著者
細内 信孝
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.71-77, 1994-07-03

生活者がモノとコトで情報創造する'90年代のソフトウェーブ社会(情報化社会)において新しいマーケティングの在り方を考察し, 情報財によるマーケティング展開として次のようなことが判明した。情報財マーケティングとは, 情報発信者(企業又は生活者)と情報受信者(生活者又は企業)の意味(情報)の共有化をいい, 企業と生活者が相互に商品のコンセプトや価値を共有し, そのコンセプトや価値に共振, 共鳴しながら感性エリアを増幅していく一連の生活情報の共鳴活動である。この新しい生活文化に根ざした共振, 共鳴による情報活動を情報財マーケティングとした。
著者
渡辺 毅 浜田 穣 渡辺 邦夫 WATANABE Tsuyoshi
出版者
椙山女学園大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

スラウェシマカクに関する調査研究は,日本の調査隊によって,1981年以来継続されてきた。当初の問題点は,いくつの種が分布しているのかにあり,形態学的・行動学的・生化学的・遺伝学的研究の総合の結果,7種であるとの結論に達っした。ところが,オ-ストラリアのGroves(1984)と本研究分担者渡辺(1990)によって,雑種の存在が観察・記載され,新たな問題点が発生するに至った。自然条件下での雑種形成に関する研究が必要となり,本研究が計画されたのである。今回の研究は,以下の3点にわたっておこなわれた。1)スラウェシ島中央部に生息するMacaca tonkeanaと南東部のM.ochreataの分布境界域を確定するため,現地を踏破した。自動車を借用して現地を移動しながら,生息するサルたちの直接観察と,現地住民にペットとして飼育されているサルたちの観察調査により,捕獲地点を特定し,また雑種の有無,その程度を記載することで,分布境界線と雑種のゾ-ンを決定していった。今回の調査により,境界線の南西域にあたる100km相当が確認され,雑種と思われる個体の観察もなされた。調査期間の最後に,分担者の渡辺と浜田の2名は,最南西部のM.ochreataとM.brunescensの分布境界域で同様の調査をおこなったが,日数の関係上,将来への予察的調査となった。2)スラウェシ島南部のカレンタ自然保護区に生息するM.maurus(ム-アモンキ-)の1群が餌づけられていて,長期継続観察が可能となっている。この群れは,分担者渡辺によって個体識別が進められ,今回現地参加の松村が長期観察にとりかかった。研究の目的は,社会構造の解明,行動特性の解明にあるが,長期観察により,繁殖の季節性,個体の成長パタ-ン,個体の移出入などが明らかになりつつある。スラウェシマカク7種のうちで,もっとも特殊化の進んだ種は,M.nigra(クロザル)とされているが,この両種の詳細な行動比較は,スラウェシマカクの種分化を解明する上での,キ-ポイントの一つとなっている。3)スラウェシ島の最北端に生息するクロザルは,激しい人為的環境破壊により,分布が寸断され,存続が危ぶまれている。ハルマヘラ群島の一つであるバチャン島にクロザルが生息しているとの情報があり,その生息状況を調べるために,分担者の浜田がバチャン島へおもむいた。アプロ-チに日数のかかる離島であるが,調査の結果,数千頭のクロザルが生息しており,島民のサルへの態度も敵対的ではないため,クロザルの種の保存や今後の研究にとって良好のフィ-ルドであることが判明した。今回の調査により,スラウェシ島において自然条件下で雑種が形成されていることは,ほぼ間違いなく確認された。しかも雑種が1代限りでないこと,つまり妊性のある雑種が形成されていることも確実だ。これは,いわゆる生物学的種(biological species)の定義に反する。それならば,雑種形成をとげている両種は,別種ではなく同種と分類しなければならないのだろうか?スラウェシ島以外の地域において,自然条件下での雑種が存在しているのだろうか?アフリカのヒヒ類とグエノン類,南米のオマキザルなどで雑種の存在が報告されている。これらすべてをそれぞれ同種に変更すれば,生物学的種と矛盾はしなくなる。しかし,われわれは,形態も行動も社会も異なる2種の霊長類を同種と認めるわけにいかない。ここで生起する大問題は,「種とはなにか?」である。これまでの研究成果をふまえてのわたしの見解は,ヒトという動物が一般の動物とややおもむきを異にしているのと同様に,霊長類というヒトも含む分類群もまた,他の動物とやや異なった存在ではないか,とするものだ。このような見解は,当然のことながら,激しい反論を呼ばずにはいられない。近々,発表する予定のこの見解が議論を惹起し,霊長類学,生物学の発展の一助になれば,と期待している。
著者
垣本 直人
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、リチウムイオン電池を組み込んだ太陽光発電のHEMSを開発した。まず、過去30年間の日射量データを解析することにより太陽光発電の信頼性を検討した。一日の供給量と電池の容量から供給が不足する日数が1年に10日くらいになるよう設定した。解析にはマルコフモデルを用いた。つぎに実験を2年間行い、1年目の不足日数が7日、2年目は2日であることを確かめた。また、電池の劣化特性を測定した。使用した電池では約750回の充放電が可能であった。電池のモデル化を行い、充放電の電荷量によって劣化が進行することを示した。
著者
加藤 浩徳 志摩 憲寿 中川 善典 中西 航
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.70-85, 2012

