著者
上之 和人
出版者
日本流体力学会
雑誌
ながれ : 日本流体力学会誌 (ISSN:02863154)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.381-389, 2006-08-25
被引用文献数
1

つららの表面を流れ落ちる過冷却状態の薄い水膜からの氷の成長の際に,表面に約1cmのリング状の波模様が現れる.この現象を,自由表面をもつシアー流れのある薄い液膜からの結晶成長過程における固液界面の形態不安定性の問題として扱う.界面の線形安定性解析により,波模様の波長を定量的に求め,波模様形成の新しいメカニズムを提唱する.
著者
小貫 明
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.779-785, 2008-10-05
被引用文献数
1

19世紀後半にvan der Waalsは気体・液体相転移の理論を提出した.しかし蒸発・気化のように潜熱の関与する動的側面は意外にわかっていない.気体液体転移が起ると温度は不均一になり流体運動には潜熱輸送が重要になる.ヘリウムの超流動転移においては,線形熱伝導率が有限から無限になる.しかし転移点近くでは熱流による非線形効果が顕著になり,常流動・超流動界面が形成され,重力と熱流が拮抗して特異な自己組織化状態が実現される.
著者
遠嶋 康徳
出版者
日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.77-93, 2010

Observation of the change in atmospheric O<sub>2</sub> concentration, combined with atmospheric CO<sub>2</sub> observation, provides complementary information about the global carbon cycle. This is based on the fact that O<sub>2</sub> and CO<sub>2</sub> fluxes are tightly coupled during terrestrial photosynthesis, respiration, and fossil fuel and biomass burning, but are less or decoupled during the sea-air gas exchanges. Especially, the long-term O<sub>2</sub> changes can be used to partition the sequestration of fossil fuel CO<sub>2</sub> release between ocean and terrestrial biosphere. In this review, we examine the parameters used for the partitioning calculation, including - O<sub>2</sub>: C exchange ratios for the terrestrial photosynthesis/respiration and fossil fuel burning. In early atmospheric O<sub>2</sub> studies, the net oceanic O<sub>2</sub> flux was assumed to be zero because of the low solubility of O<sub>2</sub> in seawater in comparison with that of CO<sub>2</sub>. However, recent studies have suggested that the upper-ocean warming, reducing the solubility of O<sub>2</sub> and the oceanic ventilation, causes net oceanic O<sub>2</sub> outgassing. We also review approaches to estimate the net oceanic O<sub>2</sub> fluxes. Finally, using the updated fossil CO<sub>2</sub> emission estimates and recently reported warming rates of the global upper ocean, we recalculate the ocean and terrestrial carbon sinks based on the previously reported atmospheric O<sub>2</sub> observations.
著者
井田 歩美 合田 典子 片岡 久美恵
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.427-436, 2013-01
被引用文献数
1

近年,核家族化や地域連帯感の希薄化による子育ての孤立が指摘されている。一方で,インターネットの急速な普及により,乳幼児の母親世代でのインターネット利用は日常化していると推察される。そこで,専門職者としての具体的な支援のあり方を検討するため,母親の子育て情報に関するインターネット利用の実態を調査し,その特徴と課題を明らかにすることとした。方法は,平成22年3〜4月に乳児を対象とした市町村主催の『子育てふれあい教室』に参加した乳児の母親を対象とし,無記名自記式質問紙を用いた実態調査研究を行った。調査内容は,対象の属性,インターネットの利用状況などである。131人から回答を得(回収率92.9%),有効回答数は127人であった。結果,子育てに関連しインターネットを利用している母親は約8割であった。その利用状況は頻度および時間ともに健全で,メリットやデメリットを理解したうえで利用していた。専門職者は,母親の多くがインターネット上で情報収集や意見交換をしている現状を認識し,積極的に関心を寄せる必要がある。さらに,今後は母親の望むインターネット情報について把握し,分析する必要がある。
著者
井田 歩美 猪下 光
出版者
ヒューマンケア研究学会
雑誌
ヒューマンケア研究学会誌 (ISSN:21872813)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.7-13, 2014

