著者
尹 芝惠
出版者
西南学院大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,岡山県に残された朝鮮通信使の足跡について,主に絵画作品を中心に調査研究してきた。岡山藩における通信使の宿館であった牛窓の本蓮寺には,多くの墨跡や調度品が残されている。このことは,従来から知られてきたことではあるが,本研究における聞き取り調査において,第二次大戦中に憲兵がその遺物を持ち去って破壊しようとしていた事実が明らかとなった。このことは逆説的に,通信使が先進文化を伝えたことが周知の事実であったことを物語っている。破壊をおそれて遺物を隠匿し,また通信使を話題にさえ出さなくなったために,同じく牛窓に伝わる「唐子踊り」はいまだに伝承経路さえ明らかにされ得ないのであろう。また,四宮家から船団図が発見された下津井,あるいは足守においてもフィールドワークを展開したが新たな成果を上げることはできなかった。本研究において特筆すべきは,倉敷市連島にある宝島寺における調査である。「米友仁を倣う」と但し書きされ「李金谷」の落款がある水墨山水画,王勃『滕王閣序』の一節を屏風に仕立てたものに関しては,寺に残された文献には通信使との関わりが示唆されているものの,真偽のほどは不明である。とりわけ後者は,詩の途中から書き始められていること,誤字脱字があること,詩の連の順番を間違えていることなどから,偽作の可能性が高いが,そうでなければ使臣の誰かが練習用に書したものを日本人がこっそり持ち帰り寺に寄進したのではないかと推測される。制作年代の特定が急がれる。また,第10回の朝鮮通信使の随行員朴敬行らと岡山藩士近藤篤との筆談集『停嵯邂逅録』,および「矢上山」の扁額が第10回の朝鮮通信使に随行した金啓升の手によるものであることも久しく忘れられていた(李元植による詳細な目録,「筆談唱和集総目録」や「通信使の遺墨」にも記載されていない)が,本研究において再び明るみに出された。
著者
川上 麻世
出版者
琉球大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

【研究目的】健康な勤労者では、仕事による活動や緊張状態が続くことから、眠気の自覚が少なく、睡眠不足の蓄積によってもたらされる作業効率の低下を自覚していない可能性もある。本研究では勤労者を対象に、検査値から得られる“客観的な眠気”ならびに、質問票より得られた“主観的な眠気”も合わせて解析し、眠気が脳機能に及ぼす影響を解析することを目的とした。【研究方法】本研究参加の同意が得られた勤労者26名(男性10名、女性16名)を解析対象とした。昼間の眠気の調査には「エプワス眠気尺度日本語版」、検査時の眠気の調査には「カロリンスカ眠気尺度」を使用した。認知機能の調査には「注意機能スクリーニング検査 : D-CAT」を使用した。客観的な眠気の評価として短時間ポリソムノグラフィ検査を行って入眠までの睡眠潜時を測定し、また、「精神運動覚醒検査 : PVT」では反応時間の測定を行った。これらと認知機能との関連を評価し、勤務や睡眠習慣との関連を統計学的に解析した。【研究成果と考察】対象者の年齢、勤務時間、睡眠時間、エプワススコアはそれぞれ33.7±12.2歳、8.0±0.6時間、6.2±1.0時間、8.7±3.5点(平均±標準偏差)であった。睡眠潜時は3.5±2.0分(平均±標準偏差)で、すべての対象者が10分以内に入眠し、就寝時刻が遅い者ほど有意に睡眠潜時が短かった(β=-0.18, p<0.05)。認知機能との相関では、検査時のカロリンスカ眠気尺度が高いほどD-CATでの見落とし率が高かった(β=-2.63, p<0.05)。エプワススコアでの眠気がある群(11点以上)と眠気がない群(10点以下)との比較では、睡眠潜時もPVTも差を認めなかった。眠気の自覚がある、なしに関わらず入眠していることから、客観的な眠気と主観的な眠気が乖離していることが示された。本研究では解析症例数が充分でない事から、眠気と認知機能との相関について確定的なエビデンスは得られなかったが、今後、交代制勤務従事者や過重労働従事者を対象に含めた、より大規模な検討が必要と思われる。
著者
吉田 寛
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、震災からの復興において求められる復興ガバナンスとは、その当事者たちの「思い出」を言語や表現、活動を通じて紡いでいく過程であることを明らかにした。24年~25年にかけての、東日本大震災被災地である山元町復興への参与的な活動において、復興における被災コミュニティの再結合、合意形成、計画立案過程において「思い出」を担った言語の必要性が示された。26年には、この知見に基づいて、ガバナンス理論の権威であるUCバークレー校のBevir教授のもとで理論的研究を進め、ガバナンス・ストーリーの解釈・言語化が、ガバナンスの成否を握るファクターであることを明らかにした。
著者
松井 理直
出版者
大阪保健医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