本論文は,高知県を対象として,交通システム成立の経緯を整理するとともに,その経緯と社会経済的要因や政治的要因との関係を分析するものである.同県の広域交通ネットワークの発展経緯を,古代~中世,近世,明治~戦前,戦後の4つの時代区分にしたがって整理した.その結果,高知県は,険しい四国山地と海に囲まれた地域であったため,古代から現在に至るまで,海路による広域交通ネットワークに頼らざるを得なかったこと,県領域内の閉鎖的な交通政策が広域旅客交通の発展を妨げたこと,高知県の陸路ネットワークの整備は,主に政治的要因によって実施されてきたこと,高知県の海上交通ネットワークは,一貫して関西地方との経済的結びつきのもとに発達してきたこと,四国遍路が高知県内の技術に与えた影響が大きいことなどを明らかにした.
著者
浅井 博 朝日 透
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

琵琶湖の烏丸半島の湖岸において,原生動物ツリガネムシ種の Zoothamnium arbuscula Lake Biwa の大量採集を行った。Ca2+駆動収縮の本体タンパク質のsupaconnectin のcDNA 分析用ペプチッド一次構造解析のためである。最終年度の2014年にやっと大量採集に成功した。ツリガネムシの採集が不可能な期間には,赤血球のCa2+ 依存膜変形,特に,収縮の研究を始めた。牛赤血球においては,顕著な収縮や変形は観察されなかった。しかし,より原始的なジェノパスの赤血球を用いたところ,Ca2+添加によって顕著な赤血球収縮が起きることを発見した。
著者
高橋 典嗣 富川 奈津子 山崎 良雄 富川 奈津子 冨川 奈津子 フカワ ナツコ FUKAWA Natsuko 山崎 良雄 ヤマザキ ヨシオ YAMAZAKI Yoshio
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.20, pp.16-48, 2010-03

2009年7月22日に皆既日食が日本のトカラ列島、硫黄島、南太平洋で見られ、国内各地では部分日食が観察された。この機会に、最も荘厳な自然現象の一つである皆既日食を多くの児童生徒に観測体験してもらうことをねらいとした科学体験活動「日食観測体験授業」を企画した。授業の実践に向け、学習方法の検討、学習内容の検討を行い、学習環境システムを構築した。授業は、中国(嘉興市第五高級中学)から千葉(千葉大学)、東京(町田市立南第一小学校)、神奈川(南足柄市立福沢小学校)の各観測点をインターネットで結び、各会場に集まった301名の児童生徒を対象に行った。皆既日食当日の中国の天候は雨天で、太陽コロナの観測はできなかった。しかし、皆既中に真っ暗になることや皆既中の様子を体験する科学体験活動は成功し、参加した児童生徒の科学への興味関心を高めることができた。
著者
小林 俊雄
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

エネルギー約300MeV/u、質量数約100の重RIビームを用いた不変質量法による実験では、同じエネルギー/質量領域の入射核破砕片の質量分離が必要不可欠である。この為には約0.1%の分解能を持つ全エネルギー検出器が必要であり、アルゴンにゼノンを少量混合した液体又は固体検出器を開発した。液体窒素を用いた冷却により、単体ガス又は混合ガスを液化/固化する試作機を製作し測定を行った。アルゴン単体の液化と部分的な固化の段階まで進んだ。
著者
服部 峻
出版者
室蘭工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

実世界でスマート空間を実現するには、状況を監視し続け、サービスや構造を最適化する必要がある。しかし、従来の物理的なリアルセンサだけでは、ある場所(空間)ある時間に起きた現象に関して、人々がどのように認識しているか、評判や印象までセンスするのは困難である。そこで本研究では、様々な現象に関して大量のウェブ文書から時空間依存データを抽出するウェブセンサ技術を開発し、その可能性や信頼性を多角的に検証した。
著者
関 淳一 藤井 暁 大橋 誠 佐藤 利彦 山本 雅規 和田 正久
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.541-548, 1984-04-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
20