本研究の目的は、ソーシャルメディア上における1 歳未満の児をもつ母親の育児に関する発言状況から利用実態を明らかにし、今後の育児支援に向けた研究の糸口を見出すことである。分析対象は株式会社 ベネッセコーポレーション『ウィメンズパーク』内「0 ~ 6 カ月ママの部屋」「7 ~ 11 カ月ママの部屋」での母親の発言である。1 年間34 万件超の発言を分析した結果、母親達がソーシャルメディアを利用する曜日は平日が多く、母親は児の月齢、性別、出生順位などの自己紹介から発言を始め、育児への疑問や不安、思いや本音などを語っていた。母親にとってのソーシャルメディアは、育児情報の収集や意見交換などに利用され、新たなコミュニティとしての機能を果たしていることが明らかになった。 今後、ソーシャルメディア上の母親の発言を詳細に分析することは、新たな育児支援策を検討する上で有益であると示唆された。
著者
植田 恭代
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学文学部紀要 (ISSN:13481444)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.75-91, 2003-03-15

『源氏物語』にみられるさまざまな後宮の殿舎は,単に宮廷の風景としてあるのではなく,物語世界独自の場として描かれている。そのうち,淑景舎=桐壼,飛香舎=藤壺については,これまでに考察を試みた。本稿では,それらをふまえて,凝華舎=梅壺の場合について検討してみる。凝華舎は,物語中では「梅壺」と表されている。物語にみられる「梅壺」には,弘徽殿大后の局,梅壺女御という呼称から明らかになるその居所,明石中宮腹の二の宮の御曹司という,三つの場がある。それらの描写は,一見,唐突に出てくるように感じられるが,『源氏物語』の殿舎の使われ方を思い起こしても,やはり物語の側の要請から,描かれるとみる方が自然であろう。前編前々稿で検討してきたように,史実における後宮の殿舎は,男性たちにも使用される場である。凝華舎は東宮と関わりが深く,儀式の場ともなる。一方,「梅壺女御」と呼ばれた詮子の存在感も強く漂う場であった。そうした史実からのイメージを見据えつつ,物語世界の人々が実際に住んだ場であることを考えてみると,物語世界の梅壼も,それぞれの人物たちをとりまく縁により所有され,政権にも見合う場として想定されていると考えられる。
著者
伊藤 禎宣
出版者
東京農工大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、ユビキタス情報環境における外部観測可能な情報行動から、人々が欲する情報を推測する技術の開発である。この技術開発を目標に、項目1として、人の情報探索対象判別技術の確立、項目2として、情報探索対象判別技術を実装した、ユビキタス環境において実際的な情報行動判別センサデバイスの開発を目指した。これらの成果は、論文(Ito2006, 伊藤2007)等で発表した。
著者
玉川 浩司 飯塚 崇史 池田 彰男 小池 肇 長沼 慶太 小宮山 美弘
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.521-527, 1999-08-15
被引用文献数
4

大麦糠由来のポリフェノール抽出物BPE及びそこから分離精製したプロアントシアニジン類(2量体及び3量体)について,幾つかの抗アレルギー活性測定法を用い,その効果を検討した.<BR>(1) BPEは,生体内における炎症に深く関与しているヒアルロニダーゼ活性を濃度依存的に抑制した.また,その主要ポリフェノール成分であるプロアントシアニジン類の抗ピアルロニダーゼ活性は,(-)-EGCG及(-)-ECGと比較して,小さかったが,(-)-EGC,(-)-EC及び(+)-Cよりは大きかった.<BR>(2) 大豆リポキシゲナーゼ活性についても濃度依存的に抑制し,また,その主要ポリフェノール成分であるプロアントシアニジン類の抗リポキシゲナーゼ活性は,カテキン類と比較して大きいことが判明した.<BR>(3) 感作ヒツジ赤血球における補体価の抑制はBPEの濃度に依存して大きくなった.また,その主要ポリフェノール成分であるプロアントシアニジン類の抗補体活性は,(-)-EGCG及(-)-ECGと同等あるいはそれ以上の効果を示した.
著者
早岡 英介 三上 直之 杉山 滋郎 藤吉 亮子 鳥羽 妙 川本 思心 郡 伸子 滝沢 麻理 池田 貴子 添田 孝史
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島第一原子力発電所の事故以降,主に放射能リスクをテーマとしたリスクコミュニケーションの取り組みが各地で進められてきた.だが,多くは啓蒙的な説明会にとどまっており,専門家と一般市民との間に十分な双方向の対話の場を生み出せていない.こうした状況を克服するためには,リスク情報を正確かつ受け手側に配慮しながら発信できるリスクコミュニケーターの育成が急務である.北海道大学CoSTEPにおける2014年度の実践から,リスクコミュニケーター人材育成においては「伝え方を工夫できるコンテンツの制作能力」「対話の場を生み出す能力」「問題設定を適切に設計できるフレーミング能力」の3つの能力が重要だと考察した.
著者
榎本 洸一郎 戸田 真志 桒原 康裕
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.6, pp.1-6, 2011-08-29

