態を正しく理解し、将来の生物多様性変化を的確に予測していくためには、現在だけでなく過去の人間活動による影響を考慮する必要がある。景観変化と種の応答の間にある長いタイムラグの存在を認識することは、地域の生物多様性と生態系機能を長期的に維持していくために欠かせない視点であり、日本国内においても、多様な分類群を対象とした研究の蓄積が急務である。