糖尿病患者にみられるMonckeberg型石灰化 (M型石灰化) の成因並びにその臨床的意義につき研究するために, 糖尿病患者におけるM型石灰化の頻度を性・年齢分布を一致させた非糖尿病対照例と比較するとともに糖尿病の各種臨床像との関連性について検討した.また, 一部の例については椀骨骨塩含量 (RMC) との関係についても検討を加えた.対象は糖尿病患者92例, 非糖尿病者48例の計140例であり, Xeroradiographyを用い下肢動脈石灰化の有無を判定し, その石灰化像よりM型石灰化とPatchy型石灰化 (P型石灰化) とに分類した, 成績は次のごとくである.1) 糖尿病例, 非糖尿病例のM型石灰化の頻度は22.8%2.1%であり, 糖尿病例で有意に高率であった (P<0.01).また, 女性に比し男性に高率でその比はほぼ1.7: 1であった.一方, P型石灰化は糖尿病例15.2%, 非糖尿病例6.2%で両者間に有意差なく性差も認めなかった.2) M型石灰化は年齢との間には一定の関係はなく, 糖尿病の罹病期間が長期に及ぶにしたがい高率となる傾向がみられた.これに対しP型石灰化は加齢とともに頻度は増加し, 糖尿病の罹病期間との関係は明らかてなかった.3) M型石灰化例には, 検査前1年間の空腹時血糖値の平均値が250mg/dl以上の箸しいコントロール不良例が高率にみられた (P<0.05).4) M型石灰化例ては, P型石灰化例, 非石灰化例に比し増殖性網膜症合併例が有意に高率であった (P<0.05).神経病変との間には一定の関係はなかった.5) 間欠性跛行, 壊疽合併率はM型, P型両石灰化例でほぼ同率にみられ, 両者とも非石灰化例に比し有意に高率であった.6) IDDM例では, 非石灰化例に比しM型石灰化例でRMCは有意に減少していた.NIDDM例ではそのような傾向は認められなかった.
著者
浅野 雅樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

主に大学の授業で使用する新しいタイプの語彙学習を中心とした中級中国語テキストの作成に向けた研究を行った。従来の本文(課文)や文法項目中心のテキストから、語レベルの特徴や難易度に応じた語彙の導入や、日本語の漢語語彙との関係性を利用した語彙の提示方法について考察を行った。また「語彙論体系知識」を教育内容に含めることを提起した。「語彙論体系知識」の中で、いくつかある項目のどれを取り入れるのかという問題に対して、学習者に対するアンケート調査も何度か行い、その結果に依拠して、大筋の結論を得ることができた。さらにテキストの試用版を作成し、その一部を授業等の教育現場で使用することができた。
著者
慶松 勝左衞門 横田 嘉右衞門
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
no.510, pp.629-636, 1924-08-26

Zur Darstellung der 2-Oxy-3.5-dinitrophenylarsinsaure haben die Verfasser die Methode von Hans Schmidt (Ann. 421,159), sowie von Bart (Ann. 429,57) benutzt, indem sie Pikraminsaure diazotirten und auf das Produkt in der alkalischen Losung arsenige Saure einwirken liessen. Die so erhaltene Substanz stellte gelbe Blattchen vom Smp. 237°. As-Gehalt (nach Lehmann) Gef. 24.35%, berech. f. C_6H_5O_8N_2As 24.34%. Diese ist identisch mit der 2-Oxy-3.5-dinitrophenylarsinsaure von Benda (Ber 44,3294). Reducirt man die letztere in der Kalte mit Natriumhydrosulfit, so wird eine Aminoverbindung gebildet, aber kein Arsenobenzolderivat. Behandelt man dagegen 2-Oxy-3.5-dinitropheny ars nsaure bei 60° kurze Zeit mit Hypophosphitlosung, so bleiben die Nitrogruppen intakt und wird Dioxytetranitroarsenobenzol gebildet. As-gehalt 28.95%, ber. f. C_<12>H_6O_<10>N_4As_2 29.05%. Lasst man die Hypophosphitlosung langere Zeit einwirken, so wird Dioxy-diamino-dinitroarsenobenzol (gef. As. 28.38%, ber. f. C_<12>H_<10>O_6N_4As_2・2HCl 28.34%) gebildet. Die Dioxytetraaminoarsenobenzol wurde jedoch nicht isolirt.
著者
長澤 榮治 鈴木 恵美 松本 弘 岩崎 えり奈 臼杵 陽 飯塚 正人 泉 淳 辻上 奈美江 ダルウィッシュ ホサム 錦田 愛子 横田 貴之 石黒 大岳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2011年1月に始まるアラブ革命の各国ごとの多様な展開を、憲法改正などの政治改革に成功した事例から、軍事クーデターや運動弾圧による内戦の勃発とその長期化による大量の難民発生の事例まで、実証的に検討し、その背景となるイスラーム運動など地域の基軸的な諸問題との関係を考察した。また、パレスチナ問題の展開や域内の非アラブ国や域外大国の介入など中東域内政治の構造変容についても分析を進めた。以上の研究の成果を社会に向けて公開・発信した。今後の研究発展の基盤整備のために、アラビア語など関連文献資料の収集を行い、政治動向の情報の系統的な収集・蓄積とアーカイブ化に向けた試作的なデータベースの作成も行った。