本論文では,水産資源量調査のために撮影された海底画像群からホタテの自動計測システムの開発を目的とし,砂場環境に適したホタテ領域の抽出手法について提案する.対象となる砂場環境下では,ホタテは砂に身を隠している.このため,ホタテの殻はほとんど確認することができず,視覚的特徴が少ない条件下で認識する必要がある.そこで,新たにホタテが呼吸することで露出している殻縁領域に特化した局所特徴量を提案し,その結果について検討し,その有効性について述べる.This paper describes our method to extract scallop areas from fine sand seabed images from the sand field. In the sand field, we can see only the shelly rim because the scallop is covered with sand and opens and closes its shell while it is alive and breathing. We propose a method to extract the shelly rim areas using the new local features, presents the results, and discuss it.
著者
大瀧 仁志 小堤 和彦 坂上 成美
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

2種の溶媒が混合している媒体中に電解質を溶解させると、生成したそれぞれの陽イオンや陰イオンは2種の溶媒により溶媒和される。これらのイオンに溶媒和している溶媒の組成は、一般にイオンによって異なるし、またバルクの溶媒組成とも異なる。溶媒和圏の溶媒組成がバルクの組成と異なる時、イオンはある一方の溶媒と好んで結合しようとする性質があることを示し、このとき、イオンは一方の溶媒により選択的に溶媒和されているという。われわれは溶液X線回折法により第1溶媒和圏の溶媒組成を直接決定し、選択溶媒和の程度を定量的に表現する量として、選択溶媒和指数K_<PSO>=[X^^-_A(1-X^^-_A)]/[X_A/(1-X_A)]を新たに導入した。A、Bは混合溶媒において、イオンの溶媒和圏における溶媒AおよびBの濃度(モル分率X^^-_AおよびX_B=1-X^^-_A)とバルク層における溶媒AおよびBの濃度(モル分率X_AおよびX_B=1-X_A)である。-RT1nK_<PSQ>は当該イオンの溶媒AおよびBの溶媒和ギブズエネルギーの差ΔΔG^O_<solv>と密接に関連していることが示された。また溶媒和圏における溶媒分子間の相互作用、とくに立体的障害に起因する反発力は選択溶媒和に大きな影響を与えることが示された。ここで得られた-RT1nK_<PSQ>の値と熱力学的考察から、溶媒和圏における分子間立体障害のエネルギーを推定することが可能であると考えられる。溶媒分子Aがイオンばかりでなくもう一方の溶媒分子Bとも強く相互作用する場合には、遊離の溶媒分子Aの濃度が低下するため、溶媒Aの選択溶媒和性が著しく低下する現象が観察された。これらのことから、選択溶媒和の主な原因は1)主として溶媒分子のドナー性(対陽イオン)やアクセプタ-性(対陰イオン)に基づくイオン-溶煤相互作用(引力的相互作用)2)双極子間、四極子間相互作用などの溶媒相における溶媒分子間相互作用(引力的相互作用)3)主として立体障害に基づく溶媒和圏における分子間相互作用(反発的相互作用)であることが示された。
著者
下原 美保 髙岸 輝 江村 知子 佐藤 公則 山崎 剛
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、科学的手法によって住吉派作品における古典編集の在り方を解明することである。その第一ステップとして、ハフ変換による画像のパターン分析方法を確立し、絵巻に登場する建築物の斜角を検出した。対象とした作品は「石山寺縁起絵巻」(鎌倉時代・室町時代・江戸時代)、「春日権現験記絵」(高階隆兼 鎌倉時代)、「元三大師縁起絵巻」(住吉具慶 江戸時代)等である。三者を比較した結果、「元三大師縁起絵巻」は、前二者より斜角に大きな差が見られた。同絵巻が古典作品の様々な場面を引用し、編集して制作されたことに起因すると考えられる。
著者
竹内 靖子
出版者
桃山学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

キャンプ活動が知的・発達障がい児・者の「生活の質」「自立」「発達」にいかに貢献できるのかアメリカと日本のキャンプについて実証的に研究した。①知的・発達障がい児・者対象キャンプ関係者への聞き取り ②大阪市とその近郊のキャンプ実態調査 ③知的・発達障がい児・者対象キャンプ実践を行い、「参与観察」ならびに参加者とその家族への「質問紙調査」によりデータを収集し検討した。結果、キャンプ活動は、①参加者の「生活の質」「自立」「発達」に良い影響を与えていること。②参加者に加え家族やキャンプ関係者も「成長」する機会を得ること。③良い影響を継続するためには個別支援や運営に工夫が必要なことが明らかになった。