著者
横澤 一彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本プロジェクトの目的は、高次視覚と行為への理解であり、多くの認知心理学的実験が行われた。第1に、同時に提示される2つの日常物体の奥行き回転による方位差を弁別させる実験課題における反応時間と誤答率を測定した(Niimi & Yokosawa, 2008)。その結果、視覚系は正面、側面、後面に特異的であり、高速で正確であったが、斜め方向では時間がかかり不正確であった。このような特性は水平線や対称性などの方位特異的な特徴に基づくことが分かった。日常物体の方位の視覚判断の効率性は方位依存的であり、前後軸を基に知覚されている可能性が考えられる。第2に、刺激と反応が対応しているときに効率的であるという刺激反応適合性がまったく無関係な次元間でも生ずるかを調べた(Nishimura & Yokosawa 2006)。その結果、直交型サイモン効果と呼ぶ上右/下左が優位となる結果が得られた。この直交型サイモン効果は、左反応が正極になると減弱するか、逆転した。この結果は、刺激の正負の符号化によって、反応の正負の符号化が自動的に生起することを示している。第3に、時間的に系列的に提示された文字列中の標的において、報告される標的の正答率の違いを調べた(Ariga & Yokosawa, 2008)。その結果、提示系列の後半に比べ、前半に標的が提示されるとき、その正答率が低下することが分かった。この新しい現象を「注意の目覚め」と命名した。
著者
吉田 美幸 楢木野 裕美 鈴木 敦子
出版者
福井医療短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、検査・処置を受ける幼児後期の子どもの調整能力発揮への支援プログラムを開発し、その効果を明らかにすることを目的とした。文献検討および、医療処置のなかでも点滴・採血を受ける幼児後期の子どもの自己調整機能とその発揮に向けた関わりに対する看護師への面接調査結果を基にプログラムを作成した。プログラム研修を看護師に実施し、研修前後の看護師のケア実践について調査した。その結果、研修後の看護師は、幼児後期の子どもの自己調整機能の発揮に向けた意図的な観察や実践をし、子どもと共にケアを探求する姿勢へと変化していく一方、多忙な中でのプログラム活用方法への検討の必要性が示唆された。
著者
日比野寛 著
出版者
金港堂
巻号頁・発行日
1910
著者
篠原 ひとみ 兒玉 英也
出版者
秋田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

乳児の夜泣きへの看護介入方法を探索するために、児の唾液中のメラトニン濃度が睡眠-覚醒リズムの発達の有効な指標となり得るかどうかを明らかにすることを目的に児の唾液中のメラトニン濃度を測定した。そして起床時刻、就寝時刻、最長持続睡眠時間、総睡眠時間、昼寝回数、昼寝時間、保育環境との関係を分析した。対象は生後3-15ヵ月の児(平均7.6±3.2ヵ月)67名(男児36例、女児31例)とその母親である。唾液は母親が1日4回、朝起床時(6時-9時)、昼(11時-13時)、夕方(15時-18時)、夜就寝前(20時-23時)に採取した。67名の唾液中のメラトニン濃度の平均値(SD)は朝起床時40.1(35.3)、昼13.6(21.7)、夕方14.6(24.7)、夜就寝前23.2(28.4)であり、昼や夕に高濃度(10pg/ml)を示す児は生後3-5ヵ月に多く認められた。児の1日の総睡眠時間、最長持続睡眠時間、夜間の覚醒回数、昼寝回数との関係では、昼と夜のメラトニン濃度は昼寝回数と正の相関、昼のメラトニン濃度と最長持続睡眠時間に負の相関、朝のメラトニン濃度と総睡眠時間に負の相関が認められた。また夕と夜のメラトニン濃度は1週間当たりの外気浴日数と負の相関が認められた。生後3-5ヵ月の乳児では昼や夕でもメラトニン濃度が高値を示す例が多く認められたが、月齢と伴にその頻度は減少した。昼のメラトニン濃度が高値の場合昼寝回数が多く、最長持続睡眠時間が短縮する傾向がみられたことから、生後5ヵ月以降、月齢が進んでも日中のメラトニン濃度が高値の場合、睡眠-覚醒リズムの発達の遅れを検討する必要があると考えられる。
著者
園田 誠
出版者
日経BP社
雑誌
日経Windows 2000 (ISSN:13452835)
巻号頁・発行日
no.47, pp.183-188, 2001-02