関連性理論の中心的な概念である関連性の認知原理および関連性の伝達原理のうち、認知的関連性の数学的性質について研究を行った。その結果、回帰係数の特性を持った多値論理の枠組みが適切であり、情報の既定性と関連性が日常推論や日本語の様々な条件文の理解過程に重要な影響を与えていること、また各種認知バイアスが特に否定情報のフレームの大きさに強く影響されていることを明らかにした。また、この主観的確率の生成過程に関する数学的性質から、先入観や固定観念といった誤りの信念形成や、事実であっても信じられない現象について、その事実を排除してしまう数学的な性質の一部も解明できた。

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1916年04月25日, 1916-04-25

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1923年02月21日, 1923-02-21
著者
KAYOKO SUZUKAKE-TSUCHIYA MAKOTO HORI NOBUYOSHI SHIMADA MASA HAMADA
出版者
JAPAN ANTIBIOTICS RESEARCH ASSOCIATION
雑誌
The Journal of Antibiotics (ISSN:00218820)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.675-683, 1988-05-25 (Released:2006-04-19)
参考文献数
6
被引用文献数
3 5

Deoxypheganomycin D, a specific inhibitor of mycobacteria, inhibits the growth in vitro of Mycobacterium smegmatis ATCC 607 (M. 607) bacteriostatically at concentrations as high as 7×10-5M. It shows no cross-resistance to paromomycin, capreomycin, viomycin, streptothricin, kanamycin and streptomycin. Deoxypheganomycin D at 2.8×10-7M where the cell growth of M. 607 is only partially inhibited does not significantly inhibit DNA, RNA or protein synthesis but leads to marked decrease (13 % of control) in [14C]glycerol-derived radioactivity in cell-walls. In the presence of 7×10-6M deoxypheganomycin D, the influx of leucine but not thymidine is affected while the reverse is true with efflux. The data suggest that the effect of deoxypheganomycin D on M. 607 may be related to both the cell membrane and specific mycobacterial lipid like components of the cell-wall.
著者
松田 勲 相原 勝美 佐々木 信治
出版者
東京工芸大学
雑誌
東京工芸大学工学部紀要 (ISSN:03876055)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.83-87, 1986-01-15

The estimating system for the frequency stability was manufactured. The measurement, the data aquisition and the estimation of the stability, etc. are all controlled by a microcomputer PC 8001 mkII. Allan-variance and power spectral density was calculated as the measure of the frequency stability in the time-domain and the frequency-domain respectively. It was found that the tested quartz crystal oscillator had the stability of 1×10^<-11> at 1 sec averaging time and its power spectral density was designated by the sum of the terms of 6×10^<-25> f^<-2> (random walk noise) and 1.5×10^<-22> f^0 (white noise).
著者
江沢 洋
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:07272997)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.451-457, 2006-06-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
祐伯 敦史 浜岡 隆文 栗原 俊之 藤田 聡 黒澤 裕子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

3カ年にわたる本研究プロジェクト実施により、以下の点が明らかとなった。(1)若年者と比較し、高齢者では、短期記憶および長期記憶は低値を示した(p<0.05, p<0.01)。(2)80歳代高齢者(被験者3名)の左脳・帯状回前部のクレアチン濃度は、若年者と比較し、9.6%低値を示した。(3)年齢と脳萎縮指数の間には、有意な相関関係が認められた(r=-0.89)
著者
三浦 渉尊 嶋田 敏 緒方 大樹 太田 順 新井 民夫 原 辰徳
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.80, no.819, pp.DSM0336-DSM0336, 2014 (Released:2014-11-25)
参考文献数
18

Since service is an artifact as well as physical product, we can observe both function design and activity design of service in a conceptual design phase. Activity design requires designers to deploy all designed functions into activities in service delivery process. However, it is difficult for non-experienced designers to model complicated service delivery processes such as conditional branches and exception handlings while assuring the relationship to functions. To solve this problem, the authors propose a design support of constructing service delivery processes using a collection of structure patterns of processes called Workflow Patterns. In this paper, we make the Workflow Patterns hierarchized by the ISM method so that designers can easily choose a pattern among them according to purpose. The proposed method was implemented on a CAD system for service, and its effectiveness was verified through an evaluation experiment. As a result, it was revealed that the proposed method is especially effective in the case of constructing processes including conditional branches.
著者
河盛 阿佐子
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.368-375, 1992-05-05

光エネルギーによる葉緑体のチラコイド膜上の電荷分離に続く電荷移動は, 電子スピン共鳴で微視的過程を追いかける格好の対象である. 筆者がこの複雑な生体系の研究に着手し, 暗中模索した1980年当初から考えると, いまはこの系が研究材料の宝庫であることを確信するに到った. 電荷の担い手はクロロフィル・ラジカルなどタンパク質に含まれるフリーラジカルや, マンガンなどの遷移金属元素であるが, 観測にかかるスペクトルは実に様々な情報をもたらす, その解読は物性物理の問題を解くことであるが, この種の謎解きの面白さはこの分野がかなり解明されてきた現在でもまだ暫く続くだろう.