■「接続時間や時間帯を気にせずインターネットを利用したい」「リアルタイムでメールを送受信したい」——。こんな方にオススメなのが,フレッツ・ISDNだ。月額1万円未満という低価格でインターネットにつなぎっぱなしにできる。■フレッツ・ISDNによる常時接続環境の構築は,ダイヤルアップ環境と比べてあまり変わらない。
著者
内山 清子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、効率的な検索に利用するシソーラス構築のために、分野における基礎的で必須である専門用語について以下の3点の研究を実施した。 (1)専門用語の専門度(分野基礎性)を示す指標の分析:文書中に出現する専門用語について、分野を理解する上で必須・基礎的なレベルから専門性が高いレベルまでの段階を分野基礎性として客観的な指標について、論文や書籍の文章構造中の出現傾向について分析を行う。 (2)分野基礎性判定手法の検討:分析結果に基づいて、自動的に分野基礎性が高い用語を抽出する方法を検討する。 (3)システムへの応用の検討:分析に基づいて分野基礎性が高い用語判定を利用してシソーラスを構築し、システムへの応用の可能性について議論した。
著者
西村 拓一 伊藤 日出男 中村 嘉志 山本 吉伸 中島 秀之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.2659-2669, 2003-11-15
被引用文献数
11

?<「いつでも,どこでも,誰でも」情報にアクセスできる遍在(ユビキタス)型情報処理社会では,莫大な情報から「いま,ここで,私が」欲しい情報を簡便なインタフェースで提供することが重要である.そこで,本論文では,適切な位置で適切な方向に端末を向けるだけでインタラクティブに音声情報を取得する無電源小型情報端末(Compact Battery-less Information Terminal: CoBIT)を用いた情報支援システムを提案する.環境側の装置からは音声情報とエネルギーを伝える光を照射し,CoBITでは太陽電池に直結したイヤホンで音を聞くことができる.また,CoBITの表面には反射シートを貼り付けることで,赤外光投光カメラを用いればCoBITの位置やおよその方向を容易に推定することができる.これにより,CoBITの位置・方向の履歴およびユーザからの合図を基に適切な情報を直感的かつ容易な操作でインタラクティブに提供できる.本論文では,実装したCoBITの特性を示し,その試験運用やプロトタイプシステムを紹介する.The target of ubiquitous computing environment is to support users to get necessary information and services in a situation-dependent form. In order to support users interactively, we propose a location-based information support system by using Compact Battery-less Information Terminal (CoBIT). A CoBIT can communicate with the environmental system and with the user by only the energy supply from the environmental system and the user. The environmental system has functions to detect the terminal position and direction in order to realize situated support. In this paper, we also show various types of CoBITs and the usage in museums or event shows.
著者
今井 國治 藤井 啓輔 池田 充 川浦 稚代 川浦 稚代 藤井 啓輔
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本申請研究の主たる目的は、CT検査時における被ばく線量(重要臓器線量)を測定した上で、申請者がCT画像上で発現に成功させた確率共鳴現象を利用して、病変検出能の向上を図ると共に、CT検査時の被ばく線量軽減を行うことである。特に今回は脳梗塞部の検出(脳溝の狭小化や早期虚血性病変)に主眼を置き、どのような条件の時に効果的に確率共鳴が発現するかを検討し、最終的に臨床への応用を目指す。確率共鳴はノイズ強度が10HUの時に最も効率よく発現し、コントラスト分解能も鮮鋭度も大きく改善した。また、この改善効果はノイズの種類に依存し、高周波を多く含むノイズを付加した際に、その効果が大きくなることを定量的に示した。
著者
大渕竜太郎 StateAndrei ChenDavid BrandtAndrew TectorChris BajuraMichael FuchsHenry
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.59, pp.15-22, 1994-07-08
被引用文献数
1

仮想インターフェース技術は人間が実世界を知覚し理解する能力を拡大する可能性をもっている.たとえば、see?through Head?Mounted Display ()(シースルーH)を用い実世界の画像と超音波断層像を重ね合せるaugmented reality(拡張現実)システムによって、医師が母親の体内の胎児を「見る」ことが可能になるかもしれない.しかし、現在、こういった拡張現実システムの研究は利用可能な計算処理能力によって制約されている.本論文では、実時間・実空間で医療用3次元超音波像を表示する拡張現実システムを題材に、計算処理能力の制約(の一部)を取り除いた場合いったいどのような可能性が開けるのか、またどのような問題点が残るのか、探って見た.今回紹介する実験と、過去にわれわれの試みた同一目的の拡張現実システムで得られた経験とにより、拡張現実システムの将来に重要な課題の幾つかを明らかにした.Virtual interface technology offers potential to enhance human perception and understanding of the real world. An augmented reality systems with a see-through Head-Mounted Display (HMD), for example, may enable a doctor to view the unborn baby in the mother's abdomen, by combining images of the real world and the image acquired by medical ultrasound echography scanners. Exploration of such systems, however, has been limited by the computational capabilities available. This paper explores the possibility of augmented reality for a particular application, real-space, real-time display of 3D medical echography images, by removing some of the limitations of current computational capabilities. Combined with our previous experience, such exploration have identified issues important to determine future direction of such augmented reality systems.
著者
酒井 健
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、20世紀フランスの思想家ジョルジュ・バタイユ(1897ー1962)の初期の活動、とりわけ総合的文化誌『ドキュマン』(1929ー1931)をめぐる活動を、当時の文化的背景に注目しながら解明した。視点としては文化多元主義(諸文化の多様性をそのままに肯定する立場)をとった。成果としてあげられるのは、前世紀からの西欧近代一元主義に膠着して危機的状況にあった同時代の西欧文化を、バタイユが、考古学、民族誌学、前衛芸術の最新の情報を呈示しながら、批判、相対化、活性化していった様を論文やシンポジウムを通して具体的に呈示できたことである。
著者
佐藤 虎男
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. I, 人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.161-170, 1975

人間の生活は言語の生活であり、言語の生活は音声生活(音声による生活)と見ることができる。意味の形である音声に表現する生活、音声化生活であると見られる。音声化には地方的傾向がある。個々人の音声化行為は、日本語方言音声を母胎とするそれぞれの地方的傾向に立脚して営まれる。じっさい,そのようにしか音声化しえないのである。筆者はさきに、伊勢大淀(おいず)方言のアクセントをとりあげたが、それはまさに、上述のような音声生活上の地方的傾向を明らかにしようとしたものであった。とくに当該方言は、アクセントの面においていちじるしい特色を見せていることを、文アクセント・語アクセントの両面にわたって報告したのである。もっとも、このアクセント特色は、近隣方言アクセント状態の中において対比的に看取されたものであった。一段と巨視的な観察によれば、じつは、これが、熊野路一帯に見られる特色アクセントと系脈を等しくするものであって、突然変異の異端などではないと考えられるものだったのである。アクセント面においてしかりとすれば、音声生活上の他の面においても、同似の事態がおそらく認められるであろう。表現法や語詞語彙の面においてもまた,熊野路の方言、まぢかくは、志摩地方方言と同系脈の諸事象を種々見いだしうるに違いない。本稿は、そのような意向のもとに、アクセント報告の続報として、当該方言の音声生活一般を、要約的に記述しようとするものである。(表現法その他は後日に譲る。)Once I reported the result of my study of the accent of Ise-Oizu dialect. And this time, I report the phonetical study on the pronuncation of Ise-Oizu dialect. This report says that in this dialect there are various features which are similar to that of the southern part of the Kinki district on the point of the vocal sounds as well as on the accent.
著者
高井 正成 阪口 哲男
雑誌
研究報告情報基礎とアクセス技術(IFAT)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.1-8, 2012-09-18

近年, Web アプリケーションの提供者はその機能を他のアプリケーションから利用してもらうため, Web API を提供する事例が増加している. Web API では HTTP などの通信プロトコルによるリクエスト・レスポンスにより通信を行うという大きな枠組みは共通しているものの,細かな仕様は各 Web API 提供者によって定められる.そのため各 Web API に互換性がなく, Web アプリケーション開発者は Web API を利用する場合,仕様を確認しそれぞれの Web API の仕様に沿ったプログラムライブラリを作成する必要がある.そこで本研究では開発者がプログラムライブラリを自分で作成する手間を省くため, Web API の仕様文書から情報を抽出し,プログラムライブラリを自動生成する手法を提案する.The case is increasing that Web Application providers publish Web APIs which are used by other applications with Web protocol. They are designed based on common simple protocol but detail specification of each of them is decided by its provider. So Web APIs don't have compatibility with each other. Web application developers have to read documents of Web APIs and make program libraries for them if they use Web APIs. This paper proposes a method to make program libraries automatically by means of information extraction from Web API documents in order to developers avoids the trouble of making program libraries.
著者
千種 雄一 松本 淳 桐木 雅史 川合 覚 松田 肇 及川 暁 佐藤 孝
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.125-127, 1998
被引用文献数
4 16

アルコール症と痴呆症の60歳の女性患者が自宅で転倒しガラス窓に頭部を突っ込み同部に弁状創をおった。しかし患者は何ら創傷部の手当をしないで放置した。10日後に精神科を受診した折, 医師が創部に60匹余りのヒロズキンバエの3齢幼虫を見い出した。従来言われているハエ症を惹起しやすい状態, 病態にアルコール依存症と痴呆症を加えることを提唱する。
著者
白川 恵子 林 以知郎
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、アメリカ独立革命期の建国神話がいかに構築され、それが共和政期および南北戦争以前期の文化の中で、いかに表象され、大衆に受容されてきたのかを考察する。特に、(1)建国祖父の伝記による独立革命の矛盾の曖昧化、(2)共和政期以降の建国神話受容、(3)独立革命のイデオロギーと文学的体制転覆的想像力との関連、(4)南北戦争以前期の煽情主義的/感傷主義的ナラティヴに反映・表象さえる建国神話に焦点が当てられる。
著者
市川 貴子
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

中学校技術家庭科技術分野(以降、中学校技術科)において、身近な機構の学習内容を通して、技術的なものの見方・考え方を育てる授業について検討し、実践を行った。学習指導要領の改訂により、中学校技術科では、技術を適切に評価・活用する能力と態度を育成することが重視されるようになった。技術を評価する力を育成するためには、技術に関する基礎的な知識に加えて、技術的な評価の視点をもつことが必要である。そこで、ロボット製作など機構の学習において重要である強度設計や機能設計の学習内容を検討すると同時に、エネルギーや開発コスト、製品寿命等のトレードオフについても発展的に学習できる教材を開発することを目的とし、実践した。授業実践では、傘や文房具など身近な道具に使われている機構を予想し、解析することを通して、運動を変換する機構や、効率的に力を伝える機構の学習を行った。また、模型の製作を通して、同じ仕事をする道具にも複数の機構があることに気がつかせた。例えば、穴あけパンチの場合、紙の差し込む位置がレバーの手前からものと、向こうからのものがある。より多くの紙に穴をあけられるものは、ハンドルが長く力が増幅されやすいが、刃をまっすぐ下ろすためのパーツが多いなどである。自分の考えた機構模型と、製品とを比べることで、道具が製品化されるまでには、より効率のよい機構が検討され、材料の強度やコスト、生産性なども合わせて考えられていることを理解させた。その結果、身近な機構の学習を通して、生徒に状況に応じた最適解の概念や製品を多面的に評価する視点をもたせることができた。授業後の生徒のアンケートによると、「製品と自分たちの模型は全然違った。」「他のものも見てみたい。」のような好意的な意見もあり、生活の中に存在するいろいろな機構を評価する意欲ももたせることはできたと考える。この実践が、生徒自身の製作活動時のみならず、既製品を購入する際にも、製品の特徴や利点、欠点など技術的な視点をもって評価し、最適なものを決定する力を育てるきっかけになったと考える。